ゆうきの話 -102ページ目

月面の図

月面

月面の図


いつが月面を歩いてみたい、住んでみたい。

夢20

デパート屋上のゲームコーナー。
子供の頃によく行った記憶がある。
ラムネをクレーンで掴み取るゲーム、口を開けたカエルにボールを投げ込むゲーム、そしてテレビゲーム、色々ある。
ここ青い星のデパートの屋上にも見慣れたゲーム機がずらりと並べられている。
ここの屋上は広大で、野球場ほどの広さもあり、私が今まで見たことがあるゲームのほとんどが並んでいる。
その中で、子供たちがゲームをして遊んでいた。
それは、もぐらたたきに似ているが、叩くのはモグラではなくタコのような宇宙人だ。
古典的なタコのような火星人がこちらに向って飛んでくる。
それをハンマーで叩き落すという、もぐらたたきと野球が合わさったようなゲームだ。
そして、タコには電流が流れていて、触るとしびれる。
だからプレイヤーもー一生懸命叩き落そうとする。
しかし、こんなゲームを金を払ってまでしたいとは私は思わないし、地球では禁止されそうである。
それでも、このゲームは人気があるらしく、子供たちが並んで順番を待っている。
このゲームは一定以上の得点を上げると、景品が出るらしい。
景品を見てみると、紫のボールに手足が生えた様な人形である。
今この星ではそのキャラクターが流行っているそうである。
名前を「ボーロ」という。
ボーロは、さすらいの勇者で、行く先々で何事件を解決する。
銀河の様々な星で怪物を退治したり、伝説の秘宝を見つけたりする。
よくある冒険ものだが、そういうスタンダードな物はどこの星でも人気がある。
奇をてらった物は結局すぐに飽きられてしまう。
屋上のゲームも、私が子供の頃に遇ったゲームが今でも活躍しているのは、結局人間の本当の好みは個人ごとでそれほど変わり無いということだろうか。
もし何かを作るとしたら、新しさだけではなく、スタンダードなものもぜひ見て参考にして取り入れたほうがよい。
スタンダードなゲーム、クレーンでラムネを取るゲームをやってみる。
コインを入れてスターとボタンを押す。
すると単調な電子音で懐かしい音楽が流れ出す。
そして移動ボタン、掴み取るボタンを押す。
ラムネがいくつか取れた。
地球のラムネとよく似ているが、やはりと言うべきか、真っ青である。
一粒食べてみる。
青い味、青いものの味がする。
たとえば青りんご、そして海のような味もする。
ラムネのほかに、金平糖のような星型の小さな飴のようなものも取れた。
これの色は黄色で、味はレモンのような味がした。
しかしこれはただの飴ではないようで、なめている間は口の中から光が溢れる。
口を開けるとその飴から発せられた光がまるで宇宙船のハッチが開いたときのように口から外を照らし出す。
体に害が無いのだろうか、少し不安にも思ったが、子供の菓子だからまあ問題は無いだろう。
次にビデオゲームをやってみる。
ブロックがテレビ画面の上部から落ちてきて、それを横一列揃えると消える、そんなルールのゲームだ。
しかし私の知っているものとは少し違っていて、ブロックが立体的に見える。
やはり既に3次元の立体的な映像が簡単に実現されている。
2次元のゲームもこれはこれで楽しいものだが、3次元のもは始めて見るので目新しくて楽しいものだ。
そのゲームでしばらく遊んだが、結局少し進んだところでゲームオーバーになった。
これは景品などは出ないが、こういうゲームはたまに何だかやりたくなる。
きっとこのような何かを達成できるゲームと言うのは精神的な面でよい影響を及ぼすに違いない。
ゲームコーナーには、体感ゲームも数多くある。
その中でも目を引いたのは、宇宙船操縦ゲームである。
これは、UFOを操縦して、ある惑星を攻撃するというものだ。
実際にUFOそっくりの乗り物があり、その中で人工重力や3次元映像を駆使してゲームが進んでいく。
ゲームをやってみると、攻撃目標の惑星が、見覚えのある星だ。
まさに地球、見慣れた地球である。
そして近づいていくと、そこは私の住んでたまち、住んでいたアパートである。
その上空数百メートルに静止している。
その光景を見たとき、ふと思い出したことがあった。
それは、昔、当時住んでいたアパートの上空に無数の空飛ぶ円盤を目撃した事を。
時刻は真夜中、なぜか目が覚め外に出たい気分になったので外に出てみた。
家の近くの道路でふと空を見上げると、やけに大きな星が見える。
しかしそれは星ではなく、空飛ぶ円盤だったのだ。
円盤と言っても、円形のものだけではなく、三角形のものも何機か飛んでいた。
その時の光景がふと脳裏をよぎった。
もしかしたらあの時見たものは、今私が操縦しているこのUFOなのではないだろうか。
あの時の時空とこのUFOは繋がっていて、ゲームといいつつも実際には本物の星を使ってゲームにしているのではないか。
そう考えるとあの時のUFOがどうなったかを思い出せばこのゲームの結末も予想できるのだが、どうしてもあの時のUFOを見たその後が思い出せない。
しかし今の私が存在しているのだから、滅ばされてはいないはずだ。
案の定、攻撃を仕掛ける前に操作ミスでブラックホールに飛び込んでしまってゲームオーバーになってしまった。
ひょっとして私の操作ミスが地球を救ったのか、そんな事を考えると、ゲームオーバーも悪い気はしない。
ゲームの中には、どこか他の本物の宇宙と繋がっていて、実際にそこで冒険をしていることもあるかもしれない。
そう考えると、ゲームオーバーになりまくったあの難しいゲームの主人公は、一体何度輪廻転生させられたのだろうか、少し気の毒に思えた。
もしかしたら、私自身も誰かがやっているゲームの主人公だったりするのかもしれない。
それとも、これは誰かの空想、誰かの夢の中の出来事なのかもしれない。
人生は夢のようだと昔の人は言ったが、私もそんな気がしてならない。
そろそろゲームコーナーを後にして、銀河の旅を、宇宙の果てを目指そう。


夢19

青い星にはいろいろな物がある。
中でも目立っているのが、金属で出来た塔である。
高さは数千メートルはあり、それが一見ランダムにこの星の各所に建造されている。
中に入ることも出来、現在ではいろいろな用途に活用されている塔も多いという。
ここに現在の文明が栄える遙か以前から、この塔は存在しており、誰がなぜ建てたのか一切判っていない。
それでも、その驚異的な強度により数万年もの間、ヒビひとつ入っておらず、そこでこれを様々に活用しているわけである。
住宅のほか、様々な施設が塔の中に造られている。
町外れにひとつの塔が建っている。
その塔は、中にいろいろな店が入店しており、デパートのようになっている。
その中に入ってみることにする。
宇宙の各所からここにやってきた店が軒を連ねている。
その中のひとつに、氷屋があった。
氷と言ってもカキ氷などは置いておらず、解けない氷、永遠に冷たいままの氷の欠片が売っている。
それは銀河の中心のブラックホールに一番近い星で取れる不思議な氷で、これを使えば飲み物も永遠に冷やし続けられる。
この氷はそれほど低温ではないので、コップの水の中に入れても適度に冷やす程度で全体が凍ったりはしない。
解けない氷屋には、ほかに雪のようなアイスクリームも売っていた。
これは本物の雪のように柔らかいもので、透明のビンに入っていて、口に入れるまでは決して解けない。
しかし口に入れれば普通に解けて食べられる。
これは解けない氷を人工的に作ろうとして出来た、いわば失敗作の応用品である。
どこからかラッパの音が聞こえてくる。
その音のする方向に足を運ぶと、そこは楽器、特にラッパなどを主に売っている店があった。
店内には、宇宙の各所から取り寄せたラッパが並べられている。
地球製のトランペット、火星人が作ったセラミック製のラッパ、銀河の反対側の種族が使う吹き口が3つあるラッパ、物珍しい様々なラッパがあって、音もそれぞれ

特徴的だ。
火星人のラッパはフルートとハーモニカを合わせたような音がする。
吹き口が三つあるラッパは、店員が口が一つしかない人間なので正式な吹き方は出来ないそうだが、ホルンに似た音がする。
演奏データの入ったメモリーチップも売られていたが、再生する装置を持っていなかったので、今度プレイヤーを入手した時に買うことにした。
やはり音楽は人類の作り出した最高の芸術といわれるだけあって、いつ聞いても心が澄まされる。
船にも再生装置を取り付けて、音楽を聴きながら旅をすれば、より楽しい旅になるに違いない。
店の奥で、演奏会が始まった。
人間や火星人、そのほかにもいろいろな星の人が演奏に加わっている。
三つの吹き口があるラッパは吹く人がいないようだが、それ以外にも様々な種類のラッパがあり見ていて飽きない。
演奏が始まった。
どこかで聞いたような懐かしい感覚が蘇って来る。
確かに聞いた事は無いはずなのだが、それでも子供の頃に聞いた音楽のような感覚を感じる。
単純なメロディーだが、懐かしくてそして覚えられない、蜃気楼のような、懐かしい幻想のような音楽だ。
よく聴く音楽でも、なぜかメロディーの一部が思い出せない時がある。
そんな時でも何かのきっかけがあると突然思い出したりする。
この演奏には、そのきっかけのような力があるようだ。
普段は心の中に眠っていているメロディーが、演奏をきっかけに呼び覚まされる。
今気が付いたのだが、もしかしたら、ここの楽器、この演奏会は音が出ていないかも知れない、そんな気がしてならない。
音楽が頭の中で生まれている、そんな感じがする。
演奏会が終わっても、頭の中にメロディーが浮かんでは消えている。
これを楽譜に書き起こして演奏すれば今この頭の中の音楽を船の中でも聴き続けられる。
でも、楽譜の書き方も、今、頭で聞こえている音の音階もわからない。
それを自動的に書き出してくれる装置のような物があればよいのだが。
ひらめきは一瞬である。
ひらめいた事すらすぐに忘れてしまう。
ひらめきは匂いに似ている。
どんなよい花の香りも、その香りが無くなってしまうと、どんな匂いだったかわからなくなる、説明が出来ない。
ひらめきも説明が出来ない匂いに似ていて、一度消えてしまうと取り返しが付かない。
そうなる前に匂い成分の化学式を調べるように、そのひらめきを文章に、絵に、何かに書き残さなくてはならない。
さもなくば、ほとんどのひらめきは春の花の香りのように強い風にかき消されてしまう。
音をメモに取る才能には恵まれていないが、せめてひらめいた言葉をメモに取ろう。
ひらめいた影像を絵に描こう。
そんな事を考えていたらおなかが空いてきた。
ちょうどラッパ屋の隣がレストランになっている。
レストランの席に着く。
店内は映画に出てくるインチキな日本のような感じだ。
しかしメニューはおよそ日本とはかけ離れているものばかりで、青トカゲの干物とか亀の甲羅のせんべいとか、へんてこなものばかりだ。
その中でもまともそうなメニューを注文してみる。
こめを丸めたものと、発酵した大豆の汁を注文する。
おむすびと味噌汁であろうとは思ったが、テーブルに並べられた物は、かなり違ったものだった。
米を丸めた物は、おむすびと言うよりも、米の粉を丸めた団子のようなもので、大豆の汁は豆乳に納豆を混ぜたようなものだった。
それでも特に不味いものではなくて、普通に食べることが出来た。
満腹と言う感覚は無いが、それでも空腹と言う感覚も無くなった。
一つの感覚が目立つと、他の感覚が消えてしまう、そんな感覚がする。
食事の後、空腹を感じなくなったので、次第に周りの音が聞こえてくる。
このデパート、この塔の中には、なにやら笛のような音が聞こえ続けている。
レストランのひとの話によると、この塔の最上部に風を取り込む換気口があって、それが笛のような音を出すという。
そして不思議と心地よいメロディーを奏でるという。
早速それを見に最上部に行ってみる事にした。
屋上にはゲームコーナーもあると言う。
デパートの屋上のゲームコーナーは宇宙規模で広がりを見せているのかと思うと、今度近所のデパートの屋上に行った時に見方が少し変わるかもしれない。


夢18

そういえば、ここまで写真を撮ってこなかった。
デジタルカメラを持っているので、それを使っていろいろなところへ行ったときには写真を取ることにしている。
今回は今までそれをすっかり忘れていた。
カメラは確か上着のポケットに入っているはずである。
やはりあった。
今まで気がつかなかったことが不思議だが、これからはカメラでいろいろな場所の写真を撮りながら進もう。
デジタルカメラで撮影して、それをメールに添付して自分宛に送れば、いくらでも画像を保管できる。
問題はどうやってメールを送るかだが、そういえばさっきからノートパソコンを持っていたことを思い出した。
このノートパソコンはネットに接続されているはずなのでこれを使ってメールを送ろう。
そう、たしか銀河全域にネットワーク網が張り巡らされているはずだ。
しかしいかにネットワークが発達しても、やはり自分自身で言ってみるのが一番楽しい。
写真はあくまでも思い出のひと欠片であり、思い出そのものではない。
星星の写真を撮ろうと思ってはいたが、それほど感度の高いカメラは持っていなかったので、今までは昼間の画像ばかり撮っていた。
しかしこのたびでは、星そのものに近づいて、降り立つことすら出来る。
これならば私の持つ、あまり暗い所では役に立たない普通のカメラでも十分に撮影できる。
ためしにカメラで、今乗っている宇宙船の内部を撮影してみる。
宇宙船と言っても、外見は海に浮かぶ船そのものの形で、どうやって宇宙空間を旅できているのか皆目検討付かない。
でも、そんなことはどうでもいい、事実宇宙を旅できているということのみが重要なのだ。
昔から宇宙を旅するのが夢だった。
それがどういう経緯かもう忘れてしまったが、実現している。
このたびを始めてからと言うもの、過去が速やかに忘却される傾向にある。
これはきっと良い事だろう、過去などは旅には不要だ。
それこそ、過去はアルバムにでも仕舞っておけばよい。
写真を撮ることで、過去を仕舞いこんで未来を清々しく迎えることが出来るというものである。
写真にはそういう利点がある。
そういえば、もうどれくらい来たのだろうか。
確か、地球を出たのはだいぶ昔のような気がする。
そして今行こうとしているのは、青い星、地球に良く似てはいるが、もっと青い星。
その青い星の回りを回る巨大な人工衛星から飛び立ち、青い星へと降り立つ。
青い星、そこはまさに青かった。
海はもちろん、土や岩まで青い。
青い光を反射するガラスの粉のような土と、青い金属のような岩で出来ている。
植物も青い物が多いが、そのほかの色のものも同程度ある。
動物もおり、知的生命体が都市を築いているが、やはり建物は全体的に青い。
ここに住むひとは青が自然と好きになると言う。
もちろん青い害の色物建物もあるが、それでもどこと無く青みを帯びている。
なぜこんなに青いのか、それはここに住むひとにも分からない、生まれた時からすでに青かった、それしかわからない。
一言で言えば、この星はそういうものなのだ、としか言いようが無い。
宇宙が青い場所を作りたくなって、気紛れでこんなところを作ってしまったとしか思えない。
空気は透明だが、青い匂いがする気がする。
たぶん海と植物の作用だろうが、たとえるならば潮と森の香水が充満している感じだ。
ここまでは、匂いらしき匂いも感じられなかったが、突然ここに来て匂いが感じられるようになった。
匂いと言っても、複雑な匂いではなく、何かひとつの代表的な匂いだけがほのかに感じられる程度ではあるが。
音も少し聞こえる。
青い音、波がガラスの砂を洗う音、風が森の草を揺らす音、そして虫の声。
そんなざわざわとして音がどこからともなく体を取りまくように聞こえてきている。
海岸から、町へと入ってみる。
町には、どこの家にも無数の風車、七色の風車で飾られており、それが潮風に乗ってまわっていた。
ひとの姿はまばらで、昼間だというのに、青い街灯が付いている。
その街灯の周りに、黒い羽の蝶のような虫が何匹か舞っている。
腸に良く似ているが足が8本ある。
触角も長く、猫のひげのようである。
それが極ゆっくりと羽ばたいていて、青い光を楽しんでいるかのようだ。
その蝶からリンプンがハラハラと舞い落ちる。
それが空気中で青白い火の粉のようにぱっと光っては消えてゆく。
町の中では、何人かの人がひとつの方向に向って歩いている。
何かか祭りのようなものであるのだろうか。
私もその人たちの後についてゆく。
しばらく歩くと、そこは大きな美術館だった。
外見は、地球にあるパルテノン神殿が新品になったかのような感じだ。
もっとも、柱や壁は真っ青で、地球のように白くは無い。
そのなかに、この星だけではなく、銀河各地の美術品が飾られているという。
入り口には、人間の彫刻が飾られていた。
どこかで見たことがある、地球にある有名な彫刻にそっくりである。
レプリカか本物かはわからないが、地球の美術品も沢山あると言う。
地球人は銀河の中でも屈指の美術好きらしく、その発達ぶりは銀河全体から見ても素晴らしいという。
モナリザなども飾られていたが、これはきっとレプリカに違いない。
そう思って絵の横の解説文を読んでみると、これは本物であり、地球にあるもののほうがレプリカであると言う。
しかし、原子の配置ひとつまで完全に複製してあるので、事実上両方本物と言っても過言では無いという。
原子のレベルでレプリカを作れてしまったら、美術品の持つ「世に二つと無い」という特徴が失われてしまう気もするが、本当の芸術は複製などでは揺るがないと

いう。
重要なのは「実体」ではなく、その存在がもつ「意味」なかもしれない、そんな気がした。
それにしてもこの美術館の凄まじい事といったら、地球上にあるすべての美術館を一箇所に集めても追いつかないくらいの凄さだ。
ありとあらゆる文明の美術品が整然と並び尽くされている。
ここをすべてみて回るには1000年は掛かるといわれた。
だから、不老不死の種族が管理しており、全部の美術品を見尽くした地球人はいないという。
しかし、私なら1000年かけて見切ることが出来るだろうと美術館の館長に言われた。
この旅が終わったら、またここに来てすべてを見よう、そう心に誓って美術館を後にした。


夢17

この星を造った伝説の生命体は、外見は人間に良く似ていたという。
いくつかの絵のような物が壁に彫りこまれていて、それが人間に良く似ているという。
もしかしたら、人間の直接の先祖か、または人間をサル等を改造して、自分たちに似せて創り上げたのかもしれない。
しかし今はどこにも居ない。
遙か太古、人間を作り出した直後、何らかの理由でこの銀河を離れ、違う宇宙へと向ってしまったのだろうか、それとも何かの原因で滅んでしまったのか。
星が無傷で残っているので、戦争で滅んだのではないだろうとは思う。
そんな事を考えながら、星の中心文のエネルギーを発生させる炉のところまで行ってみる。
中心部、それはあった。
完全な球体、ほのかに青白く光るクリスタルのようなものだ。
そこから光の筋が伸びており、それを電気エネルギーに変換しているという。
どういう原理かは不明だが、一切エネルギーは不要で、仮説に過ぎないが、他の次元から、又は真空からエネルギーを取り出しているという。
全くどういう道理で動いているのか見当もつかない。
未来のテクノロジーは、時に魔法のように見える。
きっと昔のひとも今の私たちの用いる科学技術を目の当たりにしたら、まさに魔法だと驚くだろう。
その炉の横で、一人の老婆がお土産を売っていた。
永遠のクリスタル、と言う名前がついたこの炉のミニチュアである。
「ひとつ100円でいいよ、かって行かないかい。」
私は現金を持っていないので断ると、私の左のポケットを指差して、そこに入っているはずだという。
半信半疑にポケットを探ると、何と見に覚えの無い硬貨があった。
自分のポケットに入っているのだから自分のものだろう、それを使って支払い、ミニチュアを買った。
時々、不意にポケットに小銭が入っていて嬉しかったりすることがあるが、それは大抵前日に入れたまま忘れていたものだ。
しかし今回はいくら思い出そうとしても、ポケットに自分でお金を入れた記憶が無い。
それどころか、ある程度より前のことが何も思い出せない。
もしかしたら自分は記憶喪失にでもなってしまったのではなかろうか、そんな気がしてきた。
といっても、記憶喪失になった証拠も確証も無い、ただ何となく思い出せないような気がするだけで、自分に過去そのものが無いのかもしれない。
過去が無くても、今の所、とくに困ることも無く旅を続けられている。
今はそれだけでいいのではないだろうか、宇宙の果てを目指して旅をする者に過去など必要ない。
ミニチュアの炉を眺めつつ、今度はこの星を作った生命体の作った建造物をたずねて見る。
そこは観光地のようになっていて、いろいろな所からいろいろな人がやってくる。
人間、人間に良く似ている生命体、見たことも無いような存在、色々である。
周りを見回すと、人間以外の知的生命体も結構いる。
この星は宇宙の各地から人々が集まる場所らしい。
銀河の中でも交通の中心的な役割をしているのだろうか。
確かにこの星が回っている惑星、青い星は良く目立つ。
自分で光ってはいないはずなのだが、それでもどこからでも良く見える。
だからみんなここを基準点として銀河を旅するのではないだろうか。
惑星と言うのは自分では光らない、恒星の光を反射するだけだ。
ただの反射だけでなぜ全天でも最も目立つ青をしているのだろうか。
人間の心の中の、青い星が見たいという感情が、この星をより青く光らせているような気がする。
その心を持つ者にならば、どんなに遠くからでもこの星が容易に見つけ出すことが出来る、そんな気がする。
ここを作った生命体も、この星が回っている青い星に惹かれて、ここにこのような巨大な人工の衛星を造ったのに違いない。
そしていつの日か、またここに戻ってくるだろう。
そのとき、人間はまたひとつ進歩できるはずだ。
そんな体この太古の存在が創り上げた遺跡、そこはまさに光り輝いていた。
外見は完全な立方体で、出入り口の四角い穴以外には窓やでっぱりなどは無く、壁には傷ひとつ無い。
壁一面が青黒いガラス質の物体で出来ており、人が近づくとその周辺だけほのかに光る。
幾つもの部屋があるが、家具や内装の類は何も無い。
ここに始めて人間が来たときにはすでに何も無かったという。
それでも十分に見るに値する、素晴らしい遺跡だった。
その建物から出てきたところに、一匹の犬が座っていた。
犬が何かをくわえている。
よくみると、それは一本の骨だった。
何の骨かはわからないが、どうやら本物ではなく、プラスチックで出来たおもちゃのようだ。
犬はそれを噛みながら、地面を掘り出した。
地面はほとんどが金属か岩のようなもの出てきているが、犬の座っていた場所には花壇があり、そこは土で出来ていた。
それを一心不乱で掘ったかと思うと、やがて骨をそこに入れて埋め戻し始めた。
完全に埋めたところで犬は満足してどこかへ走って行ってしまった。
少し興味はあったが、まさか犬の埋めた骨を掘り出すわけにもいかないだろうとおもい、そこを離れようとしたが、その時、地面が動き出した。
その骨を埋めた場所から、なにやら瓶のような物が出てきた。
飲み物を入れる瓶の形そのももような、瓶の様な物が生えてきた。
瓶の口の部分から徐々に地上に出てきて、そして瓶のそこが見えたところで成長が止まった。
その瓶を手にとって見る。
別に地面に根を生やしているわけでも無く、ただそこに置かれているかのようだ。
瓶は透明で、中には透明の液体が一杯に入っている。
プラスチックの骨から生えた瓶、一体何が入っているのだろうか、それを一口、飲んでみることにした。
恐る恐る、口に入れる。
何の味もしない、それどころか、何の感覚もしない、まるで空気よりも軽い、そう真空を飲んでいるようだ。
この真空のような飲み物、飲み物と呼べるかどうかはいささか疑問だが、とにかく飲むような行動は取れるこれを飲み干してみる。
のどごしも何も無い、それを飲み干したが何も変化は無い。
そもそも私は何かを飲んだのだろうか。
反対に何かを飲まれた気さえする。
体の中の何かが、この真空の飲み物に飲まれてしまう、そんな奇妙なことが起こったような予感がした。
そういえば、何と無く頭が軽い、ついでに体も軽い、これは飲む事によって呑まれて軽くなる、そんな不思議な飲み物のようだ。
何でおもちゃの骨からそんな物が生えてきたのだろうか、あの犬はそれを知っていたのか、全く見当もつかない出来事だった。


夢16

月面基地行きのチケットを拾ったが、一体どこへ行けばよいのかは全くわからない。
確か実際には、月面に基地は無いはずだが、もしかしたら、知らないうちに完成したのだろうか。
私は付き、そして火星に行くのが夢である。
もし実現できるのなら、他のすべてを投げ打っても良い。
もし、月面基地があると言うのならば、ぜひとも行ってみたいものである。
青い星に向うついでに、その月面基地を探してみよう。
月と言っても、地球以外の惑星にある衛星も月であるともいえる。
ならばもしかしたら青い星のの周りを回る衛星に何か基地の様な物があるのかもしれない。
月面基地に早く行ってみたい、そんな気持ちが通じたのか、やがて青い星が見えてきた。
そしてその星の横にひとつの衛星、月によく似た星が回っている。
とりあえず、月面基地行きのチケットを持っているので、基地があったら入ってみようと思う。
月に近づくと、何やら人工的な建造物が立ち並んでいる。
どれも色は灰色、又は金属光沢で、ドーム系の物が多いが、普通の四角いビルもある。
それらが所々に集合して存在しており、近未来の地球の月を思わせる光景である。
その中にある、飛行場のようなものに着陸を試みる。
飛行場に無事に着陸する。
ここにはロケットの形をした宇宙船、スペースシャトルのような形のもの、空飛ぶ円盤のようなもの、策様々な宇宙船がとまっている。
宇宙の各所からここへとやって来ているようだ。
ただ、私のような海を走る船のような形の物はどこにも無い。
珍しそうに人々が私の船を横目に見ながら通り過ぎていく。
宇宙港のセンタービルに行ってみる。
受付に先ほど拾ったチケットについて聞いてみる。
すると、このチケットは、ある会議に出席する人に配布されたものだという。
つまり私もその会議に参加することが出来るという。
その会議は、宇宙への進出についての会議だそうだ。
その会議場はこの宇宙港からリニアモーターカーで10分ほどのところにある建物にあるという。
透明な筒の中にリニアモーターカーが設置されていて、それに乗って建物と建物の間を移動するようになっている。
宇宙港は全体的に特殊な場の制御によって、空気を保っているので、宇宙船の乗り降り時には地球上と同じように行えるが、月面のほとんどの場所には大気が

無い。
そこで普段は、完全に密閉された大気を持つ空間で活動することになる。
リニアモーターカーが、会議場に到着する。
駅は思ったよりも小さく、ごちゃごちゃしている。
話によると、ここがこの月のに出来た第1号の建物だということだ。
すでに作られてから100年ほど経っているという。
当時は十分な資材も無く、居住性などはあまり考慮されていなかったので、配管はむき出し、天井は低く、必要最小限の設備しか設置されていない。
しかし、いかにも「宇宙基地」といった感じで、個人的には好きである。
そんなごちゃごちゃした狭苦しい通路を通り抜けると、やがて非常に洗練された、最新の設備を持つ建物の中に入った。
ここが会議場である。
チケットを一枚拾っただけなので具体的に何を話すのかはわからないが、とにかく会議室に入ってみる。
そこは意外とこじんまりとしていた。
広さは大体学校の教室くらい、中央に円卓が設置されており、壁にはディスプレイがある。
そこに宇宙の映像やら、様々な数値が表示されている。
イスのひとつに座って会議が始まるのを待つ。
やがて10人ほどの人間が席に着き、主催者らしき人間が会議の始まりを告げた。
内容的には、今後どの方向に人類は進出するべきか、と言うことで、黒猫座の方向か、銀河の中心に向ってゆくか、いろいろな意見が出た。
私は宇宙の果てに向ってゆくべきだといったが、今のこの星の科学技術ではそこまでは無理だといわれた。
そんなこんなで会議は進み、最終的には、銀河の中心に向って進むことになった。
会議も無事に終了し、私もいつの間にかに一員として参加してしまった。
次にはこの月の中を少し歩いてみようと思った。
会議に参加していた人に話を聞くと、この月は内部に広大な空間があり、そこには地費用面よりもよほど大規模な都市が構築されているという。
その都市を見てみようと、地中へと伸びるエレベータに乗り込んで一路地下都市へ向かう。
透明の管を通るエレベータ。
まっすぐと下降を続け、ついに地表の岩石を越えて内部の空間に至った。
そこはまるで夜空を大きな黒い幕で包んだかのように、どこまでも続く広大な空間だった。
その下部、月の中心部にかけて、まるでジャングルシムのように建物と建物が通路の管を通して連結されている。
星の中心部分からはほのかな光が放たれているが、それはちょうど月明かり程度のもので、生活をするには少々暗い。
照明としてではなく、何かのエネルギー源のようだ。
何とこの星そのものが何ものかによって作られたそうだ。
しかしここに人間が訪れた時には、すでにその知的生命体はいなかったという。
しかしいくつかの施設は残っており、そのひとつが中心部のエネルギー炉だという。
早速そのエネルギー炉へ向ってみることにする。
こんな大きな星を作ることの出来る存在とは一体どんな生き物なのだろうか。
人類もいつの日か、惑星を丸ごとひとつ作り上げたりするようになるのだろうか。
それともこのまま滅んでしまうのか、私はぜひこの月のような星を作って広大な宇宙へと広がっていって欲しい、そう思った。


夢15

そろそろ船に戻ろう。
あの青い星を目指して進もう。
積乱雲の山から力いっぱいにジャンプをする。
雲の街を飛び越え、雲の切れ間から下に落ち、そして船を止めているジャングルの端にまで飛び行った。
着地の寸前で猫のように体をクルリと回転させると、衝撃無くうまく着地することが出来た。
船では相変わらず青い鳥が飛び回って遊んでいる。
この青い鳥が鳴くと、流れ星と共になにか面白いものが船に転がり込んでくる。
次はいつ鳴くのか、待ち遠しいながら船を青い星に向ける。
ジャングルを離れ、また宇宙へと船出をする。
宇宙は海に似ている。
蛍烏賊のような星がひかり、いろいろな動物が泳いでいる。
そういえば、一体幾つの星座があるのだろうか、数えてみることにした。
黒猫座を始め、ありとあらゆる動植物、又はあらゆる物質が星座として見て取れる。
いくら探しても、きりが無い。
ひょっとして、万物は星座を手本に作り出されたのではなかろうか、そんな気さえしてくる。
そういえば、物は原子から出来ているというが、原子とは紛れも無く宇宙に浮かぶ小さな星である。
だから、星座で見える物は全部原子である物体として存在する、ある意味あたりまえのことかもしれない。
天空には万物がある、神がいるのならば、それは宇宙そのものだ。
宇宙は広い、たぶん広い。
どれくらい広いかなんて、見たことが無いから、本当はどれくらい広いかなんて誰にもわからない。
でも、広さが分からないのだから、本当は結構狭いのかもしれないが、それもこれもすべて行ってみればわかる。
この船で宇宙の果てにまで行ってみよう。
宇宙の広さが分かれば、自分が何者なのかもきっとわかるのではないか、そんな気がする。

何日もの間、船を進める。
すると、船が突然、何かにぶつかった。
何にぶつかったのか見てみると、そこには大きな丸い岩石のような物が転がっていた。
きっとこれは彗星か隕石のようなものだろう。
船に特にダメージはないので、この機会にその石の塊に降り立ってみることにする。
石には人間が普通に立って歩けるほどの重力が備わっていて、空気もある。
表面は岩だけで、何の生物も見えない。
完全に自然の石のようだ。
ためしにその石をつるはしで削ってみる。
するとつるはしが何か硬いものに当たった。
岩石ではない、何か金属のような手がしびれる感覚を感じた。
砕けた岩石を払うと、中は黄金色に輝いていた。
きっと金に違いない。
金は、重い星と星との衝突で生まれると聞いたことがあるが、これはきっとその衝突で出来たとびきり大きな金塊に違いない。
地球にもあれだけ大量の金があるのだから、宇宙のどこかに全体が金で出来た星があっても不思議は無い。
金と言っても、いろいろな使い道がある。
装飾品をはじめ、コンピュータのチップにも使われているという。
しかし今は使い道が無いし、これから宇宙の果てに行こうと言うのだから、そんな時に金塊を船に積んでも何の意味も無い。
記念につるはしでひとかけらだけ削り取って、後はそのままにしてその塊を後にした。
考えてみれば、必要な時にそれが無ければ、それに価値は無い。
たとえ金塊でも、何の価値が無いこともあるのだ。
反対に、どんな無価値そうなものでも、時と場合によっては極めて有用なものとなりうる。
青い鳥の鳴き声がつれてくる奇天烈な流星も、時と場合によっては、何かの役に立つこともあるだろう。
どんなに価値の無いものでも、時と場所を適切に設定してやれば、とても役に立つ。
この削り取った一握りの金塊も、書道をする時の文鎮には使えそうだ。
漬物を漬ける時の漬物石にもなるし、加工すればアクセサリーとかにもなる。
腐食しないので長持ちするので、良い旅の記念になると言うものだ。
次は、一体何が見つかるのか、楽しみにしつつ船を進める。
またしばらく行くと、前方に揺らめく光の帯が見えてきた。
淡い黄色の帯が、オーロラのような感じで揺らめいている。
このような現象があると言うのは聞いたことが無いが、それはあまりにも大きくて回避は出来そうも無い。
このまま突き進むことにする。
光の帯に突入すると、帯に触れたところから、きらきらと細かい光のチリが舞い上がる。
その光のちりがあたりを舞って渦を巻く。
その光のチリが徐々に集まって、大きな光の塊となる。
それが見る見る蝶へと変化する。
金色の蝶、全く光そのもので出来た金色の蝶があたりに無数に現れてひらひらと飛び回っている。
光のチリが一段落すると、蝶も徐々にどこかへと飛んで行ってしまった。
この光の帯の中は淡い光で揺らめいて満たされている。
その光に触れるたびに、頭の中に何かがひらめく。
これはきっと人間にインスピレーションを与えるものに違いない。
この光の帯が宇宙を漂って、人間にぶつかる時、そこに進歩を促すひらめきが生まれるに違いない。
しかし、このひらめきは一瞬で、少し経つとひらめいた事すら忘れてしまう。
ひらめきを逃さないためには、普段からひらめく瞬間を意識して、ひらめきをうまく捕獲しなくてはならない。
たぶんこのひらめきの帯に触れるということは、夢を見ることに近い。
夢を見ても、大抵の人はすぐに忘れてしまう。
これを忘れなければ、その人は二つの世界を生きることが出来る。
その二つの世界をひとつの意識が自由に行き来できれば、人間の可能性は大幅に拡張される。
夢、そういえばこれは夢ではないのか、そんな気がしてきた。
前もそんな気がしたが、もしかしたらこれは夢なのかもしれない。
しかし今は目の前のこの光の光景に夢中で、それ以上深く考えようという気にはなれなかった。
夢か現実化などと言うのは、意識しだいである。
夢にとって現実は夢であり、現実にとって夢は夢である。
どちらから見るかによって、夢と現実は入れ替わる。
だからどっちでもいいのだ。
そんな事を考えているうちに、光の帯を通過した。
すると青い鳥がひと鳴き、たちまち流星が甲板に落ち、そこには一枚のチケットが転がっていた。
そのチケットにはこう書いてある。
「月面基地行き」

新作考え中

今、新作の物語を考えている。

これを何とか売って生活費をひねり出せはしないかと考えている。

具体的な骨格のような物は徐々に出来つつあるので、随時このブログなり私のサイトで発表したい。


今考えているのは、人間の不安定さ、そして一期一会、そんな宇宙の渦のようなものを取り込んだものにしたい。


きっと、多くの人が人生の虚しさや理屈を超えた動きに対して、何らかの心の渦波を抱いているはずである。

そこを描ければ、と考えている。


乞うご期待、か?

目的

いくら考えても、それほど人生に重要な目的があるとは思われない。
だからと言って、でたらめに生きてそのせいで辛い思いをするのは脳が嫌う。
しかし、たぶん喜怒哀楽という感情も脳の中の化学反応のひとつでしかなく、ただの幻想、夢と何も変わらない。
夢をよく見るが、朝起きると多くの部分が忘却されてしまう。
夢の中で起きたことは目が覚めると何も残らない。
喜怒哀楽もすべて脳の中で起きる化学反応に過ぎず、一瞬後には跡形もなくなってしまう。
化学反応によって脳細胞が多少変化したりするかもしれないが、その変化も結局は大して意味が無い。
脳が嫌う、と言う理由だけで生き方を自由に変化できる人間になるべきである。
脳に苦を強いる生き方に意味は無い。
だったら、脳に苦を与えない生き方をするべきだ。
一言で言えば、人生は虚しい。
結局何も無いのだから、嫌なことをして生きる事に何の意味も無い。
やりたいことをやってあっという間に息絶えても、それが一体何の問題になるだろうか。
長生きが無条件で最良であると言う幻想は捨て去るべきだ。
最良の環境で長生きをするのが最良なのであり、何でもかんでも長生きすれでそれで良い訳ではない。
結果的に最良の環境下に生活できている人は幸いであり長生きすることは幸せである。
結果的に脳に苦痛ばかりを強いる環境下に生きる人は不幸であり長生きを強制する権利は誰にも無いし強制する意味も無い。
宇宙は気まぐれであり、ほとんどの事がランダムで発生しており、蝶の羽ばたきで竜巻が起きる。
本人の行為とは関係なく物事は動き、結果的に個人間にあらゆる差異が生まれる。
これは、自然の本質であり、努力云々でどうにかなるものばかりではない。
ナンバーワンは一人だけであり、平均以上の人がいれば、平均以下の人が絶対にいる。
全員が幸福に生きることはほとんど不可能である。
なぜなら、人を不幸にすることによって幸福になろうとする人間が一人でもいるからである。
言い代えるならば、隣の人よりも良い暮らしがしたいと考える限り、皆が幸せになることは無い。
自分が幸せになりたいという努力そのものが他人との差を生み、その差が人を不幸にする。
自分さえ良ければよい、と言う考え方をもって生きない限り、幸せにはなれない。
たとえばお金は、沢山持っているほうがいろいろな物が手に入るし、自由度が高まるので、多く持つことは悪いことではない。
しかし、全員が沢山持ってしまうと、金の価値が下がるので、結局みんなが貧乏になってしまう。
一部の人が沢山、たとえば自分だけが沢山持つと、自分は何でも手に入るようになるが、物は無限には無いので結果的にその物を手に入れることが出来ない人

が生まれる。
地球上に10の食べ物があって、金持ちの自分だけで8を買い占めたら、他のすべての人間で残りの2を分けなくてはならない。
他にもありとあらゆる物がこの法則で、不均等に分配される。
これはお金や物質の例だが、そのほかのあらゆることも皆同じで、有限の物、形ある物はすべて偏ってしまう。
モノによって幸せを得たいと考えている限り、必ず不幸になる可能性が存在し、幸不幸を決める最終的な決定打はランダムでカオティックな「運」である。
運は人間には左右できない。
変なブレスレットとかで幸運になれると信じるのは勝手だが、ブレスレットと言う物質に頼っているうちは結局は「運」が支配する。
物質はカオスの支配する宇宙と一体化しているので、本質的に人間の努力のみでは制御しきれない。


夢14

雲の街の朝は、鶏の鳴き声で始まる。
雲の街では、鶏を飼うのが流行しているらしく、あちこちの家から鶏の鳴き声が聞こえる。
朝日が昇ってきても、まだ星が多く見え続けている。
やはりそれだけ星に近いということだろうか。
蛍のように町を漂っていた空の星は、いつの間にかに姿を消していた。
昼間はくもの隙間に隠れているのだという。
積乱雲の山に登るといったら、町の人が雲の畑で取れたパンの実で作った弁当をくれた。
パンの実と言うのは、外見はハロウィンの時によく見るかぼちゃのような感じで、中身がパンそっくりなものである。
その身を二つに切って、中にジャムをはさめばジャムサンドパン風味の出来上がりである。
正確にはパンではないのだが、ほとんどパンそのものの味である。
ほんの少し、リンゴのような風味がするが、ジャムを塗ってしまえば、それも判らなくなる。
雲の畑は、土の畑と同じくらいに植物がよく育ち、地上から飛んできた植物の種によって森も出来ている。
ただ、これから行く積乱雲の山は、それほど長時間同じ形を保っていないので、植物が根付くことはないという。
人工的に作り出した雲だからこそ、植物も生えるのだという。
弁当をもっと山への道を行く。
道を歩いていると、向こうから、一人の若者が踊りながら歩いてきた。
見たことのない踊りだが、どこからともなくその踊りに合わせて音楽が聞こえてくる。
音の聞こえる方向に探して目を向けると、そこには小さな虫がいた。
外見は鈴虫のような感じだが、CDプレーヤーのように自在に音楽を奏でている。
「音虫」と言うそうだ。
音虫を引き連れて踊りながら歩いてきた若者が、私の前まで来るとこういった。
「西に行けば、きっとよいことがあるはずさ」
何か西によい物があると言うのだろうか、半信半疑ではあったが、うそをつくような感じでもなかったので、聞いて西に行くことにする。
もっとも、コンパスも持っていないので、どちらが西かなどはよくわからないが、太陽が東から昇ると仮定すると、西もわかる。
ただし、ここの太陽が本当に東から昇るかどうかはわからない。
でも、ほかに調べようもないので、とりあえず西であろう太陽の昇ってきた方角の反対のほうへと言ってみる。
ここら辺一体は山に囲まれていて、そちらにも山はあるので山登りには支障ない。
西と思われる方向の山を目指す。
途中、ちらほらと木々が生えているほかは、建物も無く、わずかに凹凸のある地面のほかは特に何もない殺風景な道が続く。
昼時、いよいよ大きな積乱雲の山のふもとにまでやってきた。
そういえば、積乱雲といえば雷、もしかしたら雷が鳴るかもしれない、そんなことを考えていると、やはり雷が発生した。
と言っても、ほとんど音しか聞こえず、それも、雲に吸収されて、遠くでごろごろと鳴っている感じに聞こえる程度である。
時々、雲の中のほうがほの明るく光るが、しびれたりすることはない。
山の中腹程度に、巨大な金属の棒が突き刺さっている。
この雷の電気を取り出すための棒で、これで町全体で使う電気を完全に供給できるという。
棒の先端から時折火花が散る。
その火花が散ったところをよく見ると、何やら丸い光の玉が浮かんでいる。
どうやら空の星のようだ。
空の星は、天の星と違って、昼間は雲の中に隠れていて、その中で起きる雷を食べて光るエネルギーを補充している。
この、電気を集める装置から出てくる火花は格好の餌になるらしい。
家でこの星を照明などに使いたい時は、昼間の間に電気を食べさせるといつまでも光り続けるという。
何かの役に立つかもしれないので、空の星を一粒ポケットに詰め込むと、積乱雲の山を更に上へと目指して進むことにした。
しばらく、山を登り続けると、1枚の立て看板があった。
「雷山5合目」
どうやらこの山は雷山と言うらしい。
もしかしたら、昔の人が書いた、鬼のような雷様が住んでいるのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、雲の窪みに小屋が見えてきた。
「雷」
ただ一言そう書いた表札が掲げられている。
窓から中をそっと覗いてみると、絵に描いたような雷様が寝ていた。
真っ赤な肌にもじゃもじゃの髪の毛、部屋の隅には太鼓が幾つも繋がった雷発生装置とも言うべきものもある。
やっぱり雷はこの人が起こしていたのか、そんな事を感じながら覗いていたが、全く起きる気配もないので、その場をそっと後にしてふたたび頂上を目指す。
雲と言うものは、ふかふかとしてて、非常に軽快に歩を進めることが出来る。
足腰への負担もなく、山登り何の苦も無い。
苦労したい人には向いていないが、私のようなちょっとした散歩気分の人間にとってはもってこいだ。
山を登り始めてから数時間、いよいよ頂上が見えてきた。
頂上には一本の旗が立っていて、何の模様も書いていない、真っ青な旗である。
偶然そこにいた登山客に話を聞くと、この青い旗は、天と地との境目を知らせるための旗だという。
つまりこの雲から上が宇宙であり、下が大地、星である。
その境界線、積乱雲の山の頂上にたどり着いた私は、しばしその絶景に見とれた。
雲の街はもちろん、雲の下の地上の向こうの海の水平線まで一望に見渡せる。
水平線は宇宙と接していて、その向こうには昼間でも星がよく見える。
自分がまさに天と地の狭間に立っているのだと実感した。
天と地は思ったよりハッキリと分かれていた。