太田龍子様の「ロンド・カプリチオーソ」評 | 羽生結弦さんの見つめる先を見ていたい

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羽生結弦選手を敬愛しています。羽生さんを応援する素敵ブログ様方を日々の心の糧にしている、ソチ落ち主婦のブログです。(横浜在住)

太田龍子さまが、羽生くんの新SP『序奏とロンド・カプリチオーソ』の感想を公開して下さいました。古典芸能にも造詣の深い太田さまの羽生くん評は、その洞察は鋭く、独特の芳香に満ち、筆致はあくまで流麗かつ絢爛豪華です。

私は毎回、太田さまの講評を拝読することを待ちわびている次第です。

皆様に、ご紹介させていただくことも、嬉しいです。

是非、太田さまのnotoにお伺いくださり、全文をご鑑賞いただければと思います。↓🙏



太田さまの文章を一部分だけ、抜粋させていただきます。🙇‍♀️↓


絢爛たる挑戦  

羽生結弦のロンド・カプリチオーソ

 20211224日、全日本フィギュアスケート選手権男子ショートプログラムを現地観戦した。

 第3グループの演技が終わるころ、羽生結弦がキス&クライ横の青い階段から静かに姿を現した。ジャージは着ていない。第4グループの6分間練習が始まり、リンクの中央に並んで挨拶を終えた選手たちは一斉に滑り出す。
羽生の衣装はハッカ入りの砂糖菓子のような甘いパウダーブルーが基調。白に近い薄氷のような水色から星の輝き出す一瞬前の夏の夕空を思わせる青まで、繊細に変化する色とプリーツに龍の鱗のような淡い金色のモチーフが重なる。動くたびに無数のビジューが瞬く様はまるでピクシーダストだ。
ピリピリと緊張感を漂わせる他の選手たちを尻目に、羽生はゆったりとリンクを周回し、時おり星屑のような光を撒き散らしながら空中に舞い上がる。跳ぶというより「浮かぶ」という方がふさわしいエフォートレスなジャンプ。4回転サルコウも4回転-3回転のコンビネーションも3回転アクセルも微塵も揺らがず着氷する。今期は
11月に何度目かの右足首故障があって欠場が重なったうえでの初戦だ。怪我の影響がないとは考えにくい。しかし、目の前の羽生は一人だけパラレルワールドにいるかのように落ち着いた表情のまま別次元の滑りを見せ、6分間練習を終了。迷いのない足取りであっという間にリンクサイドから消えた。

 第4グループの演技が進むとともに会場内の空気は張りつめ、濃密になっていくようだ。その緊張の頂点で4番滑走の羽生が再び登場した。氷に挨拶してリンクに入り、馴らすように滑走する。私の席はロングサイドでキス&クライの向かい側、リンクサイドから5~6列目くらい。
コール直前、
WINNIE THE POOHがいるフェンス際でこちらに背を向けて待つ羽生が真正面に見えた。ヴィオラのようにくびれたウエストの後ろ姿は春のアイスショーの時より一回り細く、うなじのあたりなど向こうが透けてしまいそうだ。コールに応え、リンク中央へと滑り出した羽生は緩やかに回りながらルーティンをこなし、ジャッジ側に背を向け、静かにスタートポジションに立った。

 曲はピアノ独奏の「序奏とロンド・カプリチオーソ」。物憂げに始まる旋律に乗り、羽生はすっと両腕を広げながら正面へと向き直り、回転して滑り出す。音に呼吸をあわせてなめらかに加速し、ターンする足元。メロディに寄り添ってのびやかにしなう上半身。凪いだ湖のように涼しげに、かつ滾るような熱い気配を潜ませた羽生の滑りは最初の3小節で、初演であることも、怪我をしていることも忘れさせてしまう。
ジャッジの正面をイーグルで横切り、優雅に回転してそのままふわりと跳んだのは
4回転サルコウ。まるでバレエジャンプのように軽々と降りて再びイーグル。そして、華やかさを増していくピアノの音色ともに反対側のショートサイドへ。曲の緩急と見事に揃った4回転-3回転の連続ジャンプを決めるとほぼ中央でダイナミックなバタフライからキャメルスピン。頭からフリーレッグのエッジまで綺麗に高さがそろうのみならず、フライングの着地、回転のリズム、留めの呼吸まで小気味よいほど曲と同期している。
 万雷の拍手の下、羽生の滑りはピアノとシンクロし、スパークし、青白い火花を散らしながら熱く、鋭く、高まっていく。カウンターから驚異的な高さでトリプルアクセルを跳び、ツイズルをはさんで巧みな腕の動きに彩られた艶麗なシットスピンへ。スピンの留めと曲の切れ目がピタリと揃い、まるで羽生が指揮をしているようだ。

 クライマックスへと狂おしく盛り上がってゆくピアノの眩く、繊細で微妙にクセのある響きはまるで形も色も輝きも異なる様々な宝石を並べたよう。羽生はその主張の強い一音一音を際立たせて跳躍し、回転し、ターンし、羽ばたたきながら跳びわたっていく。散乱する光のような音色を鮮やかに形にするステップシークェンスに満席の会場はトランス状態だ。ステップから最期のスピンまで、鳴りやまない拍手はますますクレッシェンドし、スタンドも建物も共振しているよう。鳴動するアリーナの中心で、羽生は高々と右手を突き上げてフィニッシュした。
涼やかなスタートとは打って変わり、獲物を仕留めた狩人の精悍さで演技を終えた羽生は、空中からつかみ取った何かを大切に抱えるようにしてリンクドアに向かう。氷から上がって
POOHを受け取った時、初めてその表情が和らいだように見えた。

 (中略)


羽生の「序奏とロンド・カプリチオーソ」もまた衝撃的だった。振り付けはリモート、コーチもいない孤独なリンクで作り上げたプログラムは、高難度ジャンプやレベル4のスピンをほとんどクロスなしに複雑なステップでつなぐ究極の構成だ。今回が初披露となったこの曲を羽生は練習の時から本番直前まで一度もノーミスで滑り通せてはいなかったという。いとも簡単そうに、凄味さえ漂う完璧さで演じられた新ショートプログラムは、実は羽生にとってさえ大きな挑戦だった。しかし、不安など毫も感じさせず、物憂げな冷静さから滾る情熱までをまばゆいばかりに演じた羽生結弦の「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、滑り切りったその瞬間に伝説となった

相変わらず、絢爛たる太田さまの文章に酔いしれてしまいます。

今回、太田さまは現地観戦され、本場前の6分間練習から仔細にルポしてくださいました。期待と興奮が徐々に高まっていく描写は臨場感たっぷりです。有り難いです🙏


「『序奏とロンド・カプリチオーソ』は、滑り切ったその瞬間に伝説となった」


まさしく、その通りですね。

太田龍子さま、素晴らしいご感想をご公開くださり、本当にありがとうございます。拝読できて幸せですm(_ _)m


【フジ公式動画】『序奏とロンド・カプリチオーソ』↓



(スポーツ報知:矢口亨カメラマン)


とにかく濃密!

羽生くんは、ピアノの調べにピタリと沿うように、あたかも水が流れるように滑り、風が渡るように舞っていました。 なにしろ、ステップとターン、スピンとジャンプ、それらの要素が全く繋ぎ目なく進行していくのですから、一瞬たりと目が離せない、離したくない。

まるでリンクは壮大な楽器、そこを縦横無尽に全身で音を奏でるように滑る羽生くん…このプログラムは、目にも耳にも、途方もなく快感ですラブラブ

フィニッシュの瞬間のハッと我に返ったような心地…「魅入られる」とはこのこと!競技であることをすっかり忘れ去るプログラムでした。

まさに圧巻!


指先の表情までも美しいドキドキ


ひとつの芸術作品を鑑賞し終えたに等しいです。録画放送を観たに過ぎない私でしたが、それでも満ち足りた気分で、興奮し、感激し、夢中で拍手をしていました。

何度もお伝えしてきたことですが、

これほどまでに「劇場」を体験させてくれるスケーターは、世界中探しても羽生結弦ただ一人です。


演技前の羽生くん自身の言葉を、THE DIGESTのニュース記事から、ご紹介させていただきます。↓

◼️羽生は「ジャンプは、自分ができる最大の難易度ではない」としつつも、「ただ、プログラムの構成に関しては、ジャンプ前に入っているクロスが1個くらいしかなかったりとか、ほとんどクロスを入れていない。そういうところもぜひ見ていただきたい」と力を込めた。


「表現でも『バラード第一番』だったり、『SEIMEI』だったり、自分の代表的なプログラム以上に、まだ洗練はされていないかもしれないけれど、具体的な物語だったり、曲に乗せる気持ちが強くあるプログラムになっているので、ジャンプだけじゃなく、全部見ていただけるようなプログラムにしたい。これからしていきたいと思っています」◼️


まさしく、有言実行です❣️


高貴に満ちた『序奏とロンド・カプリチオーソ』は、何とオリンピックに相応しいプログラムでしょうか。北京ではきっと前回の『バラード1番』同様、世界中の視聴者を熱狂させることでしょう。おねがい


"レジェンド"ディック・バトンさんも、きっと北京五輪での「羽生結弦劇場」を待ち侘びていらっしゃるに違いないです。 


同じく太田龍子さまの、FS『天と地と』感想に関する過去記事も紹介させていただきます。↓


SP『序奏とロンド・カプリチオーソ』、FS『天と地と』、この二つの超傑作プログラムを携えて、羽生くんが北京五輪を席巻する未来が見えるようです照れ

黎明さま、感謝してお借りします🙇‍♀️

北京五輪のメダル(左下)は「天と地と人の和」のコンセプトで作られているそうです。まさに、羽生結弦を待つメダルですね。




1月15日(土)のNHK 23:45〜24:30
「アナザーストーリーズ 羽生結弦オリンピック連覇」が再放送されます!
平昌五輪後に放送された「羽生結弦絶賛インタビュー」を是非ご覧下さい。↓



本日の横浜は快晴。

仙台も晴れ☀️