あらすじ
タイミーで日本一長い商店街主催のパーティで料理することになったワニ
寿司の味付け面倒なので飯に味の素かけてたら参加してたストリートピアノ社長(超自然派)が発見
飯に何かけたか詰問され、冥王星でしか取れない塩と回答 逃げ切り図るも、なら取りに行けと言われ宇宙飛ばされ空気無くワニ死亡
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ある日の日本一長い商店街。
ワニ「タイミーからきました」
日本一長い商店街会長「またきおったか貴様」
ワニ「今日は何したらいいですか?」
日本一長い商店街会長「今日はごちそう作りなさい」
ワニ「わかりました」
そういうと、会長はワニを商店街中央にある広場に特設されたプレハブ調理場に案内しおった。
今日は商店街でなにかパーティをやるというらしく、あちこちでその準備が行われており、いつにもまして商店街は賑わっておったのだ。
日本一長い商店街会長「ではここで1日めしつくりなさい」
そこはプレハブにしては設備の整った、カウンターの併設された調理場であった。
おそらくはカウンターから飲食物を提供するのだろう。
ワニ「で、何を作れば」
初体験の調理ということで比較的緊張してはいたワニも、この時点でかなり余裕が出ていた。
日本一長い商店街会長「ごちそうなのだから寿司にきまっておろう?」
ワニ「あ、はい」
というわけでワニは寿司作ることになりおった。
とりあえず米を炊いてボウルに移していると、外から唐突に破裂音が聞こえ、ワニはさっと身を伏せる。
あとで復活するとは言ってもここで死ぬと報酬が出なくなる可能性があるからだ。
カウンターから覗いてみると、どうやらクラッカーの音だったようで胸を撫で下ろしおった。
パーティが始まったようである。
日本一長い商店街会長「やあやあみなさんよくお越し下さりました!今日は日本一長い商店街主催の『何も無い日記念パーティ』にようこそ!」
会長のやかましい声の傍ら、ワニはひたすら炊いた米をボウルに移動させる。
町3つ分の規模を有し、大通りにも展開したり住宅街や駅もエリアに取り込み、防壁で包囲されているこの商店街は、記念日のたびにパーティーを開き、入場料として外部からやエリア内の住民から8千円ほどを請求しているが、時々このように何もない日にも発生することがある。
おそらく会長が300円回転寿司に行きたい気分で、そのための資金集めで急遽開催されたのだろう。
ワニはそう思いながら最後の飯をボウルに移動させおった。
飯をボウルに移動させ、今度は酢飯にするのだ。
だが、すしのこが存在せず、酢だとなんかめんどそうなので悩み、あたりを見回しおった。
ワニ「あ」
ワニはある調味料と目が合った。味の素である。
ワニ「味の素を使えばよいのだ」
万能調味料といわれるほどの超高性能調味料である味の素をもってすれば、なんやかんやで酢味もできるだろうと考えたのである。
というわけで彼は一斗缶からお玉で味の素を掬いだし、ボウルに吹っかけていった。
ワニ「これでワンチャン調理バッジもらえるのだぞ?」
バッジが貰えれば案件の幅も広がり、更に金も稼げる。ワニは自然と口元が緩んでおった。
そのときだった。
???「貴様飯に何をかけた!」
カウンターの向こうから声がしおった。
ワニ「!!」
ワニがカウンターを向くとストリートピアノ社長がいたのだ。
ワニ「ああ、いらっしゃい。いま準備中なもんで」
ストリートピアノ「さっき何をかけたと訊いておるのだ」
ワニ「あ」
その瞬間、ワニは思い出した。
ストリートピアノ社長という人間は世界的にも有名な自然派生活者であったのだ。
彼はコンクリートジャングルや化学物質を嫌うあまり、神宮外苑で蔦を必死に編んで作ったシートの家に住み、食事も現地で狩猟、採集したものを木で火を起こして調理し、怪我や風邪も自己流の祈祷で治癒している、というのを彼の著書(キンドル限定)だかSNSで見たことがある。とワニの脳内に一瞬のうちに流れていったのだ。
そんな人間に味の素の使用が悟られると何をされるかわかったものではない。
ワニ「ああ、あの、塩ですよ」
ワニはとっさにいいおった。
ストリートピアノ社長「何作りおるのだ」
ワニ「寿司です」
ストリートピアノ社長「すし飯に塩かけおるのか?」
ワニ「あ」
ワニの身体中に冷や汗が走る。
ストリートピアノ社長「すしのことか使ってたら承知せぬのだぞ?」
ワニ「あ、いや……塩、なんですけども、冥王星でしか取れない塩なんですよ。なんかこう、隠し味で寿司に合うと言うか」
ストリートピアノ社長「ほう?」
これで納得してくれたか。ワニは依然として緊張しておった。
ストリートピアノ社長「じゃあ証拠として今から冥王星行って取ってきなさい」
ワニ「は?」
今から冥王星に行ったところで何日後に帰ってこれるかわかったものではない。
仮に冥王星に寿司に合う塩が実在していたところで、タイミーの報酬カットどころか出禁になりかねないドタキャンなぞできるわけがない。
ワニ「いやでも今からだと相当日数かかりそうですし……」
ストリートピアノ社長「化学物質使われるよりマシなのだ」
ワニ「まあでも宇宙って言ったらロケットがいりますし……?」
ワニは必死で誤魔化しおった。
しかし、
日本一長い商店街会長「面白い話してますね」
突然会長が割って入ってきおったのだ。
ストリートピアノ社長「会長、このワニはあなたに無断で化学物質を使用している可能性があります」
日本一長い商店街会長「ほう?味の素ですか?」
ストリートピアノ社長「おそらく、あるいはそれに近似した物質だと考えられますが、ワニは冥王星の塩だと言っております」
その瞬間、会長が目を見開きおった。
日本一長い商店街会長「ほう?」
ストリートピアノ社長「ですので、俺が証拠として今から取ってこいと言っておるのですが、都合がわるいのかごまかしおるのです」
日本一長い商店街会長「いやあそれは面白い!ぜひ取ってきて欲しいのだ!10キロくらい!」
ワニ「でもタイミーの案件が……」
日本一長い商店街会長「その塩取ってきてくれたら完了扱いにするのだ。いや、グッド評価でバッジも付与しよう!」
ワニ「でも宇宙ってロケットが……」
日本一長い商店街会長「たまたま今日はイーロンマスクも来ておってちょうど展示してたスペースXのロケットがあるのだ!許可貰ってくるからそれ乗りなさい」
こうして、ワニは言われるがままロケットに乗りそのまま宇宙に飛ばされたが空気無くて死亡しおった。
ワニ「やっぱり宇宙はこりごりなものよ」
~完~