第18回 『義の戦士たち』(2009年5月 3日放送)


【時代劇局長のズバリ感想文】

今週は、原作に忠実で非常に面白かった。とは言っても、筆者は何も原作通りに描いて欲しいわけではない。原作を元に面白く物語を展開してくれれば何の文句もないのだ。しかし、原作を無視して設定を変え、つまらないものになってしまうのだけはごめんだ。原作はあくまでも小説なので、そのまま描けない事もあるだろう。そういう意味で今回の話は、原作通りに描けたから忠実に演出したのではないだろうか?さぁ、それでは面白かった今週の感想文にいきましょう。

①運命の三ヶ月

冒頭の言葉は『運命の三ヶ月』。武田滅亡の後、織田軍が中国、四国、越後に攻撃を仕掛け、特に上杉に対しては織田軍最強の柴田勝家を差し向けた・・・。三ヶ月で天下の形成が一変し、魚津が上杉の存亡を賭けた決戦の場になっていた・・・。まさに絶対絶命の危機!どうする兼続!?というものだった。この冒頭の言葉は、本編で細かく描けない部分をまとめて紹介し、今話に入る前に背景を説明する手法を取っている。これは、今、物語はどんな状況にあるのかを整理する事が出来る有効な手段である。今日は、贔屓目に見ても魚津城での上杉に勝ち目はない!そんな状況をどう兼続は動くのか?上杉はどうして生き延びたのか?を煽るようにうまく紹介していたと思う。

②タイトル通りにスタート

本編は、天正10年(1582年)4月、魚津城は織田軍に包囲され昼夜を問わず攻め続けられていた。陥落寸前なのに、吉江や安部の抵抗でなんとか持ちこたえていたという訳だ。今回のタイトルは『義の戦士たち』。吉江の元には柴田勝家から降伏を勧める書状が届いていたが、それを一蹴する吉江たち。ここで、まず最初の””が登場したので、タイトル通りに物語が進んでいる事になる。

③信長と初音のバリエーションも限界か?

魚津城から援軍を求める使者が春日山城にやってきた。景勝は援軍に出ると言うが、『それはなりませぬ!』と止める兼続。何か秘策はないかと考え込む兼続・・・。ここで画面転換。これはとても良い手法だ。場面を変える事で、兼続がその間ずっと考えていた・・・というシチュエーションが作れるのだ。
場面は安土城の信長と初音のシーン。相変わらず信長は詩を詠んでいるかのような語りに初音がコメント・・・というスタイルは今回も同じだった。ここまで毎週徹底されると、呆れるのを通り越して、『おー!今週もまた来たぞ!』という気にさせる。吉川晃司さんと長澤まさみさんのバリエーションももう限界のような気がするが・・・。初音が兼続のどういうところが印象的だったのだろうか?今回も不親切だったが、場面転換のために使うためのシーンと考えれば納得するかも・・・。

③結局は援軍。しかし、これは演出家の手

魚津城が火の海だ。誰が見ても分かるCGを使っていたが、これはこれでいい。むしろ、こんなシーンもCGで再現出来るようになったのか?!と関心すべきである。そして、考え込んでいた兼続が再び登場!原作同様、碁盤と睨み合っているシーンが出たが、”あれからずっと考えていたのだ・・・”という事を視聴者に分からせる良い演出だったのでは?しかし、兼続の策は視聴者には、”魚津に援軍を出す”という事しか知らされなかった。『えっ?悩みに悩みぬいたのに、結局は援軍?』と視聴者の期待を裏切る展開だったが、これが演出家の手であった。これは良い手法だ。

④視聴者を騙す演出

視聴者を騙す演出はそのまま続いた。織田に分からぬようこっそり城を出る旨を伝えた兼続。ここで、『なんだ、そういうわけか・・・』と少し納得しつつも、『本当にそれだけ?』と兼続の策に疑問を感じさせる展開に作っていた。その後に出た妻のお船を想うエピソードに、『命を賭けた戦いに兼続も挑むのか?』と、さらに騙しはエスカレート。しかし、これは敵を欺くためではなく、身内を欺くためだった事が後に明らかにされるが、実にうまい演出だったと思う。ちなみに、お船が短刀と黒髪を送った話は原作通りだ。

⑤本能寺の変と今後の上杉家はリンク?

来週の放送では、本能寺の変が描かれるが、同時に秀吉の動き、光秀の心情などもしっかり描かれていた。現に”本能寺まで15日”と宮本信子さんの語りが入るなど、上杉の危機と本能寺がどう関係しているのかを伝える内容になっていた。初音は、何か起こりそうな予感という顔をしていたが、初音は本能寺の後、何かしらのアクションを起すと見た!

⑥まさに、”義の戦士たち”

景勝は天神城に陣を敷いた。天神城から見る魚津城は相変わらず火の海。そんな中、越後に引き返すと言い出した兼続。視聴者は、『これは兼続にやられた・・・』と思いつつ、上杉に攻め入ろうとする織田軍の動きを兼続は意識しないわけがない。では、魚津城を見殺しにしてしまうのか?と思ったが、”降伏し、城を捨てて逃げる道”を魚津の吉江、安部らに説き伏せる事に・・・。使者は、『私にしか務まりません』と志願した兼続だ。ここで、またまた””が飛び出した。海から敵の背後に回り込み、吉江、安部らの元へ・・・。結局は、最期まで戦うという吉江、安部らを説き伏せる事が出来なかったが、吉江、安部ら守将12名には、今では決して真似出来ない立派な””があった。まさに、”義の戦士たち”を感じる回であった。

【来週の展望】

来週は『本能寺の変』が描かれる。筆者は無理に描かなくても良いと思っていたが、ここまで毎週信長を描き続けた以上、しっかり描く必要があるのかもしれない。そして、魚津城の12名の悲しい自刃シーンも描かれる。そして、『謙信入道か?』という信長の問いに、『いかにも』と答える謙信のシーンも・・・。来週は面白そうだ。期待しよう。