2022年秋の本州遠征で関東のキンブナと諏訪湖のナガブナを無事に釣ることができたので、フナ類の中で残るはオオキンブナのみとなった。

 

そこで、遠征から帰ってきた10月の下旬から、福岡と佐賀でオオキンブナを探し始めた。

 

そうすること約5週間、15箇所目でついに「当たり」を引くことができた!

 

やってきたのは福岡県内某所。七尺たなご用ウキ仕掛けのハリを秋田狐2号に替えたものに、ミミズちゃん熊太郎の太虫を通し刺しにしてハリ先から垂れる程度の長さにカットしたものを付け、底に着くようにした。

 

水が澄み、浅いので最初はかなりスプーキーだったが、そのうち仕掛けに慣れ、夕マヅメに近くなったこともあって途中からポンポンと上がるようになった。

 

そうして釣れた13尾のフナ類のうち、3尾が候補として残った。そのうち未成熟の可能性が高い10センチクラスの小さな個体を除く2尾の、腹部がより薄い方を開いてみた。

 

ここのフナは絶対数が限られているので、絶命させるのは1尾だけと決めていたため、一か八かの解剖だった。

 

切り進めていくと、もう見飽きたあの黄土色が見えてこない。

 

ひょっとしてと思いながらさらに切り進めると、そこにある細長いものは、白い半透明の生殖巣だった。

 

慎重に切り出し、さらに実体顕微鏡で拡大し、精巣であることを確認。

 

やった、ついにオスのフナ類を釣ったー!

 

オスであることで、まずはギンブナではなくなった(ギンブナのオスは非常に稀)。さらに全長と背びれ分岐軟条数を調べると、16.6センチと17本だった。ということで、キンブナではなくなった。

 

さらに左第一鰓把数をカウントすると、56で、ゲンゴロウブナでもなくなった。残るはオオキンブナ、ニゴロブナ、ナガブナだが、ニゴロブナのように顎は張っておらず、また、ナガブナのように背びれが後方から始まっていない。

 

そして分布から考えて、オオキンブナと同定され、とうとうフナ類コンプリートとなった!これより前にコイフナを3尾も釣ってしまいフナ運を使い果たしたかと思ったが、まだ残っていたようだ。

 

公式初オオキンブナ、オス、全長16.6センチ、背びれ分岐軟条数17

 

初オオキンブナの別影。これに酷似した形態のフナ類は他の場所でこれまでに数多く釣ってきたが、全てメスだった。オスに追星が出る産卵期以外で、形態からオオキンブナとギンブナを識別することがいかに無理なことであるかがわかる。

 

初オオキンブナの俯瞰

 

初オオキンブナの腹側

 

初オオキンブナの正面

 

初オオキンブナの近影

 

初オオキンブナの背びれ。分岐軟条数(担鰭骨数)は17で、オオキンブナとしては長めのようだが範囲内ではある。

 

初オオキンブナの精巣

 

初オオキンブナの腸管。長さはギンブナと特に変わらない。

 

初オオキンブナの左第一鰓弓とその鰓把。鰓把数は56で、日本淡水魚類愛護会がまとめたの中のオオキンブナの鰓把数の範囲内(上限)だった。

 

初オオキンブナと同時・同所的に釣れた、オオキンブナと思われる2個体。リリース済み。

上:背びれ分岐軟条数17

下:背びれ分岐軟条数15

 

初オオキンブナと同じスポットから翌日に釣れた、オオキンブナと思われる個体、背びれ分岐軟条数17とその俯瞰、腹側および正面。リリース済み。

 

オオキンブナは2022年12月現在、フナ類の一型であるが、

ウィキペディアなどによると、オオキンブナの存在は1960年代から示唆され始め、1980年代になって提唱や図鑑への記載がされるようになり、2000年に日本産魚類検索に記載されている。

 

さて、これでギンブナ、キンブナ、ニゴロブナ、ナガブナ、そしてオオキンブナの全5型を釣り終え、フナ類コンプリートとなったわけだが、一説によると、これらはギンブナ種、キンブナ種、オオキンブナ種に分けることができ、このうちオオキンブナ種の中に亜種としてニゴロブナとナガブナが含まれるという。


探し始めた頃はどういう形態と生態なのか十分な情報も知識もなかったので、これを参考にニゴロブナやナガブナに似たフナ類を目安にしたが、やがて調べていくうちに、オスを釣ればいいことに気づいた。

 

そこで、探索範囲をある程度絞るため、過去、春に釣ったフナ類の写真を片っ端から見直してみたが、追星がはっきりと写っている個体は一尾もいなかった。今回の釣りでオオキンブナもいるところにはいることがわかったが、一般的にはコイフナよりも珍しいほど少ないようだ。

 

そのコイフナが釣れた時には、フナ側の親はヘラブナか二倍体のフナ類ということになるので、オオキンブナの棲息の可能性が一気に高くなったと大いに期待したのだが、現実はヘラブナが親だったということなのかもしれない。

 

春になったらオスのオオキンブナには追星が出るので、これまでに本型を追い求めて釣り歩いた場所で答え合わせをしてみたい、と同時に、これから先、各地で産卵期のフナを釣る機会があるごとに、追星や体色に注意するようにしたい。

 

今年は春のニゴロブナに始まり、12月のオオキンブナまで、フナ尽くしの年だったが、おかげで上記の説に最初に触れた時に感じた違和感は消え、むしろこれらオオキンブナ、ニゴロブナ、ナガブナのいわば古フナ類にはまとまっていて欲しいと思うようになった。フナ類分類の夜明けを早く見てみたいものだ。

 

2023年3月中旬に佐賀平野のクリークの一角で釣れた、鰓蓋や胸びれ前縁に追星のある、オオキンブナのオスと考えられる個体。自家製黄身練り使用。

 

2023年3月下旬に佐賀平野の別のクリークの同一スポットから半日で釣れた、オオキンブナのオスと考えられる2個体。上:全長約22センチで背びれ分岐軟条数16;下:全長約19センチで背びれ分岐軟条数15。マッシュとグルテンのミックスエサ使用。2尾ともに鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精巣の辺りを指で圧迫すると精液が滲み出てきた。

 

2023年3月下旬に福岡県内の筑後平野のクリークの新規スポット一箇所から半日で釣れた、オオキンブナのオスと考えられる2個体。上は全長約22センチ、背びれ分岐軟条数17。鰓蓋と胸びれ前縁に追星が見られたが、精巣の辺りを指で圧迫しても精液は滲み出てこなかった。下は全長約27.5センチ、背びれ分岐軟条数17。やはり鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精液の滲み出しを確認。エサは上記2個体と同じでやはり底釣り。二個体ともよく太っているが、毎週ヘラ師が落とすエサをたらふく食っているせいかもしれない。

 

2023年3月下旬に佐賀平野東部のクリークの新規スポットから釣れた、オオキンブナのオスと考えられる個体。全長約24.5センチ、背びれ分岐軟条数16。やはり鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精巣の辺りを指で圧迫すると精液が滲み出てきた。エサは上記3個体と同じでやはり底釣り。タモ入れした瞬間には絶対ギンブナだと思ったのだが。

 

上記の2023年3月下旬にオオキンブナが2尾釣れた佐賀県内のスポットから約3キロ北の、つながってはいるが別のクリークの新規スポットで2023年4月上旬に釣れた、2尾のオオキンブナのオスと考えられる個体。上は全長約23.5センチ、背びれ分岐軟条数15。鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精液の滲み出しを確認。下は全長約22センチ、背びれ分岐軟条数17。鰓蓋と胸びれ前縁に追星が見られたが、精液の滲み出しは確認されなかった。エサは上記5個体と同じでやはり底釣り。

 

2023年4月中旬に佐賀県内の筑後川水系のクリークの一角で釣れたオオキンブナのオスと考えられる個体、全長約24センチ、背びれ分岐軟条数18とその鰓蓋と胸びれ前縁上の追星。生殖巣部分を圧迫しても精液の滲み出はなかった。エサは上記7尾と同じでやはり底釣り。

 

2023年4月中旬にすぐ上の8尾目の個体が釣れたクリークのスポットの約1.5キロほど下流で釣れた、オオキンブナのオスと考えられる2個体。上は全長約32センチで自己最大、背びれ分岐軟条数は15。鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精液の滲み出しを確認。動画はこちら。下は全長約27センチ、背びれ分岐軟条数15。鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精液の滲み出しを確認。エサは上記8個体と同じでやはり底釣り。

 

2023年4月中旬にすぐ上の9、10尾目の個体が釣れたクリークのスポットの約1キロ下流で釣れた、オオキンブナのオスと考えられる2個体。上は全長約31センチ、背びれ分岐軟条数16。鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精液の滲み出しを確認。下は全長約23.5センチ、背びれ分岐軟条数17。鰓蓋と胸びれ前縁に追星があった他、精液の滲み出しを確認。エサは上記10個体と同じでやはり底釣り。

 

2024年4月上旬に、佐賀県内の筑後川水系のクリークで釣れたオオキンブナのオスと、その鰓蓋上の追星および精液の滲み出し。背びれ分岐軟条数は17本。