ウェルニッケ脳症はこんな病気
ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏によって意識障害や眼球運動障害(眼球の揺れなど)、運動失調(歩行時のふらつきなど)といった症状が現れる脳の病気です。この病気を報告したドイツ人医師カール・ウェルニッケにちなんで病名がつけられました。
ビタミンB1は、細胞内でブドウ糖を分解してエネルギーを作る際に必要な栄養素です。特に脳の神経細胞はエネルギー源としてブドウ糖だけを利用しており、ビタミンB1の欠乏は脳に障害を与えるリスクを高めます。
通常、ビタミンB1は食物から摂取されるため、食物摂取量が減少すれば必然的にビタミンB1欠乏が起こる可能性があります。アルコール依存症や、妊娠悪阻(にんしんおそ=重度のつわり)によるビタミンB1欠乏が有名です。
アルコール依存症の人は、食べ物を摂らない傾向にある上、アルコールによって消化管からのビタミンB1吸収機能が低下しています。さらに、アルコールを分解するためにビタミンB1の必要量が増加することで、ビタミンB1欠乏を助長してしまいます。
妊娠悪阻では、食物摂取量が減るためブドウ糖を含む点滴で治療を行ないます。このブドウ糖を分解するために、ビタミンB1の必要量が増加して欠乏を招きます。
そのほかにも、がんがある患者さんでは、病気による食欲低下に加えて化学療法の副作用による食欲低下が起こることがあり、ビタミンB1の欠乏を招きます。また、偏食や腸疾患でもビタミンB1が欠乏することがあります。