なんでも引きうけ候
もう一つ、誰も知らなさそうな時代劇として「なんでも引き受け候」(69年)がある。15年ほど前にもここで取り上げたことがあるのだが、特に新たな情報はない。放送枠は21時から40分というもので、1クール13回が放送された。
内容は仕官を嫌って長屋に住み「なんでも引きうけ業」を始めた浪人が、様々な事件解決に乗り出すといったもののようだ。今でいう便利屋(何でも屋)ということになるが、いつの時代から存在していたのかは不明だ。
主演は落語家の三遊亭小円遊で、他のレギュラー(と思われるの)が中村玉緒、中村是好、岸久美子、神戸瓢介、二木てるみそして子役の堀川亮といったところ。堀川は現在は声優として知られ、特に「ドラゴンボール」のベジータ役は有名であろう。
ゲストは割合豪華なようで、伴淳三郎、村田英雄、大友柳太朗、大村崑、月形龍之介、杉良太郎、里見浩太郎、大原麗子、舟橋元といったが挙がっている。レギュラー陣の顔ぶれからして、軽いコメディタッチなものと思われるが、大友柳太郎や月形龍之介が出演しているのは意外である。落語家も出演していたかもしれないが、名前が挙がっているのは古今亭志ん馬くらいである。ちなみに第11話のサブタイは「上げ底経営法」というようだ(脚本・浅見安彦)。
本作に関してわかっていることと言えばこれくらいである。映像が存在しているかどうかも不明である。そもそも三遊亭小円遊のことを知らない人も多いかもしれない。何しろ亡くなって40年になるのである。
今も続く「笑点」は66年スタートだが、その第1回から出演しており、当時の名跡は三遊亭金遊であり、68年に小円遊(4代目)を襲名している。69年に初代司会者であった立川談志とレギュラーメンバーとの対立があり、「笑点」を一時降板しているのだが、「なんでも引きうけ候」はまさにそのタイミングで放送されたドラマである。どうひいき目に見ても二枚目ではないが、ドラマ主演に抜擢されるくらいだから人気はあったのだろう。「笑点」には談志が司会者を降板したタイミングで復帰している(69年11月)。
自分が見ていた頃(70年代)の「笑点」の大喜利メンバーといえば、司会は三波伸介で、画面左からの並びが桂歌丸、林家木久蔵、三遊亭円窓、三遊亭円楽(5代目)、林家こん平、三遊亭小円遊というものだった。木久蔵は現在の木久扇で円楽は先代である。今も健在なのは円窓と現在も出演している木久扇だけである。
歌丸と小円遊の「ハゲ」「化け物」という罵り合いは番組の名物の一つであったが、80年10月に小円遊が急逝。元々糖尿病を患っていたが、中々飲酒をやめなかったことも原因となったようだ。43歳の若さであった。彼は4代目小円遊であったが、実は初代は32歳、3代目も30歳か31歳で亡くなっていた。2代目は円遊を襲名したが、57歳で亡くなっており、小円遊の名は4代目を最後に空き名跡となっている。今後、使われることはなさそうである。
城下町110番地
なべおさみの師匠に当たる」人物といえばハナ肇。そのハナが主演の時代劇に「城下町110番地」(72年)というのがあるのだが、知っている人はほとんどいないのではないだろうか。もちろん自分も知らなかったし、ネットで検索してもほとんど情報が出てこない。
唯一とも言えるのが「テレビドラマデータベース」である。それによれば、城務めの侍・弼川蔵人(ハナ肇)とその家族の暮らしぶりを描く時代劇ホームコメディだったそうだ。その妻に司葉子で、同居している妻の妹が珠めぐみ、蔵人の上司が桑山正一となっている。当時の番宣広告から、恐らく同僚役なのが藤村俊二で、その妻が林美智子。他は役柄不明だが、長門勇や十朱久雄なども出ていたようである。原作は当時の時代劇の大半を担っていたイメージの結束信二。
当時話題となったのがNET系(制作は大阪・毎日放送)の番組でありながら、収録はフジテレビのスタジオで行われていたことである。これは当時のフジテレビでは貸しスタジオ事業をやっており、出演者にも東京在住が多く大阪でやるより効率的であり、東京のスタジオも空きがなかったからとういうことのようだ。担当ディレクターは毎日放送の人間だが、指揮下のスタッフはNETではなくフジテレビの人間という通常はありえない構図で制作されたのである。
本作の主題歌を担当したのはガロ(GARO)であり、曲名は番組タイトルと同じで、作詞作曲もガロ自身だったようだ。当時はまだブレイク前であり、本作の放送中に大ヒットとなる「学生街の喫茶店」が「美しすぎて」のB面扱いで発売されている。「学生街の喫茶店」はこの72年の年末になってから有線で火が付き始め、広がって行ったようである。
この「城下町110番地」という曲に関しては、シングルはもちろんアルバムにも収録されていないようなので、どんな曲かは謎である。
ガロは堀内護(マーク)、日高富明(トミー)、大野真澄(ボーカル)の三人組で、全員がボーカルとギターをこなす。
堀内は中学校時代からバンド活動(エレキ)を始め、高校時代には日米混成のディメンジョンズとなり、そこでマークと呼ばれるようにった。バンドはエンジェルスへと改名し、西野バレエ団の所属となり由美かおるのバックバンドを務めたりしていた。しかしGSとしてデビューには至らず解散となる。
堀内は一人スタジオで練習していた時にアウトバーンズのボーカルだった松崎しげると知り合いになった。アウトバーンズの解散を聞いた堀内は松崎とバンドを組もうと呼び出した際に一緒についてきたのが日高だったのである。堀内は日高が自分と同じリードギターであるため、いらないと松崎に密かに伝えたが、ずっと一緒だったからと松崎に言われ仕方なく日高も加えたのである。ちなみに、当時松崎はマツとよばれ日高はトミーと呼ばれていた。つまりデビュー前から「トミーとマツ」だったわけである。三人を中心にミルクというバンドを結成したが、松崎がソロ歌手としてスカウトされ脱退し、ミルクも分解してしまう。
その後、堀内と日高は元タイガースの加橋かつみを主演としたミュージカル「ヘアー」のオーディションに参加し、堀内のみが合格。そこでは堀内麻九と名乗っている。その合格メンバーの中に大野真澄もいたのである。「ヘアー」はプロデューサーと加橋の不祥事により公演は途中で中止となってしまうが、日高と堀内は今までのロックスタイルからアコースティックにギターを変え、活動を再開。大野を誘ってGAROが結成されるのである。
半分以上がガロの話になってしまった。番組の方はどうやらVTR収録だったようで、しかも1クール。テープの上書きであれば、二度と陽の目を見ることもないので、誰も知らない番組になってしまうのである。
十手野郎捕物控
もう一つ、なべおさみが主演の時代劇を見つけてしまった。その名も「十手野郎捕物控」(71年)である。本作での役名だが、なべが「佐武」であり藤岡琢也が「市」である。つまりこれは石ノ森章太郎の「佐武と市捕物控」の実写版ということになるわけだ。
原作ファンなら激怒しそうなキャスティングに思える。タイトルを「佐武と市~」にしなかったのは、そういった反発を予想していたのではないか、と勘繰ってしまう。自分も全く見たことのない番組だが、検索すると当時の写真が2、3枚発見できた。
なべが演じる佐武は原作と違い月代(前頭部から頭頂部)を剃ったスタイル、つまり一般的なものである。なべに下っ引きの役というのは似合っていると思うのだが、とにかく弱そうなイメージである。月代を剃っていると余計その度合いが増すように感じる。藤岡琢也の市も普段の姿から眼鏡を取っただけであり、つまり角刈りにヒゲで、ずんぐりとした市なのである。やはり関西弁だったのであろうか。
他のキャストだが、佐武を雇っている同心(原作通りなら田辺安之進)に中山仁。ヒロインのみどりに森川千恵子。この年、森川は「仮面ライダー」に真樹千恵子の名でヒロインとして出演していたが、藤岡弘がケガによって休業を余儀なくされ、彼女も降板することになってしまう。まもなく芸名を本名の森川千恵子に改めると「コートにかける青春」そして本作と立て続けにレギュラーが決ったのである。あと、役柄は不明だが野川由美子、丹阿弥谷津子もレギュラーだったようだ。
さて、ゲストだがこれはテレビドラマデータベースから引用するしかなさそうだが、結構豪華に思える。第1話の高橋英樹、和泉雅子、高松英郎に始まり、大空真弓、夏八木勲、入川保則、藤圭子、佐藤慶、大原麗子、谷啓、大谷直子、津川雅彦、横内正、山田太郎、ジュディ・オング、佐藤友美、峰岸徹、西村晃、沢本忠雄、三條美紀、朝丘雪路、小柳ルミ子、名古屋章、最終話となる18話は桜町弘子と二度目の登場である(と思われる)津川雅彦となっている。
フィルムではなくVTR収録だったらしいので、この時代だとテープを上書きしていた可能性が強い。つまり、映像は存在しないということである。再放送は当然なく、人々の記憶にもほとんど残っていない番組だと予想される(あくまでも推定であり映像が残っている可能性もある)。
「佐武と市」は80年代にスペシャルドラマ形式で放送されているが、キャストは三浦友和、梅宮辰夫だった。まあ許容範囲であろうと思うのである。
狼・無頼控
もう一つ、なべおさみ関連の時代劇から「狼・無頼控」(73~74年)である。これは映像京都が「木枯し紋次郎」(72年)に続いて手掛けた作品である。ちなみに映像京都とは、71年に大映が倒産し収録が始まったばかりの紋次郎の制作を中止させないため市川崑が提唱し、当時大映京都撮影所に所属していた俳優や制作スタッフを中心に発足したプロダクションである。であるから「狼・無頼控」のスタッフは紋次郎のそれに近い。
設定は大目付跡部和泉守が組織した私設部隊「狼」に属する六人の男女の活躍を描いている。「紋次郎」のレギュラーは中村敦夫のみであったが、こちらはまあまあ豪華な顔ぶれを揃えている。
村野武範(剣条之介)…当時28歳で「飛び出せ青春」の教師役で人気があった。佐藤允(九鬼大紋)…当時39歳。時代劇への出演はそう多くはない。剣と九鬼の二人は流派は違うが共に一刀流の使い手である。渥美マリ(南美)…当時24歳。大映のお色気映画路線で売り出し人気を得たが、この当時はそれを拒否し始め多少干されたりしていた。本作では短筒を武器に使う。田村亮(菊次)…当時27歳、田村三兄弟の末弟。手裏剣を仕込んだ花札を武器に使う。なべおさみ(仙三)…当時34歳。さすがに主演を務めるようなことはなくなっていた。本作では火薬を武器に使う。長門勇(玄庵)…当時41歳。「三匹の侍」など時代劇ではお馴染み。本作では拳法の達人という設定。
以上OPの順番に記してみたが、この中では一番キャリアのない村野が主演扱いだったわけである。数年前にこの番組のキャストを思い出そうとして、思い出せなかったのが村野だった。本放送時も見ていた記憶があるのだが、それだけ他のキャストの方が印象が強かったわけである。なべはこれくらいの役が丁度いい。個人的には田村亮の花札投げが好きだった。ちなみにOPの演出は「紋次郎」同様に市川崑が担当している。
以上に加えて元締め役の山村聰(跡部和泉守)、狼が集まる小料理屋の女将である野際陽子(お蔦)、三回ほど登場する砲術使いの丹波哲郎(炎竜軒)などもいる。あと17話にて、渥美マリ演じる南美は故郷伊賀にて殉死。入れ替わりとしてゲスト扱いで出ていた夏純子(朱美)がレギュラー入りすることになる。南美同様に伊賀のくノ一である。
ゲストとしては第4話に中村敦夫が出演。この回は主題歌を歌う五木ひろしも出演していた。第9話には勝新太郎が参戦。元々大映のスターだし、この回の監督である森一生は座頭市シリーズも担当していた縁もあろう。ちなみになべおさみの芸名(本名・渡辺修三)の由来は勝である。なべが渡辺プロ所属時代に勝に渡辺を名乗って電話した際、勝が渡辺晋社長と勘違いし、「お前なんかただのなべだ」と言われたことによる。まあ本名から渡を取っただけだが。
ところでこの番組サブタイに㊙(マル秘)が付くことが多い。「㊙浮世絵地獄」とか全部で5回もある。ちなみにこれは脚本が八尋大和か山田隆之の回に限られている。※㊙は環境によっては出ないかも。
青春太閤記 いまにみておれ!
前回話題に出たついでであるが、なべおさみと大原麗子が「独身のスキャット」から揃ってスライド出演した「青春太閤記いまにみておれ!」(70年)を取り上げたいと思う。
制作は日本テレビと歌舞伎座テレビ室で土曜20時半からの放送。放送期間は半年だが、全15話ということはナイター中継等でつぶれたのであろう。原作は矢田挿雲の「挿雲太閤記」で、若き日の豊臣秀吉つまり木下藤吉郎を描いている。正確にはただの「太閤記」というタイトルなのだが、他と区別するために「挿雲太閤記」としているようだ。他には吉川英治「新書太閤記」、山岡荘八「異本太閤記」、山田風太郎「妖説太閤記」、司馬遼太郎「新史太閤記」等があり、映画化やドラマ化されることが多いのは吉川英治の「新書太閤記」である。どれも読んだことはないので、その違いなどは知るよしもないが、史実を描いているはずなので基本線は同じであろう。
メイン監督は「月光仮面」「隠密剣士」の船床定男で、脚本の一人が「隠密剣士」の大半を書いた伊上勝である(メインライターは布勢博一)。特撮ファンお馴染みのコンビで面白くなりそうな気はするが、しっかりと見たことはなかったりする。10年ほど前だったかCS時代劇専門チャンネルで放送されたのは覚えており、数話録画はしたはずだが見直すことはなかった気がする。大量にあるDVDのどこかにあるとは思うのだが…。
なべおさみ(藤吉郎)、大原麗子(ねね)以外のキャストだが、佐藤允(織田信長)、森次浩司(前田犬千代)、中畑道子(なか)、岩井友見(お市の方)、牧冬吉(才八)、小林勝彦(柴田権六)、堀正夫(浅野又右エ門)、原健策(竹阿弥)、二本柳敏恵(おしん)、犬塚弘(蜂須賀小六)、大谷直子(濃姫)、遠藤辰雄(斎藤道三)、里見浩太郎(松下嘉兵衛)といったところがレギュラーというか複数回登場しているようである。船床・伊上作品の常連である牧冬吉の名がある。クレージーキャッツからは犬塚が出演しているが、谷啓も3話までナレーターとして参加している。ちなみに森次演じる犬千代は前田利家のことで、小林演じる権六は柴田勝家、堀が演じる又右エ門は浅野長政のこと。里見演じる嘉兵衛(之綱)は秀吉の従臣だが恩人とも言われている人物である。
他のゲストだが花柳喜章(今川義元)、夏八木勲(浅井長政)、織本順吉(氏家卜全)、御木本伸介(竹中半兵衛)といった歴史上人物以外にも宍戸錠、沼田曜一、倉丘伸太郎、真山知子、松本めぐみ、万里昌代、早瀬久美といった面々はオリジナル人物を演じたと思われる。
個人的にはなべおさみって小者感が強く、出世して天下を取るっていうイメージが沸かない(現在は年齢的にも大御所扱いかもしれないが)。敢えてその辺を狙ったキャスティングかもしれないけれども。
独身のスキャット
円谷プロにも特撮でない大人向けドラマが存在しており、「独身のスキャット」(70年)は同社初の一般向けドラマである。個人的には、最近までこの存在を知らず、13年にはDVD-BOXも発売されていたことも当然知らなかった。
監修に円谷英二の名がクレジットされており、彼の遺作であるとも言われているが、亡くなったのは第3話を放送した後であり、実質的にはほとんど関わっていないと思われる。放送枠はTBSの水曜21時~21時30分であったが、これはTBSのディレクターだった円谷一が退社することへの餞別的の意味での枠だったようで、一が円谷プロに帰還した直後に父である英二が亡くなったということになるようだ。
映画「アパートの鍵貸します」を意識したコメディドラマで、平凡なサラリーマン貫一がマンションのローン返済のため夜だけ部屋の鍵を貸す商売を始めるというもので、主演はなべおさみである。当時のなべは勢いがあり、ちょっとしたスター扱い。当時、自分は子供だったがなべおさみに関してはちょっと売れているコメディアン程度の認識だったので、今調べてみて主演映画やドラマが相次いだ時期だったのが意外だった。映画版「ハレンチ学園」(70年)なんか大した役でもないのにクレジットは宍戸錠に次ぐ二番手扱いになったいたりとか驚きであった。
クレージーキャッツのリーダー・ハナ肇の付き人をやっていたが、そのクレージーキャッツが下降線になってきたのと入れ違いに上がってきた印象である。注目のきっかけは「シャボン玉ホリデー」でのコント。なべが映画監督で安田伸がその助手役で、なべがメガホンで「安田あーっ!」と実際は大先輩の安田を殴ったりするのがウケていたのだ。なべ自身はそれまで円谷プロとの関わりは全くなかったが、突然円谷一が訪ねてきて出演を依頼されたらしい。企画書を書いた円谷プロ企画室の田口成光は主演がなべと聞いて「彼ではニューヨーク喜劇にならない」とガッカリしたようだ。
他のレギュラーだが、大原麗子(貫一の隣人あやめ)、柏木由紀子(OLひろみ)、ミッキー安川(貫一のいとこ)、桜井浩子(あやめの友人)、一ノ木真弓、千秋実(貫一の勤務する会社の社長)となっている。
第1話のゲストは青島幸男、応蘭芳、第3話に水森亜土、内藤陳、毒蝮三太夫(それまでの石井伊吉ではなく毒蝮として初の円谷出演)、第5話が太田博之、石立鉄男、左卜全、第7話がコロムビアトップ・ライト、第8話が柳家小さん、柳家子ゑん、山本陽子(ちょい役らしい、第9話は伴淳三郎、世志凡太、悠木千帆(樹木希林)、最終となる11話に堺左千夫、ナンセンストリオ等である。
第1話の監督が日活アクションでお馴染みの長谷部安春なのは「恐怖劇場アンバランス」からの流れだが、放送はこっちが先になっている。2~4話は音声素材が不明のため、DVDでは映像のみが収録されているという。
全11話なのは、予定どおりか打ち切りなのかは不明だが、本作終了の翌4月から放送の時代劇「青春太閤記いまに見ておれ」になべと大原麗子が揃って出演し、主役の木下藤吉郎とその妻ねねをそれぞれ演じているのだ。
近年、なべと本作監督の満田かずほとのトークショーがあり、なべは「スキャット」は面白くないから1クールで辞めようぜ、みたいなことを大原麗子と話していたと語っていたらしい。視聴率がどうだったかは不明だが、二人が「いまにみておれ」を選択したので終了せぜるを得なかったということになるのだろう。
戦え!マイティジャック その2
前回の続きで「戦え!マイティジャック」(68年)である。本作はフジテレビがキー局となっているのだが、よく考えたら当時地元(北海道)にはフジの系列局はなかったので(72年にUHB開局)、放送されていたかどうかも不明だったりする。NET(テレビ朝日)系列もなかったが(69年にHTB開局)、それらが全く放送されなかったわけではなく、TBS系のHBCと日テレ系のSTVで放送されることもあったようだ。
本放送ではなかったと思うが、1時間の「マイティジャック」は目にした記憶はあるのだが、「戦え!」の方はいつが初見だったのか定かではなかったりする。
それはさておき、1時間の時は二谷英明などギャラの高そうな役者をゲストにも起用していたが、「戦え!」ではそこまで大物な役者は出演していない気がする。しいて言えば、4話に登場の二本柳寛、7話に登場の今井健二くらいか。今井は東映ニューフェイスなので、当時だと「悪魔くん」や「キャプテンウルトラ」など東映の特撮には出演することもあったが、円谷作品は珍しい気がする。
10話には藤村俊二がピエロ役で登場。同じ回には歌手のシリア・ポールも出演。真理アンヌと同じインド人とのハーフであるため、親戚(姉妹)と間違われることも多いという。ちなみに真理のすぐ下の妹はモデルのブラバー・シェスで彼女とシリアが混同されているのかも。もう一人の妹が久万里由香だが、本作18話にゲスト出演している。
22話に登場する世志凡太は当時勢いのあったコメディアン。円谷作品では「怪獣ブースカ」等にも出演しており、2013年発売の「円谷プロSFドラマ大図鑑」ではインタビュー記事も掲載されている。元々「原信夫とシャープ&フラッツ」のベーシストであり、「南廣とザ・サウスメン」のドラマーだった南廣とは親しかったという。円谷の仕事は結構好きであり、アドリブも多くいれていたと語っている。近年、個人的にはこの人を見かけるのは浅香光代の夫(未入籍)としてくらいだった。
ある意味、最大のゲストと言えるのは12~13話の森次浩司(晃嗣)ではないだろうか。「ウルトラセブン」が終了して、すぐの出演だったようだ。役名は弾超七で、セブンを匂わせるものだったが普通に地球人であった。この回の女幹部役は新東宝出身の万里昌代。セブンからは古谷敏や阿知波信介も他の回にゲスト出演している。
最終の25~26話は前後編。ここでラスボスを演じるのは当時27歳の真山知子であった。元々は東映のニューフェイスで千葉真一や太地喜和子が同期。しかし東映での封建的な空気に馴染めず3年程度で退社。東映の女優は短い期間で辞める人が多いようである。劇団青俳に移り、その先輩だった蜷川幸雄と65年に結婚している。本作に関しては口紅をつけるのを凄く嫌がったことが記憶にあるそうだ。
この最終話では、渚健二演じる小川隊員が殉職してしまう。前回も書いたが、渚は「忍者部隊月光」でも殉職しているが、それは懲罰的意味も含まれていたと思われる。ただ本作では江村奈美と交際していたからというわけではないだろうと思う。
戦え!マイティジャック
「マイティジャック」(68年)は13話で打ち切られることになったため、時間を30分にして内容も子供向けに改めたものが「戦え!マイティジャック」(68年)である。放送時間も土曜20時から19時へと繰り上がった。話数も13回ではなく、時間を半分にした分、26話にしてほしいと円谷サイドが要請し、その予定で前作の翌週からスタートすることになった。ただ裏番組に高視聴率のアニメ「巨人の星」があったため、視聴率的に大きな期待はできなかった。
レギュラーメンバーも11人から5人に減らし、MJの位置づけも国際機関アップルの下部組織ということになった。前作からは南廣(天田一平)と二瓶正也(源田明)というウルトラシリーズ等で馴染みのある二人のみ残留。新メンバーとして山口暁(今井進)、渚健二(小川喜助)、江村奈美(江村奈美)が加入した。
山口と渚は「忍者部隊月光」(64~66年)のオリジナルメンバーで、山口のデビュー作でもあり二年間フル出演している(渚は18話まで)。これはフジテレビのプロデューサーが「月光」を担当していた新藤善之に替わったことによるキャスティングであろう。江村奈美は当時19歳、それまで川奈美沙の芸名で活動していたが、初レギュラーでもあり今回の役名を芸名に改めることにした。山口は当時24歳で、ほぼ設定年齢(23歳)どおりだったが、渚は当時30歳で、実は二瓶(当時28歳)よりも年長だった。ちなみに設定年齢は22歳だった。加えてアップル日本支部の責任者が宇佐美淳也演じるゼネラル藤井(本名・藤井泰蔵)である。宇佐美は「光速エスパー」や「ミラーマン」での博士役など特撮ドラマにもよく出演する人であった。東映では1作のみだが水戸黄門役をやったこともある。12・13話の前後編と25・26話の前後編のみ登場している。
やはり「月光」に携わっていた土屋啓之助監督や渡辺高光率いるアクショングループ「JFA」の起用などフジテレビ側の意向の強いスタッフ編成となっている。疑斗を担当する上西弘次を含め後にピープロの「スペクトルマン」(71~72年)に携わるメンバーが多く顔を揃えている。
OPの役名表記が理由は不明だが第6話より漢字からカタカナ表記に変更となっている。(例:天田隊長→アマダ隊長))
13話までは前作路線を引き継いだメカ同士の戦闘が中心となっているが、14話以降は怪獣やらロボットやらが登場する何でもありな路線へと変更となっている。着ぐるみはほとんどが「ウルトラセブン」等、他番組からの流用で、塗りなおしたり改造を加えたりしていたようだ。
江村は監督の満田かずほから「渚はプレイボーイだから気を付けなさい」と言われていたという。実は渚が「忍者部隊月光」を(殉職という形で)早々と降板したのも共演女性との関係が原因だと月光役だった水木襄が語っていた。相手の女性も数か月後に降板となっていた。
しかし、渚と江村は番組終了後に結婚し、江村は女優を引退している。2013年に出た「円谷プロSFドラマ大図鑑」という本で彼女はインタビューに答えており、顔合わせの帰り道に大きな音がして振り返ると渚の車が電柱に当たっていたという。実は彼女を送ろうと近づいていたらしく顔合わせからプレイボーイぶりを発揮してようだ。渚とは16年ほど夫婦だったと述べており別れたことを示唆していた。レギュラーの五人はチームワークも良く、仲良くやっており楽しかったと述べている。
マイティジャック その2
前回の続きで「マイティジャック」(68年)である。まずゲストについても触れてみたい。前回書き忘れていたが、MJの設立者として柳永二郎(矢吹郷之助)が4回ほど登場している。柳は1895年つまり明治の生まれという大ベテラン。こういった特撮作品には縁がなさそうだが、当時東宝の戦記映画に軍人役などで出演しており、その線からの出演かもしれない。
第1話では、応蘭芳がその矢吹の秘書として登場するが、実はQの女スパイだったというお話。「プレイガール」はこの翌年からで、当時は「失神女優」などと言われていた頃である。「プレイガール」といえば、本作には12話に高毬子、13話に八代万智子がゲスト出演している。応と八代は共に東映ニューフェイス5期生。どちらも短期間で東映の専属は離れたようだが、その後「マグマ大使」でも共演することになる。
第2話には斎藤チヤ子、第3話には山東昭子、第4話には南原宏治、山本耕一などが登場。斎藤チヤ子は58年に新東宝からデビュー。久保菜穂子とも共演があった。その後歌手として活動するが、次第に女優業がメインとなる。69年に芸能界を引退しているが、「怪奇大作戦」の25話「京都買います」が特撮ファンには有名。山東昭子は今や国会議員として知られるが、女優時代は悪女役が多く、当初は選挙でもイメージは悪かったらしい。しかし本人は悪女役は好んでやっていたという。
第5話の白木マリ(万里)は、すっかり「必殺シリーズ」での藤田まこと(中村主水)の鬼嫁のイメージが強くなってしまったが、当時は二谷と同じ日活の所属。準メイン的な立場のヒロインといった役柄が多かった。二谷との共演もあったはずだが、意外と少ないかもしれない。
第8話は佐原健二、藤木悠の東宝ニューフェイス6期生コンビ。佐原は円谷作品の顔みたいなイメージだが、藤木は後に「ウルトラマンレオ」にレギュラー出演した程度。また戸上城太郎はやはり時代劇俳優のイメージ。円谷作品も珍しい。第9話には佐原同様に円谷作品の顔である桜井浩子が登場。また何気に東宝特撮、円谷作品への出演が多いベテラン伊藤久哉も出演している。
最終回には前述の八代の他、平田昭彦、沼田曜一、松岡きっこが登場。Qの首領(と思われる人物)は沼田が演じた。
制作サイドはそれなりに予算もかけた意欲作ではあったのだが、視聴率は悪く13回での打ち切りが決まった。個人的には1時間が長く感じる話が多かった印象がある。それにレギュラー11人はやはり多すぎであろう。実際に必要か?と思うようなキャラも何人かいたし。ちなみに、土曜夜8時からの放送だったので「8時だよ全員集合」を思い出す人も多いと思うが、翌69年からの放送であり、強力な裏番組としては存在していなかった。
主演の二谷英明は、共演者からの評判は悪くなかったが、制作側への注文は多かったようだ。隊員服やヘルメット着用を嫌がり背広姿でのシーンを多くするような要求もあったという。メイン監督が野長瀬三摩地から小林恒夫へ交代したのもその辺が影響していたようだ。小林は東映で映画「少年探偵団」シリーズやテレビでは「悪魔くん」や「忍者ハットリ君」などを担当していた人物。野長瀬三摩地は本名で、東宝では黒澤明の監督助手を務めていたこともある。円谷作品には「ウルトラQ」から参加していたが、本作を離れた後は約12年に渡り円谷作品には参加していない。
マイティジャック
今回は円谷プロが制作した日本初の1時間特撮ドラマ「マイティジャック」(68年)である。あくまでも大人向けであり、怪獣はもちろん変身ヒーローも登場しない。放送時間も土曜20時からというものであった。
東宝特撮映画には「海底軍艦」(63年)という作品があるが、本作はそれをルーツとしており、空飛ぶ万能戦艦に乗り込み、悪の組織「Q」から現代社会を防衛する11人の勇者の物語となっている。
配役も力が入っており、主演は当時は日活のスターだった二谷英明(当八郎)。映画と並行してテレビドラマへの出演も多くなっていた頃だったが、こういった特撮ドラマは初めてだったと思われる。東映で活躍していたのが南廣(天田一平)。元はジャズバンドのドラマーであったが、58年に俳優デビュー。当時放送中の「ウルトラゼブン」にもクラタ隊長役でゲスト出演しており、その縁からの起用だろう。久保菜穂子(桂めぐみ)は新東宝スターレット1期生。彼女も特撮作品は初となる。突然のオファーには悩んだそうだが、二谷が出演すると聞いて、自分も出てみようかと思ったらしい。円谷作品といえば東宝の俳優が出演することが多いが、敢えてそれ以外の俳優をキャスティングしたかったのだろうか。それぞれの会社で主演を務めたこともある三人を呼ぶだけでも金がかかっている気がする。ちなみに当時、二谷38歳、南40歳、久保36歳である。イメージ的には二谷の方が南より年長な気がする。
この三人だけでも十分に大人ムードが漂っている気がするが、加えて春日章良(英健)や天本英世(村上譲)もレギュラー入り。春日は当時47歳で、メンバーでは最年長。春日俊二の名でテレビ創成期より活躍。本作では本名の章良名義だが、これは数年間のみで、基本的には俊二だったようだ。個人的には夏目俊二と紛らわしい。天本英世は当時42歳で、東宝の専属であった。特撮ファンには説明不要の存在だろう。後に登場する睦五朗は「あれほどの奇人にはお目にかかったことがない」と天本を称していたが、二瓶正也は大先輩だけど親友でしたと語っており、家を訪れたこともあったようだ。
ベテランばかりのキャストだが、若手としてはその二瓶正也(源田明)で当時28歳。東宝ニューフェイス出身で、「ウルトラマン」のイデ隊員で知られる。池田和歌子(一条マリ)は当時26歳。74年にアニメの作画監督と結婚し、声優業も行うようになる。
後の四人は役柄的にあまり目立たない。井上紀明(寺川進)は当時25歳で東宝の所属俳優だった。田中淑隆(玉木英雄)は詳しいプロフィールが不明だが、設定上は19歳。恐らくだが、20代前半だろう。残る二人はベテランで、福岡正剛(服部六助)は当時39歳。「怪獣ブースカ」では準レギュラー。大屋満(富井満)は当時40歳。東宝の所属で喜劇への出演が多かった。大人向け番組を強調したかったのか、二谷より年長が5人もいたわけである。11人が全員登場したのは第1話のみだったが、11話で玉木と富井が偵察任務中に攻撃され殉職。入れ違いのように睦五朗(川上登)と真理アンヌ(弓田エマ)が登場する。この時点ではまだ続ける予定だったようだが、13話での終了が決定。睦は3回、真理は2回のみの登場で終了してしまった。女性が増えたからか久保も11話以降は未登場であった。
全13話出演を果たしたのは池田和歌子だけであり、二谷も第9話のみ欠席している。レギュラー出演者の話だけで長くなったので、次回は中身にも触れてみたい