お宝映画・番組私的見聞録 -47ページ目

必殺仕業人

中村敦夫で「必殺シリーズ」と言えばシリーズ7作目となる「必殺仕業人」(76年)である。かつては「木枯し紋次郎」(72年)の対抗馬(30分かぶりの裏番組)として「必殺仕掛人」がスタートした経緯もあり、さすがに「紋次郎」が終了して直ぐなら、出演はしなかったかも、と中村は語っているが、既に3年が経過しており、特に抵抗はなかったという。また、同じスタッフによる「おしどり右京捕物車」(74年)への主演で気心が知れていたこともあった。
この前週まで「必殺仕置屋稼業」が放送されており、初めて間をおかず藤田まこと演じる中村主水シリーズが連続して放送されることになった。その最終話で印玄(新克利)とおこう(中村玉緒)が命を落とし、市松(沖雅也)も江戸を去ることになった。しかも市松に逃げられた責任を取らされ主水は牢屋見廻り同心に格下げとなっていた。
そんな状況で本作はスタート。残った主水と捨三(渡辺篤史)はそのまま裏家業を続けていたが、捨三は風呂屋の釜版から今でいう洗濯屋に転職していた。いつの間にか表向きは鍼灸師のやいとや又右衛門(大出俊)が仲間に加わっているが、かなりドライな関係で仲間意識も薄い。そこに現れたのが赤井剣之介(中村敦夫)と内縁の妻お歌(中尾ミエ)である。剣之介は本名を真野森之助という沼木藩藩士であったが、惚れた旅芸人お歌のために殺人を犯し脱藩、お尋ね者となっていた。しかし、旅先で市松と出会い主水のことを聞き、江戸にやってきたのであった。
こうして仕業人チームが結成されるのだが、「仕業人」は一般公募で選ばれたものだが、劇中では10話から用いられた。必殺の見どころと言えば、何と言っても殺し技のわけだが、主水は刀、又右衛門は鍼というわけで、剣之介に何か工夫が必要ということになった。剣之介は剣の腕は立つのだが武士を捨てたので刀は使わない。中村敦夫によれば、この殺し技についての会議がプロデューサーや殺陣師を交えて何度も行われるのだという。中々いいものが出ず、会議は難航した結果、中村が苦し紛れに提案したものが採用されたのである。一刺し指に一部が刃物上になっている指輪をはめ、それで相手の髷の結び目を斬る。髪の毛が垂れ下がり、その毛を首に巻き付けて絞め殺すのである。何ともまどろっこしい。だったらその指輪で首を斬るか、予め首を絞める紐でも用意しておけば良いのだが、そこはドラマの美学ということらしい。
ところで、中村の認識では本作の主役は藤田まことであったようだ。しかし、EDクレジットのトップは中村敦夫で、藤田まことは今までと同様に最後(トメ)であった。藤田本人もこれには不満があったようで、降板騒動にまで発展するのである。初登場の「必殺仕置人」(73年)こそ主役とは言い難かったが、それ以降は主役扱いでも良かったと思う。まあ次に登場することになる「新・必殺仕置人」(77年)でトップ表示になるのだが。
他のレギュラーだが、中村せん(菅井きん)、中村りつ(白木万理)はいつも通り。そして主水の同僚の老同心・島忠助(美川陽一郎)。美川は本作放映中に急死したが、70歳くらいと思っていたらまだ58歳と聞いて驚いた。本人も老け役を好んでやっていたようだ。出戻り銀次(鶴田忍)は牢屋が大好きで、放免されても小さい罪を犯してすぐに戻ってくる。また中村家のはなれの間借り人として、お澄(二本柳俊衣)、玄覚(田渕岩夫)、千勢(岸じゅんこ)が登場し、千勢が一番長く居た。中村敦夫は「何とかと言う無名女優が意味不明の役で毎回出ていたが、私には何のためか理解できなかった。映画会社のお偉いさんとの「わけあり」だから触れないほうがいい、とのことだった」と語っているのだが、該当しそうなのが岸じゅんこしかいない。まあ当時「ウイークエンダー」のレポーターとして人気になっており、ドラマはこれが初だったようなので、中村から見れば「無名女優」だったのかもしれない

 

翔べ!必殺うらごろし その2

もう少しだけ「翔べ!必殺うらごろし」(78年)である。
22話でおばさん(市原悦子)は記憶を取り戻す。生き別れの幼い息子がいて、記憶を失う要因にもなっていた。最終23話でその息子がそば屋夫婦(平井昌一、松木路子)に拾われて育てられていたことを知る。その夫婦が悪人(浜田晃、千葉敏郎、唐沢民賢)に狙われていることを知り、単独で立ち向かうが、元々腕が立つわけでもないので斬られてしまう。「先生ーっ!」と叫んで、放り投げた匕首は先生(中村敦夫)のいたはるか遠くの祠の扉に突き刺さる。その匕首を手に取った先生はおばさんが斬られる姿を霊視する。そういう現象の起こるドラマなのだ。先に駆けつけた正十(火野正平)の背中でおばさんは息を引き取る。
先生は太陽を信仰しており、そのエネルギーで殺しを行うので基本的に昼間に行動する。まず源蔵(唐沢民賢)を屋根伝いに追跡し、そのまま上からいつもの旗竿で串刺しに。そして反対方向に歩いて行った三隅(千葉敏郎)を走って追跡。いつの間にか先回りしており、高く生えた竹の先端で待機し、三隅が下を通りかかった時に竹をしならせながら飛び込み串刺しにする。続いて残る利兵衛(浜田晃)の元へ走って駆けつけ旗竿で動きを取れなくすると、おばさんの形見の匕首でとどめをさした。浜田晃は第1話でも先生に殺されている。
というように、先生一人で三人を片付けたのだが、若(和田アキ子)は何をしていたかと言うと物語には全然からまず、終始具合悪そうに横になっているだけだった。実は和田は実際に体調不良だったとのことで、このような展開になったらしい。終盤に出番が少なかったのもそのためである。中村がケガをしたり市原も体調を崩したりしたらしく、オカルトを扱っていたこととも関係があるのかもしれない。
殺しの場面に用いられるBGMは主題歌である和田アキ子「愛して」のアレンジだが、作曲は音楽担当の比呂公一ではなく浜田省吾(作詞も)によるものである。この曲が流れると先生が旗竿も持って走る姿が目に浮かんですまう。
中村敦夫は本作についても著書「俳優人生振り返る日々」の中で語っている。時間が余った時などは、レギュラー四人で麻雀をやることがあったという。市原悦子は俳優座の大先輩でもあり女優としては信頼を寄せていたが、麻雀に関してはとにかく下手過ぎるのだという。それでいて負けず嫌いだから、彼女が勝つまで帰してもらえないそうだ。中村たちが勝たせようとしても勝てないので、険悪な雰囲気のまま明け方になってしまったという。ようやく彼女が勝ったと思ったら大粒の涙を滝のように流し、中村は唖然としたそうだ。和田アキ子もイメージ通り負けず嫌いだが、玄人はだしの火野正平には勝てない。勝つまでやめようとしない和田に火野が珍しく怒り出したという。中村が間に入って「あと一回にしよう」ということにしたが、結局和田は勝てず麻雀台をひっくり返し、パイを火野にぶつけ始めたという。
中村と火野は京都の撮影所で長く仕事をしていたのでよく知っていた仲だったというが、共演作は思いつかない。「木枯し紋次郎」にまだ本名の二瓶康一だった頃の火野がゲスト出演していたのは覚えているけれども、まあ他にも探せばあると思う。

 

翔べ!必殺うらごろし

「必殺シリーズ」は人気コンテンツだし、自分も好きではあるのだが、敢えてここでは取り上げではこなかった(昔ちょっとやったかも)。
その中でも低視聴率、つまり不人気でシリーズ終了の話まで飛び出した作品がある。それがシリーズ第14弾、中村敦夫主演の「翔べ!必殺うらごろし」(78年)である。藤田まことの中村主水シリーズが定着し、その合間には山田五十鈴主演の「必殺からくり人」シリーズが放送されるようなフォーマットになっていたが、そんな中に突如登場したのが本作であった。
その特徴は毎回何らかの超常現象がおこること。当時はオカルトブームだったということもあるが、そういうのに乗っかりたがるのが必殺シリーズでもあった。ポルターガイストとかドッペルゲンガーとか超能力とかトリックとかではなく起こるのである。
しかし、何と言っても中村敦夫演じる旅の行者・通称「先生」はそんな物すべてを超越した存在であり、まさに超人なのである。素手で刀を折ったり、馬よりも早く走り、その馬に乗った相手よりも高くジャンプ。常に大きな旗竿を持ち歩いているが、その旗竿が武器になっており、相手に投げつけて串刺しにするのである。
彼に同行しているのが男装の女性である通称「若」(和田アキ子)。殺し技もただひたすら殴るというもの。記憶喪失の中年女性である通称「おばさん」(市原悦子)。道すがら相手に話しかけ油断したところを隠し持っていた匕首で一突きするというもの。この三人に関しては、その本名も正体も不明である。彼等の世話役と情報収集をつとめているのが正十(火野正平)である。「先生」や「若」は報酬を得て殺しをするわけではないので、いつも何とか事件を金にしようとしている。他に彼らに同行しているわけではないが、行く先々に現れる旅の巫女おねむ(鮎川いづみ)がいる。
或る意味、あまりに破天荒な番組に視聴者はついてこれなかったようである。かくいう自分も、当時は真面目な?必殺シリーズ視聴者だっただけに、何となくチャンネルを合わせていただけであった(見ていなかったかも)。製作者サイドもこれではいかんとばかりに原点回帰を行ったのが次作の「必殺仕事人」だったわけである。これ以降は中村主水出演シリーズは全て「仕事人」の冠がつくことになった。まあ「うらごろし」も今見ると、面白くないわけではない。というか笑って見られたりする。
音楽担当が本作に限っては平尾昌晃や森田公一ではなく比呂公一となっている。比呂公一は別名を植木浩史といい「ミラーマン」の主題歌を歌っていた人である。か主として数曲出しているが、有名なのはこの「ミラーマンの唄」であろう。ところで、植木浩史のロをトに帰るとウエキヒトシつまり植木等になるわけだが、かれは植木等の長男である(本名は廣司)。また火野正平の音楽プロデューサー、伴奏者としても長年活動しているという。

 

水滸伝 その3

二回で終了する予定だったが今回も「水滸伝」(73~74年)である。
中村敦夫が自著「俳優人生 振り返る日々」で「水滸伝」の撮影エピソードについて語っている部分がある。そもそも中村敦夫はこの話には乗り気ではなかったという。こうした大企画はお祭り騒ぎに終始し、作品は大味なものになるだろうと予測していたからであった。しかし、制作会社が提示した条件の中に撮影が中国本土で行われるだろうといのがあった。中国とは72年に国交が回復したばかりであり、一般人が中国へ行くチャンスなどほとんどなったので、そこに惹かれて出演を承諾したという。しかし、中国で行われるはずだった最初のロケは伊豆大島に変更となってしまったのである。理由を問い詰めると、封建時代の作品を中国が認めなかったからだという説明があったという。四人組が健在で古い価値観を抹殺する運動をしていた頃なのでありうる話ではあった。一方で制作費がかさみすぎるので中止になったという噂もあり、本当のところはわからないという。
本作では馬に乗るシーンが不可欠であり、毎日のように特訓が行われ、中村を始め、土田早苗、あおい輝彦などはすっかり馬術が上達したという。それでも半年の撮影で十数回は落馬したといい、落ち方をマスターしていたため、たいした怪我はしなかったという。
しかし一度だけ、秩父の長瀞で行っていた撮影での小休止中、反射板の光に馬が驚き立ち上がってしいまい、馬上の中村は後方に投げ出され岩に後頭部を打ち付け意識を失ってしまったという。金属のガードのあるカツラをしていたのが幸いしたようで表面上は大きな怪我はなかった。
気が付いた時には赤坂の病院のベッドの上だったといい、実はこの時の中村は記憶喪失状態だったのである。数人のスタッフが心配そうにのぞき込んでいたが、判断力はあったため、誰かはわからないが風体から映画関係者だろうという推測はできたという。「馬から落ちたんですよ。覚えてますか」という問いかけから、自分は競馬の騎手とは思えないから、俳優に違いないというように、自分から余計なことは言わず、会話から自分の状況を探っていったという。そこに入籍してまもなかった彼の妻が駆け付けた。もちろん、妻の顔も結婚していたことすらも忘れていたが、八時間ほどの会話で何とか全記憶がつながったという。
ロケ現場は御殿場が多かったが、二時間ほどかかるので、フォルクスワーゲンのバンを買い、中を改造してベッドとデスクを備え付けたといい、現場に到着するまでは眠ることができるようになったという(当時キャンピングカーはなかった)。仲の良かった常田富士男は二日酔いのまま撮影に来ることが多く、そのベッドで寝てしまうことがよくあったらしい。この噂を聞いた勝新太郎は負けてなるものかと思ったのか、もっと大きなバスを買い、ソファセットつきの豪華な改造車を作ったという。

本作は外国でも人気を呼び、ヨーロッパやカナダで大ヒット、特にスペインでは爆発的な人気があったという。

 

水滸伝 その2

前回から引き続き「水滸伝」(73~74年)である。個々のエピソードに関しては、ほとんど覚えていなかったりするし、かつて録画をしたような気もするのだが、行方不明である。
というわけで、ネット上からの情報に頼るしかなかったのだが、敵が兄弟というケースが何度かあったようである。13話「荒野の三兄弟」ってサブタイでもわかる。その名も祝三兄弟。別にめでたいわけではない。祝竜(五味龍太郎)、祝虎(佐藤京一)、祝彪(黒部進)の三兄弟のことである。五味と佐藤は凶悪な顔だちでお馴染みだが、一番の乱暴者は黒部演じる祝彪だったようだ。彼らの父親が祝朝奉(下條正己)である。祝朝奉という字面だけ見るとお目出たい感じの名前なのだが、当然悪人である。下條正己といえば、下條アトムの父であり、「男はつらいよ」のおいちゃんとして有名で、悪役イメージの薄い人である。「必殺仕掛人」で小坂一也、伊藤孝雄と共に悪役を演じていたのを見たことはあるし、他にもあるのだろうが、まあ珍しい方だろう。
このエピソードでは戴宋(黒沢年男)が毒の矢を受けてしまうが、それを助けたのが燕麗(中山麻里)であった。本作のオリジナルキャラであり、扈三娘(土田早苗)の妹とという設定だ。この話は14話「決戦・祝家荘」に続くのだが、三兄弟と言えば、元祖だとばかり梁山泊の三兄弟である阮小二(品川隆二)、阮小五(常田富士男)、阮小七(渡辺篤史)が合流する。いつも思うのだが、阮小一、三、四、六はいないのだろうか。まあ必ず一から名付けなければならないという法律もないので、長男が阮小二でも問題はないのだが。
本エピソードでは折角登場した燕麗が死んでしまう。オールスターキャストと言いながら女性レギュラーは扈三娘しかいないのは物足りない。原作では確かもう一人女性キャラがいたように思うが、本作では登場しない。
もう一つは個人的に最も記憶に残っているエピソードである21話「巨星・荒野に墜つ」と22話「壮絶!救出大作戦」の前後編である。ここでは、曹狼(安倍徹)とその息子である曹塗(千波丈太郎)、曹魁(伊吹新)、曹索(亀石征一郎)、曹密(柳瀬志郎)、曹昇(剛達人)の五兄弟が登場する。もちろん全員腕は立ち、曹塗と曹索は頭も切れる感じ(他はちょっと足りない感じ)。梁山泊側もいつもより登場者は多く、最初の戦いで末弟の曹昇があっけなく林冲(中村敦夫)に斬られる。兄弟は村の女たちを誘拐し、曹狼は交渉のために梁山泊の首領である晁蓋(山形勲)に一人で来るように要求。そんな晁蓋を曹索の放った矢が撃ち抜き、晁蓋は息を引き取る。
22話になると、またしても阮三兄弟が合流。曹一家との激しい死闘が繰り広げられる。特に晁蓋殺害の実行班である曹索には激しい怒りが向けられ林冲によって仕留められる。最後の曹狼は何故か阮小二に殺られるのであった。
当時、小学生だった自分でも面白く感じていた記憶があるので、半年で終わるには勿体ないような気がしたものである。

 

水滸伝

話は中村敦夫に戻るのだが、「木枯し紋次郎」でスターの仲間入りをしたばかりだった中村を主演として迎えたのが、日本テレビ開局20周年記念番組である「水滸伝」(73~74年)である。具体的な額は不明だが、当時としては巨額の予算を投じて作られている(総額三億円作品などと噂されていた)。
番組のオープニングでは、40頭もの馬が調達され、それにスター俳優たちが乗り、エキストラも二百名投入されていたという。
原作は中国の古典文学で、作者は施耐庵とされている。本作では原作・施耐庵、原案・横山光輝となっており、横山が67~71年にかけて描いた漫画もベースたなっているようだ。
梁山泊に集う108人の英雄の物語なので、とにかく登場人物が多い。子供の頃、実家には「世界の文学」全30冊が本棚に並んでいたりしたのだが、半分も読んでいなかったと思う。当時このドラマを見て、全集の中に「水滸伝」も収録されていたので、読んで見たことは覚えており、それほど長編というわけでもなかったと記憶している。
誰が主役だったのか覚えていないが、ドラマでは中村敦夫の林冲を主役としている。記念番組ということもあり、オールスターキャストとなっている。主要レギュラーとしてはあおい輝彦(史進)、土田早苗(扈三娘)、長門勇(魯智深)、ハナ肇(武松)、寺田農(公孫勝)、原田大二郎(花栄)、内田良平(朱武)、黒沢年男(戴宗)、田村高廣(紫進)、若林豪(関勝)、長谷川明男(張順)、品川隆二(阮小二)、常田富士男(阮小五)、渡辺篤史(阮小七)、大前均(鉄牛)などで、梁山泊の首領となるのが山形勲(晁蓋)、晁蓋亡き後の首領が大林丈史(宋江)だった。スター俳優が並ぶ中で、大林の存在は異色だったが、俳優座の先輩でもある中村敦夫との関係が深く、「紋次郎」ではそのスタントを務めたこともあったという。「必殺シリーズ」での悪役としてもよく見かける。
他にも結局は梁山泊に入らないというキャラもいて、丹波哲郎(呼延灼)、佐藤允(楊志)、峰岸徹(黄信)などがそれだが、原作ではいずれも梁山泊入りしている。また山村聰(盧俊義)のように一度だけ登場というキャラもいる。
もちろん、全26話のドラマで108人のキャラ全員を出すわけもなく、いつの間にか揃っているということになる。加えて、毎回既に登場した梁山泊メンバーを全員を出すわけにもいかず(そこはギャラの関係か)、一回に付き五人から七人くらいに抑えられている。実際、毎回出演したのは中村敦夫と土田早苗だけで、ハナ肇、内田良平、黒沢年男あたりは後半全く登場しなくなったりする。
もちろん敵役や被害者役などもいるわけで、本作で一番の悪役となるのは佐藤慶(高求)である。佐藤慶も全話に登場するらしい。また林冲の妻として松尾嘉代(小蘭)、扈三娘の妹として中山麻里(燕麗)も登場している。
脚本は宮川一郎と池上金男の二人でほとんどを担当しているが、当初予定されていたうちの何人かは降板したのだという。監督である舛田利雄や中川信夫が脚本に併記されているエピソードもある。

 

斬り抜ける 俊平ひとり旅

前回から引き続き「斬り抜ける」(74~75年)である。視聴率的には苦戦をしいられていた本作だが、やはり本筋がある中での悪党退治は難しかったということだろうか。結構再放送やCSでの放送もされてはいたのだが、じっくりと見直そうとは思わず、後半は大雑把にしか覚えていない。
13話で一行は江戸に到着。ここで、鋭三郎(志垣太郎)とおしん(田坂都)の出番は終了となり、悪党退治もなくなる。俊平(近藤正臣)と菊(和泉雅子)の幕府への訴えが通ることはなく、逆に死罪を言い渡され逃亡することになる。俊平を愛してしまった菊は本当の不義者として生きていくことを決意し、太一郎(岡本崇)を嘉兵衛(佐藤慶)に預けることにする。しかし伝八郎(岸田森)に発見され、菊は惨殺されてしまうのである。
この14話が放送されたのが75年1月2日だったのだが、翌15話より番組タイトルが「斬り抜ける・俊平ひとり旅」に変更となったのである。どうせなら年明けから変更した方が区切りが良かったと思うのだが、菊の死が14話になってしまったのは予定通りだったのかどうかはわからない。ただ、前述のように視聴率が芳しくはなかったので、急遽のテコ入れだった可能性はある。
15話では真相を知った嘉兵衛が息子夫婦の仇を討つべく藩に戻り、丹波守(菅貫太郎)を討とうと城中に斬り込んでいくのだが、伝八郎に殺されるのであった。復讐の鬼となった俊平は弥吉(火野正平)と共に作州へと舞い戻って行く。ただ戻るのではなく、自ら「不義者俊平」を名乗り、道中で幕府と作州松平藩の権威を失墜させるための報復行動を行っていくのである。
16話からは「必殺シリーズ」&前作「おしどり右京捕物車」でお馴染みの面々がゲスト出演。藤田まこと、中村敦夫、中村玉緒、ジュディ・オングといった具合である。藤田まことは普段は昼行灯だが、実は腕が立つという中村主水のようなキャラで登場。その正体は黒鍬者だが、結局俊平との闘いは避けている。時代劇では黒鍬者は忍者っぽいイメージで登場することが多いが正確には忍者ではない。いくつかあるようだが最下級の兵士と言った感じの存在であろうか。
タイトルを変え、テコ入れを図ったが視聴率が上昇することはなく番組は26話の予定が20話での終了が決った。無論、最終話で俊平は伝八郎と丹波守を討ち果たす。そして、弥吉と太一郎とどこへともなく旅立っていくのだった。
主題歌「この愛に生きて」を歌うのはザ・ブレッスン・フォー。名前通り4人組のコーラスグループで、特撮やアニメなども多い。水木襄がメインの「緊急指令10-4・10-10」や若木ヒロシがメインの「サンダーマスク」ではコーラスを担当。以前はサニー・トーンズ名義で活動しており、「怪奇大作戦」の主題歌「恐怖の町」が有名である。

 

斬り抜ける

「おしどり右京捕物車」とくれば、続くのは後番組の「斬り抜ける」(74~75年)である。
作州津山松平藩の楢井俊平(近藤正臣)は藩の命令により友人であり同僚の森千之助(岩崎信忠)を斬ってしまうが、その真相を知り俊平は愕然とする。藩主の松平丹波守(菅貫太郎)が千之助の妻・菊(和泉雅子)を自分の妾にという密命を千之助が拒絶したためだったのだ。
俊平は菊とその息子・太一郎(岡本崇)を連れ、非道を幕府に訴えるため江戸に旅立つ。丹波守は俊平を不義者だとして、千之助の父・嘉兵衛(佐藤慶)と異母弟・伝八郎(岸田森)に後を追わせ、俊平と菊の殺害を命じた。というのが大まかなストーリー。
「不義」とは今でいう「不倫」であり、有名人がこれをやると滅茶苦茶に叩かれるのが現在の風潮だが、江戸の世でも不義密通は死罪だったりしたので、昔から強く悪の行為とみなされていたわけである。武士の場合、表沙汰になれば妻も相手の男も殺さなければならなかったため、密かに離縁を認めたり金銭などで穏便に済ませることが一般的だったらしい。
佐藤慶と岸田森というだけで緊迫感があるが、佐藤慶演じる嘉兵衛は悪人ではない。ただ、俊平の剣の師匠でもあるので、非常に腕が立つ。一方の岸田演じる伝八郎は歪んだ性格の野心家である。
俊平たちは逃亡の旅の際、弥吉(火野正平)、道家鋭三郎(志垣太郎)、おしん(田坂都)と知り合い行動を共にする。俊平は旅費を稼ぐため、弥吉の話に乗って悪党退治を買ってでたりする。火野正平が必殺シリーズで演じることになるキャラ(正八、正十)の元祖がこれだといえる。鋭三郎は大相な名を名乗っているが、農民の出身。イメージは「七人の侍」の菊千代(三船敏郎)だろうか。毎回のように刀を折ってしまうのがお約束。
刀とといえば、本作では「どんな名刀でも二人斬ってしまえば、血糊と油で斬れなくなってしまう」という設定がなされていた。おそらく事実と思われるが、それを言ってしまうと一度に二人までしか斬れないことになってしまうので、それ以前の時代劇では無視されていたのかもしれない。たとえば、第3話で阿藤海、岩尾正隆、根岸一正扮する三人の無法者を相手にした俊平の取った戦略は二人は斬り捨て、残る一人は竹を切ってそこに串刺しにするという方法だった。
相手から刀を奪ったり、違う武器を使ったり面白い展開ではあったのだが、やはり制約が多すぎたということだろうか、6話以降この設定は無視されるようになった。
主役の二人は幼馴染でもあり、互いに惹かれ合うこともあったという過去もあったという設定もあり、本当の不義者になってはいけないと清い関係を保とうとしていた二人だが、やはり旅をしていくうちにやっぱり惹かれ合って行くのであった。次回に続く。
 

 

おしどり右京捕物車 その2

前回から引き続き「おしどり右京捕物車」(74年)である。
第2話「炎」は個人的には気に入っている回である。第1話もあまり動かなかったが、この2話でも留守の間に滝蔵(入川保則)一味の巣である小屋に潜入し、右京(中村敦夫)は鞭一本で梁の上によじ登る。そこから滝蔵など六人(草薙幸二郎、永野達雄、汐路章など)を座ったままで攻撃するのである。鞭の先端には金属製の刃物のようなものがついており、首に巻き付けて滑らせるとその首筋をえぐったりするのである。
第3話「讐」では、初めて機動力が使われる。はな(ジュディ・オング)が箱車を押しながら走ると、浅造(天津敏)一味の四人が追いかける。右京が「回せ!」と叫ぶと車を180度回転させ、向かってきた相手を斬る。
第5話「蹄」では悪徳馬喰(牛や馬の仲買商人)が相手。演じるのは深江章喜、牧冬吉、石山雄大で、馬に乗った奴らが相手なので、はなを退避させて右京一人で戦う。鞭で相手を馬の上から引きずり落として仕留める。個人的には牧冬吉の悪役って、この時に初めて見たような気がする。まあ、ドラマデビューの「豹の眼」とか「怪傑ハリマオ」では悪役だったのだが、これは自分の生まれる前の話で、リアルタイム視聴では正義のおじさん忍者のイメージしかなかった。
そういう意味では第9話「妬」での江戸屋猫八の悪役というのも初めて見たと思う(そもそも悪役はほとんどなかったと思うが)。
第6話「奪」では深瀬(御木本伸介)と鞭対鞭、13話「砲」では短筒を所持する長安(中尾彬)との1対1での戦いや、14話「殺」でのスコープのようなものが付いた吹き矢を武器とする殺し屋(田口精一)など色んなパターンの戦いがあって飽きさせない。前後するが10話「爆」ではかつてはながほれていた男・喜作(寺田農)が登場。はなは自害までしようとするが観念(下條アトム)に止められる。喜作は手投げ弾を使って商売敵の船をしずめた甲州屋(安倍徹)や右京の上役でもあった戸田(日恵野晃)の仲間で、最終的にはその手投げ弾を使う一味との闘いになる。
16話「闇」でははなの目が見えなくなるのだが(最終的に回復)、前回も触れた通り初回に出てきた野洲の万蔵の手下(伊太八、常ら)五人が江戸へ舞い戻ってくる。役者が変更になっていて再登場感はないが、当時不在だったというリーダー的存在の伊賀(岸田森)の登場で緊迫感はあった。阿藤快(当時は阿藤海)も一味の一人として登場する。
番組終盤ニュース番組での取材のため中村敦夫がキューバに行ってしまい一か月間不在になったという。そこは秋山(前田吟)やはなが主役の回を作り右京の出番を極力少なくして斬り抜けた。22話「峠」などは、ほぼ浪人・倉田(岡田英次)と野盗である秩父の虎熊(南原宏治)の戦いに終始している。岡田と南原といえば、東映の少年探偵団シリーズ(56~57年)で明智小五郎と怪人二十面相を演じていた間柄である。それを懐かしんで見ていた人もいるかもしれない。

まあDVD-BOXも出ているようだし、視聴しやすい作品であるとは思う。


 

おしどり右京捕物車

個人的に今月は忙しいので、あまり調べなくてもいい題材ということで思いついたのが「おしどり右京捕物車」(74年)である。再放送も結構あったし、CS等でもよく放送されているイメージがある。
本作は当時多かったハンディキャップ時代劇の一つで、お馴染みの「丹下左膳」「座頭市」はじめ「めくらのお市」「啞侍鬼一法眼」といった障害を持った主人公が活躍する作品の一つだ。本作においてそれは足である。
中村敦夫扮する主人公の北町与力・神谷右京は悪党たちが恐れる凄腕の役人だったが、初回で野洲の万蔵(遠藤太津朗)一味の罠にはまり木材の下敷きとなり下半身不随となってしまう。そして奉行所を追われてしまうのである。そんな右京に今がチャンスと恨みを抱く悪党たちが次々と襲い掛かってくる。どれだけ恨みかってるんだという感じだ。
悪党退治しか能のない右京は不屈の精神で鞭の腕を鍛える。そんな右京に周囲の人間たちがサポート。奉行所での友人だった与力・秋山左之介(前田吟)が持ってくる事件をわずか一両の報酬で引き受ける「下請け与力」となり、妻であるはな(ジュディ・オング)押す手押し箱車に乗って悪党たちに立ち向かって行くのである。無報酬(たぶん)で、夫婦をサポートする観念(下条アトム)と音三(太田博之)の若者コンビ。なにかしら右京に恩義があるのだろうが、それが劇中で語られることはなく、不思議に思ったりもする。右京にどやされたり、何度も危険な目にあってもその支援を辞めることはない。右京ははなに対しても終始、仏頂面で命令口調だが気づかいを見せる描写も多くあり、夫婦仲は良いというのはわかりタイトルの「おしどり」につながる。
箱車はやはり「子連れ狼」からの発想であろう。子供ではなく大人が乗ったらどうなるか、ということだろうか。下半身不随の主人公は「鬼警部アイアンサイド」の影響もあったかもしれない。
元々は「必殺シリーズ」の4作目として企画されたらしく(実際放送されたのは「暗闇仕留人」)、基本的なスタッフは必殺シリーズと同じなのである。だから、必殺テイストの強いエピソードも多い。大人数を相手にする回も多いのだが、基本的には少人数を軽快なメロディに乗って倒していくのが好みである。主題歌の「愛は夕日に燃えて」のイントロがとても良い。
第1話では、ほとんど機動力を使わず前述の万蔵ら四人(遠藤、五味龍太郎、志賀勝、大橋壮多)を倒すのだが、一味の手下として登場しながら「お前らはすっこんでろ」ということで、所在不明になっていた伊太八(室田日出男)やお役者常(藤木敬士)は16話に再登場する。しかし役者がそれぞれ蔵一彦、富川澈夫に変更されており、再登場という感じはしなかった。今まで気が付かなかったのだが五味、志賀、大橋は遠藤の息子という設定だったこと。冒頭で右京に捕まった万蔵の息子が四郎吉(酒井修)という名前で、それぞれの役名が市太郎(五味)、半次(志賀)、三造(大橋)なので、四兄弟設定だったことに今更ながら気づいた。
ちなみに志賀勝のクレジットはなく、似た誰かかな?とずっと考えていたのであるが、ウィキペディア情報で半次役は花岡秀樹となっているが実際は志賀勝で、半次が万蔵の次子とも記されていたので前述の件に気づいたのである。ドラマをよく見ていなかっただけかもしれんが。