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芽亜利

北白川別当町から大津市へとぬける「山中越え」の途中にあるアジアなカフェ。カフェとは腹を満たすための場所というよりは、雰囲気を満喫するためのスペースである、というのが持論であるが、その意味において「芽亜利」は、絶好のスポットと言える。場所柄、ドライブの休憩にと利用する客が多いようであるが、おそらくこの店目当てにわざわざ来ている客も中にはいるようで、いつ訪れてみても、なかなかの繁盛ぶりである。ときには順番待ちを強いられることもあるので要注意。ウッディーな店内は、1Fがカフェ、2・3Fがアジア雑貨販売となっている。雑貨は小物・アクセサリーから、「誰が買うねん」とツッコミを入れたくなるような本格的な打楽器まで幅広いレパートリー。それ系の人にとっては垂涎のスペースとなっている。1Fのカフェは眼前に大きな庭があり、夏場になると、青々と茂った芝生に散水機が水を噴射する風景がなんとも涼しげで心地よい。テラスのウッドベンチに腰掛けて、束の間のなんちゃって南国気分を満喫することができる。天候や季節、また混雑具合によって満足度は変動するものの、近くを通りかかったなら是非とも立ち寄ってみたい魅惑のスポットである。

拓朗亭

「拓朗亭」と書き「たろうてい」と読む。由来は、店主が「吉田拓郎」のファンであるというところにある。店内に掲げられたライブ写真が店主の心酔さを物語る……。亀岡のつつじヶ丘という、ちょっとしたベッドタウンに店を構える「拓朗亭」。住宅街の並びにポツンと存在するので、看過率99%!しかし、その実態は恐らく京都でも指折りの名蕎麦店である。暖簾には「蕎麦食人」の文字。単なる独りよがり「職人」ではなく、あくまでも食べて美味い蕎麦を作るという意味においての「食人」。これぞ究極の美学ではなかろうか。コリコリと筋の通った、毅然とした食感の蕎麦、ポタージュ風の暖かい蕎麦湯、そして、デザートの蕎麦の実アイスに至るまで、全てがシンプルに美味い。無駄がなく、美しい。日本人で良かった、そう思える瞬間を「拓朗亭」では享受することができる。公式サイト を見て分かるとおり、店主が持つ独特の感性がまた魅力。「唐変木」と自らを揶揄されているが、「本物」を生み出すのは、やはり常人とは異なる感性を持った「天才」じゃないかと思うわけである。

拓朗亭 (たろうてい)
★★★★★ 4.5

枝魯枝魯

新進気鋭の料理人・枝國栄一氏による割烹料理屋「枝魯枝魯」。押しも押されぬ超人気店であり、さらに、西堀晋氏 が内装デザイン担当と、話題に事欠かない。しかし、実際は電話をしてみるとあっさりと予約が取れてしまうので、少々肩すかし。さらに「祗園の店」という位置付けではあるが、実際は川端通りに面した立地で、言わずもがな、目の前の景色は車、車、車である……。カウンター席のみの薄暗く、狭い店内。目の前ではアバンギャルドな髪型の若い板前さんが、手際よく料理をこさえていく。見かけによらず愛嬌のある兄ちゃんで、料理の説明から身の上話まで、次の料理が出てくるまでの間も退屈はしない。料理自体の優劣は別として、この店はその独特のこじゃれた雰囲気・佇まいの割に、たったの¥3,500でそれなりのクオリティーの、それなりの量の会席料理を食べることができるという点で、やはり革命的な存在なのである。ヘタをすれば「廻る寿司」になりかねないリーズナブルさを枝國栄一氏によるソフト、西堀晋氏 によるハードでもってデコレーション。誰でも気軽にプチ贅沢in京都を満喫できる良店である。

やまなか

河原町に面する老舗のとんかつ店「やまなか」。とんかつ一筋30年。店内の至る所にディスプレイされた豚のポスター、オブジェ群が、大将のただならぬ「豚愛」を物語っている。関西テレビ「はらぺこ亭」に出演したり、「ジャパンタイムズ」で紹介されたりと、知名度は抜群のはずが、かき入れ時になっても、店内は意外とまばら。それもそのはず、ロースカツ膳一人前で実に¥2,000、そうそう気安く入れるようなお値段にあらず。しかし、値段に裏付けされた自信が大将にはある。「これで不味ければあなたの舌が悪かったということで、そのときはごめんなさい」と嘯く大将。愛嬌のあるお人柄であるが、目だけは笑っていなかった…!鹿児島産最高級の豚肉を使用したというとんかつは、まずその肉厚さに驚かされる。旨味が衣の中に閉じこめられ、咀嚼した瞬間、口の中に広がるワンダーランド。綿のような柔らかさ、そして、一気に広がる豚の旨味。量は決して多くはないため、夢は一瞬にして終焉する。度々行けるような店ではないが、この「ほんまもん」の味を一度は体験しておいて損はない。

とんかつ処 やまなか
★★★★ 4.0

Village Vanguard 京都北山店

京都北山の「BEAMS」「新風館」に移転し、その後同じ場所に出店したのが「Village Vanguard 京都北山店」である。北山通りを少し北上したローカルな立地ではあるが、この場所で「BEAMS」は北山ブランドを影で支え続けてきた功労者と言える。その「BEAMS」が移転するということで、これで北山も風前の灯火かと思いきや、その後に誕生した「Village Vanguard 京都北山店」によって、なんとか北山はそのクオリティーを維持しているように思う。「遊べる本屋」をコンセプトに全国にチェーンを拡大し続けている「Village Vanguard」であるが、独自のセレクトによる雑貨・漫画・インテリア群は、サブカル人間の知的好奇心を満たすには十分過ぎる空間であり、来店する客層を見ていても、なんちゃってオシャレさん大集合な雰囲気である。「新風館」にも同チェーン店が存在するものの、グッズのラインナップ的には、3F分もの店舗面積を誇る北山店に軍配が上がる。さらに北山店には、あの文藝賞・芥川賞受賞作家の綿矢りさ嬢御用達店舗という付加価値もあったりするので見逃せない。彼女の創作活動にアイデアやインスピレーションを与えたスペースとして、今後も語り継がれてゆくことであろう。

MKバイキング

京都人にとってMKと言えば、タクシーだけではなく、ボウリングやバッティングセンターといったアミューズメントなイメージがあるが、さらに、バイキングレストランまで営業しているという事実を知っている人は、果たしてどれだけいるのであろうか。上賀茂のMKに至っては、バイキングへのエントランスが建物の端っこにひっそりと存在し、まるで表沙汰にしたくないような意図さえ感じてしまう。しかし、これぞ隠れたオアシス。その値段たるや、たったの¥500!ドリンクバーを付けても¥600である。安さの秘密は、社員食堂を一般開放しているというスタンスにある。休息中のタクシー戦士たちと共に飯を食う光景……ある意味シュールであるが、それもまた一興。バイキングの実態は、揚げ物、炒め物に、サラダ、麺類、カレーと、想像以上にレパートリーが多く、特に「ご飯食い系」のおかずが多いため、ご飯党にとっては、満足することこの上なし。金がないときに役立つのはもちろんのこと、もっとポジティブに日常使いとして利用したい、庶民派・優良バイキングなのである。

キャプテン

「いのししラーメン」。このネーミングのインパクトで既に勝利と言っても過言ではない。車で国道162号線を高雄方面から京北町方面に走っていると、突如として現れるいのししの看板。ここで立ち止まらない者は、ある意味負けである。普通のラーメン600円に対して、目玉のいのししラーメンはダブルスコアの1,200円也。この値段に辟易して、普通のラーメンを頼むことが何を意味するのか。つまり、それは天一 に初めて行った者が、いきなり「あっさりラーメン」を頼むが如く愚かなことである。
目の前に出てきた「いのししラーメン」。普通のラーメンと差別化されており、金の龍が描かれた黒いラーメンバチにて厳かに登場である。早速スープを口にしてみる……そして、麺をすする……最後に、目玉のぼたん肉チャーシューをほおばる!……あっさり味の醤油ラーメンで、肉も淡白で癖のないお味。まあ普通に美味しいやね……以上!
しかしまあ、こういったメタルスライム級のレアラーメンを食して経験値を貯めておくのも、たまにはいいんじゃないかと思うわけである。

キャプテン
★★★☆☆ 3.0

VeryBerryCafe

北白川にある、星条旗が揺らめく真っ赤なカフェ。一見すると男子禁制な雰囲気を醸し出しているが、臆することなく入店すべし!現に私は北白川店、御幸町店、河原町二条店と、全店を制覇したほどの暇人である。そのコンセプトはズバリ「アメリカン」の一言につきる。パフェ、サンデー、サンドイッチと、全てがアメリカンビッグサイズ!毎日通い詰めれば「スーパーサイズ・ミー」 越えも夢ではない。オススメは「M&M's shake」。その名の通り、あのマーブルチョコ「M&M」が磨り潰されたシェイクで激甘&ビッグサイズ。他にも「オレオ」や「キットカット」の名を冠するスイートが存在し、まさにここはお菓子ワンダーランド。ニキビ作りまくって思春期カムバック宣言と意気込みたいところである。
3店舗のうちオススメは、やはり元祖・北白川店である。立地的にも、間取り的にも、暗さ的にもほどよい案配で、落ち着いてスイーツに舌鼓を打てる雰囲気となっている。最近できた河原町二条店は町屋風の建物で和の路線に走っており、他の2店舗のようなアメリカンなバカさ加減が影を潜めているのが少し残念である。しかも、喫煙側は目の前の開き戸の立て付けが悪く、道から吹き込む風で戸がバカバカと空く始末。しかし、このいい加減さがある意味アメリカン、つまり、どの店舗においても「VeryBerryCafe」はそのイズムを貫いているということである。

Very Berry Cafe 北白川店 (ヴェリーベリーカフェ)
★★★★ 4.0

ガケ書房

北白川に突如として誕生した石ころの固まり……これはいったい何なんやということである。見ようによってはアバンギャルドな美容室、もしくは小粋なバーに見えなくもない。その正体は、本屋である。「恵文社一乗寺店」 と目指すベクトルは似ているが、こちらのほうがより店主のセンスが前面に押し出されたラインナップで、アクが強く、敷居は高い。「恵文社一乗寺店」が女性的であり、クラシックであり、懐古主義であるなら、「ガケ書房」は男性的であり、ロックであり、退廃的である。
じもっぴバンドのインディーズCDからレトロなおもちゃまで、キッチュなセンスが入り乱れ、絶対にチェーン店化できっこない鋭利さがそこにはある。ただ、「敢えて行く」的な本屋ながら、店内が狭いため、長居しづらい雰囲気なのは残念な点である。「恵文社一乗寺店」のように長い時間渉猟するタイプの本屋ではなく、刹那の快楽を享受する、そんなタイプの本屋なのである。いずれにせよ、今後のさらなる退廃ぶりを期待しつつ、見守っていきたいところである。

いいちょ

下鴨中通りという、西大路通りでいうところの西小路通り的なサブストリートに「いいちょ」は店を構えている。店の前に三角州のような地帯があったりと、少し分かりにくい場所にあり、北大路通りに面して立ててある看板だけが頼りとなる。メインのラーメンは京都ラーメン王道の豚骨醤油味。しかし、この店のそれは他の店に比べると頭一つ抜け出ている感がある。白濁スープで、背脂は控えめ。化調の使用具合は分からないが、しっかりとした奥深い味付け。それでいて、豚骨醤油にありがちな背脂ギトギトなしつこさはない。
店主は左京区の名店「山さんラーメン」 にて修行を積んだそうである。あの無愛想な頑固オヤジが作るラーメンは私もいちファンであった。最近滋賀県のほうに移転したため久しく食べていないものの、「いいちょ」のラーメンは既に師匠の域を超越している、というのが私の印象である。
だいたいどの時間も大行列とはいかないまでも、待ち客が店の前にあぶれ出す人気店。美味いだけで殺伐とした雰囲気の店が多い中、この店は家族客が多いのが特徴で、地域密着型の暖かい雰囲気が店内を包んでいる。これも長原成樹 似の男前店主のお人柄か。通常はチャーハンが店主担当・ラーメンが奥さん担当という割り振りのようである。調理場の奥でチャーハンを炒めつつ、喋りたそうな顔をしながら客席のほうを眺めているのが店主の表情が印象的。また、奥さんの男顔負けの湯切りっぷりは必見。玉あげにうどんてぼ ではなく、平ざるを使い 、寸胴鍋に揺らめく麺を一人前ずつチャッチャと湯切りしていく手さばきは、誠におっとこ前!なのである。

いいちょ
★★★★★ 5.0