京都1975 -13ページ目

James Kitchen

James Kitchen 学生の街、京都ならではの食堂と言えば、安価でたらふく量が食える店と相場が決まっている。京大近くにあるハンバーグ専門店「James Kitchen」も御多分に洩れず、食いしん坊の胃袋を存分に満たしてくれる良店である。でかく、柔らかいハンバーグを口に含むと同時に白ご飯をかき込むべし!言わずもがな、お替わり自由であり、テーブルに置かれたお新香を合間に挟みながら、ただひたすらに、無心にがっつける環境がそこには整っている。ハンバーグのサイズ、ソース、トッピングは細かくカスタマイズが可能。お勧めはやはり目玉焼きトッピング。終盤にさしかかると同時に黄身のバリアーを解き放ち、ハンバーグをじゅるじゅるにしてほおばるべし!

これにて、目玉焼き三部作完結也。

ジェイムスキッチン (James Kitchen)
★★★★ 4.0

高瀬川

松ヶ崎疎水

沙羅

沙羅 美味いと巷で評判の「天下一品二条店」の傍らにひっそりと存在するカレー店「沙羅」。「カレーよりうまいカレーの店」という謎の謳い文句が目を引く暖簾……その自信は只者ではない。店内は清潔感のある喫茶店といったけれんみのない雰囲気、悪く言えば没個性である。しかし、メニューに目を通した途端、その強烈な個性に圧倒される。「男のカレー」……!この本宮ひろ志テイストの汗臭いネーミングに、熱さを忘れたオヤジどもは思わず身震いである。実体は挽肉の入った所謂キーマカレーで、ルーの上にドカッと大きな目玉焼きがのせられている。何故これが「男」なのかは知る由もないが、他にも「女のカレー」「鬼のカレー」と名前からは内容の想像が付かない、奇抜なネーミングセンスが光る。基本的に¥1,000以上のカレーが多く割高感があるが、それは自信の裏返し。相応の味を提供してくれる良質カレー店なのである。

かれいはうす沙羅 (カレイハウスサラ)
★★★★ 3.5

京都タワー

Sfera Building

四条縄手通りを少し上がった場所にある風変わりなビル。「COCON烏丸」や「文椿ビルヂング」といった新しい商業ビルが注目を集める昨今であるが、この「Sfera Building」ができたのは一昨年。「COCON烏丸」は唐長文様「天平大雲」で話題を呼んだが、「Sfera Building」だって負けてはいない。マリファナ柄チックなリーフパターンが目を引く独特のファサード。但し悲しいかな、見ようによっては地味とも言えるし、まさかこんな所におしゃれスポットが!?という意外性もあり、看過してしまう可能性が大きいという難点も。4階建てのビル内部では、飲食店と雑貨店がコンセプチュアルに店を構える。メインを張るのが「Sfera Shop」。所謂おしゃれ系雑貨店であるが、注目すべきは京都で唯一「±0」 のコレクションが購入できるという点。東京・青山の路面店に比べるとさすがにラインナップに不足感は否めないが、目の前であの加湿器 を見て触れるのは大きい。さらに2Fは同ショップのギャラリースペースにもなっており、好奇心旺盛なヤングカップルにとっては、まさに絶好のデートスポットと言えるのではなかろうか。包装紙やショップ袋も例のリーフパターンで統一されており、ここであなたの大切な人にプレゼントを買ってあげたりすると、ちょっと喜んでくれるかもしれない。

さらさ西陣

西陣散策の一環として立ち寄ってみたい「さらさ西陣」。昔の銭湯を改装したという店内は、グリーンを基調とした様々な模様の浴室タイルがそのまま壁に残された造りで、アンティークというよりも、ある意味ファンタジックな雰囲気。さらに、天窓からは日光が燦々と注ぎ込み、開放的な空間となっている。簡単な書籍コーナーは、「QUICK JAPAN」やマイナーな漫画などが並ぶキッチュなセレクトで、何故か宮沢りえの「Santa Fe」が置いてあったりするのも見逃せない。ランチの目玉は、「大皿ごはん」と称するワンプレートランチ。がっつき系の量ではなく、所謂カフェごはん的な、こぢんまりとした存在感であるが、視覚的に目玉焼きが果たす役割は非常に大きく、無性に食欲をそそられる。何故に目玉焼きはかくも人々の心を突き動かすのか……。近辺は西陣ならではの面白スポットが散在するが、駐車場代が心配という方に是非ともお勧めしたいのが、「さらさ西陣」を少し東に行った場所にある「鞍馬口ガレージ」。ここなら3時間停めても¥500、24時間停めても¥1,500という割安値。船岡山登頂などと、時間を忘れたアドベンチャーも夢ではない。この駐車場には、係員は常駐しておらず、電話をすると、どこからともなくおばちゃんが登場し、お金を払うとまたどこかへと帰って行ってしまう。駐車時間など誰も計っちゃいない、こんなアナログさが残る西陣が素敵である。

cafe SARASA NISHIJIN (カフェサラサ さらさ西陣)
★★★★ 3.5

はせがわ

「グリル」……それはまさに魅惑の響き。広辞苑を調べてみると「洋風の一品料理などを出す軽食堂」、「肉や魚を使った網焼き料理」とある。私的なイメージとしては、網は使わずとも、フライパンなどの鉄板の上で、焦げ目が付くまで焼かれた、肉汁たっぷりのステーキやハンバーグを想起してしまう。腹の音がきゅうきゅうと鳴いているハングリーな状態ならば、胃の奥底までダイレクトに突き刺ささり、食欲を喚起させる魔の言葉、それが「グリル」ではなかろうか。このステレオタイプな「グリル」のイメージを、この上なく忠実に再現してくれる店が「はせがわ」である。北大路通りと加茂街道が交差する北西角に、堂々と店を構える老舗。平日・週末問わず、店内は家族連れやカップルと、大勢の客の熱気で溢れかえっている。昭和の香りを色濃く残す店内は、オレンジ色の電球色に包まれ、グリル料理が美味そうに映える。お勧めのメニューはハンバーグセット。分厚く、丸っこいハンバーグと脇役のナポリタンは、共にケチャップ味のオールドスタイル。ぷりぷりとした食感の大きな海老フライも絶品。余計な小細工のない、堂々とした料理っぷりはまさに王道である。さらに、プレートのサイズが大きいため、ボリューミーでかなりの食べ応え。肉と油の香りに喚起され、無心にがっつけること請け合いである。店の東側では弁当販売も行っている「はせがわ」。弁当にしては、少々お値段は張るが、この味とボリュームをそのまま店外へテイクアウトできるのは嬉しい限り。これが意味すること……つまりそれは店の前を流れる賀茂川である。晴天の下、河川敷に腰掛け、川のせせらぎを眺めながら、熱々のグリルをほおばる……これ絶対美味え!いずれは実行してみたい、私のささやかな夢の一つなのである。

はせがわ
★★★★ 4.0

天宝

一乗寺のメインストリート・東大路通りにて、飲食店の並びのまさに「狭間」に存在する異形のラーメン屋・「天宝」。発狂したようなパンキッシュな看板に、ルンペンの住処かと見間違うような狭く、ボロい佇まい。「天天有」、「高安」のような正統派人気ラーメン店に比べると明らかに異端児であり、ファーストインプレッションの時点で正常な思考回路の客は、ほぼフィルタリングの対象に。いざ店内に足を踏み入れると、レゲエをBGMに、チェケラッチョ(死語)なBAD-BOYS店員のお出迎え。結果は言わずもがな、若者限定の客層であり、飲酒後のオヤジ階層や家族客など皆無である。意図的にアンティークさを装うラーメン屋が横行する中、この店は本格的にボロく、薄汚い。油でギトギトの壁、裸電球、黄ばんだMacintoshに、無口な店長。この雰囲気を逆に楽しめる気概がないと、この店のラーメンは楽しめない。目玉は「角煮ラーメン」。豚骨ベースに豆板醤等を加味したアジア風スープ。このスープ単体では比較的あっさりとした風味で物足りなさを感じるが、その上にとろけそうな程に煮込まれた豚の角煮と煮汁が加わることで、ある意味ラーメンを超えた「おかず」的な風味を持つ「食べ物」へと変貌を遂げる。底が浅く、径が広いラーメン鉢に、スープは少なめ。これはもはやラーメンというより、中華料理と定義してもおかしくないようなオリジナルティである。お勧めは「角煮切れ端ラーメン」。麺と角煮がセパレートされた「角煮ラーメン」とは異なり、細切れの角煮がラーメン鉢の中に縦横無尽に散らばり、すくい上げる麺にことごとく肉片が絡みつく。至高のごはん喰い系ラーメンとして、その存在は揺るぎない。現代的ガンコ親父とも言える無愛想な「天宝」の若店長であるが、「天天有」、「珍遊」など、続々とチェーン店化してゆく近隣のラーメン屋など眼中にない、というか、そんな商魂など微塵も感じさせないほどの偏屈さを醸し出している。しかし、そんな「天宝」もつい最近、これまで外に丸出しだった店内を遮るよう、入口に扉を増設してくれたりと、芋虫のような遅い速度で成長しているのはなんとも微笑ましい。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ではないが、その見かけに辟易せず、ラーメン好きの方なら一度は訪れてほしい、アクの強いラーメン屋・「天宝」。ほとんどはアルバイト店員が切り盛りしている模様で、もし店長が店番をしている機会に出くわしたならば、「アタリ」と言えるかもしれない。

天宝 (てんほう)
★★★★ 4.0

rumble FISH

御池通りの喧噪から逃れるように小川通りを下がると、東側に「rumbleFISH」の小さな立看板が見える。元々は町家であった場所を「繭」という複合施設に改装、友禅染の体験工房 やギャラリーなどと併設されるかたちで、「rumbleFISH」は店を構えている。昨今、続々と誕生する取って付けたような「町家型○○」であるが、所詮は器が町家なだけで、どうもしっくりこない、腑に落ちない、という御仁には是非ともお勧めしたいスポットである。ポイントは、この施設にとっては幸か不幸か、いつ訪れてみても客の入りがほとんど無いため、絶好の隠れ家的雰囲気を満喫できるという点にある。暗い店内に店員は一人。耿耿と光を放つステンドランプ。木造床の軋み音。中庭を中心とした箱庭的空間が、やかましい世間と隔離され、ここだけ時間が止まっているかと錯覚すら覚えてしまうほどの静寂さ。必要以上の華美が排除された、古き良き京都のリアル町家気分を満喫することができる。一押しメニューは丹後直送の焼き魚がドカッと盛られた和ランチ。この飾り気のない実直なメニューがまた嬉しい。ただし、気まぐれメニューのようで、日によって有ったり無かったりするが、それもまたご愛敬。とりあえず、日々の生活に疲れたなら、週末は「rumbleFISH」でコーヒー一杯分の遁世をお勧めしたい。

ランブル・フィッシュ (CAFE rumble FISH)
★★★★ 3.5