ガケ書房 | 京都1975

ガケ書房

北白川に突如として誕生した石ころの固まり……これはいったい何なんやということである。見ようによってはアバンギャルドな美容室、もしくは小粋なバーに見えなくもない。その正体は、本屋である。「恵文社一乗寺店」 と目指すベクトルは似ているが、こちらのほうがより店主のセンスが前面に押し出されたラインナップで、アクが強く、敷居は高い。「恵文社一乗寺店」が女性的であり、クラシックであり、懐古主義であるなら、「ガケ書房」は男性的であり、ロックであり、退廃的である。
じもっぴバンドのインディーズCDからレトロなおもちゃまで、キッチュなセンスが入り乱れ、絶対にチェーン店化できっこない鋭利さがそこにはある。ただ、「敢えて行く」的な本屋ながら、店内が狭いため、長居しづらい雰囲気なのは残念な点である。「恵文社一乗寺店」のように長い時間渉猟するタイプの本屋ではなく、刹那の快楽を享受する、そんなタイプの本屋なのである。いずれにせよ、今後のさらなる退廃ぶりを期待しつつ、見守っていきたいところである。