過去の失恋がモチーフ。BOØWY「CLOUDY HEART」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はBOØWY「CLOUDY HEART」(1985年リリース、アルバム『BOØWY』収録) です。





2年近く前に書いた記事(「NO. NEW YORK」) にも書いていますが、『MORAL』『INSTANT LOVE』が商業的にも成功せず、ライブハウスでのライブ活動が中心になっていきました。特に『MORAL』の音作りにおいては後年に布袋寅泰さんが述懐しているように、上手くいかなかった旨を話しており、メジャーデビューを飾るも、インディーな作風に落ち着き、自身の力の無さを痛感したといいます。以降、布袋さんはセルフ・プロデュース能力を身につけるように努力していくことになります。とはいえ、『MORAL』リリース前後にドラムが高橋まことさんに変わったことで、徐々にBOØWYが目指す音作りがはっきりと見えてきたこともかなり大きくなってきます。BOØWYは1985年までの間はかなり苦労した時期で、布袋さんと高橋さんは別のバンド活動をしたり、布袋さんはスタジオ・ミュージシャンとして他のミュージシャンのレコーディングにギターで参加したりしていました。この時期で一番有名なのは、宮﨑駿監督作品「風の谷のナウシカ」での王蟲(オーム) の鳴き声をギターで表現したもので、音楽担当の久石譲さんに頼まれて参加したそうです。

1985年にそれまでのレコード会社と所属事務所を変え、心機一転して音楽活動に臨むこととなります。そしてプロデューサーとして佐久間正英さんが関与することとなり、佐久間さんが共同アレンジとプロデューサーを兼ねる形で、セルフタイトルアルバムとなる『BOØWY』がドイツで制作されることとなります。氷室京介さんと布袋さんはその佐久間さんのプロデューサー能力にかなり刺激を受けたといい、それまでの2枚のアルバムに比べて音作りが格段に進歩したこと、そして自分たちが考える音の出し方や整理の仕方も、佐久間さんの方がワンランク上であったと話しています。この『BOØWY』を機に、BOØWYはさらなる飛躍を遂げることとなります。

そんな『BOØWY』の最終曲として収録されたのが、この「CLOUDY HEART」でした。

この曲は1983年頃には既にライブで披露されていた曲で、元々は「ROCK'N ROLL」というタイトルで、歌詞・アレンジ違いのものでした。1984年にアレンジが現在の完成形に落ち着き、『BOØWY』収録に伴って氷室さんの手によってタイトルと歌詞が書き換えられて、現在のものとなりました。高橋さんは氷室さんがツアーで四国を回っている時に、この曲の歌詞を書いている様子を目撃していたそうで、氷室さんに声を掛けたところ、「CLOUDY HEARTの詞をさぁ…」と返答されたといい、一生懸命書いていたことを覚えているといいます。

その「CLOUDY HEART」の歌詞の内容は、過去に氷室さんと交際していた女性との失恋がテーマとなっています。氷室さん曰く、郷里の群馬から上京した際に、学校を中退してまで付いてきた女性だといい、全然売れない頃の氷室さんは、アルバイトしようにも直ぐに辞めてしまい、結果的には同棲していた女性の収入に頼って生活をしていたといいます。その女性が結果的には氷室さんの元から去ってしまったそうで、この経験を基にこの曲を作ることになりました。氷室さんはこの当時のことを「イカしたママゴトだったと思います」と述べています。

作り笑いが歪む 長い月日が終る
胸にしみるのはイヤネ こりゃ何?

それまでの君と過ごしてきた日々を回顧したようなものですが、冒頭で「2人の過ごした日々」の終わりを示唆したものとなっています。その前触れとして、会話をしていた君の笑いが作り笑いになり、そしてそれすらも無くなっていました。長い月日を過ごしてきた2人の終わりを感じます。しかし、「俺」は胸に沁みるようなことだけはイヤだとカッコつけており、その悲しい想いを「こりゃ何?」と誤魔化しています。

軽いはじまりだけど 割と長くなったし
お体だけはどうぞ大事に…

2人のはじまりは夢見て東京へ行き、何となくで始まったものかもしれませんが、何だかんだで長く過ごしてきました。君へ向ける最後の言葉は、「体だけはどうぞ大事に」の他人行儀感たっぷりの言葉で、改めて終わりを感じさせるものでした。

そうネ 終りはあたり前の様にくるものだし
しかたないゼ はしゃいでた あの日にサラバ

吹っ切るかのように、「終りは来るもの」とうそぶいています。若い尖っていた頃の話かのように「あの頃ははしゃいでいたから」として、あの日の想い出に別れを告げています。

バカバカしいけど俺 周りの奴に言われ
オマエと居るの悩んでたもの

俺は周りのつるんでいる奴らの言葉に相当惑わされていたようで、それがキッカケで「本当に俺といて君は楽しいのか」と考えるようになっていたようです。君はそれを見透かしていたのかもしれません。

あんな風でつづくなら きっと皆 そう幸せ
今頃気づいちゃって つらいぜ

本当は君とずっと居たかった。あんな苦しく辛い時期があっても君が居てくれたからここまでやってこれたんだと、今頃になって気づいたようです。でもそれに気付いたのには遅かった。

気の向くまま 過してた二人だから そう
終る事感じてた 割にミジメネ

俺と君は気の向くまま、「なるようになるさ」の考えで一緒に過ごしていました。だからこそ実は2人ともがこの恋の終りを、薄々感じていたのかもしれません。終り方、そして今頃君の大切さがわかることも含め、俺はとてつもなく惨めだなと自分で思うのでした。

いつも一緒 何をするにでも二人だった
あんな日は もう二度と来ない様な気がして

2人は一緒に暮らしていたのもありますが、何をするにしても何処に行くにしても一緒でした。この時は振り返ってみると楽しい想い出でした。でもこんな楽しいことはもう二度と来ない様な気がしたのです。

HONEST LOVE 傷つけてばかりだったけど
HONEST LOVE オマエだけを愛してた
CLOUDY HEART 傷つけてばかりだったけど
CLOUDY HEART オマエだけを愛してた

別れて気付いた君の大切さ。傷つけてばかりだったけど、君のことだけを愛していたんだと悔やむのでした。

作曲は氷室さん自身が書いたもので、私は特にBメロの3連符が並ぶメロディーが好きで、ロックン・ロールの中に切なさとポップさが交わるメロディーが良いと思います。そこに布袋さんと佐久間さんが施したアレンジが加わり、より切ないロックン・ロールになっていると思います。松井恒松さんのベースは音数自体はそこまで多くはないですが、太いサウンドで存在感を出しています。高橋さんのドラムはAメロの静かな箇所ではリムショットを用いて控えめにして、盛り上がるBメロで強く叩くサウンドが素晴らしいと思います。そして布袋さんのリズムとギター・ソロ。リズムに徹する部分は抑えながらも、リードではカッティング含めてキレイなサウンドを聴かせます。ソロも印象に残るメロディーになってます。シンセサイザーは佐久間さんが弾いています。

BOØWYの曲でもかなり人気の曲。氷室さんの失恋がモチーフとなった切なくも爽快なロックとなっています。




1987年に、シングル「季節が君だけを変える」のカップリング曲として、この「CLOUDY HEART」が氷室さんのボーカルを残し、ギターやシンセサイザーを中心に再録音されて収録されています。再録されたギターとシンセサイザーは布袋さんが演奏をオーバー・ダビングしている他、Bメロの歌唱部分を布袋さんも歌うなどしています。「季節が君だけを変える」はBOØWY解散前のシングルで、「CLOUDY HEART」には「終末感」を感じ取れるなど、新たな一面も見せることとなりました。ちなみにこの曲をカップリング曲として提案したのは氷室さんだそうです。宜しければこちらのバージョンも。