乾いて候 | お宝映画・番組私的見聞録

乾いて候

今回は田村三兄弟の共演で話題となった「乾いて候」(83、84年)を取り上げたい。
まず田村三兄弟についての基礎知識だが、父はバンツマこと阪東妻三郎(本名・田村傳吉)で、その長男が高廣、三男が正和で、四男が亮である。次男の俊麿も映画出演をしたことがあるが、俳優を本業とはせず兄弟のマネージャーとして活動していた。80年に田村産業を設立し芸能界を離れている。高廣と正和は15歳差、正和と亮は3歳差である。田村亮といえば芸人の方を思い浮かべる人も多いかもしれないが、俳優・田村亮は芸名で本名は田村幸照という。
彼らと異母兄弟となるのが同じく俳優の水上保広で、亮の1歳下である。色黒でちょっと羽賀研二に似ている感じとでもいうのだろうか。時代劇の悪役が多い。
さて「乾いて候」は原作・小池一夫、絵・小島剛夕という「子連れ狼」コンビによる劇画である。83年にスペシャルドラマとして「お毒味役主丞 乾いて候」として放送された。主人公の腕下主丞(田村正和)は、8代将軍徳川吉宗(田村高廣)のお毒味役だが、裏では吉宗をその刺客から守る凄腕の剣士である。実は腕下主丞(かいなげもんどと読む)は、吉宗の隠し子なのである、と言うのが大筋。
吉宗と言えば、やはり松平健や山口崇のイメージが強く若々しいイメージがあると思うが、当時の田村高廣は55歳。実際に吉宗は60歳まで将軍に就いていたので無理なキャスティングではない。本作では名君というよりバカ殿っぽく描いているようだ。他のキャスティングだが大岡越前に中山仁、月光院に長内美那子、間部詮房に久富惟晴、管に真行寺君枝、上村香子、綿引勝彦など。田村亮はと言えば何故かナレーションの担当であった。
翌84年も時代劇スペシャル「乾いて候 お毒味役必殺剣」として放送され、正和、高廣、中山仁、真行寺君枝は前作と同じ。他に梅宮辰夫、左時枝、竹井みどり、菅貫太郎、遠藤太津朗等で、田村亮はやはりナレーターであった。
この84年に全6回ではあるが連続ドラマとしても放送された。正和と高廣は同役だが、大岡越前役は田村亮に変更となりメインの3人を田村三兄弟が演じることになったのである。他の出演者は中井貴恵、山口果林、近藤洋介、江波杏子、江原真二郎、菅貫太郎、睦五朗、山田吾一、石橋蓮司、平泉成、風祭ゆき等。
それから9年後の93年にもスペシャルドラマとして放送されており、メインの田村三兄弟は同役で。他に八千草薫、池上季実子、長門裕之、綿引勝彦、二宮さよ子等が出演した。三兄弟共演はこれが最後と思われる。
ドラマではないが「駆けよ’バンツマ」(03年)という番組で、阪東妻三郎没後50年を忍び、次男の俊麿を含めた4人での対談が行われている。
06年に長兄・高廣が亡くなり、21年の先日正和が亡くなった。どちらも77歳であった。