~あらすじ~
日本一長い商店街は激怒した。必ずあの邪智暴虐の総理を除かねばならない
というわけで国会行って総理どつきに行ったら普通に返り討ちにあって現行犯死刑が確定する
しかし商店街で16体目の会長像竣工式が控えてるので、いつもタイミーで来てるだけでほぼ無関係のワニ身代わりにして3日間猶予貰う。
会長は間に合ったら人気者になれるかもとか思いつつ商店街に戻る
しかし、竣工式終わってからの打ち上げ楽しすぎて4日間ぶっ続けでやり、カラオケオールしたついでにワニの死刑会場行ってみたら十字架のまま対物ガトリングショットガンで蜂の巣にされて死亡してた
それはそれとして会長も死刑で死亡
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日本一長い商店街会長は激怒した。必ずや、かの邪智暴虐の総理を除かねばならぬ。
会長は政治がわからぬわけではない。高校卒業後、3日後に潰れると言われた実家の八百屋を継いで経営を立て直し、商店街の会長にまで成り上がっただけでなく、シャッター通りと言われていたそれを拡張や合併によって日本一長い商店街へと仕立て上げたのも、彼の政治力の成せるわざであったからだ。
会長は新たに商店街の勢力と取り込むための下見で、隣接の浅草の街に来ていた。
会長「なかなか賑やかなのだぞ?」
なんかめっちゃでかい提灯のある寺の門前には、多くの商売人が大小さまざま、実店舗や屋台、露店と多様なスタイルで多様な商品を売買する。
その光景を目前に、何かを閃いた会長は歩いてた爺ちゃんに声をかけた。
会長「すいませんおじいさん。買い物中ですか?」
爺ちゃん「そうなのじゃ。今川焼がほしいのじゃが、店がわからなくての」
会長「ああ、今川焼ですとこっちに屋台が2つ、向こうにも7つ、あっちには8つありまして、うち1軒は大判焼き名義ですね」
会長はこのあたりの地理も把握しておった。
爺ちゃん「そこまで店増えおったのか」
会長「やっぱり浅草は人気ですからね。特に最近だとインバウンドも増えてるもんで」
この街は会長にとっても馴染みが深い。物心付いたときから月に一回は子どもスーツ着て浅草のデパートで一日を過ごした。そのたびにあのやたらでかい提灯だったり、門前の光景も目に焼き付けており、いつもぼったくってくる屋台のジジイも、ちょっとした小道も、マンホールの蓋の位置も、すべて忘れていない。
そんな会長にとっても、近年は見たこともないような店で見たこともないような人間がよくわからないものを売っていたり、謎の路地が加速度的に増えているように感じ、欠かさず続けている月イチの訪問ではアップデートしきれなくなるのも時間の問題であろう。
この街は年々複雑になっている。
会長「……僕もずっと来てますけど、やっぱり最近は複雑になってますねえ」
爺ちゃん「わしが就職するまであそこではババアがひやしきゅうりを売っておったのじゃが」
爺ちゃんの指差す方向を見てみると、グラサンかけてコイルばねかと見紛うほど指輪つけてる兄ちゃんかオッサンかわからぬ謎の男が謎のグミを売っておった。
会長「秩序が無いと、ああいう風にやりたい放題になるんですよ。ひとりだけじゃなくって何人も。ただ防ぐ方法もある。例えば浅草を日本一長い商店街の勢力圏に……」
爺ちゃん「あんなんに組み込まれるのなら無秩序の方がまだましなのじゃぞ?」
会長は憤怒しおった。
このジジイは商店街の進出を阻む勢力、すなわち政府のプロパガンダを真に受けているか、そもそもこのジジイが政府の工作部隊であるに違いない。
そう考えてから彼が国会まで行って直接総理に殴り込み行くのに決心するまで3秒と要さなかったのだ。
そうして国会乗り込んで国会中の総理に殴りかかったら普通に返り討ちに遭った。
総理大臣「まったくみんなが国民のために話してるところを邪魔しおって……一体何のつもりだったのだ?答えるのだ」
総理は穏やかに、しかし威厳を漏らしつつ問いかける。
会長「黙れ!貴様は俺の商店街の進出を邪魔しおったのだ!だから成敗に来たのだ!」
総理大臣「ほう?」
法務大臣「とりあえず裁判でもしときますか?」
総理大臣「よいのだ。この男は現行犯死刑にするのだ」
法務大臣「わかりました」
そう言って法務大臣は部屋を後にしおった。
会長「ふん、死刑なぞ慣れておるから今更されたところで屁でもない。しかし、俺に情をかけるのなら、3日間日限をくれぬか?」
会長は言いおった。
総理「今この時点で顔面ぶち抜いてやりたい気分だと言うのに、そこまで俺が我慢すると思っておるのか?」
会長「俺の商店街で16体目の俺の像竣工式があるのだ。どうしてもそれには参加したい。貴様もわかるだろう?」
総理「上手いこと言って逃げるつもりだというのはわかるのだぞ?」
会長「いや俺は逃げぬ。そうだ!代わりと言っては何だが、ワニを身代わりにしよう。いつもタイミーで来ておるから名前が思い浮かんだ。俺が死刑の刻限に間に合わなければあれを死刑にしなさい」
総理「まあよい、じゃあワニ呼びなさい」
というわけで会長はワニに電話しおった。
ワニ「もしもしワニです」
会長「後で3万円やるから、今から国会の死刑場来なさい」
ワニ「わかりました」
というわけでワニがきおったが、速攻十字架にかけられた。
会長「俺はなんやかんやで死刑になったのだが、俺の像竣工式に行かねばならぬのだ。3日後の日没までに帰ってくるので、そのときに3万渡すからちょっとまっておきなさい」
総理「そう言って逃げるのは目に見えておる。なんだったらゆっくり帰ってきてもよいのだぞ?そうすれば貴様の罪は赦そう」
会長「ほざけ」
そう言って会長は十字架にかけられたワニを残し処刑場を後にしおった。
この時、彼の頭の中には帰還時の光景が浮かんでおった。
苦難を乗り越えなんとか処刑場にたどり着き、ワニと熱い抱擁を交わす自分。総理と自分の心に打ち克ち、盛大な祝福を受ける自分。ワニの命は正直どうでもよかったが、その時の光景を思い浮かべると自然と重りの取れた気分になった。
その後、竣工式が終了し、打ち上げが始まったが思いの外楽しく商店街中の居酒屋をハシゴし、何本もの酒瓶を空にした。
その後はカラオケで、これまたしこたま酒を浴びながら青春時代を共に過ごした名曲を朝まで熱唱した。
そうして朝になるとまた早い時間からやってる飲み屋を見つけ出し、夜まで酒を浴び、カラオケに繰り出すルーチンワーク。
気づいたら3日目の17時、つまりは日没まもない時刻となっておったのだ。
会長「そういえば、なんか約束があった気がするな」
重要な約束であれば酒を浴び、青春時代の名曲を浴びても覚えている。そうでもないということは所詮些事なのだ。
こうしてカラオケに向かいおった。
そして、4日目の朝4時頃。そろそろラストソングかという頃に、会長はようやく約束を思い出しおった。
会長「あ、そういえば約束があったのだ。ゴホンゴホン」
彼の喉は、連日の酒と歌唱で枯れ果てておった。
ねえちゃん「大丈夫なんですか?」
事務の若い姉ちゃんが訊く。
会長「まあのど飴舐めておけば大丈夫だろう」
ねえちゃん「いや約束の方です」
会長「ああそっちか。まあカラオケ終わったら行くのだ」
というわけでカラオケ終わったので、くそめんどいが始発乗って処刑場まで行きおった。
すると、ワニは既に対物ガトリングショットガンで蜂の巣にされた後で、十字架にかけられたまま事切れておった。
会長「遅れおったか。まあ俺は無罪放免になったし明日には明日の風が吹くというものよ」
と言って処刑場を後にしようと思ったら法務大臣がきおった。
会長「そこをどけ」
法務大臣「ワニは死刑になったんですけど、それはそれとして総理にたいして結構失礼だったのであなたも死刑にします」
会長「じゃあワニはなんなのだ?」
法務大臣「ワニは普通についでというか予行演習なので」
というわけで会長も対物ガトリングショットガンで蜂の巣にされて死亡しおった。
会長「次回からちゃんと約束は守るのだぞ?」
~完~