授業レポートSpring 2018(2年目春学期)
Class of 2018のShinです。帰国まであと一か月となりました。私にとって今回が最後の授業レポートです。6月8日に開催されたAward receptionと6月18日のCommencementをもって、この素晴らしいアメリカでのMBA生活も終わりとなります。アメリカに暮らしてみて、日本にいる間に無意識にとらわれていたバイアスに初めて気づくなど、このMBA留学は人生観が大きく変わる経験となりました。日本社会においてMBA留学の是非については賛否あるものの、アメリカでの留学生活はMBAという課程で学ぶもの以上に得るものが大きかったと感じています。1、[248] Corporate Valuation (Elective) Prof. Lu Zhengファイナンス分野の企業評価についてのコースで、先生は中国人の女性教授でした。教科書はコアのファイナンスでも使用したBrealey, Myers and AllenのPrinciples of Corporate Financeと、Koller, Goedhart and WesselsのValuation: Measuring and Managing the Value of Companies、ArzacのValuation for Mergers, Buyouts, and Restructuringを使用します。最初はファイナンスやInvestmentsでも習ったCAPMを復習し、その後Relative ValuationとDiscount Cash Flowによる企業評価の方法を学んでいきます。先生の説明の仕方は悪くないものの私の理解が追い付かず、きちんと理解するのに苦労しました。先生の方針でケース分析のスライドが配布されなかったり、講義ノートの文字が小さかったことなど、ささいなことで理解が抑制されたとも感じています。このコースでは毎週のようにグループでのケース分析の課題が出されましたが、専門知識の高いチームメイトについていくのがやっとで、グループへの貢献は限られたものになりました。それでも、授業そのものよりも多くのことを教えてくれたチームメイトのみんなに感謝です。プロジェクトとして、Relative ValuationとDiscount Cash Flowを使って好きな企業を評価するという課題が出され、私は自分の所属企業の分析を行いました。最近はM&Aの機会も多いので、将来コーポレートの戦略部門に配置されたときに企業評価の知識を活用したいです。2、[BANA 290] Advanced Data Analytics for Natural Language Processing (Elective) Prof. Sameer Singh and Prof. Conal SathiMerageに新しく設置されたMSBA (Master of Science in Business Analytics)のコースです。先生はUCIのコンピュータ科学部(CS)の教授であるSameer(インド人)と、スタンフォードを出て自然言語処理で有名なベイエリアの企業で働くエンジニアのConalの二人です。Conalからは特別に、実際に企業の現場で取り組んでいる課題についても教えてもらうこともできました。教科書はJurafsky and MartinのSpeech and Language Processingを使用しました。このコースではPythonを使った自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)と機械学習について学びます。Advanced Data Analyticsというタイトルになっているため構えていたものの、前のQuarterにtf-idf法による自然言語処理を既に学んでいたため、簡単な内容でした。実際に、tf-idf法、N-gram、Classification、Ensemble learningなど、教えている内容は基礎的なものと言えます。コースの後半ではUnsupervised learning(教師なし学習)として、Clustering、SVDを適用したLatent Semantics Analysis (LSA)(潜在意味解析)、Word embedding(分散表現、単語埋め込み)、Semi-supervised learning(半教師あり学習)など、より実践的なことに触れます。このコースでは課題として、感情分析(Sentiment Analysis)の結構ヘビーな問題が3つ出されました。できるだけ精度の高い機械学習モデルを作り、Kaggleにアップして精度の高さを競うコンペティションも開かれましたが、私が一位、一緒に受講していた親友である中国人のMBA生(Eくん)が二位となり、MSBAのコースでMBA生の存在感(?)を示しました。グループプロジェクトではEくんとチームを組み、Amazonのカスタマーレビューの感情分析に取り組みました。プロジェクトではtf-idf法、Latent Dirichlet Allocation (LDA)、Clustering、Word2vecを使ったWord embedding、Semi-supervised learningに加え、深層学習(Deep Learning)である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)の亜種の長短期記憶(LSTM)を使うことができました。このコースはMBAにいながらにしてCSの講義が受けられた、大変ありがたい機会となりました。所属企業に復帰後、自然言語処理と機械学習のスキルを活かしていきたいです。3、[BANA 295] Big Data Management Systems (Elective) Prof.Vagelis Hristidis and Prof. Shantanu Sharmaビッグデータ管理についてのMSBAのコースです。先生はお隣、UC RiversideのCSの教授であるギリシャ人のVagelisと、UCIのCSの研究員(ポスドク)であるインド人のShantanuです。他人のことを言えるレベルでは全くないですが、Vagelisのギリシャなまりに慣れなかったり、Shantanuのインドなまりもインドの中でもさらに特殊で、何を話しているのかほとんど分からないレベルでした。さらにビッグデータ管理の世界は全くの初めてで新たな概念が次々と出てくるため、理解がかなり困難でした。PythonとJava, SQLくらいは使えて当然という、要求の高いコースでもありました。それでもビッグデータ管理の思想とそのツールは非常に興味深く、理解に苦しんだのにも関わらず、今期で最もおもしろいコースでした。コースでは最初に関係データベース管理システム(RDBMS)とSQLを復習した後に、分散ファイルシステムであるHadoop周辺と、大規模、分散データベースに適したNoSQL、最後に情報管理セキュリティについて学びます。Hadoop周辺ではHadoop DFS, Hadoop MapReduce, YARN, Pig, Hive, Sparkといった一連の分散ファイルシステムのプラットフォームについて学びます。NoSQLとしては主にHBase, Cassandraを学びます。このうちSparkとCassandraは実際に手を動かして使用し、ビッグデータ処理を行いました。SparkはもともとはScalaという関数型言語で書くようになっているものの、PySparkというPythonで書けるオプションがあり、さらにSparkSQLを使ってSQLライクに書くことができ、使用感と可読性に優れています。CassandraもCQL (Cassandra Query Language)というSQLとは異なる言語を使うものの、ほぼSQLライクに書くことができ、みんなSQLが好きなんだなーと感じました。これらのHadoop/ Spark/ HBase/ Cassandraといったビッグデータ管理のスキルは、統計・機械学習とともにJob Marketにおける重要なスキル要件となっており、職を探している多くのMSBA生にとっては必須なスキルであると言えます。特に日本においては人材が少なく、Hadoop/ Sparkのインフラ技術は一社(正確には一グループに属する二社)に独占されている状況です。Cassandraについては日本語はおろか英語の情報やサポートも限られていて、トラブルがあったときには苦労しました。世界的にはこれらプラットフォームのコミュニティ活動は活発で、熱心なユーザによるユーザ会が開かれていたりして、もはや趣味に近いです。グループプロジェクトではまたも中国人MBA生のEくんとチームを組み、PySparkを使って駐車違反のビッグデータ処理、統計処理を行いました。学校ライセンスでAmazonのクラウドサービスであるAWSを使うこともでき、大変楽しめました。所属企業に復帰後、情報管理基盤の設計、構築、運用に活かしていきたいです。所属企業に復帰後は、AIとIoTの実用化を目指して会社のDigital transformationをリードし、外部のベンダーも活用しながら情報管理基盤とデータ分析システムの構築、関連人材育成に取り組みます。また、研究開発、生産管理に加えて統計・機械学習を活用したビジネス分析を専門とするチームを立ち上げます。MBAらしくない仕事かもしれませんが、MBAで学んだことは短期的にはチームメンバーのマネジメント、マネジメント上の判断の場で活かしていきたいです。また、長期的には企業戦略や事業戦略に関わることになるので、MBAで学んだことがさらに生きてくるはずです。MerageにおけるMBA生活は最高でした。アメリカのカリフォルニアという風土、環境、治安、気候の良さ、美しい空と海、プールとジャグジー、自由。他にはないものが、ここにはあります。MerageではMBA Certificate in Digital TransformationというCertificateを取得することができ、Digital Business, Business Analytics関連コースの充実度とData Science InitiativeといったUCIの豊富なDigital分野のリソースは、私のキャリア選択にとって最高の機会となりました。私はBusiness Analyticsにフォーカスしたものの、起業やGeneral Managementにフォーカスしたクラスメイトや、MFinやMPacのコースを活用してファイナンス、アカウンティングにフォーカスしたクラスメイトもいて、その自由度の高さも魅力です。私はもうIrvineを離れますが、同窓会やアプリカントへの説明会の場でMerageと関わり、その素晴らしさをステークホルダーのみなさんと共有し続けていきたいです。