宝塚のトップスターの役として、少しも颯爽としていない特殊な主人公のキャラクター、クロード。それなのに何度も再演。

物語は、柴田作品おなじみの三角関係、それに加えて、前に進んでいく時代の活況を映しこむ音楽、衣装、ダンスシーンを交えて苦しい恋なのにテンポよくすすむ。ラストはそれぞれに悲しい幕切れなれども、余韻を飾る美しい琥珀色の雨降る湖。やはり、名作。

 今回の月組「琥珀・・・」皆さんの芝居が良くって、今までより以上に個々のキャラクターに引き込まれ、心から感激してしまった。

 

 初演以来、気になる作品で、匠ひびきさん以外のクロードは皆見ているけれど、演ずるに難しいクロードキャラ。

 従来はベタっとした甘えた感じを残したマザコン風が多かったのだが、ちなつクロードは違いました。鳳月さんは、換骨奪胎。彼の根源まで覗き込んで、存在感ある人間を作り上げました。

 

 貴族の御曹司。周りに愛され、勉強もでき、運動能力もある。素直で人柄もよい。しかし、すいすいと生きてきてしまい、人間だれしもが出会う心の葛藤を経験したことがない。境遇に恵まれて、自分自身に向き合う必要がなかったのだ。

 

 なので、初めての恋の嵐に遭遇して、心の鍛錬ができていないので、耐性がなく、自分自身を侵食する。突然芽生えた心の反乱になすすべがない。そう考えると彼の、前後を考えない衝動的な行動の意味が分かる。

 ちなつクロードからは、単なる成長しきれなかったマザコンではない、自分自身に翻弄されて戸惑うクロードが見えました。

 

 なので、彼の心の震えや迷いがセリフや行動によって、しっかりと観客の心に伝わり、深い共感をえられるのでしょう。

 

 鳳月さんは数々の作品を演ずるにあたって、人物表現が、的確で外れたことがないです。強い役がお似合いなのに、この繊細なクロードさん、凄すぎます。

 

 そして、今回のルイ、水美舞斗さん、もう、色気駄々洩れ。こんなに悪っぽくて、セクシーなルイいましたか?

 いらだつような、やれやれというような、切ないような、甘えるような目の動き。素敵すぎて目がつぶれそうです。どこかで主演公演、是非ぜひ、やってほしいです。

 シャロンは自分と同じ匂いがするルイには近づかなかったのに、ニースのホテルでの事件で、自分を保つためにはルイにすがるしかなかったのでしょう。案の定、すぐに分かれてしまった。きっと、傷つけあって。悲しいシャロン、華やかな衣装がよく似合って、天紫珠季さん素敵でした。

 

 お披露目公演が待ち遠しいであります。

 7月13日に、クリエで、見てから二か月弱、ツアー公演を終えての大千秋楽の人見記念講堂。大いに化けておりまして、なんていうんだろう、舞台作品として一級品。人生に元気を与えるエンタメとして、完成度が上がっておりました。いいもの見たという満足感いっぱい。

 

 考えてみれば、出演者の皆さん、舞台歴15年、20年、それ以上のベテランぞろい、芸達者が見せるパフォーマンス、ただのハッピイなロマンティックコメディに収まるわけはなく。確かな人間コメディとして見せてくれていました。小林香さんの演出力もすごい。

 

 この物語は、出てくる人々多くが、「自分の人生を切り開こうと、一人で都会にやってきた人たち」ミリーも、ドロシーも含めてホテルの女優志望の女の子たち。ジミーもお金持ちの息子に甘んずることなく、親の勧めもあったけれど、世界を見ようとNYに単身やってきた。

 ホテルの支配人のミアーズも女優になるべくスエーデンからやってきたし、中国兄弟も一旗揚げるためにやってきた。

それぞれの思いが絡まり、すれ違い、最後に大団円になるのだけれど、彼らの生きるエネルギーがあふれ出ての舞台のパワーとなって、熱気と勢いが凄かったです。舞台から元気もらえるとはこういう事なのですね。

 

 今回特に、ミアーズさんのキャラが単なる悪人ではなく書き換えられ、人間度が増していて、それにこたえる一路真輝さんの演技がパワーアップしていて、ミアーズさんが出てくると、場を攫っていきました。緩急自在の抜群の演技の冴えがあります。

 土井裕子さんも、最初に見た頃より、遊び感が溢れていて、「スイスVSスエーデン」のシーンは圧巻の面白さ。

 

 もちろん朝夏まなとさんのミリーの真ん中感がすごい。面白エピソードは周囲が持っていくのだけれど、ミリーの物語として、しっかり立っていました。二年前よりも、がっちり主演オーラ漂っていました。

  お歌が良くって、声量が上がり、感情がしっかり伝わって、ロングトーンものびのびとして、心打たれました。

このお歌の上達が存在感を増し増しにしたのかな。努力、研鑽の痕が知られます。

 

 緩和休題  この昭和女子大学 人見記念講堂。

 建物内装、美しくって清楚で華麗なのですが、音響が素晴らしいです。クラッシク主体の多目的ホールは残響がすごくって、セリフや歌詞が聞き取れにくいのですが、明瞭に聞こえます。そして、拍手や、手拍子の音がうるさくない。吸引されていくというより、宥められて、しかもしっかりとホールに響いている。

 座席は2000と少し、東京宝塚劇場とほとんど同じ。そこをいっぱいのお客様。愛されている作品なのだなあと、嬉しかったです。ま、本来は帝劇か、日生でやるようなメンバーですよね。

 まぁ様にはやっぱり大舞台がよく似合う。ストレートプレイより、歌って踊るミュージカルで見たいです。

 

 歌手でも、作家でも、作曲家でも、その人の一番ポピュラーな作品を中心にして、映画が作られる傾向がある。

たとへ、本人がそのその作品を気に入っていなくてもだ。ラベルは「ボレロ」を好きではなかった。でも、映画はそのボレロをクライマックスに据えて、クレッシェンドに盛り上げていく。

 

 沢山の斬新な楽曲をつくり、芸術家として名声を得た後のしばしの停滞期に、新しい構想の下に渾身の力を込めて作ったこの曲が、大衆的な人気を得てしまった。この曲の後、音楽家としての人生は暗い波に飲み込まれてしまう。神経を犯されてしまった晩年は悲しい。

 

 映画は青年期から始まり、過去と現在を行き来させながら、神経質でストイックな音楽家の人生を、パリの社交界に行き交う人々を交えて、華麗に語っていく。的確な画面構成、瀟洒な海辺の別荘、グラスが照明にきらめくパーティ、シックなドレス、タキシード、ゴージャスで、美しいシーンが次々と描き出される。監督アンヌ フォンテーヌの腕は確かだ。

 

 主人公を演じるラファエル ペルソナはアランドロン風のどこから見てもきれいな俳優、アンヌ バリバールの妖艶なバレリーナも見事。華麗な社交界を背景にして、繊細で、神経過敏の芸術家の姿が丹念に描かれていきます。

 

 

 サーカスという芸能には、いつの時代もどこの世界にも憂いと猥雑さがついて回る。

 

 怪力男、綱渡り、空中ブランコ、猛獣使い、変な顔をしたピエロ、時には小人や、大男。通常の人間たちが持ちえない尋常ならざる力、能力を持っている怪物たち。恐ろしい力を持った忌むべき者たちであるがゆえに、民衆のつかの間の見世物として喜ばれ、喝采を受ける。

 だから、彼らは定住できない。そんな恐るべき人たちが近所にいては困るゆえに、町から街へとさ迷い歩く宿命を持っている。

 社会から排斥された者たちの孤独と悲哀がそこから生まれる。一方、そこに居場所を見つける者たちの安らかな居場所になる。

 空中ブランコ乗りのキキも、ピエロの若者もそんな一人だ。親も家族もいない。

 

 異郷の住人たちで構成される舞台だから、現実から乖離したメルヘンチック、ファンタジックな世界として描かれる。

 幕開きは華麗なサーカスのパフォーマンス。期待通り目を奪われるけれど、原作が別役実、彼の小品を潤色構成しているので、不条理絵的でわかりにくい。子供向けでもあるので芝居になかなか入り込みにくい。ストーリーに破壊力のあるエピソードがないので大人にはモヤモヤしてしまうだろうと思う。

 がしかし、終わってみれば、いくつもの視点から見ることができる開かれた芝居として、それぞれに楽しめる舞台になっていた。

 

 私的には、自分が特別な人間であるためには4回転宙返りができなくてはならないと思い詰めるキキの心が切なかった。観客のより大きな拍手を浴びるためじゃない。自分の生きがいのためじゃない。4回転宙返りができると、見たことのない母親に会えるという事だったのでした。海からゾウと一緒に漂ってきた少年のエピソードからそれと知れる。

 

 キキの咲妃みゆさん目当てに見に行った公演だったのですが、期待通りの透明なキキがそこにいました。ブランコに乗って歌う「雨が空から降れば」が胸にしみました。瀬奈じゅんさんとデュエットする歌も美しい。

 本田千晃さんというバレリーナのyouyubeを、3年ぐらい前からフォローしていました。去年までスロバキアのバレー団に所属していて、外国でのバレリーナ生活の映像やちあこさんのおしゃべりが面白くて、見続けていました。

 

 おかげで私もKバレエなど見に行ってみたりするようになりました、

 その千秋さんが昨年日本に帰国してスターダンサーズバレエ団に入団して日本で踊っています。

その彼女が昨年の夏、プロデュース公演を立ち上げました。国外で踊っているダンサーそれも、ソリストやプリンシパルの方々を集めてのバレエ公演です。その行動力に感心しました。

 一日一回だけの公演ですが、一人のバレリーナさんが劇場を借りて、チケットの手配して、興行を打つ。すごい企画力、実行力だと思います。

 

 昨年は大阪で開催して大成功。今年は東京の葛飾で公演「白鳥の湖] 

 今回の企画で画期的なのはこの白鳥のコールドを一般公募して、レッスンして、舞台で踊ってもらうというもの。オーディションから18名&アンダー数名を選ぶ。下は中学生、上は40代、会社員や、学生さんから、主婦やら様々のバレー経験者たち。

 5月からのレッスン風景をyoutubeで配信。10回くらいのレッスン場面を見続けていて、アマチュアの皆さんの踊りが、ちあきさんの指導の下どんどん上達していく過程がスリリングで、映像公開が待ちきれなくなっていく自分がいました。

 メンバーの家庭訪問やインタビューもあって、次第にメンバーに親近感が増していきました。なので、本番近くのお稽古ではきれいににそろってきていて、涙がジワリでした。

 

 そして8月6日本番、プロの出演者の方々のダンスはそっちのけで、ひたすらコールドを見つめてしまい、見事にそろった腕の振り足の運びに胸があつくなる連続。一時間余りのダイジェスト版でしたが、終わって幕が再び開いてコールドのみなさん、勢ぞろいしてのご挨拶。会場は大拍手。

 

 Youtube見たことで、会場に足を運ん方沢山いたと思います。コールドの方々はカーテンコールで泣いていらっしゃいましたね。こちらもよかったあ、の涙でした。

 コールドの皆さんはこの舞台や、レッスンの日々を一生忘れないでしょうね。ちあこさん、すごくお痩せになってしまったけれど、素晴らしい企画を立ち上げたと思います。

 

 かねてから一度OSKを見てみたいと思っておりました。昨今は演出が元宝塚の荻田浩一さんだし、トップスターの楊さんのお写真を見たときにかっこいいじゃんと思っていたからであります。

 今回、その楊さんが退団すると聞き、新橋演舞場に行ってまいりました。

 

 楊さんすごいオーラで輝いていました。OSKさんは宝塚に比べて、舞台上は40人くらいで、こじんまりしていてアットホームな感じ。親しみやすい雰囲気があります。見ていてびっくりしたのは男役の方が13、4人で、娘役の方が20人くらいなのです。同数でないことが衝撃でした。

 

 日本物45分。休憩挟んで荻田さんのダンスレビュー。日本物はチョンパで始まり、若衆、娘たちの総踊り。OSKさんは歌わないと思っていたのに歌うので嬉しかったです。

 

 レビューは、楊さん大活躍。ダイナミックで、柚稀礼音さんを彷彿とさせる豪快なダンスで、目が釘付け、華あるスター性ありで、退団はもったいないなあ。ほかの方々もお上手なのですが、楊さんの存在感は群を抜いていました。

 お約束なんだろうな、素面で、紋付袴の立ち回りが目力きいていて凛々しかった。

 フィナーレでは娘役トップとのデュエットダンスもあるのです。宝塚と違って、べったり愛してます風の雰囲気ではないのが新鮮でした。

 

 ウイキペディアで調べたのですが、宝塚も受験したらしい。合格なら真風さんとか、彩凪さんとか鳳月さんと同期だったらしい。

 なんでこんな素敵な方を落としたのか、身長が足りなかったのかも、ウイキペディアでは167センチ、うーん、男役ではギリギリ少し足りないかも。舞台上では大きく見えたのは他の団員さんが小柄なのかな。調べたら若手の翼和季さんも受験したとか。

翼さんは如月連さん似でかっこよかったです。身長が165センチくらいではないかとネットには書いてありました。身長が宝塚との分かれ目なのか。

 

 フィナーレには階段もあって、娘役のピンクのドレス、スパンコール輝く黒燕尾たちが入り混じって豪快かつきれいなダイナミックさで目奪われました。ラストのトレードマークの傘をくるくる回すのが楽しくて、美しい。

 OSKさんは100年の歴史があるそうです。レビューの伝統を宝塚と共に、ともし続けていって欲しいです。

 

 

 

 

 

 イギリス人の墓泥棒アーサー、彼は地面の下のお宝を探し当てる特殊能力がある。古代エトルリアの墓は今では土に埋もれて、墓がどこにあるかもわからない。それでも、全身の感覚を研ぎ澄ませ、時には例の水脈を当てる十字の棒切れを持って、ここだと思う地面を探る。

 彼の特殊能力を当てにして、本物の墓泥棒たちが群がるが、アーサーは掘り当てた遺物にあまり興味を抱かない。

 

 アーサーの特殊能力はどこから来るのか、ストイックな彼の行いの理由は何か。

最後にわかる。ネタバレだけれど、彼は物語のラスト、深い穴落ちてしまう。そこで上から垂れている赤い糸。それを引っ張ると、美しい若い女性。

 

 ここでハハンと、謎が解ける。死んでしまった恋人、エウリュディケを探し求めるオルフェウスなのだと。彼は恋人に会いたくて墓を掘っていたのだった。

 そこに至るまでのお話はひたすら墓荒らしの物語なのだけれど、時代物の館に住む老人や彼女に付き添うおかしなヘルパーさんとか、盗品買いをする女の医者とかが登場し、吟遊詩人風に墓泥棒たちが歌ったり、死者が現れたり、にぎやかに進行する。

 

しかし、重い味付けではなく、軽やかなので、あっさり、軽く楽しめる。それにしても、アーサー役のジョン オコーナーさんの細身のシルエットが美しいこと。でっぷり太った館の老人がイザベルロッセリーニだったとは、驚きでした。

 

 監督のアリーチェ ロルヴァルゲルさんは、ヨーロッパ的な洒脱な知性を感じさせる監督さんであります。遊び心とロマン派風の映画つくりが魅力的。

 

 

 

 昨日はEプラスの貸し切り公演。久しぶりの宙組。舞台も客席もパワーに満ちていました。これほど、手拍子してしまう作品も珍しいんではないですかね。

 

 宝塚歴65年にならんとするオールドオールドファンとしましては、幕開きからうれしき限り、8割以上は聞いたことのある曲でしたね、マスクの下で声なしで歌ってたりして、幸せでありました。

 

 さすがに花詩集とか、パリゼットとかは、家にあったSPレコードとか、ドーナツ版で聞いていましたが、「エスカイヤガールズ」が出てきたときは嬉しかった。小学校の低学年だったかな、那智わたるさんとが舞台の上で歌っていて、今でも歌えるくらい。

 

 次々に展開する歌の数々、ああ、あの時、あれなんだったけとか、思い出す喜びの連続でした。

 堂々たる「シナーマン」の後はあの鳥のダンスが続いて欲しかったけど、あれ踊ったら、疲労困憊して、皆さん舞台が続かないわねと、笑ってしまいました。

 

 舞台演出としましては、歌のパレードといった感じで、「夢人」近辺は迫力ありましたが、平板かな、舞台美術はキラキラでしたが、誰かが歌って、バックの群舞の繰り返しで、単調なんだけど、それを補って余りある、皆さんのパワー。

 

 宙組の皆さん、お休み期間中に大変なレッスンを重ねていたんだろうなと想像されます。俳優はお客さんを満足させる技術と技量と、魅了する舞台の華が勝負です。この舞台にはそれがありました。その心意気に圧倒された時間でした。

 瑠風さん休演ですごーく寂しかって、残念だったけどね。鷹翔さん、風色さんが大活躍してました。お二人とも存在感抜群でしたね。春乃さくらさんも輝いて今いた、あの笑顔と力強さ、素敵でした。

 

 舞台の真ん中で「愛の旅立ち」を芹香さんが歌った後、銀橋の端に立って歌うとき、無人の大階段に幾本かのライトが交差し照らしていました。胸を突かれました。これはこの舞台を通って行ったタカラジェンヌをしのぶ演出だったと思います。続いて、黒ではなく白燕尾服のダンス。これも鎮魂ではないかと思いました。口には出さなくても、思いを舞台に乗せているのです。

 舞台人は舞台で、作品で表現する。

 

「未来へ」も「世界に求む」のデュエットダンス、宙組がここにいました。涙が出そうでした。

               FOREVER TAKARAZUKA !

 

 

 

 

 

 これから綴るのは、戯曲に対しての文句であります。生徒さんには全く罪はありません。生徒さんは立派に演じてました。それに関しては後半から書きますね。

 

 作演出の生駒怜子さん。mini植田景子さん、セリフ回しに正塚含み。という感じでした。

 

 どこかヨーロッパテイストの小さな町。新聞記者、本屋さん、帽子屋さん、パン屋さん、お巡りさん、大工さん、小さな楽隊、小さなカフェl、心優しい人々、善意の行き違いみたいなエピソード、最後はしみじみハッピーエンド。

 

 戯曲の構成、演出がしっかりしているので、グダグダ感はないのですが、中身フワフワ、ふにゃふにゃ。色とりどりの果物いっぱいで生クリームとアイスの溶けたフルーツパフェ。メルフェンタッチはいいけれど、なんとも、ふやけた戯曲でした。

 

 先ず、幼馴染の三人組、そのうちのミラは事故で親を亡くして傷を負っている。ミラとダーンは相愛なの恋心を言い出せない。それを周りが応援する。がしかし、なんでぐずぐずしているか理由が終始あいまい。だから、二人に感情移入ができないのです。

 

 そして、ダーンは見ず知らずの大工レオに唐突に殴られる、その理由が有り得ない。そんなんでボロカスに殴るかい。警察にもいかない、変でしょ。新聞記者なのに。おまけにあんなに殴られてもすぐに元気。

 子連れ未亡人みたいな親子が出てくるけれど、この人配偶者がいて、いかつい上司の記者がお父さんという唐突な落ち。伏線の回収があったのはこれだけ。

 何より、主人公のミラとダーンに動きがない。彼らの行為や、セリフで物語が動いていかないので、印象薄い。しどころのないパーソナリティだけが勝負で演技深めようがない。一番動いていたのが、迷子の11歳のヤンでした。

  

 椅子がいっぱいの舞台美術がナイスアイディアだけれど、それだけで満足したみたいな感じで、夢夢しいとは言いながら、見るのは大人です。

 

 

 聖乃あすかさんは、持ち前のノーブルな爽やかさで主演としてしっかり、立っていました。

 驚いたのはミラの七彩はづきさん、ワンフレーズで驚異の歌声実感させる技量、演技も立ち方もしっかりしていて仰天。

 

 侑輝大弥さんのダークな魅力。フィナーレのダンスで、柚香光さんの面影が見れました。上半身、特に指先から手首二の腕のしなるような動き、継承してましたね。うれしかったです。

 

 その他若手の皆さんの元気いっぱいの演技、ダンス、うれしい限りであります。

 

 

 

 

 

 結局,1957年の公道で開催したカーレースで沿道の観衆を巻き込んだ大事故をクライマックスにしたかったという意図が見え見えの構成。

 世界的に有名だった自動車会社フェラーリの創業者の伝記映画を作りたかった。

〇車の販売台数よりも、カーレースに情熱を燃やした。

〇 跡継ぎの息子が病気で死んで、なおかつ、糟糠の妻との間がうまくいかない。

〇 愛人を囲って、子供も生まれ、それを長いこと妻に隠していた。

〇 大事故

 

 これらを要領よくまとめて、マシンの走行実験の緊迫感を見せ場にして、ラストにびっくりの大事故を置く。

まあこんな感じで、そつがないけど、オーソドックス過ぎて、面白みに欠ける。妻と愛人と際どい二重生活、セックス場面も交えて、描いたりしてるけど、なんか、彩りがいるかも的なサービス感ありあり。それにしても、美貌のペネロペクルスを、夫の浮気に嫉妬する暗い、野暮ったい中年おばさんしてほしくなかった。まして、彼女はスペイン人だし。興行成績気にしてスターを使いたかったのでしょう。

アダムドライバーは可もなく不可もなくです。

 

 なんとなく期待しすぎしていたみたいで肩透かしくらった感じ、目くじら立てなくてもよい、普通の映画です。