原作はまるで知らず、公演の紹介と、新潮社の簡単な用語解説を読んだだけで、観劇に臨みました。やはり、独特の世界観や用語があまりよくわからなくて、混乱しました。用語解説だけでも読んでいて良かったです。
しかし、十二国の世界認識について確たる理解がなくとも、舞台は楽しめました。それは、簡素な舞台装置に、くるくると変わる変幻自在の映像と照明の表現力の豊かさのお陰です。
おどろおどろしい異界の雰囲気や、劇的場面を巧みに表現し、物語へと誘いこんでくれる。
音楽もまた然り、独特の旋律が心理や激情をを伝えるのに十分効果的だ。
しかし、一番の見どころは、パペットや、影絵のような切り絵だ。次々と襲い掛かる怪獣のような妖怪や妖魔、紙や木で作られていて、それを何人かで担いだり、振り回したりして豪快に操る。その扱いが巧みで紙芝居のような安っぽさがない。
優れた工芸作品を思わせる作りや緻密に考えられた動きで見どころ十分である。この作品の成功はこのパペット群であるといってよいだろう。
以前、同じく日生で見た「精霊の守り人」ミュージカルのペラペラ感を思い出してしまった。あの演出家にこの舞台を見せてやりたい。(薄っぺらで悲しかった)
本作品の演出家山田和也さんの実力、彼を中心としたスタッフの腕力を称えたい。
肝心の物語であるが、中島陽子という高校生の成長物語の姿で語られる。前半は意志のはっきりしない、自己肯定感の薄い高校生活が語られ、魔界に侵入してしまったのちも、己の立場がわからず逡巡し、翻弄される。
後半は天命として、王になっていくのだが、その過程がよくわからない。何となく戦いの力がついて、己の使命を自覚していくようなのだが、はっきりその思いが伝わらずもどかしい。
なので、なんとなく晴れがましい陽子の姿を見て、良かったねと、柚香光さんの凛々しい姿拍手を送るしかない。
俳優としては原田真絢さん、声の力に圧倒されました。
とまあ、お話の展開がつかめず歯がゆいのであるが、おどろおどろしい異界をさ迷う美しい柚香光さんを堪能出来て満足ではありました。それにしても、光さんは相変わらず「悩める王子様」でしたね(笑)。カーテンコールの白い着物みたいな衣装でくるりと回ってくれて歓声を浴びてましたわ。