夢17 | ゆうきの話

夢17

この星を造った伝説の生命体は、外見は人間に良く似ていたという。
いくつかの絵のような物が壁に彫りこまれていて、それが人間に良く似ているという。
もしかしたら、人間の直接の先祖か、または人間をサル等を改造して、自分たちに似せて創り上げたのかもしれない。
しかし今はどこにも居ない。
遙か太古、人間を作り出した直後、何らかの理由でこの銀河を離れ、違う宇宙へと向ってしまったのだろうか、それとも何かの原因で滅んでしまったのか。
星が無傷で残っているので、戦争で滅んだのではないだろうとは思う。
そんな事を考えながら、星の中心文のエネルギーを発生させる炉のところまで行ってみる。
中心部、それはあった。
完全な球体、ほのかに青白く光るクリスタルのようなものだ。
そこから光の筋が伸びており、それを電気エネルギーに変換しているという。
どういう原理かは不明だが、一切エネルギーは不要で、仮説に過ぎないが、他の次元から、又は真空からエネルギーを取り出しているという。
全くどういう道理で動いているのか見当もつかない。
未来のテクノロジーは、時に魔法のように見える。
きっと昔のひとも今の私たちの用いる科学技術を目の当たりにしたら、まさに魔法だと驚くだろう。
その炉の横で、一人の老婆がお土産を売っていた。
永遠のクリスタル、と言う名前がついたこの炉のミニチュアである。
「ひとつ100円でいいよ、かって行かないかい。」
私は現金を持っていないので断ると、私の左のポケットを指差して、そこに入っているはずだという。
半信半疑にポケットを探ると、何と見に覚えの無い硬貨があった。
自分のポケットに入っているのだから自分のものだろう、それを使って支払い、ミニチュアを買った。
時々、不意にポケットに小銭が入っていて嬉しかったりすることがあるが、それは大抵前日に入れたまま忘れていたものだ。
しかし今回はいくら思い出そうとしても、ポケットに自分でお金を入れた記憶が無い。
それどころか、ある程度より前のことが何も思い出せない。
もしかしたら自分は記憶喪失にでもなってしまったのではなかろうか、そんな気がしてきた。
といっても、記憶喪失になった証拠も確証も無い、ただ何となく思い出せないような気がするだけで、自分に過去そのものが無いのかもしれない。
過去が無くても、今の所、とくに困ることも無く旅を続けられている。
今はそれだけでいいのではないだろうか、宇宙の果てを目指して旅をする者に過去など必要ない。
ミニチュアの炉を眺めつつ、今度はこの星を作った生命体の作った建造物をたずねて見る。
そこは観光地のようになっていて、いろいろな所からいろいろな人がやってくる。
人間、人間に良く似ている生命体、見たことも無いような存在、色々である。
周りを見回すと、人間以外の知的生命体も結構いる。
この星は宇宙の各地から人々が集まる場所らしい。
銀河の中でも交通の中心的な役割をしているのだろうか。
確かにこの星が回っている惑星、青い星は良く目立つ。
自分で光ってはいないはずなのだが、それでもどこからでも良く見える。
だからみんなここを基準点として銀河を旅するのではないだろうか。
惑星と言うのは自分では光らない、恒星の光を反射するだけだ。
ただの反射だけでなぜ全天でも最も目立つ青をしているのだろうか。
人間の心の中の、青い星が見たいという感情が、この星をより青く光らせているような気がする。
その心を持つ者にならば、どんなに遠くからでもこの星が容易に見つけ出すことが出来る、そんな気がする。
ここを作った生命体も、この星が回っている青い星に惹かれて、ここにこのような巨大な人工の衛星を造ったのに違いない。
そしていつの日か、またここに戻ってくるだろう。
そのとき、人間はまたひとつ進歩できるはずだ。
そんな体この太古の存在が創り上げた遺跡、そこはまさに光り輝いていた。
外見は完全な立方体で、出入り口の四角い穴以外には窓やでっぱりなどは無く、壁には傷ひとつ無い。
壁一面が青黒いガラス質の物体で出来ており、人が近づくとその周辺だけほのかに光る。
幾つもの部屋があるが、家具や内装の類は何も無い。
ここに始めて人間が来たときにはすでに何も無かったという。
それでも十分に見るに値する、素晴らしい遺跡だった。
その建物から出てきたところに、一匹の犬が座っていた。
犬が何かをくわえている。
よくみると、それは一本の骨だった。
何の骨かはわからないが、どうやら本物ではなく、プラスチックで出来たおもちゃのようだ。
犬はそれを噛みながら、地面を掘り出した。
地面はほとんどが金属か岩のようなもの出てきているが、犬の座っていた場所には花壇があり、そこは土で出来ていた。
それを一心不乱で掘ったかと思うと、やがて骨をそこに入れて埋め戻し始めた。
完全に埋めたところで犬は満足してどこかへ走って行ってしまった。
少し興味はあったが、まさか犬の埋めた骨を掘り出すわけにもいかないだろうとおもい、そこを離れようとしたが、その時、地面が動き出した。
その骨を埋めた場所から、なにやら瓶のような物が出てきた。
飲み物を入れる瓶の形そのももような、瓶の様な物が生えてきた。
瓶の口の部分から徐々に地上に出てきて、そして瓶のそこが見えたところで成長が止まった。
その瓶を手にとって見る。
別に地面に根を生やしているわけでも無く、ただそこに置かれているかのようだ。
瓶は透明で、中には透明の液体が一杯に入っている。
プラスチックの骨から生えた瓶、一体何が入っているのだろうか、それを一口、飲んでみることにした。
恐る恐る、口に入れる。
何の味もしない、それどころか、何の感覚もしない、まるで空気よりも軽い、そう真空を飲んでいるようだ。
この真空のような飲み物、飲み物と呼べるかどうかはいささか疑問だが、とにかく飲むような行動は取れるこれを飲み干してみる。
のどごしも何も無い、それを飲み干したが何も変化は無い。
そもそも私は何かを飲んだのだろうか。
反対に何かを飲まれた気さえする。
体の中の何かが、この真空の飲み物に飲まれてしまう、そんな奇妙なことが起こったような予感がした。
そういえば、何と無く頭が軽い、ついでに体も軽い、これは飲む事によって呑まれて軽くなる、そんな不思議な飲み物のようだ。
何でおもちゃの骨からそんな物が生えてきたのだろうか、あの犬はそれを知っていたのか、全く見当もつかない出来事だった。