剣と風と子守唄
三船プロシリーズ、今回は「剣と風と子守唄」(75年)である。ここでも主演は三船敏郎自ら務める。
ここでの役名は砦十三郎。いつもの旅の素浪人ではなく御庭番支配という役職を持つ。それも第1話だけの話で、将軍の面前で「徳川の威信、既に地に落ちて信ずるに足らず、今にして不要成」と啖呵をきって一人出て行ってしまう。もちろん、幕府も黙っているわけはなく、十三郎抹殺の為に追手を差し向ける。それが中村敦夫(あかねの左源太)なのである。左源太も十三郎の配下だった男だが、容赦なく彼を狙う。
十三郎には小雪という娘がおり、当時人気のあった子役・斎藤こず恵が演じる。当時本放送は大体見ていたはずだが、大きな勘違いをしていた。十三郎が普通に娘を連れて逃亡の旅をする、言わば「子連れ狼」形式のスタイルだと思っていたのだが、娘を連れ歩くのは追手の左源太だったようだ。まあ、人質的な意味があるのだろうが、左源太も悪人ではないので、子供を邪険に扱ったりはしない。この二人に間にコメディリーフ的な存在として赤塚真人(ひぐれの丈吉)が加わって、小雪の世話をやくのである。
レギュラーは以上の四人だが、ゲストに目を向けてみると第1話の伊吹吾郎に始まり、岡田裕介、伊藤雄之助、佐野周二、藤原釜足、岸田森、沖雅也、沢村貞子、沢村いき雄、加藤武そして緑魔子と石橋蓮司の夫婦コンビが同じ回に登場。「荒野の素浪人」の相方であった大出俊も短銃造りに燃える男として登場する。24話に出てくる斎藤ゆかりはこず恵の実妹だそうである。また、三船とは「七人の侍」仲間である稲葉義男、宮口精二そして最終話には志村喬も登場するのだ。テレビでの三船・志村共演はあまりなかったと思う。
中村敦夫によれば、本作はドラマとしては失敗だったと語っている。演じる左源太は公の義務と私的感情とで板挟みになり、十三郎を殺すのは自分だと言いながら、結局は彼を助けてしまうのである。まあ特撮とかアニメなんかでもよく見られる設定である。TVシリーズの場合、途中から見た人でもすぐに理解できるものが歓迎されるので、本作のように左源太の複雑な心境をいちいち説明していたのでは飽きられてしまうのだ、と語っている。
また、中村は撮影エピソードについても語っている。みんな気おくれしてしまうのか、三船の周りには人が集まらなかったという。寒い中での撮影で三船と中村の二人だけで火にあたっていたことも多かったらしい。お互いに一言も喋らないこともあったが、それでも平気だったという。三船が特に関心を示したのはビジネス関係の話題だったようだ。当時はミュンヘンに日本料理屋を出店することに没頭しており、中村は三船から「外人が好みそうなデザインはそれだと思うかね」と聞かれたこともあったという。そこには経営者としての顔が出ており、事業のために俳優業をしているのではないかと中村は感じたそうだ。
ところで斎藤こず恵だが、その後激太りして100キロ近くまでになってしまい、40キロ以上の過激ダイエットも経験した。現在の体重状況はわからないが、仕事は声優業をメインに活動しているようである。
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荒野の用心棒
「荒野の素浪人」シリーズ2作の間に挟まれるように放送されたのが「荒野の用心棒」(73年)である。もちろん、これも三船プロの作品である。映画に同タイトルの有名マカロニウエスタン作品があるが、本作も銃・火薬をを多く使用し、マカロニウエスタン調の時代劇であるといわれている。
出演は同プロ所属だった夏木陽介、竜雷太の青春先生コンビであり「東京バイパス指令」コンビでもある二人と前作から引き続きの坂上二郎。そして何故か渡哲也がそこに加わっている。渡はテレビシリーズに出演の時は主演であることがほとんどだが、本作では珍しく主演ポジションではない。先輩である夏木にその座を譲っている感じである。
渡はこの前年である72年に「忍法かげろう斬り」の主演であったが、病気により途中降板。実弟の渡瀬恒彦がその代役を違和感なく務めたという出来事もあった。復帰したてであるということも影響したのかもしれない。前述のとおり夏木も竜も青春ドラマの先生役で人気を得たが、渡のテレビ初主演作も「あいつの季節」(69年)という青春ドラマで、先生の役であった。
「荒野の用心棒」に話を戻すと夏木演じる秋月左馬之介は連発式ライフル銃の使い手で、短銃も携帯している。竜の演じる速見雷蔵は手製の爆雷を使う。二人ともたまに刀を使うこともある。渡演じる谺(こだま)鬼十郎は普通に剣の達人である。谺って読める人少ないかも。坂上演じるすっぽんの三吉は前作のすっぽんの次郎吉と同様のキャラで、瓜二つの弟であると設定にはあるようだ。眼鏡をかけることが多い。
野郎四人がレギュラーという男くさい番組だったが27話より篠ひろ子(当時ヒロコ)が流れ星のおりん役でレギュラー入りする。腕の立つ女賞金稼ぎである。渡と篠と言えば「大都会・闘いの日々」(76年)が思い浮かぶ。
「用心棒」と言えば、やはり三船敏郎だが、その三船も本作には5回ほど登場すし、主人公たちに協力する。クレジット上は「旅の素浪人」となっているが、前作の峠九十郎のつもりで制作されていたようだ。
渡は当時すでに石原プロの所属であったが、石原プロと三船プロの繋がりと言えば、映画「黒部の太陽」(68年)ということになるだろう。この「荒野の用心棒」においては石原プロの名は出てこないが、渡の他にも武藤章生や森正親といった石原プロの俳優がゲスト出演している。庄司永建(「西部警察」の係長)等も石原プロ所属ではないが、その繋がりからの出演かもしれない。
目に付いたのが第38話で、ゲストが森次晃嗣、黒部進、中山昭二となっており、ウルトラマンとセブンとキリヤマ隊長が揃うという特撮ファン興奮の回である。最終である39話のゲストは水谷豊であった。
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荒野の素浪人
今回も三船プロ作品から「荒野の素浪人」である。これは三船が黒澤映画における椿(桑畑)三十郎を連想させるような素浪人を演じ、人気を博した。第1シリーズ(72~73年)と第2シリーズ(74年)が存在する。
基本的なレギュラーは三人で、三船敏郎演じる峠九十郎。刀で豪快にバッタバッタと斬り倒す。小刀も使用する。九十郎は当然、三十郎をイメージしたネーミングであろう。
大出俊演じる鮎香之介。通称「五連発の旦那」と言い、その名の通り連発式の短筒を使用する。大出は当時文学座に所属しており、三船との縁といえば、「大忠臣蔵」にゲストで出た程度であった。知る人ぞ知る役者だったが、本作により一気に有名になったのではと思われる。かぶりそうにない名前だが、郵政大臣も務めた大出俊と言う同姓同名の議員がいた。ただし、俳優大出俊は本名・俊隆である。役名の鮎香之介だが、「鮎川」「鮎原」などは多くいるが、現状「鮎」という苗字の人はいないようである。
そして、坂上二郎演じるすっぽんの次郎吉。三船が仏頂面な分、コメディリーフ的な存在が必要ということだろうか。
基本三人は旅をしており、立ち回りは街中ではなく草原とかタイトル通り荒野とかでやっているイメージがある。
第1シリーズに限っては、セミレギュラーとして梶芽衣子(からっ風のお文)が10回ほど登場。最後の1クールに小川真由美(濡れ燕のお柳)が8回ほど登場している。
第8話の監督を「月光仮面」や「隠密剣士」で知られる船床定男がこの1話だけ務めているが、実は本作が放送された72年2月22日に船床は急逝している。つまり本作が彼の遺作となってしまったようである。40歳の若さであった。
全65話が放送され、中々の人気作だったといえるが、個人的にはほとんど見たことなかったことに大分後になって気づいた。よく目にしていたのは第2シリーズだったので、OP曲も馴染みがなかったし、九十郎の髪型も違っていた。つまり2シリーズあったことを、20年くらい前まで知らなかったのである。
その第2シリーズから、九十郎の髪型が俗にいうムシリから総髪になってほぼ三十郎になっている。こちらの基本レギュラーは男三人だけ。まあストーリーを覚えているのは最終話(39話)だけである。香之介が中野良子演じる女と所帯を持つ決意をし、九十郎たちと別れるのだが、香之介は縁日の雑踏の中で刺されてあっさりと死んでしまう。虫の知らせで戻ってきた九十郎は、その亡骸を前に「(彼女に向かって)死のうなんて考えるなよ」と最後の決戦に向かう。
伊藤雄之助らを斬り捨てた後、形見の五連発を香之介墓の前に置き、次郎吉にも別れを告げて去っていく。やはり三船は浪人姿がよく似合うと改めて思う。
この後、大出俊は「必殺仕業人」(76年)に「木枯し紋次郎」の中村敦夫と共に参加することになる。他の人気時代劇の役者を起用するところとか、必殺シリーズのキャスティングは抜け目がないなと当時は思ったものである。
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五人の野武士
今回も三船プロ作品から「五人の野武士」(68年)である。モノクロ作品だが何年か前にCSで放送され、自分も大体は見たし、この欄でも取り上げたことがある。
三船敏郎のテレビ時代劇初出演作品ということだが、主演というわけではない。第1話と最終話を含め、都合6回しか出演していない。じゃあ誰が主演かと言えば、回によって主役が異なっているとしか言いようがない(オムニバスというわけでもない)。
タイトルの「五人」も誰を指しているのか最終話までわからなかったりするのである。
第1話に登場するのは三船の他、高橋俊行(山中三太夫)、人見明(伊賀良五兵衛)、松山省二(甘楽主水介)、堺左千夫(四方弁之進)の五人である。ちなみに高橋俊行は後に高杉玄と名を変える(後に再び高橋俊行)。堺左千夫は東宝ニューフェイス1期生であり、つまり三船とは同期である。まあ、三船演じる船山次郎義景はそもそも野武士ではないのだが、普通にこの五人のことをタイトルは指していると考えるのが普通だろう。
しかし、第2話から宝田明(利南八郎太)と中山仁(伴右近)という主演級の二人が登場する。これで「五人」がよくわからなくなる。さらに10話からは田村正和(新見新八郎)も登場する。じゃあ毎回この中から五人が登場するのかと言えば、六人だったり三人だったりする時もあるのだ。結局、田村正和の登場は3回のみ。堺左千夫も5回に留まった。堺の場合、10話以降は登場せずもう出ることはないと思っていたら、24話でひょっこり出てきたりした。
そうすると自ずと答えが出てくる。人見明は唯一全話に出演。高橋俊行も第24話以外の25回に出演した。松山省二は20回の登場。中山仁は10回と少ないが、主演扱いも数回ある。そして宝田明は16回の登場で、トップクレジットになった回数も一番多かった。最終話は三船とこの五人(宝田、中山、高橋、松山、人見)が出演し、三船が「この五人は…」と発し、タイトルにおける「五人」を結論づけた形となった。
ただ情報によれば、当時は「タケダ」のOP(提供武田薬品)の後、この五人が紹介されるフィルムが挿入されていたとのこと。それが紛失してしまったため「五人」がわからなくなったらしい。
本作はオリジナル作品であるが、誰が主導になって考えられたかは不明。監修に稲垣浩の名があるので、普通に稲垣かもしれない。東宝では黒澤明はもちろん、稲垣も三船をよく起用していた。本作には岡本喜八が脚本として二度名を連ねている。殺陣師である久世竜も第23話では脚本となっている。
ゲストはやはり東宝の俳優が多いが、日活、東映、大映の役者も出演している。田中浩の名がよく見られるが、当時は三船プロ所属で本作では斬られ役的な立場での出演であった。第9話には後に三船と内縁関係となる北川美佳が出演していた。
桃太郎侍(尾上菊之助版)
三船プロ作品が続いたので、ついでに他の作品も調べてみることにした。
三船プロダクションは1962年に三船敏郎が設立。三船の意思というよりは東宝の勧めである。映画産業の衰退が始まり、東宝も経費削減や撮影所の規模縮小を行う必要があった。東宝は三船に「仕事を回すから、自分のプロダクションを作って、そこで映画を作るように」と告げたのである。
67年からは映画だけでなく、テレビドラマの制作も開始した。その第1作が「桃太郎侍」(67年)だったのである。「桃太郎侍」と言えば、どうしても高橋英樹のを思い浮かべる人が多いと思うが、それは9年後の話でここでは尾上菊之助(現・七代目尾上菊五郎)が主演である。名前でピンと来ない人もいるかもしれないが、その妻は藤純子(富司純子)、娘は寺島しのぶである。
ちなみに映画では長谷川一夫、市川雷蔵、里見浩太朗、本郷功次郎といった面々が桃太郎侍を演じている。テレビでは62年に若杉恵之介主演で制作されているらしいが、詳細は不明である。
さて、尾上版桃太郎侍だが、全26話で、前半の14話は山手樹一郎の原作に準じており、連続ドラマの形式になっているようである。レギュラー陣は次の通りである。牟田悌三(猿の伊之助)、長谷川稀世(百合)、真屋順子(小鈴)、平田昭彦(伊賀半九郎)、佐野周二(神島伊織)、大木実(鷲尾主膳)、田中絹代(千代)となっている。他に役柄は不明だが、天本英世、菅井きんの名が挙がっている。またナレーターは宝田明が務めている。脚本も松浦健郎が15話までは一人で書いている。ゲストは明智十三郎、宇治みさ子、田中春男、小栗一也、田島義文などで、いずれも複数回の登場らしく、明智などは五回連続で登場していたようだ。
15話以降は一話完結形式に変更。オリジナルと思われ、前述のレギュラー陣がどの程度絡んでくるのかはわからない。ゲストに目を向けると、大友柳太朗、藤木悠、左卜全、藤田進、内田良平、久保明、伊藤久哉、人見明、土屋嘉男、加東大介などの名が挙げっている。こうして見るとやはり東宝所属の俳優が多い。
ところで、この番組2008年に時代劇専門チャンネルで放送されたとウィキペディアには書いてあるが、全く記憶がない。個人的にこういった番組を見逃すはずはないと思うのだが、高橋英樹版と勘違いしたのだろうか。1話分だけとかなら、気づかない可能性も大きいが。
ところで、高橋英樹版では前述の原作に準拠したレギュラーが出ていたのかといえば、しっかり出ていたのは伊之助役の植木等くらいだろう(51話で死んでしまうが)。後は大友柳太朗演じる神島伊織が初期に4回ほど、山本由香里演じるその娘百合が初期に2回、菅貫太郎演じる伊賀半九郎が第1話に登場するくらいのようだ。まあ、5年も放送され自分もちゃんと見ていたわけではないので、ネット情報によるものだけれども。
正直「桃太郎侍」自体は好みのコンテンツではないのだが、この67年版は見てみたいと思うのである。
江戸特捜指令
「隠し目付参上」の後番組となるのが「江戸特捜指令」(76~77年)である。タイトルは変わったが、活躍するのは前作同様に隠し目付であり、つまり本作はシリーズ第2弾なわけである。登場人物は代わったが、本筋ではやることは一緒である。制作も引き続き三船プロ、毎日放送である。
今回のリーダーは中村敦夫(幻々舎一斎)である。普段は芝居の脚本家であり「先生」と呼ばれている。演じた中村はこの直前まで「必殺仕業人」に出演していた。この枠(TBS系土曜22時)には因縁のある必殺シリーズである。ちなみに「必殺うらごろし」(78年)でも中村は「先生」を演じている。
他のメンバーだが、前作の最終話で死んだ竜雷太(松五郎)がしれっと復活。もちろん別人の役である。普段は大工で立ち回りでは素手で戦う。まあ空手使いという感じだろうか。原田大二郎(辰)は放送時間上での前番組である「Gメン75」での殉職から9カ月。まだそのイメージもあり「Gメン」と「太陽」の共演と思った人もいるかも。普段は遊び人で、花札を手裏剣のように使うというのは「狼無頼控」で田村亮がやっていたのと同じ。立ち回りでは普通に刀を使う。
五十嵐淳子(小雪)は芸者兼医者という設定。まずそんな人はいないだろうが。本作の放送中(77年2月)に中村雅俊と結婚しており、既に妊娠5カ月だったらしいので、身ごもりながらの撮影だったということになる(7月に出産)。秋野暢子(お町)は前作から引き続きの登場。普段は飛脚という設定も一緒だが、前作とは別人である。前項でも書いたが、竜と秋野は三船プロ所属ということもあり、使いやすいということもあったのだろう。
山城新伍(夢介)は枠的には半年ぶりの復活。普段は時計職人で、本作も登場するからくり人形の担当でもある。立ち回りでは基本的に槍を使うが、太刀を使うこともある。
ラストの立ち回り装束は、前作同様色分けされており、順に黒、茶、青、紫、赤、緑となっており、竜と秋野は前作と色が同じである。他のレギュラーは元ゴールデンハーフのエバ(おえん)がいる程度。米国人とのハーフという設定らしいが、実際はスペイン人とのハーフである。
前作との違いといえば、中村演じる一斎の作った台本に従った芝居で悪事の証拠を掴むという点。時にはエキストラを雇い、建物を改造したりして悪党を騙すという大掛かりなものである。本作での皆勤賞は中村だけのようだが、他のメンバーも欠席は3回~4回で、ローテーションでかぶらないように休んでいる。二名欠席は11話と19話だけのようだ。
気になるゲストだが、15話の引田天功(初代)とその弟子である朝風まり。初代は79年の大晦日に45歳の若さで急逝。二代目を名乗ったのが朝風まりであり、別名プリンセス・テンコーである。番組当時は17歳だったようだ。19話のゲスト鮎川いずみの役名が加代という。偶然なのだろうが79年から「必殺仕事人」シリーズで、長くにわたり「何でも屋の加代」を演じることになる。意外に思ったのが彼女は92年には引退していたという点。もっと長くやっていたようなイメージがあった。
隠し目付シリーズは本作で終了し、4作続いた毎日放送制作時代劇も終了となり、77年4月からは「横溝正史シリーズ」が始まったのである。
隠し目付参上
「影同心Ⅱ」の後番組となるのが「隠し目付参上」(76年)である。制作は東映から三船プロダクションに替わり、番組カラーも必殺スタイルをやめて、ど派手な着物を着て大立ち回りを繰り広げるという、王道時代劇スタイル、言うなれば「大江戸捜査網」の」亜流といった感じであろうか。当時、見てはいた気がするのだが、個人的には好きなタイプの番組ではなかったため、この本放送以来見直した記憶がない。
ゆえに、大体の出演者以外のことは、ほぼ忘れているのでウィキペディア等でチェックしている。隠し目付は六人おり、番組上の主演は江守徹(春楽)で、普段はからくり師。竜雷太(吉岡鉄五郎)は貧乏な道場主。沖雅也(佐吉)は遊び人。大谷直子(菊次)は芸者。秋野暢子(韋駄天のお駒)は飛脚。そして三船敏郎(九十九内膳正)は長屋暮らしの浪人である。ちなみに、ラストの立ち回りでの着物の色は順に緑、茶、青、紫、赤、黒となっており、葵の紋のマントを纏って現れる。
この隠し目付を操っているのが、三船敏郎の二役(松平伊豆守)で、前述の内膳正は異母兄にあたるらしい。最初の4話までは六人全員は登場するが、以降最終26話までは誰かしらが欠席していたようである。ちなみに江守と秋野は全話に出演していたようである。
竜雷太はやはり「太陽にほえろ」があったためか、六話ほど欠席。沖雅也も番組後半から欠席が多くなる。これも「太陽にほえろ」の為ではないかと思われる。沖が演じたスコッチ刑事は本作終了の翌週からの登城であった。この二人が同時に欠席したのは一度だけのようだ。大谷直子は出演したのが14回で、ほぼ半分である。三船敏郎も社長ということもあってか出演は10回に留まっている。竜や秋野は当時、三船プロの所属であり、そこからの出演であろう。秋野は19歳であった。
他のレギュラー出演者には池田まさる、千代恵などがいた。千代恵は後に榊千代恵という苗字がついた芸名になったと記憶している。ドラマの出演記録は70年代後半に集中しており、それ以降は途絶えているところから、80年には引退してしまったと思われる。詳しいプロフィールは不明だが、千代恵名義で「ウンガチョコ先生」という怪しげなタイトルのレコードを出している。
話を戻すと最終話で竜雷太演じる鉄五郎は命を落とすようである。全く記憶にないので当時も見ていなかったのかもしれない。最終話のゲストは三船や竜の出身である東宝仲間の平田昭彦、天本英世など。他に清水綋治も出ているが(悪役だろう)、大谷直子と79年に結婚している(15年後に離婚)。
まあ、DVDとかも発売されているようなので、その気になれば見ることのできる番組である。
影同心Ⅱ
「影同心」とくれば次は「影同心Ⅱ」(75~76年)である。こちらは、OPの芥川隆行のナレーションからして、本家必殺に近いものとなっている。本作において「同心」は一人であり、しかも町奉行所の同心ではなく寺社奉行の同心であり、黒沢年男(堀田源八郎)が演じている。
時代劇において寺社奉行所の同心というのは、あまり見かけたことがない気がする。担当管轄が狭く、一般の市井の事件は管轄外であり、町奉行所や火盗改めのようにドラマの中心にはしにくいからと思われる。身分的には寺社奉行の方が町奉行より偉いとされているらしい。
ED「いつかおまえに」もその黒沢が歌っており、前作と違い印象には残っているが、「時には娼婦のように」で大ヒットを飛ばすのは78年のことである。
しかし主演扱いはその黒沢ではなく浜木綿子演じる香月尼である。尼寺(香泉寺)の尼僧であり、寺社奉行同心である堀田と繋がりがあったわけである。殺し技は鋭く尖った花の茎や枝で首筋を刺すというもの。「仕事人」において村上弘明は当初花屋の政であり、その辺の木の枝を道具に使っていたのでそのルーツになるのかもしれない。木綿子で「ゆうこ」とは当初読めなかった記憶がある。まさか「もめんこ」ではないだろうとは思ったが。
その香泉寺の寺男が水谷豊(留吉)である。口に含んだ楊枝を相手の額(違う時もある)に吹き刺し、木槌で叩いて駄目押しする。水谷豊の時代劇レギュラーってほとんどなかったと思う。というよりゲスト出演も少ないはずである。
そして山城新伍(平七)。本職は南町奉行所の牢番。殺しには褌を使い首を絞める。当時は手ぬぐいだと思って見ていた。初期は女の黒髪を束ねたヒモを使っていたらしいが、それだと放送中にスタートした「必殺仕業人」(76年)で中村敦夫を披露した技(相手の頭髪で首を絞める)と若干被ってしまうことになる。「必殺がマネしている」とは当時言われていなかったと思うので、山城が黒髪を使ったのはごく数回だったのだろう(個人的には記憶にない)。
黒沢演じる源八郎は普通に刀を使う。彼は特に昼行灯というようなことはなかったと思う。他のレギュラーとして、黒沢の友人役で早川保(石井多門)。南町の同心で源八郎に情報を流してしまう。寺社奉行所の大検使が岡田英次(稲葉新左エ門)。源八郎の上司で、大検使とは町奉行所でいう筆頭与力もたいなもの(だと思う)。
ちなみに、レギュラーの四人(浜、水谷、山城、黒沢)は前作の最終話でワンカットずつ出演している(ノンクレジット)。黒沢と山城は「必殺シリーズ」には、共に一度だけ悪役として出演している。特に黒沢の「必殺仕置人」での悪党ぶりは凄かったと思う。
ゲストでは15話に坂口祐三郎(当時坂口徹)、牧冬吉、17話に金子吉延が出演しており、赤影、白影、青影が揃っていたのが目に付いた。前々回挙げた杉本美樹もゲスト出演している。最終話は岸田森演じる町奉行が相手。山城演じる平七が命を落とす。
「Ⅱ」の方がメンバー的には面白かったと思うが、視聴率は低迷したということで、影同心シリーズはこの「Ⅱ」を持って幕を閉じたのである。
影同心
75年3月までは、「必殺シリーズ」はTBS系にて土曜夜10時から放送されていた。子供の頃は土曜の夜といえば「8時だヨ全員集合」「キイハンター」「必殺シリーズ」とチャンネルがTBS(地元ではHBC)に固定されていたものだった。しかしその75年、当時放送されていた「必殺必中仕事屋稼業」が放送時間だけでなくチャンネルも移動することになった。
これは、毎日放送と朝日放送のネットチェンジによるものであった。本来はTBS系が毎日放送、テレビ朝日系(当時NET)が朝日放送というのが正しい形なのだそうだが、関西地区ではそれが逆になっている「腸捻転」と言われる状態が続いていた。
その解消が行われることになったになったため、朝日放送が制作していた「必殺」はNETに移動することになったのである。逆に毎日放送制作だった「仮面ライダー」シリーズはNETからTBSに移ることになった。放送中だった「仮面ライダーアマゾン」は視聴率も悪くなかったが24話を最終回として、TBSでは新番組(仮面ライダーストロンガー)をスタートさせる。しかし、「仕事屋稼業」はその時点で13話で、2クール予定の番組であり視聴率も30%近い人気だったのである。苦肉の策としてその回のゲスト悪役である岡田英次を殺さず、次回にも登場させることで連続感を持たせようとしたのである。移動先は金曜の夜9時となったが、やはり時間帯&チャンネル移動を知らなかった人も多かったようで、14話の視聴率は半分に落ち込んでしまったのである。まあ後に回復してくるのだが。
ところで、TBSからすれば土曜夜の人気番組をむざむざ持っていかれる形になってしまったわけである。そこでその空いた枠に「必殺」っぽい時代劇を入れようと毎日放送に制作を依頼したのである。こうして毎日放送が東映と共に制作したのが「影同心」(75年)だったわけである。
「必殺」の藤田まこと演じる中村主水からヒントを得たであろう日中は昼行灯で、夜は殺しを行うという同心を三人並べたのだ。主演は山口崇(更科右近)、渡瀬恒彦(高木勘平)、金子信雄(柳田茂左衛門)という必殺シリーズにはゲストでもか出演していない三人がキャスティングされた。渡瀬は鎖付きの刀を使うが、山口は基本的には女ものの櫛、金子は蛤の貝殻で相手の睾丸をつぶすという必殺っぽい技を使った。睾丸つぶしは「仕留人」の近藤洋介がやった心臓つぶしからヒントを得たと思われる。
他には范文雀、勝部演之、そして金子の妻役でホントの妻である丹阿弥谷津子が出ていた。ここまでは必殺イメージのないキャストだが、南町奉行つまり三人の上司であり元締役でもあったのが田村高廣。「助け人」ではレギュラー、「仕掛人」にも二度出演している。悪人役は京都で作る時代劇は東映だろうと松竹だろうと似たような役者が出てくるので、大体お馴染みの顔ぶれだといえる。
「必殺」を見ていた時間帯に同じような時代劇をやっていれば、やはり視聴者は見てしまうようで当面の視聴率は良かったようである。「必殺」のプロデューサーだった山内久司は「影同心」は「必殺」のパクリだと断言していた。
個人的にはイマイチ足りないものを感じていた。それは音楽面に関してである。「必殺」は殺しのBGMとか行進のBGMとか記憶に残りやすいものだったが、「影同心」は主題歌を含めて音楽、BGMの印象が全くないのである。
個々のエピソードでも印象に残っているものがないのだが、最終話のゲストは当時は若手俳優だった岡田裕介(後の東映会長)であった。
