癌に対する、免疫反応は、複雑に制御されています。まるで、ドミノ倒しの様に次々と反応が伝達されます。この原因は、人の進化と共に進歩してきた人の苦労の末の免疫の進歩と考えられています。
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①NK細胞などによる癌細胞破壊 →②樹状細胞、マクロファージによる癌抗原認識(癌細胞があることを、認識する。) → ③Tヘルパー細胞の認識 → ④キラーT細胞の増殖(CTL)→ ⑤癌細胞攻撃
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ざっと、こんな風に、免疫反応は進むと考えられているようです。
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ところが....
①NK細胞が見逃す ②癌抗原自身が弱いものがある(糖鎖抗原のように、柳がふらふらとそよぐようにとらえどころがない癌抗原がある)→T細胞へ抗原情報が送れない)→ ④癌抗原を認識するのにタイプⅠ抗原が消えている。癌抗原が見当たらない(2種類の合いの手がないと、癌をT細胞は攻撃しにくい). ③と④の間の反応で、免疫抑制細胞が現れる。癌により、反対に癌を攻撃しないT細胞に変えられてしまう。等....
反応は、いたるところで挫折します。
そのため、今まで、一生懸命に癌抗原の免疫をつけようとした、試みもうまくいかず、困っていました。.....
ところが、ええい ! 面倒だ。途中の経過をすべて省いて、結論の癌抗原を認識するTキラー細胞を、大量に、試験管内で作って、生体内に投与すれば、うまくいくんじゃないか !
と、開発されたのが遺伝子操作によって作られた、癌抗原に引っ付くレセプターを持ったCAR T細胞です(CARとは、Chimeric Antigen Receptorの略語です)。これを増やし、再び患者さんに投与したところ非常に、凄い効果があったようです。
特に、GD2抗原を持つ脳腫瘍、B細胞腫瘍(ほぼ、全てにCD19抗原を持つ)等に試みられ非常に効果があった(めちゃくちゃ効果があった)。他にも、HER2抗原に対して‥次々と....
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でもこれまでも、リンパ球培養細胞療法があったじゃないか?と言われそうですが、癌抗原をはっきり認識できるT細胞が、はっきりとして、増やされ投与されていることが、まるっきり違うようです。
遺伝子治療では、今までにも、ウイルスを使って癌遺伝子を修復する試みがあったじゃないか?という疑問に対して→なかなか、実際に成果が、うまく上がらない。
ウイルスが実際生体に投与しても、癌などにうまく到達できなかった。..............
一方:
CAR T細胞の場合は、癌抗原に引っ付く受容体の遺伝子操作は、今回は、試験管内で細胞内に移入され、癌化しないことを確かめて、移入されている。等、種々の工夫がなされているようです。
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まず、これは、イスラエルで、開発されています。! そして、アメリカで、人体投与まで、開発され、更に、ウイルスを使わず遺伝子操作でCAR T,CAR NK細胞を作るところまで来ています。
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ところで、癌抗原と書きましたが、2つの意味があります。......
一つは、純粋のその癌細胞にだけにある抗原。
もう一つは、一般にある正常細胞にも含まれる細胞群にある抗原です。これは、例えば、B細胞性リンパ腫のCD20抗原を攻撃するリツキサンの成功でもわかるように、B細胞全体を攻撃します。癌が消えても、骨髄中の未熟なCD20を出す前の細胞から、正常なB細胞は再び作られます。
いまのところ。CART細胞も、他の免疫療法も、こちらの抗原を目指して作られます。将来は、一個一個に対する癌特異な免疫攻撃細胞が作られるのが、良いのですが、この個別化治療は、いまだこれからです。......
参考文献
1)キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法
中 沢 洋 三 信州大学医学部小児医学講座
Gene-modified T-cell TherapyUsing Chimeric Antigen Receptor Yozo NAKAZAWA Department of Pediatrics, Shinshu University School of Medicine Keywords:chimeric antigen receptor,adoptive immunotherapy,cancer immunotherapy, gene
2)Specific activation and targeting of cytotoxic lymphocytes through chimeric single chains consisting of antibody-binding domains and the gamma or zeta subunits ofthe immunoglobulin and T-cell receptors. Eshhar Z,Waks T,Gross G, Schindler DG :.Proc Natl Acad Sci U S A 90:720-724,1993
3):Geneticmodification ofT lymphocytes for adoptiveimmunotherapy. Rossig C,Brenner MK MolTher 10:5-18, 2004
5) DottiG,SavoldoB,BrennerM :Fifteenyearsofgenetherapybasedonchimericantigenreceptors:“arewenearly there yet?”.Hum Gene Ther 20:1229-1239,2009
6) Ngo MC,RooneyCM,Howard JM,Heslop HE:Ex vivo gen