暗闇仕留人 その2
引き続き「暗闇仕留人」(74年)である。
個人的には「助け人走る」に比べたらイマイチだなというのが当時の評価 。序盤と終盤にはそれほど印象に残る回がなくて、中盤に傑作が固まっていると思う。特に12話「大物にて候」から17話「仕上げて候」までが見どころ満載で、この間にレギュラー陣が減ってしまうのである。
12話で奉行所も手を出せない大物・小兵衛を演じるのが永井智雄。「事件記者」(58~66年)の相沢キャップである。大吉役の近藤洋介も「事件記者」のレギュラーだったが、その永井を仕留めることになる。そのバカ息子とバカ娘を演じるのが太田博之と伊佐山ひろ子。太田は「必殺仕掛人」ではレギュラーだったが、今回は悪役として登場した。
13話「自滅して候」での佐島昌軒(山本学)は刀を持たない儒学者だが、文字通りの石頭で、吊るんでいた浪人・大田原(浅香春彦)のあばら骨を頭付きで粉々にした。最後は貢(石坂浩二)と大吉の二人がかりで仕留める。
14話「切なくて候」は半次(津坂匡章)の出自が明らかになる回。大吉と共に故郷の府中へ。貢とおきん(野川由美子)は登場しない。半次の母親役が吉田日出子だが、津坂と吉田は同い年なので継母なのかなと解釈した(劇中で特に説明はなかったと思う。聞き逃しただけかもしれないが)。その母を死に追い込んだ鷹匠・田村(岩崎信忠)を半次は自らの手で殺す(大吉のサポートはあったが)。半次、初の殺しである。
15話「過去ありて候」は大吉の過去が明らかになる話。かつての元締だった惣兵衛(天津敏)、その妻お浜(川口敦子)、仲間だった亥之吉(石橋蓮司)が登場。裏切って姿を消した大吉を殺そうとする。それに巻き込まれる形で準レギュラーだったおみつ(佐野厚子)が命を落とす。「助け人」からの連投だった佐野だが、本作ではあまり使いどころがなかった感じである。殺しは全て大吉の家で行われるという変わった構成になっており、入れ替わりで現れる亥之吉、惣兵衛、お浜を、隠れていた主水(藤田まこと)、大吉、貢がそれぞれ仕留めていく。
この回では、大吉と半次が「故郷はどこだ」「府中だよ」という会話を交わす場面がある。前回訪れたばかりにもかかわらずである。実はこれ諸事情により、14話と15話の放送順が入れ替わったことによる矛盾なのだという。しかも、これ以降の回に半次は登場しない。何も言わず姿を消してしまったのである。「切なくて候」は、津坂の降板が決ったので、最後に主役として用意されたエピソードだったと思うので、放送順は入れ替えないで欲しかったと思う次第である。もちろん当時はこれで半次が降板とは知らないわけなのだが。
16話「間違えて候」では、大吉が不在の折、安積屋(南原宏治)殺しを貢が遂行。安積屋が元岡っ引きということもあり、傷を残さないいいということで、当て身を食らわせ川へ突き落すというものだった。そこへ大吉が通りがかり安積屋の死体を見つけ、心臓潰しを応用した心臓マッサージで蘇生させてしまう。安積屋は貢を探し出し、凄腕の用心棒(千葉敏郎、出水憲司)を雇って貢を消そうとするが、貢と大吉が何とか二人を仕留める。そして、江戸から逃げようとしていた安積屋を大吉が改めて心臓潰しで仕留めるのである。
そして17話「仕上げて候」だが、長くなったので次回に続く。
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暗闇仕留人
続いて必殺シリーズ第4弾「暗闇仕留人」(74年)である。まだ「必殺」の文字は復活していない。以前書いたが、シリーズ4作目には「おしどり右京捕物車」が考えられていた。しかし、プロデューサーの山内久司が中村主水(藤田まこと)のキャラを眠らせるのは惜しいと考え、本作のその再登場が決まった。
当初のタイトルは「暗闇始末人」であったが、「始末屋卯三郎暗闇草紙」という結城昌治の小説があったため変更の要請があり、「暗闇仕留人」に落ち着いたという経緯がある。
主水の復活に準じて「仕置人」からは半次(津坂匡章=秋野太作)とおきん(野川由美子)の再登場も決まった。津坂と野川はこれで「仕掛人」から4作連続の出演となった。彼等の新たな仲間となるのが糸井貢(石坂浩二)と大吉(近藤洋介)である。糸井貢は本名を吉岡以蔵といい高野長英を師に持つ蘭学者である。蛮社の獄により出奔し、名を変え演芸場の三味線弾きとして生活していた。あや(木村夏江)という妻がいる。武器は三味線の撥だが、刃を仕込んだ二枚重ねとなっており、それで喉などを斬る。また中央には鋭い針も仕込まれており、それで刺すこともある。
大吉は墓石彫りの石屋をやっており、仲間からは「石屋」と呼ばれている。その怪力で素手で相手の心臓を握り潰す。その際にレントゲンと心電図で心臓が止まったことが表現され話題となった。妙心尼(三島ゆり子)という情婦がいる。ファンの間では有名だが、当初この大吉役は露口茂、竜雷太という「太陽にほえろ」コンビに話を持っていき断られ、近藤洋介に落ち着いたという経緯がある。竜はともかく露口はキャラ的に想像できない。髪型は元々は短髪であったけれども。
中村主水といえば、当然中村せん(菅井きん)と中村りつ(白木万理)も登場。「仕置人」では出番の少なかった二人だが、本作では毎回出演の完全レギュラーとなり、中村家の描写に多くの時間が割かれるようになった。まあ個人的には筋に関係ないなら不要と思っていたけれども。ところで第1話で妙心尼(本名はたえ)と糸井あやがりつの妹、つまりせんの娘という三姉妹であることが判明。ゆえに主水と大吉、貢は義兄弟ということになる(まあ正確には大吉は違うと思うが)。
当時はあまり気にしていなかったが、本作の時代背景は黒船の来航など幕末であることがはっきりわかり、1850年代(嘉永)と思われる。しかし「仕置人」は1818~1831年の文政年間あたりを描いていたらしく、20年ほどの開きがあったことになる。また主水シリーズ3作目「仕置屋稼業」では、幕末の雰囲気はなく明らかに時代が前に戻っていることがわかる。まあそこは気にしてはいけないのだろうし、「仕留人」に限っては幕末であることが必要な要素なのである。
悪役ゲストとしては中山仁(第2話)、本郷功次郎(第4話)、沢本忠雄(第23話)などが珍しいというか、シリーズ通じて本作のみの出演のようだ。梵天太郎(第10話)などは役柄どおり刺青師(劇画家)であり、ドラマ出演自体が本作だけのようである(映画、舞台などはあり)。
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助け人走る その3
もう一回だけ「助け人走る」(73~74年)である。
前回のとおり、24話「悲痛大解散」で為吉(住吉正博)が殉職。責任を感じた清兵衛(山村聰)は「助け人」の表看板を閉じて巡礼の旅に出ていく。しかし、残された利吉(津坂匡章=秋野太作)は、ひっそりと裏仕事を続けていこうと考えていた。
25話「逃亡大商売」では、前回のことを引きずっており、奉行所の監視の目は続いていたのである。弓坂の庄八(伊吹新吾、28話のみ有川正治)という岡っ引きが助け人たちの周囲を嗅ぎまわる。文十郎(田村高廣)からは笑顔が消え、妹のしの(佐野厚子)も裏仕事のことを知った。平内(中谷一郎)は名ばかりの妻だった綾(小山明子)から二度と会わないと告げられる。そんな中、利吉が夕立小僧という盗人の女房よね(弓恵子)を江戸の外に逃がすという裏仕事を文十郎に持ち掛けるが文十郎は断り、たまたま知り合った逃がし屋の弥平次(伊丹十三)を紹介した。しかし、弥平次は裏で北町与力の梶川(外山高士)と繋がっており、よねを逃がす駕籠かきなどの連中(島米八など)も散々金をせびった挙句、彼女を死なせてしまう。
事実を知った文十郎は裏仕事の再開を決意。利吉からも「この金を受け取ったらもう後へは戻れませんよ」と釘をさされる。どこか頼りなかった利吉が以降元締代行として機能していくのである。利吉はこの回、フグの毒を盛る形で三人を殺害。文十郎怒りの短刀(兜割)が弥平次を突き刺したまま、障子数枚をぶち抜く。
26話では芦屋雁之助が珍しく悪役で登場。以降は主に「からくり人」としてレギュラー出演することになる。27話では文十郎がお吉(野川由美子)のために大刀を売り払ってしまう。その代わりに刀の形をした鉄の棒を使うことになる。
第2話に志村喬がゲスト出演したが、32話では加東大介、33話では稲葉義男と「七人の侍」が顔を出している。この33話で清兵衛が一時帰還。最終話である36話になると何事もなかったかのように「棟梁」に復帰している。そして大奥からおちさ(小野恵子)という女性を救い出す仕事を持ちかける。
大奥がらみの話となると脚本は国弘威雄であることが多いが、この回も国弘である。手を尽くしてちさと付き人であるみの(市毛良枝)を脱出させるのに成功したように見えた。いつもの隠し部屋に集合すると清兵衛がノミを投げる。隠し階段から落ちてくるのは前述の庄八である。演じる伊吹新吾=伊吹剛であり、数年後には「Gメン75」や「斬り捨て御免」で活躍することになる。
この後、次から次へと追手が登場。必殺シリーズでは珍しい大立ち回りが繰り広げられる。文十郎も平内も刀を持って応戦する。そして龍(宮内洋)も空手技から刀を奪って振り回す。最終的には囮になってみんなを逃がし、一人追手の中へ斬り込んで行く。全身を斬られながらも最後はいつもの脳天逆落としのスタイルで相手と共に橋の上から飛び込み姿を消す。
ラストはみんなバラバラになって去っていくのだが、しのは利吉と共に行くことを文十郎に許されるその文十郎の行く先にもお吉が待っていた。
主題歌は森本太郎とスーパースター「望郷の旅」。大好きな歌だったが、その歌っている姿を見たことは一度もない。本編では一部歌詞が変えられていたのをご存知か。後に中古レコードを買って聞いたのだがテレビでは「熱い明日の風が呼んでる」と歌われていた部分はレコードでは「汗と涙と血がまた騒ぐ」だったのである。そこまで気にしなくてもと思うのだが、まあこんなところにも「必殺仕置人殺人事件」の影響があったわけである。
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助け人走る その2
前回に引き続き「助け人走る」(73~74年)である。
第5話は「御生命大切」。助け人のサブタイは「〇〇大〇〇」が基本だが、この回のみ1文字ずれてしまっている。思いつかなかったのだろうか。この回から突然、為吉(住吉正博)が登場。利吉(津坂匡章=秋野太作)の代わりに助け人の密偵役として活動する。まあ津坂のスケジュールの都合だろうが、20話くらいまでは為吉のケースが多く、二人が同時に出ることもあった。為吉は利吉の弟分という設定だが、実年齢は当時、住吉31歳、津坂30歳で共に俳優座養成所出身だが、そこでも住吉が1期先輩である。
そして、この回ではお吉(野川由美子)が文十郎(田村高廣)と平内(中谷一郎)の裏仕事の会話を聞いてしまう。知ったものは生かしてはおけないという掟があるのだが、清兵衛(山村聰)は「仲間になれば殺すことはできない」とお吉を仲間に加えることにする。悪役ゲストは津川雅彦らが演じる5人の辻斬り浪人。津川の役名は笹本虎之助というらしいが、劇中で一度も呼ばれることはない。「ガンダム」のシャアの声でお馴染みの池田秀一が被害に遭う若侍役で出演。
12話「同心大疑惑」ではあの中村主水(藤田まこと)がゲスト出演。助け人の周囲を嗅ぎまわり、文十郎とも対決。忍者もの以外で、両者が空中回転するような殺陣は他に例がないだろう。結局は清兵衛から盗賊一味の捕縛の手柄を立てさせることを提案されて成功した。BGMも「仕置のテーマ」が使用された。
20話からは島帰りの龍(宮内洋)が登場。この時点で番組延長も決まっていたのだろう。宮内は「仮面ライダーV3」が終わった直後だと思われる。東映ニューフェース出身で東映以外の作品に出るのも初だったようである。一匹狼として登場するが、翌21話で清兵衛と対峙し敵わないと悟り、配下となった。殺し技は脳天逆落とし(ブレーンバスター)だが、この20~21話に関してはバックドロップのような形になっている。
そして番組の転機となるのが24話「悲痛大解散」である。裏家業の頼み金の小判から為吉が北町与力の黒田(南原宏治)に捕まってしまう。裏家業を暴こうと為吉を拷問する黒田。清兵衛らは為吉を救おうと画策するが、成す術はなかった。「為吉を楽にしてやろう」と清兵衛は利吉に為吉を殺すように命じるが、利吉に殺せるはずもなかった。当時から涙なしでは見られないシーンである。
結局、為吉は口を割ることなく死んで行く。初登場の5話で為吉はかつて奉行所で拷問されても口を割らなかったという過去を自慢げに語っていたのだが、それが伏線のようになっていたのである。責任を感じた清兵衛は裏家業から身を引くことを決め、助け人は事実上の解散となる。もちろん、為吉の仇を討つため、黒田と配下の同心たち(国一太郎、五十嵐義弘、山岡鋭二郎)を始末した後、清兵衛は為吉の墓標を弔うための旅に出る。
これが最終話でも不思議ではなかったが、番組は続く。奉行所に目を付けられたため、「助け人」は表稼業においても店を閉めざるを得なかったのである。視聴率が良かったのと次の企画が決らなかったための延長ということのようだが、あとの1クール番組の雰囲気はそれまでと変わったものになった。
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助け人走る
「必殺仕置人」(73年)の後番組が「助け人走る」(73~74年)である。個人的には、リアルタイムで見ていて初めてハマった大人向け時代劇である。
シリーズ第3弾でありながら「必殺」の文字がタイトルにないのは前回のような事情による。番組の雰囲気も仕置人のダークな感じから明るいものとなっている。
「助け人」というのは表看板にもなっている稼業名で、今でいう何でも屋的な存在で、どぶさらいから犬の世話まで引き受ける。そこで働いているのが素浪人の中山文十郎(田村高廣)と侍くずれの辻平内(中谷一郎)である。番頭は利吉(津坂匡章=秋野太作)で、元締は清兵衛(山村聰)である。清兵衛は大工も営んでいることもあり周囲からは「棟梁」と呼ばれている。元は「幻の清兵衛」と呼ばれる盗賊であり、利吉もその配下だった。番組スタート時の「助け人」はこの四人のみ。OPナレーションは前作での鉄役・山崎努が担当。他の初期シリーズでは紹介されない密偵役の利吉の顔も出てくる。
彼等は、公に出来ない仕事や非合法な手段を用いる必要な依頼を裏の仕事として引き受けることもあり、その過程で悪人たちを始末することもある。たとえば、第1話「女郎大脱走」の依頼は女郎の足抜けであり、第4話「島抜大海原」では、島送りになった女性を救い出すというものである。まあ結局、毎回殺しは発生するのだけれども。文十郎や平内は実質この裏仕事で生計を立てている。
文十郎は普通の大刀の他に甲割りと呼ばれる短刀を使用する。とどめはその短刀を使用することが多く、時には投げつけたり、背後から迫る敵を振り返らずに刺すこともある。平内は煙管の吸い口に仕込んだ円錐状の針で相手の脳天などを刺す。殺しの場面は煙が立ち上るこの煙管から始まることが多い。
他のレギュラーとして文十郎の妹しの(佐野厚子)は、兄に内緒で利吉と付き合っている。文十郎と恋仲の芸者お吉(野川由美子)。平内の妻・綾(小山明子)は養育費名目で八の日に平内から金を取り立てる。
序盤の見どころは第2話「仇討大殺陣」で、ゲストは志村喬。志村演じる帯刀に父親を斬られた稲葉兄弟に仇討ちさせようと田原藩では15名もの助ッ人を送り出す。それを知った帯刀と親しい清兵衛が文十郎と平内にその15人を片付けてくれと依頼する。その15人は不正に手を染めている連中でもあり間垣玄斉(千葉敏郎)を始め、松田(田畑猛雄)、村上(島米八)、飯塚(北野拓也)など必殺シリーズお馴染みの面々が演じている。多い時でも5人くらいが相手という番組で15人は異例である。まず、その中の12人を相手に峠を走り回る。文十郎は相手を斬らず、俗にいう峰打ちだが、骨の折れる音が。剣の達人ならば、峰打ちでも骨折させることや殺すことも可能らしい。平内は指に何かを装着し、刀を素手で受け止めたり、手刀のような感じでチョップしたり、殴ったりしていたが、大きなダメージを与えられるようには見えなかった。その辺りが不満にも感じるが、面白かったことは確かだ。実際に殺したのは最後の玄斉と川を流れて行った(溺死)藩士の二人だけかもしれない。
かと思えば、前述のように第4話「島抜大海原」では島送りになった女性(川崎あかね)を救うため、文十郎と平内も罪人となって島(たぶん八丈島)へ送られる。そこで平内の意外な過去が。実は彼の父親は自分と母親のために殺人と窃盗を働き島送りになり行方知れずになっていたのである。結局その父親は死亡していることがわかったが、そいいう身の上でよく辻家の婿養子になれたなあと思ってしまった。今回の悪役となるのは行きの船で一緒だった五人の罪人(山本一郎、大橋壮多など)。銃を奪い人質を取って、ご赦免船(要は帰りの船)にたてこもる。文十郎は刀など持ってきてないので、銛を武器に船上から相手を突き刺していく。
この2エピソードで個人的に本作にハマったといえる。続く第5話でまた新展開が。長くなったので、次回へ続く。
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必殺仕置人 その3
もう1回だけ「必殺仕置人」(73年)である。
本作では「佐渡」が結構キーワードになっており、鉄(山崎努)と主水(藤田まこと)の出会いも佐渡となっている。僧侶だった鉄は女犯の罪で佐渡送りとなり、佐渡金山の見習い同心だった主水と知り合ったというものである。第5話「仏の首にナワかけろ」では佐渡時代の恩人でもあった安蔵(山田吾一)と鉄は再会。しかし悪党となった安蔵を仕置することになり、鉄は「ロシアン首吊り(勝手に命名)」を持ちかける。中々当たらないので結局は安蔵の時に鉄が強引に残ったナワを全部切ってしまうのだけれども。
19話「罪も憎んで人憎む」では鉄と錠(沖雅也)が佐渡送りの危機に陥る。一緒に護送されていた後藤清一郎(川口恒)を奪還しようとする一味の襲撃によるどさくさで逃げることに成功する。この回の悪役は清一郎の父・金座の庄三郎(加藤武)と秋山但馬守(伊丹十三)であるが、ここでの伊丹は割合普通の悪役といえるので意外なキャスティングに感じた。加藤の演じた後藤庄三郎というのは実際に金座の当主に与えられていた名前である。21話「生木をさかれ生地獄」では主水、錠そして佐渡を嫌がっていた鉄も佐渡に行くことになる。ターゲットの平田石見守(西沢利明)が佐渡奉行に就任したからである。用心棒役で五味龍太郎が三度目の登場。26話で三回は多いと思うが、次作の「助け人走る」は36話で1回のみの登場となっている。
本作にまつわる事件として「必殺仕置人殺人事件」というのがあった。自分も大雑把なことしか知らなかったのだが、ちょっと調べてみた。73年6月、神奈川県で38歳運転手の男がアパートに帰宅すると、自宅のある2階ではなく1階にある女性店員(21歳)の部屋を訪問する。家族ぐるみの付き合いがあり親しい間柄ではあったらしい。で二人で「必殺仕置人」を見ていたところ、興奮した男が女に抱きつき、女がそれを拒んだため激怒し絞殺。一旦、男は妻子の居る自宅へ戻ったが、深夜に遺体を海に遺棄しようと車のトランクに入れ運んでいたところを、たまたま検問に引っかかり事件が発覚した。
この事件をマスコミが「TV「必殺仕置人」に興奮若い女性を殺す」などの見出しで報道。同番組に否定的な識者も、こぞって同番組と制作局の朝日放送(ABC)批判した。当時、関東地方のネット局であったTBSも番組の打ち切り、または残虐な描写の自粛と内容の変更をABCに強く要求したというものである。しかし、番組スポンサーの一つである日本電装の親会社であるトヨタ自動車がTBSに同番組を中止せぬよう要望したため打ち切りは回避となった。これはトヨタが調べた番組視聴アンケートで必殺が上位であったからという事情かららしい。
犯人の男も公判で「自分はテレビ番組に影響されるような安易な人間ではない。馬鹿にするな」と番組との関連を否定したため、一応の騒動は収まったのだが、番組の内容も路線修正がなされ、シリーズ第3作は「必殺」の文字が外され「助け人走る」がタイトルとなったのである。
ちなみに、事件時に放送されていたのは第7話「閉じたまなこに深い淵」であった。エロ検校(神田隆)が登場するが、興奮するような話ではないかと(個人差はあるだろうが)。路線修正とあるが、確かに番組初期はただ殺すのではなく、悪党を散々甚振るような描写が多かった。しかし、後半は割合ストレートな殺しになっていたように思う。
いずれにしろ26話まで放送されて良かったと思う(当初は延長の話もあったらしいが)。今だったら、問答無用で放送中止になっていた可能性もある。
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必殺仕置人 その2
引き続き「必殺仕置人」(73年)である。シリーズ中で、最もサブタイトルに凝っているといえるのが本作であろう。
第1話「いのちを売ってさらし首」に始まり、2話「牢屋でのこす血の願い」、3話「はみだし者に情なし」と続き、25話「能なしカラス爪をトグ」、最終話「お江戸花街未練なし」で終了する。まあファンの間では有名だが、タイトルの頭文字をひろって行くと「いろは歌」になっているのである。ただし24話は「疑う愛に迫る魔手」になっており、次は正確には「ゐ」なのだけれども、さすがに頭には持ってこれないので除外されている。
本作の特徴だが、特に番組初期は相手を殺害よることよりも制裁することに重きが置かれていた。第1話で念仏の鉄(山崎努)は、牧野備中守(菅貫太郎)の背骨を曲げて自由を奪うだけであり殺害はしていない。第3話では相手の目をつぶし、第4話「人間のクズやお払い」では聖天の政五郎(黒沢年男)の右肩を180度曲げてしまい自滅を誘っている。殺し技として定着したのは6話「塀に書かれた恨み文字」くらいからであろうか。この4話と6話はちょっと構成が似ている、と個人的には思っている。
4話では前述のとおり政五郎の右腕は使えないと察した三人の子分、粂吉(山本一郎)、武助(五味龍太郎)、猪太郎(内田勝正)は政五郎を追放しようとする。しかし政五郎は左腕一本で粂吉を刺殺し、「まだ負けやしねえ」と息巻くが残る二人に切り刻まれる。そこへ棺桶の錠(沖雅也)と中村主水(藤田まこと)が現れ、武助と猪太郎を仕置する。
6話では辻斬り大名である松平右京大夫(中尾彬)を拉致して主水が牢に放り込む。そして天神の小六(高松英郎)に甚振らせるのである。放心状態で屋敷へ戻る右京大夫であったが、家老の北上(鈴木瑞穂)によって「辻斬りをする君主など断じていない」と追放されるのである。そのお供だった三人である新田(大村文武)、戸浦(千葉敏郎)、斎藤(佐々木功)も切腹を申し渡される。切腹の日、新田と戸浦は無理矢理辻斬りに付き合わされていた気の弱い斎藤を刺殺。見張りの数名の藩士をも殺害した。そこへ鉄と錠が現れる。「切腹なんかさせてたまるか」という理屈で二人を仕置するのである。ちなみに右京大夫がどうなったかは不明だ。どちらの回も直接仕置するのは配下(子分)だった二人という点で似ていると思うのである。
ところで、4話で政五郎一家に殺される親分役を演じた杉山昌三九は戦前は大都映画で主演も張っていた役者である。役者としての活動は翌74年までだったようである。6話の大村文武は東映映画版の月光仮面で有名。「必殺仕掛人」にも悪役で登場していた。佐々木功はこの73年からアニソン歌手としての活動を開始している。
鉄と錠はシリーズでも有数の強さを誇ると思われるが、それでも二人がかりで挑んだ強敵もいた。8話「力をかわす露の草」の雲衛門(大前均)と11話「流刑のかげに仕掛あり」の鬼の岩蔵(今井健二)がそれである。雲衛門はスキンヘッドの大男で見るからに強そう。岩蔵は岡っ引きなのに同心の主水より偉そうであった。10話「ぬのぬす人ぬれば色」の御庭番・板倉(上野山功一)とか、こういった記憶に残ろ敵キャラが多いのも特徴かなと思う。
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必殺仕置人
木曜日に更新できなかったので、今週は土日更新の予定。
さて、必殺シリーズに足を踏み入れてしまったので、何本かは触れてみたいと思う。今回は「必殺仕置人」(73年)である。
ご存知必殺シリーズの第2弾であるが、小学生だった自分が時代劇をよく見るようになったきっかけが本作だったからである。しかもそれは最終話だったのである。まあ、それ以前から親が見ていたので、骨外しのシーンは目にしており興味は持っていたと記憶している。たまたま最終話だったのか、最終話だったからしっかり見ようと思ったのかは忘れたけれども。なので、実際ハマったと言えるのは次作の「助け人走る」からなのだけれども。「必殺仕置人」に関しては自分が中学生の時に再放送があり、そこで大体の回を目にしたはずである。
当時はやはりその殺し技にハマる。念仏の鉄(山崎努)の骨外し。まあ外すだけでなく、折ったり潰したりもするが、それをレントゲン映像で表現するというのも斬新なアイデアであった。棺桶の錠(沖雅也)の持つ金属製の手槍と呼ばれる武器。あんな武器が当時存在していたとは思えないが、後に仕事人で政(村上弘明)も使用することになる。そしてこれが初登場となる中村主水(藤田まこと)。普通に刀を使うが、本作では殺しに参加することは少なかったりする。半分くらいであろうか。基本参謀役としての存在であった。
実年齢で言えば、藤田は40歳、山崎は37歳に対して沖は21歳と全然若造なのだが、役柄上は対等な関係であり、そこに違和感は感じなかった。沖は美青年で老けているわけでもないのに妙に貫録があった。後にひかる一平が登場した時は子供にしか見えず(実際18歳であった)、子供が殺しをやるのかと思ってしまったものだ。
彼等に加えて、密偵役であるおひろめの半次(津坂匡章=秋野太作)、鉄砲玉のおきん(野川由美子)。津坂と野川の二人は「仕掛人」から「仕留人」まで四作連続で出演することになる。そしてレギュラーとは言えないが牢名主である天神の小六(高松英郎)。江戸暗黒街の大物だが、身の安全のため入牢しているという設定である。もちろん、中村せん(菅井きん)、中村りつ(白木万理)もいるが、登場回数はさほど多くない。「仕留人」以降はストーリー上不必要であっても出てくるが、本作ではいらない時は出てこない。当時、個人的にはいらないキャラだと思っていたが、ドラマ上は仕方ないのかなと現在は思う。
やはり重要なのが音楽であろう。やはり殺しの時に使われるBGM集のタイトルで言うと「仕置のテーマ」と「悪の果てる時」が印象に深い。後者は主題歌「やがて愛の日が」のインストだが、番組前半はこちらがメインで使われることが多かった。番組後半ではテンポのよい「仕置のテーマ」がメインで主に使われたが、原曲が短いこともあり、12話や最終話などでは無理矢理引き延ばした?バージョンが使われている。当時は家庭用ビデオなどはもちろんなく、ラジカセをテレビにつないで録音なんかをしていたものである。
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必殺仕業人 その3
もう1回だけ「必殺仕業人」(76年)である。第24話である「あんたこの替玉をどう思う」は必殺シリーズ200回記念として放送された。それまでの必殺シリーズでレギュラーを務めた役者をカメオ出演させたのでる。緒形拳、中村玉緒、野川由美子、沖雅也、田村高廣、中谷一郎、石坂浩二、三島ゆり子、大塚吾郎、草笛光子の10人である。「なりませぬ」の三島とオカマの岡っ引き大塚は殺し屋メンバーではないが、存在感は大きかった。
内容自体はコメディタッチで、とくれば前回も触れたとおり中村勝行の脚本だ。まあまあ豪華なスペシャルゲストがいた分、悪役ゲストは夏純子、穂積隆信、田畑猛雄に抑えられ、殺し場面も剣之介(中村敦夫)が、穂積と田畑の二人の首を一度に絞めるというものだった。また長谷川明男が悪役ではなく、主水(藤田まこと)の気の弱そうな後輩同心をコミカルに演じていた。
最終話である28話は冒頭で柴山藩の家老土屋多門(永野達雄)、会津屋(堀北幸夫)を仕業人チームが始末するが、又右衛門(大出俊)が現場近くにおみくじを捨てていく。多門の義理の息子である小十郎(浜畑賢吉)が江戸に呼ばれ犯人捜しを開始。裏家業に通じている江戸屋源蔵(田崎潤)の協力を仰ぐ。前述のおみくじから又右衛門が浮かび上がる。小十郎ら柴山藩の面々が又右衛門宅を強襲するが、捕まったのはたまたま居合わせた剣之介だった。
又右衛門とお歌(中尾ミエ)は、柴山藩に潜入し、剣之介を救い出そうとするが、見つかってしまい、珍しく又右衛門が応戦するが腕っぷしが弱いので簡単に捕まり、剣之介とお歌は斬られて死んでしまう。
その直後に多門の不正を柴山藩は知ることとなり、小十郎に調査の中止を命じた。又右衛門は解放されるが、事実を知った小十郎の妻(多門の実娘)は自害。江戸屋にも「これ以上闇の世界に首をつっこまないほうがいい」と忠告され、行き場を失った小十郎は仕業人に果たし状を出す(もちろん相手が誰かは知らない)。
主水は果し合いを受けることを又右衛門に告げ、又右衛門も足抜けすることを告げ「お互いに掟破り」ということになり、仕業人チームは解散になるのだが、最後に主水は無言で(江戸屋から預かった)おみくじを又右衛門に突き付けるのだった。
最後は正式な果し合いという必殺では異例のケース。相手の小十郎も決して悪人ではなく、むしろ正義感の強い人間だったと思われる。婿養子という点では主水と同じだったりもするのだが。演じた浜畑賢吉は、この三か月後の「必殺からくり人血風編」でレギュラーの直次郎として登場する。
主題歌は「暗闇仕留人」の「旅愁」に続いて西崎みどりの「さざなみ」であった。「旅愁」はまさかの大ヒットだったが、「さざなみ」はそうでもなかったようだ。個人的には好きだったが。このインストルメンタルが殺しに使われたが、3つのバージョンがある。後半は3番目のタイプで定着してしまったが、個人的には2番目が好きだった(使用回数は少ない)。まあ同じ曲だから別にいいのだが、何で変えたのか謎である。
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必殺仕業人 その2
前回に続いて「必殺仕業人」(76年)である。個人的なことを言えば、シリーズ第1弾「必殺仕掛人」から第5弾「必殺必中仕事屋稼業」までは、サブタイやゲスト出演者からどんなエピソードだったかすぐにわかるのだが、次の「必殺仕置屋稼業」くらいからその情報のみでは思い出せない回が出てきて、この「仕業人」ではそれが顕著になる。見たいエピソードが限られていたリするのである。だからと言って嫌いな番組というわけではない。
第1話では、剣之介(中村敦夫)は仲間に加わろうとするが、標的が沼木藩の奥方・お未央の方(安田道代)と聞いて躊躇する。実は剣之介のかつて許嫁であり、自分がお歌(中尾ミエ)を選んで脱藩したことも彼女の悪行の要因になっていると思えたからである。しかし、お歌が拉致されたことで、裏仕事への参加を決意する。安田道代は「仕置人」でもそうだったが、こういう役がよく似合う。この76年に結婚し、大楠道代となるのである。
第3話は悪人役が宍戸錠、伊達正三郎、ロミ山田という「必殺シリーズ」には珍しい顔ぶれ。揃って「必殺」への出演はこの1回だけだと思われる。宍戸錠は「おしどり右京捕物車」にゲスト出演していたので、中村敦夫との縁であろうか。
第10話では又右衛門(大出俊)の過去が明らかになる。本名は政吉といい、仕業人である弥蔵(大滝秀治)の養子として育てられたが、彼が外道であるため姿をくらましていた。この回で弥蔵と仲間の勘助(山本清)に再会するが、自らの手でとどめを刺した。
第12話は主水(藤田まこと)、剣之介、又右衛門の三人が渡世人姿で旅をする話。いつもお歌同伴で殺しを行う剣之介も今回は連れて行かなかった。さすがに中村敦夫の渡世人姿はサマになっている。舞台で白波五人男を演じる五人組が本当の盗賊だったという話で、隙を見せないので舞台の最中に五人を仕留めた。五人組は嵐圭史、中村靖之介、北相馬宏など前進座の役者が演じていた。
第18話は又右衛門の弱さが露呈。相手の隙をついて鍼をさす手口であり、素手になると全く弱いのである。寸前で嘉七(内田勝正)に手を掴まれ、定吉(大竹修造)と二人がかりで袋叩きに。そこに主水が駆け付け、嘉七をぶった斬る。改めて定吉に鍼を突き刺す。相手の二人が武器を持っていなかったので何とかなった感じである。
第21話では、誘拐した子供の首に匕首を突き付けたままの留三(島米八)に対し、剣之介がお手製の弓矢を作成。隙間から狙い木の矢が留三の腕に刺さった瞬間、主水が突入しぶった斬る。剣之介は近くまで来ていた粂吉(志賀勝)の髷を切り、いつも通り絞殺する。又右衛門は黒幕でもある弥七(田口計)とおりく(水原麻記)の行為の最中に二人同時にその額に鍼を指す。ところで水原麻記も島米八も前述の中村靖之介も中村梅之助の「遠山の金さん捕物帳」(70~73年)で長くレギュラーを務めていたメンバーである。もちろん善人役だが、本作ではみんな悪役だ。
この18話と21話の脚本はいずれも保利吉紀だったが、個人的には好きな脚本家だ。一人一殺で相手が三人というパターンが多かったが、この人の場合は相手が二人だったり四人だったりと型にはめすぎないところが気に入っていた。もちろん展開も面白かったのだけれども。逆に好きではなかったのが中村敦夫の実弟でもある中村勝行。コミカル過ぎる話はまずこの人であった。脚本家などEDを見るまで誰かわからないのだが、中学生だった自分でも容易に予想が出来るほどだった。
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