
英語講師、通訳、翻訳者の門田直樹です。
今の参考書は、20〜30年前の参考書と比べて随分分かりやすくなりました。
フルカラーの図解、丁寧な解説、音声や動画へのリンクなど、独学を助ける工夫がたくさんあります。
分からないところがあっても、すぐに補足情報へたどり着けるようになりました。
これは、学習者にとってありがたいことですよね。
一方で、分かりやすい参考書に頼り過ぎると、自分で考える力が弱くなってしまいます。
ただし、「今の参考書のせいで考える力が弱くなった」と単純に断定することはできません。
問題は参考書そのものよりも、私たちがそれをどのように使うかではないでしょうか。
今回の記事では、昔の参考書と今の参考書の違いを踏まえながら、分かりやすい教材で考える力を育てる方法について書きたいと思います。
今の参考書は本当に分かりやすい
昔の参考書は、文字が多く、説明も今ほど丁寧ではないものが少なくありませんでした。
途中の計算や考え方が省略され、「なぜそうなるのか」は自分で補わなければならないことも多かったですね。
分からなければ、先生に質問するか、別の本で調べる必要がありました。
今の参考書は違います。
- 図やイラストで内容を理解できる
- 途中の思考過程まで丁寧に説明されている
- QRコードから解説動画や音声を利用できる
- レベルや目的に合った教材を選びやすい
こうした工夫によって、地域や通っている学校に関係なく、良質な解説へアクセスしやすくなりました。
特に独学する人にとっては、とても有り難い変化だと感じます。
分かりやすいこと自体は、決して悪いことではありません。
分かりやすさが仇になることもある
一方で、分かりやすい解説には注意点もあります。
解説を読むと、「なるほど、分かった」と感じますよね。
しかし、その直後に何も見ずに同じ内容を説明したり、少し違う問題を解いたりすると、意外にできないことがあります。
解説を読めば分かることと、自分で考えて答えを出せることは同じではありません。
丁寧な解説は、学習者が本来考えるはずだった途中の過程まで代わりに示してくれます。
そのため、内容を理解したつもりでも、実際には説明の流れを受け身で追っただけ、ということが起こるんですよね。
分かりにくさや不便さが、考えるきっかけになることもあります。
昔の参考書がすべて優れていたという意味ではありません。
説明不足によって、理解できないまま挫折した人も多かったはずです。
大切なのは、不親切な教材へ戻ることではなく、分かりやすい教材を使いながら、自分で考える時間を意識的に作ることです。
学力低下を参考書だけで説明するのは難しい
今回のテーマを考えるきっかけになったのは、[「昔の参考書と今の参考書を見比べれば一発でわかる…20~30年前の中高生と“残酷な学力格差”ついた根本原因」]という記事です。
記事では、現在の教材や学習環境が非常に分かりやすくなった一方で、昔の中高生より今の中高生の学力が低下している面がある、という見方が紹介されています。
興味深い指摘ですが、ここは慎重に考える必要があります。
学力は、参考書の変化だけで決まるものではありません。
授業時間、入試制度、家庭環境、読書量、スマートフォンの利用、調査問題の違いなど、様々な要因が関係します。
また、平均点の変化が確認できても、それだけで「参考書が分かりやすくなったから、考える力が落ちた」という因果関係までは証明できません。
少なくとも、分かりやすさが学力を下げるのではなく、分かりやすさを受け身で消費する学び方に問題が生じることがあると考える方が良いかもしれません。
考える力を育てる参考書の使い方
では、分かりやすい参考書をどのように使えば良いのでしょうか。
1. 解説を見る前に、少しだけ粘る
問題を見てすぐに解説を開くのではなく、まずは5分程度、自分なりに考えてみて下さい。
何が分かっていて、どこから分からないのかを書き出すだけでも構いません。
全く手が出ない場合は、必要な公式、文法事項、単語などを思い出すところから始めます。
長時間悩み続ける必要はありません。
大切なのは、解説を読む前に、自分の頭を一度動かすことです。
2. 解説を閉じて、自分の言葉で説明する
解説を読んだ後は、一度本を閉じて下さい。
そして、「なぜこの答えになるのか」「どの手順で考えたのか」を自分の言葉で説明します。
説明できない部分があれば、そこがまだ曖昧なところです。
もう一度だけ解説へ戻り、確認してみて下さい。
このやり方は英語でも数学でも使えます。
英文法なら、正解の理由だけでなく、他の選択肢がなぜ違うのかまで説明すると理解が深まりますね。(私も授業でやっています)
3. 少し違う問題で確かめる
同じ問題を覚えただけでは、本当に理解したかどうかは分かりません。
数字、語句、場面などが少し変わった問題を解いてみて下さい。
知識を別の状況で使えれば、解説の丸暗記ではなく、考え方を身に付けた可能性が高いですね。
間違えた場合も、すぐに答えを読むのではなく、「前の問題と何が違ったのか」を比較すると良いでしょう。
学習段階によって「考える時間」を変える
すべての人が、同じ時間だけ自力で考える必要はありません。
初心者向け
基礎知識が少ない段階で長く悩んでも、考える材料そのものが不足していることがあります。
初心者の方は、易しめの参考書で基本を学び、1〜3分考えて分からなければ解説を確認する程度で十分です。
その後、解説を閉じて解法を再現することを重視して下さい。
中級者向け
中級者の方は、すぐに解説を見ず、5〜10分程度は複数の方法を試してみると良いでしょう。
自分の間違い方を記録し、「知識不足だったのか」「考え方を取り違えたのか」を確認してみて下さい。
上級者向け
上級者の方は、答えを出すだけでなく、別解を考える、根拠を説明する、他の人に教えるという使い方がお勧めです。
教材の説明をそのまま受け入れず、「本当にこの説明で十分か」と検討することも、考える力につながります。
まとめ
- 今の参考書は、図解・動画・丁寧な説明によって独学しやすくなった
- 分かりやすさそのものが、考える力を弱くするわけではない
- 解説を受け身で追うだけでは、「分かったつもり」になりやすい
- 解説を見る前に考え、閉じて説明し、別の問題で確かめることが重要
- 学習段階に応じて、自力で考える時間を調整する
昔の参考書の不便さを、そのまま取り戻す必要はありません。
今の分かりやすい参考書に、自分で考える余白を加えることが重要です。
分かりやすさを入口にして、最後は自分の力で説明し、使えるところまで持っていくようにして下さい。
当たり前のことを淡々と継続していけば、理解する力と考える力は少しずつ両立していきます。
皆さんは、昔の参考書と今の参考書のどちらが学びやすいと感じますか?
是非コメント欄で教えて下さい。
ご意見、感想大歓迎です。