目処が立たない

きりのない目標に

とりあえず区切りをつけ

外に出る


一日の終わりに

降る雨が

暗闇に沈んだ

帰り道を濡らす


明日がもう

どうでもよくなる

今日が激しく

疼いている


降りしきる雨に打たれて

燃え上がる炎

凍えてるけど

温まりたくない


どこにも立ち寄れないくらい

服を濡らして

僕は薄れゆく

今日を歩く

限りない世界から

僕がつかんだ今日

その時につかみ損ねたものの

感触が残っている


明くる日

覚えていた感触と同じものを

つかんだはずなのに

取り出したものはなんか違う


よく思い出してみて

これじゃなかったかな

違和感を感じながら

明日に持ち運ぶ

人は巡る

一度きりの人生で

数十回目ばかりの四季を

多いようで少ないような


暮らしの中に横たわっている

幾つもの終わり

僕も例外じゃない


季節がこの地を巡るように

この命も何かを巡っているのだろうか

誰かの前で

咲いたり枯れたりして


春は芽吹き

夏は盛り

秋は暮れ

冬は待つ

死は突然ではない

君の言葉の隅々から

君があふれてくる

僕のところまで


弾んだ心から

僕があふれてくる

君のところまで


互いのあふれたものが

触れ合って

少しぐらい離れてても平気でいられる


ぴっと電話を切っても

まだ君があふれてくる

数分間は

ささいな秘密も漏れてく場所だ

噂話が権威をもつ場所だ


一歩踏み出す勇気はない

逃げ出す気力も

繰り返す暮らしの中で失せてきた


知り合いは大勢いるのに

知られたくないことばかりが増えていく


納得される職に就き

映りのいい自分に仕上げて

違う自分を見て見ぬふりして


ひずんだ想いは

ぶつける宛てのない

苛立ちを募らせた


勢いよく窓を開いて

力の限り叫びたくなったが

隣に聞こえると恥ずかしいのでやめた

僕がこの世界に

足せるものがあるだろうか

束の間でも晩御飯で

満たせてしまう心なのに


太陽は完成されている

空は完成されている

海は完成されている

その海の底にたたずむ

ヒトデまで完成されている

僕の手が入り込める余地もない


歩き慣れたこの街は完璧だ

そこに浮かび舞う埃も完璧だ

おしゃれなファッションの

色彩が完成されているなら

ださいファッションも

その不調和さで完成されている


殿様の城が完成する

サラリーマンのマイホームが完成する

やがて崩れてしまっても

廃墟は廃墟として

完成されているように見える


命は完璧だ

その生き方は一つしかないから

完成品だ

途絶えてしまった後の

死は死で完璧だ


この世界はどこか

不完全なのに

完成されている

昨日は昨日で

今日は今日で正解だ

暮れた果ての空の下を

抜けて階段を上り

やたら静かなアパートに

鍵音が響き渡る


誰もいない部屋に帰って

誰もいないことに気づけば

向き合いたくない自分と

向き合うはめになる


行き詰った今日に

もしもが溢れてくる

捨てきれない

でもどうすりゃいいのか分からない

もしもを持て余す

突然姿を見せた季節に

衣が追いつかない

気持ちが追いつかない


肌に潜り込む冷気

全身の血液にまで

冬が行き渡る


寒さを真に受けて

どこか頼りなげな

心がいる


張り詰めた体から

こぼれる吐息

今はまだ白くない

「さよなら」に

「まだ居たい」を

込めてしまった


その音が響いて

何度も

振り返りたくなる


きりがないから

もう一度だけ

「さよなら」を言う

「また逢いたい」を

込めて

時は事実を

嘘っぽいものにしていく

幸せなことほど


もうこんないいこと

二度と起こらないんじゃないか

そんなふうに思わせて


心の糸を引っ張るが

過去はたぐり寄せられない

淡く消えかかった思い出の

以前にも増して美しいこと