お宝映画・番組私的見聞録 -48ページ目

新吾十番勝負(田村正和版)

今回も田村正和主演の時代劇ではあるのだが、ほぼ詳細が不明なのである。
その名も「新吾十番勝負」(66~67年)。このコンテンツ自体は非常に有名なものだと思う。原作は川口松太郎で、徳川吉宗の隠し子である葵新吾の活躍を描いた物語である。
東映の映画版では大川橋蔵が主演で59~60年にかけて4作が作られている。その後も「新吾二十番勝負」(61~63年)が3作、そして「新吾番外勝負」(64年)と制作された。
テレビドラマ版の方も何度か制作されており、第1作が主演は江見俊太郎で58年~60年にかけて放送。江見俊太郎というと意外に思うかもしれないが、初代眠狂四郎もこの人である。第2作の主演は夏目俊二で「新吾二十番勝負」として61年に放送。そして三回目が田村正和主演で66~67年に放送されている。以降も70年の松方弘樹版、スペシャルドラマとして放送された81・82年の国広富之版。同じくスペシャルで90年の真田広之版がある。
さて、田村正和版の「新吾十番勝負」だが、ブラザー劇場枠の30分ドラマとして放送され、全39話である。ブラザー劇場といえば「刑事くん」シリーズのイメージだが、月形龍之介主演の「水戸黄門」(64~65年)などの時代劇もある。ちなみい「新吾~」の後番組が「コメットさん」だったりする。
30分のドラマではあるが脚本に原作者でもある川口松太郎、監督に松田定次という映画版と同じメンバーが起用されている(全話ではないようだ)。主題歌も舟木一夫が担当。舟木で時代劇と言えば「銭形平次」が思い浮かぶが、こちらも66年スタートである。ちなみに舟木は舞台で「新吾十番勝負」を演じているようだ。
さて、出演者であるが主演の田村正和以外は役柄については一切不明である。レギュラーとして挙げられているのが牧冬吉、市川瑛子、扇千景、大瀬康一、菅原文太、佐野周二、月形龍之介などであり、中々豪華なものを感じる。大瀬と牧と言えば「隠密剣士」の人気コンビである。 こういうのに牧が出ていると主役をサポートする忍者役なのかなと思ってしまう。本作は松竹の制作だが、正和も菅原文太も当時は松竹の所属である(正和はフリーになっていたかも)。文太は松竹時代は映画でも主演になることはなかった。
ゲストも中々豪華だったようであり、山城新伍、長内美那子、戸上城太郎、左卜全、大木実、松島トモ子、待田京介、内田良平、松本錦四郎、中村晃子、山東昭子、東千代之介、野川由美子、石川進、東山明美、美川憲一、嵯峨美智子、松山容子、天知茂といった具合である。レギュラーとゲストに違いがあるかもしれないが確認する手段がない。
自分はこの映像を部分的にも見たことはないし、長いこと再放送などもされていないと思われる。ネット上にもほとんど情報はない。当時の正和はそこまで人気はなかったようだが、美剣士には違いないだろう。一度見てみたい作品である。

 

乾いて候

今回は田村三兄弟の共演で話題となった「乾いて候」(83、84年)を取り上げたい。
まず田村三兄弟についての基礎知識だが、父はバンツマこと阪東妻三郎(本名・田村傳吉)で、その長男が高廣、三男が正和で、四男が亮である。次男の俊麿も映画出演をしたことがあるが、俳優を本業とはせず兄弟のマネージャーとして活動していた。80年に田村産業を設立し芸能界を離れている。高廣と正和は15歳差、正和と亮は3歳差である。田村亮といえば芸人の方を思い浮かべる人も多いかもしれないが、俳優・田村亮は芸名で本名は田村幸照という。
彼らと異母兄弟となるのが同じく俳優の水上保広で、亮の1歳下である。色黒でちょっと羽賀研二に似ている感じとでもいうのだろうか。時代劇の悪役が多い。
さて「乾いて候」は原作・小池一夫、絵・小島剛夕という「子連れ狼」コンビによる劇画である。83年にスペシャルドラマとして「お毒味役主丞 乾いて候」として放送された。主人公の腕下主丞(田村正和)は、8代将軍徳川吉宗(田村高廣)のお毒味役だが、裏では吉宗をその刺客から守る凄腕の剣士である。実は腕下主丞(かいなげもんどと読む)は、吉宗の隠し子なのである、と言うのが大筋。
吉宗と言えば、やはり松平健や山口崇のイメージが強く若々しいイメージがあると思うが、当時の田村高廣は55歳。実際に吉宗は60歳まで将軍に就いていたので無理なキャスティングではない。本作では名君というよりバカ殿っぽく描いているようだ。他のキャスティングだが大岡越前に中山仁、月光院に長内美那子、間部詮房に久富惟晴、管に真行寺君枝、上村香子、綿引勝彦など。田村亮はと言えば何故かナレーションの担当であった。
翌84年も時代劇スペシャル「乾いて候 お毒味役必殺剣」として放送され、正和、高廣、中山仁、真行寺君枝は前作と同じ。他に梅宮辰夫、左時枝、竹井みどり、菅貫太郎、遠藤太津朗等で、田村亮はやはりナレーターであった。
この84年に全6回ではあるが連続ドラマとしても放送された。正和と高廣は同役だが、大岡越前役は田村亮に変更となりメインの3人を田村三兄弟が演じることになったのである。他の出演者は中井貴恵、山口果林、近藤洋介、江波杏子、江原真二郎、菅貫太郎、睦五朗、山田吾一、石橋蓮司、平泉成、風祭ゆき等。
それから9年後の93年にもスペシャルドラマとして放送されており、メインの田村三兄弟は同役で。他に八千草薫、池上季実子、長門裕之、綿引勝彦、二宮さよ子等が出演した。三兄弟共演はこれが最後と思われる。
ドラマではないが「駆けよ’バンツマ」(03年)という番組で、阪東妻三郎没後50年を忍び、次男の俊麿を含めた4人での対談が行われている。
06年に長兄・高廣が亡くなり、21年の先日正和が亡くなった。どちらも77歳であった。

 

 

若さま侍捕物帳(田村正和版)

今回も田村正和主演の時代劇である。あの田村正和が元気に飛び跳ねて躍動し、べらんめえ調でまくしたてるのが「若さま侍捕物帳」(78年)である。当時これを見た人は驚いたであろうし、強烈な違和感を感じたかもしれない。「眠狂四郎」にしろ前回の「運命峠」にしろ、田村正和といえば、口数も少なく最低限の動きで人を斬るみたいなイメージだったと思われる。本人も今までと違うような役柄に挑まなければならないと感じていたのであろうか。
本作は城昌幸の「若さま侍捕物手帖」を原作としているが、これは何度も映像化されているコンテンツである。まず映画版が新東宝で50~53年にかけて4作品あり、主演は黒川弥太郎、坂東鶴之助。東映では56~62年にかけて10作品制作され、主演は全て大川橋蔵である。タイトルはどちらも「若さま侍捕物帖」シリーズである。
テレビ版の1作目は59年「若さま侍捕物手帳」で主演は夏目俊二。次が67年「若さま侍捕物帖」で主演は市川新之助(六代目)。続いて73年「若さま侍捕物手帖」で主演は林与一で、次がこの田村正和版ということになる。テレビ版のタイトルだが一見同じようで、全部違っている。「手帳」だったり「手帖」だったり「帳」だったり「帖」だったりしているのだ。もちろん意味に違いはなく原作と同じなのは73年の林与一版だけである。
若さまは本名不明で、その素性も不明で劇中でも「若さま」と呼ばれている。実はさる大名の落しだねだが、はっきりとは明かされない。まあ大体の場合、将軍家に関わっていたりするのだが。本作には限ってはオリジナル設定があり、曲独楽の使い手で、居候先の船宿では船頭をしたりしているというものだ。相手に独楽を投げつけて、その額で独楽が回るという技を持っている。
他の出演者だが、ジャネット八田(櫛巻きお紺)、松山省二(遠州屋小吉)、嵐圭史(神田左京)、瀬川新蔵(佐々木俊蔵)、佐藤万理(お糸)、市原悦子(おふじ)、伊藤雄之助(喜平)、中村梅之助(矢部駿河守)といったところである。梅之助が演じるのは北町奉行だが、もちろん遠山の金さんではない。本作の制作は国際放映、前進座、テレビ朝日となっているが、梅之助は前進座の代表で、嵐圭史、瀬川新蔵も前進座の役者である。14話ゲストの今村民路(現・藤川矢之輔)も前進座の役者だが、梅之助、瀬川と合わせて「伝七捕物帳」のメンバーとなる。
ゲストに目を向けると中田博久、黒部進、速水亮、佐々木剛、大浜詩郎といった特撮ヒーロー経験役者が目立つ。隊員役まで入れると二瓶正也、沖田駿一、加藤寿、三井恒、佐野光洋、塚本信夫なんかも出演している。
主題歌はフォークソングのような感じで市川光興という人が歌っているが、この人の本業はニッポン放送のディレクターだったらしい。。
本作がきっかけかどうかは何とも言えないが、田村正和は80年代に入ると「うちの子にかぎって…」(84年)のようなコメディドラマに出演するようになっている。
 

 

運命峠

前回、「眠狂四郎」の1エピソードについてちょっと触れたのだが、そのタイミングで田村正和の訃報。次になにをやるのか決めていんかったので、ここは田村正和主演作から「眠狂四郎」ではなく「運命峠」(74年)を取り上げてみたい。
この「運命峠」も原作は柴田錬三郎である。柴錬はとにかく田村正和を気に入っていたようだ。実際に親子のような親密な仲だったそうな。とにかく合掌。
この番組、つい最近に東映チャンネルで放送されたりしていたので、見た人もいるかもしれない。自分も多少見てはいるのだが、ほとんど流し見という感じで内容はほとんど把握しておらず、出演者も覚えておらず、まあ見ていないのと一緒である。
で本作のストーリーだが、田村正和演じる秋月六郎太は徳川家光の双子として生まれたため、捨てられてただ彷徨うだけの日々を送っていた。しかし、豊臣秀頼の遺児・秀也(増田将也)とその母・桂宮蓮子(大谷直子)と出会ってしまう。家康の「豊臣の血筋を根絶せよ」との遺言に従って天海(吉田義夫)と柳生宗矩(近衛十四郎)が動き出し、忍び者である闇の七兵衛(戸浦六宏)や千里運天(渡辺篤史)が母子を狙う。しかし運天は秀也の侍女ささ香(渡辺やよい)に心を奪われ徳川を裏切り六郎太側に付く。七兵衛も秀也を手中にすると徳川を裏切り、豊臣の残党を操ろうと企てる。つまり六郎太が狙われたわけではなく、蓮子・秀也母子が狙われているわけで、六郎太は巻き込まれる形で母子の助力することのなるわけだ。
他にもセミレギュラー的に柳生十兵衛(伊吹吾郎)、朝比奈源右衛門(佐藤慶)、漢家千早(堀越陽子)・小太郎(進士晴久)の姉弟らがいる。進士は龍角散のCM「…と日記には書いておこう」で話題となった。また、無空影郎次、鬼面堂太郎というやたらカッコいい名前の忍びが登場するが演じるのが小島三児と江幡高志ということで、コメディリーフ的な存在のようだ。物語は11話で、一転し三年の月日が流れる。役者も秀也は道井和仁に。小太郎も進士から太田博之にチェンジとなっている。
第1話にはゲストとして桜木健一演じる猿飛佐助が登場。桜木は72~73年にかけての「熱血猿飛佐助」で同役を演じていた。他に三好晴海入道役で田子の浦親方が出演している。佐助や柳生十兵衛が登場するように歴史上の剣豪や架空の剣豪が六郎太と対峙する。佐々木小次郎(片岡孝夫)や戸隠梅軒(郷鍈治)、後藤又兵衛(嵯峨善兵)など。17話には伊藤一刀斎役で実兄の田村高廣が登場する。
最終話では徳川家光と対峙することになるが、六郎太と双子設定なので当然正和の二役である。自分は未読だが柴錬の原作とは結構違いがあったようで、原作ファンからは不満の声もあったらしい。

 

岡っ引どぶ どぶ野郎

天知茂の時代劇で「無宿侍」(73年)を思いついたが、2年ほど前ににここでやっていたのを忘れていた。この時の共演者に山崎努がいたが、そういえば山崎も雲霧仁左衛門をやっている。しかし、時代は95年で自分の中では新しい作品。この欄では新しくても80年代前半くらいにしたいと勝手に思っている。
そこで今回は山崎努主演でも、あまり知られていないであろう「岡っ引どぶ どぶ野郎」(72年)を取り上げたい。
まあ「岡っ引どぶ」と言えば、大体の人は田中邦衛を思い浮かべると思うのだが、それより策に山崎努版が存在するのである。実は田中邦衛版も含めて、この番組は全く見たことがない。特に山崎版は30分番組だったということもあり、再放送もあまり行われなかったのではないだろうか。ビジュアルはネット検索で見つけたが、岡っ引きという風貌ではない。髪型は浪人っぽく、ヒゲをはやし、首にはマフラー(のようなもの)を巻いている。元々は武士なのでそれなりに腕は立つ。武器は仕込み十手で、十手の中に刃物が仕込んであるというものだ。時代劇では悪役の武器として、登場するのを見かけるが本作がその元祖かどうかは不明である。
原作は柴田錬三郎で、初回の演出は五社英雄が務めている。山崎以外のレギュラーだが、水野久美(お仙)、和田浩治(鼠小僧次郎吉)、役柄は不明だが米倉斉加年、柳沢真一、そして田村正和(町小路左門)。町小路は盲目の与力で、どぶの雇い主である。スリのお仙や義賊の次郎吉はどぶに過去に見逃してもらった恩義から密偵など彼のサポートを行う。
番組自体は18回で終了したが、この番組で田村正和を気に入った柴田錬三郎は、この数カ月後に始まった「眠狂四郎」で彼を狂四郎に抜擢するのである。その17話は「岡っ引どぶが来た」のサブタイどおり山崎努がどぶ役でゲスト出演している。手塚治虫のスターシステムのごとく、柴錬二大ヒーローを共演させるという粋な企画である。ちなみに柴田錬三郎本人も飲み屋の親父役で登場している。
田村版「眠狂四郎」は、けっこう最近でもCSなどで放送されているが、ここに山崎のどぶが出てきても、かつて彼が演じていたキャラとだとは、わからない人が多いのではないだろうか。72年当時の山崎努はそれなりに役者としての地位は築いていただろうが、やはり「天国と地獄」の犯人役の人というイメージがまだ強かったかも。しかし、73年「必殺仕置人」で頭を剃って念仏の鉄を演じたことにより、より茶の間に浸透した役者になった気がする。

 

雲霧仁左衛門(天知茂版)

前回に続き。天知茂主演時代劇から「雲霧仁左衛門」(79年)である。原作は池波正太郎で何度か映像化されているが、テレビ化はこの天知版が最初だったようだ。「鬼平犯科帳」が火盗改メ側から描いた話であるのに対して、こちらは盗賊側から描いた話ということになる。
天知演じる仁左衛門は100人を超える大盗賊の頭で、本名は辻伊織という藤堂藩士。その配下を演じるのは小頭である財津一郎(木鼠の吉五郎)、大谷直子(七化けのお千代)、谷隼人(州走りの熊五郎)、江藤潤(因果小僧六之助)がメインメンバーで、他にも池上季実子(白糸のおみつ)、荒井注(富の市)、ホーン・ユキ(黒塚のお松)、立花正太郎(傘屋の忠吉)、江幡高志(煙管屋の利助)等がいる。立花正太郎は元祖ジャニーズのメンバー真家ひろみ(宏満)のことで、池波正太郎に貰った名前らしい。82年には引退してタクシー運転手に転職してしまうのだけれども。
対するは火付盗賊改方。その長官を演じるのは田村高廣(安部式部)。まあ鬼平なみにできるやつと言っていいだろう。筆頭与力に高松英郎(山田藤兵衛)、同心に三浦洋一(高瀬俵太郎)、中村龍史(木村与四郎)、加島潤(井口源助)、穂積隆信(岡田甚之助)、岡っ引きに草薙幸二郎(浅草の政蔵)、密偵に宮下順子(お京)、市村昌治(留次郎)、及川ヒロオ(豊次郎)等がいる。岡田は雲霧の内通者でもある。
雲霧一党は基本は「犯さず、殺さず、貧しき者から奪わず」を掟にしているが、掟を破れば容赦なく殺す殺されるとなるし、火盗改めを殺すこともある。一番ヤバいのが六之助で、前述の留次郎、豊次郎、裏切った左とん平(山猫の三次)と次々に刺殺している。仁左衛門自身も式部に正体がばれた岡田を口封じのために殺したりしているのである。
本作でも天知とは「非情のライセンス」や「江戸川乱歩の美女シリーズ」で共演していた財津一郎、荒井注、左とん平はもちろん梅津栄や天知主演のドラマには必ず出てくる宮口二朗、北町嘉朗も当然のようにゲストで出演している。
11話からは仁左衛門の実兄として根上淳演じる辻蔵之助が登場。12話のサブタイは「惨殺!雲霧一党」となっているが、惨殺されるのは同心の高瀬と密偵のお京だったりする。まあ、雲霧側も吉五郎と六之助が自決という形で果てるのだけれども。六之助の死に方は原作とは違うらしい。
最終話では兄・蔵之助が仁左衛門の身代わりとなって処刑。式部は身代わりと見抜いていたが、言及することはなかった。脚本は全話・宮川一郎が担当。天知と同じ新東宝の出身で「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」(57年)でデビュー。天知主演の「地獄」(61年)も宮川の脚本だ。
ちなみに、この前年に公開された映画版は仁左衛門が仲代達矢、お千代が岩下志麻、吉五郎が長門裕之、六之助があおい輝彦、熊五郎が夏八木勲、お松が倍賞美津子という中々重厚な顔ぶれ。安部式部は六代目市川染五郎(九代目松本幸四郎、現・二代目松本白鸚)で、山田藤兵衛はこのテレビ版と同じ高松英郎であった。

 

闇を斬れ

今回は三船プロ作品ではなく、天知茂繋がりで「闇を斬れ」(81年)である。ちなみに「闇を斬る!大江戸犯科帳」(93年)というドラマもあり、ややこしいがこちらは里見浩太朗、西郷輝彦の二大スター共演である。
さて「闇を斬れ」だが、前々回の「江戸の鷹」は田沼時代を描いた話だったのだが、本作も同様なのである。しかも、本作では天知が主役の鳥飼新次郎と10代将軍徳川家治の二役を演じる。二役だが、実は生き別れの兄弟であるとかいう設定はないようである。
「江戸の鷹」のメインライターは池田一朗であったが、本作でも第1話を始めとした5話分を池田が担当している。ちなみに、池田は隆慶一郎の名で時代小説も書いていた。本作では鷹ではなく隠密犬(甲斐犬)が登場する。「かいいぬ」ではなく「かいけん」と読む。
鳥飼新次郎は本名を鳥居庄次郎と言う。「名前を変えて死人として闇で活動せよ」との命を受けてのことだが、字面も読みもそっくりであまり意味がないように思う。
新次郎には自らスカウトした三人の仲間がおり、坂口良子(渚)と三浦浩一(哲三)と山城新伍(安斎)である。渚と哲三は元忍びであり、裏では殺し屋をやっていた。安斎は元南町奉行所同心・荒谷龍之介だったが、濡れ衣の罪で奉行所を追われた後は按摩として生活していた。その妻が結城しのぶ(お政)で、元同僚の同心が穂積隆信(山村三之助)である。また、沖雅也が松平定信をを演じる。
敵の大将は当然、田沼意次ということになるが、演じるのは三國連太郎である。その息子である若年寄の田沼意知が原田大二郎で、意次配下の用人を小林昭二(三浦庄二)が演じている。三國は悪の大物といった感じがあるが、原田や小林は正義の人イメージが強く、悪役は少ないのではないだろうか。
25話にて安斎の妻・お政が死亡。田沼側も意知が新次郎たちによって討ち果たされる。意知は実際、1784年に暗殺されているが、幕府内の勢力争いによるものである。それを新次郎たちにやられたということにしたのだ。実際に意知が悪人だったかどうかは不明だが、幕府の中で意知だけが日本の将来を考えていた、と当時のオランダ商館長が書き残していたという。
最終話では安斎、哲三、渚と意次の暗殺部隊に次々と殺されてしまう。新次郎は一人、意次の大名駕籠を襲撃しようとするが、定信に静止される。やはり史実を無視してに意次を殺すわけにはいかないのである。結局は家治に意次の悪事の数々を記した訴状を渡した後、何処へと去っていく。その訴状をきっかけに田沼意次は失脚するのであった。
田沼時代を題材にしたドラマのラストは壮絶なものになりがちのようである。
 

 

江戸の牙

GWなので(最終日だが)数時間早くUP。三船プロシリーズ、今回は「江戸の牙」(79~80年)である。前回の「江戸の鷹」と若干混同するが、もちろん内容は全然違う。
何と言ってもその特徴的なOPは印象に残る。「あなた、剣精四郎を知ってますか? 大熊伝十郎を知ってますか?」で始まり「…朝比奈軍兵衛を知ってますか? あなた、江戸の牙を知ってますか?」と全員の名を読み上げ、知ってますかと質問される。それだけでhなく1837年当時、江戸の人口は128万人で世界一の過密都市であったこと。しかし治安維持にあたる南北両奉行所の人員は全部で296人しかいないことが黒沢良のナレーションで淡々と述べられる。この辺はおそらく資料に基づいた事実なのだろう。その不足をカバーするために設けられた影の捜査機関が「江戸の牙」なのである。
そのリーダーがニヒルな男・天知茂(剣精四郎)で、他に若林豪(大熊伝十郎)、坂上二郎(金丸半兵衛)、藤村俊二(間兵助)という中年男四人がメインで、サポート役が白都真理(橘紫乃)という顔ぶれ。坂上・藤村の昭和九年会コンビもコミカルなだけでなく、立ち回りにも参加する。当時の視聴者から見ると「非情のライセンス」の会田刑事(天知)、「Gメン75」の立花警部(若林)、「夜明け(明日)の刑事」の鈴木刑事(坂上)の共演とも見える。
彼らを組織したのが直参旗本大番頭である朝比奈軍兵衛で我らが三船敏郎が演じている。まあ、全部で三回しか登場しないのだが。彼らは普段は南でも北でもない本所方奉行所の役人として活動している。頭(与力)が当然・剣で、金丸と間が同心、大熊は何故かそこに居候している浪人(実は元隠密廻り同心)である。紫乃は雑用係で、他にカモフラージュ的な意味で三人の見習い同心がいる。三人は先輩たちの裏の顔は当然知らない。演じるのが京本政樹(純)、古田正志(さぶ)、猪野剛太郎(げん)である。京本は当時20歳で、本作がほぼデビュー作である。17話にて殉職してしまう。フルネームは中山純之進という。三人の中では一番目立っていたのがさぶで、イソゲサブイチロウがフルネームらしいが、正式な表記は設定されていないらしい。磯毛三一郎とでも書くのだろうか。ゲンもヤヅクリゲンノスケというらしいが、さぶ同様に正式表記は設定されていない。矢造源之助といった感じだろうか。さぶとげんの二人は最終話で南町奉行所へと転属になる。
ゲストに目を向けると第1話の左とん平、梅津栄、第2話の宮口二朗、岩城力也という天知主演の「非情のライセンス」における特捜部仲間が顔を揃える。第3話に藤巻潤、稲葉義男の「ザ・ガードマン」コンビ。第4話には天知とは共演の多かった高城丈二が顔を出している。高城は体調を崩しいつのまにか俳優を引退しているが、80年以降の活動記録がないので、これが最後のドラマ出演だったかもしれない。
メインライターは中村勝行で、中村敦夫の実弟である。「必殺シリーズ」でよく見かけたが、個人的には好きではなかった。当時から脚本家はチェックしていたが、おふざけが過ぎる話(個人の感想です)の時はほぼこの人の脚本だったからである。まああくまでも「必殺シリーズ」においての話であり、本作に関しては文句をつける点はない。
その中村が書いた最終話は三船を加えた五人で敵地へ向かう。最後の敵は平田昭彦、山本麟一などが演じた。山麟はこの半年後に53歳の若さで亡くなっている。

 

江戸の鷹 御用部屋犯科帖

三船プロシリーズ、今回は「江戸の鷹 御用部屋犯科帖」(78年)である。前作の「無法街の素浪人」(76年)から1年3カ月、三船敏郎主演の時代劇が復活したのである。
どんな物語かOPノナレーションを借りて説明すると「悪政を究めた、いわゆる田沼時代に“お鷹組”と呼ばれる将軍直属の探索機関があった。いかなる権力にも買収にも屈しない彼らを、人々は“江戸の鷹”と呼んだ」というわけだ。
お鷹組は里見浩太朗演じる10代将軍徳川家治によって組織されている。家康、家光、綱吉、吉宗等に比べるとマイナーな存在だが、そもそも田沼意次を側用人として抜擢したのが家治なのである。これは先代の父・家重の遺言によるものであったが、27年間の治世の実権は田沼に握られてしまっていたのである。いわば「お飾り将軍」だった家治が田沼に対抗するために組織したのがお鷹組というわけだ。
その顔ぶれは、我らが三船敏郎(鷹匠支配・内山勘兵衛)、中谷一郎(組頭・一柳角太郎)、田中邦衛(風見鉄平)、田中健(若杉新之助)の四人に加えて、小間使い兼情報収集役の坂上二郎(雉兵衛)という面々である。鷹匠なので、全員それぞれ鷹を所持している。
三船はいつもの正体不明の素浪人ではなく、れきっとした身分の侍である。坂上二郎とは「荒野の素浪人」以来ということになろうか。中谷と田中邦衛は俳優座出身で、東宝作品にも多く出演しているが、黒澤組ではないので、三船とがっつりとした共演は少ない。中谷は「用心棒」の冒頭で三船に斬られるやくざ、邦衛は「椿三十郎」での若侍の一人が印象に残っている程度だ。三船は58歳で、中谷、邦衛、坂上はいずれも40代というなか、田中健は26歳であった。この時期、坂上と田中健は「明日の刑事」にも出演していた。
本作においては悪の総大将的な存在の田沼意次を演じるのは岡田英次で、その背後に控える闇の実力者・鳴海哲堂を西村晃が演じる。里見、中谷、西村と「水戸黄門」関係者が多かったりする。女性レギュラーはいないのかと言えば、奈良富士子(お小夜)、風見章子(お福)、伊佐山ひろ子(夜鷹のおたか)が頻度は不明だが、複数回登場するようである。にしても夜鷹のおたかってややこしい役名だな。ちなみに夜鷹とは今でいう娼婦のようなものだ。
ゲストでは、青木義朗、中山昭二、葉山良二、亀石征一郎、伊沢一郎、早川雄三、和崎俊哉といった顔ぶれは家治役の里見浩太朗を含めて「特別機動捜査隊」での主任5人(波島進以外)と番組後期の部長刑事3人が揃っていることに目を奪われた。大出俊や若林豪といった素浪人シリーズでの相方も顔を出している。
とまあ、以上は資料などを見て書いたのだが、個人的にはあまり見た記憶のない番組だったりする。「お鷹組は斬り捨て御免」というセリフだけは記憶に残っているのだが。最終話の1つ前(37話)で中谷演じる角太郎が殉死するという展開は覚えていたが、調べて見ると最終話では邦衛も…。田沼は歴史上実在の人物なので斬ることはできないはずだが、そこは何とか処理していたようだ(髷のみ斬り落とす)。しかし当時の視聴者的にはスカッとしなかったのではないだろうか。

 

人魚亭異聞 無法街の素浪人

三船プロシリーズ、今回は「人魚亭異聞 無法街の素浪人」(76年)である。時代設定は文明開花に揺れる頃、ということで明治初期ということになる。実際には廃刀令が出されたのは明治9年であり、それ以前でなければ成立しない話になるのだが、そこまで細かくは考えらてはいないだろう。舞台は江戸や荒野ではなく横浜であり、駅馬車が登場するなど時代劇と西部劇をミックスしたようなお話である。
登場人物も和装洋装が入り乱れている。無論、我らが三船敏郎は帯刀の素浪人スタイルだ。しかし昔ながらの侍ではなく、洋行帰りという設定で、英語も理解できる。役名も今までの〇〇十郎ではなく「ミスターの旦那」という。人を呼ぶときに「ミスター」とつけるところからついたあだ名だ。まあ素性や本名が不明というのは今までどおりである。
今回の相方は若林豪演じる千鳥弦之進だ。新政府の密偵で洋装を好む拳銃の名手である。西洋かぶれだが、渡航歴はないらしい。この二人がタイトルにもあるバー風のラウンジホテル「人魚亭」に用心棒として居ついてしまい、様々な事件に巻き込まれる。
この人魚亭を営むのが小川真由美演じる北小路冴子である。上流階級のお嬢様でいつも洋風ドレスに身を包んでいる。他のレギュラーだが、大村崑(何でも屋の平助)、夏夕介(ちんぴら譲次)、山内えみこ(お千代)といった面々である。あまり物語に絡んできた印象はない。そして、番組の見ものの一つとなっていた近藤玲子水中バレエ団による水中バレエ。人魚亭のショーの一つとして披露されていた。
音楽は「必殺シリーズ」をやっていた平尾昌晃が担当。OP曲をアップテンポにアレンジしたものを立ち回りの場面に使っており、やはり必殺っぽさを感じてしまっていた。細かいエピソードは覚えてないのだが、敵が三人くらいの回があった気がする。と思ってウィキ等を見ると第8話が「三匹の流れ者」というサブタイだ。どうやら睦五朗、勝部演之、遠藤征慈がその「三匹」のようである。睦とか勝部とかは大抵時代劇の時は身分の高い役人とかが多いイメージなので、意外な気がした。
個人的には結構気に入っていた番組だったが、22話という半端な話数で終了。この裏には三船社長の離婚騒動の影響があったらしい。全22話といったが、実は放送されなかったエピソードがあり、再放送時に14話扱いで放送された。「暗黒街の女」という話で、伊佐山ひろ子、清水綋治、堺左千夫という濃い顔ぶれのゲストであった。
その代わりというわけではなかろうが第12話「人買い闇の狩人」という回は欠番扱いになっているらしい。詳細は不明だが、ゲストは大友柳太郎で、メイクに5時間もかけてノリノリだったというエピソードがある。
ちなみに、後番組は「欽ちゃんのどこまでやるの」であった。三船主演時代劇の再登場は、前述の事情もあってか1年先まで待つことになる。