剣と風と子守唄
三船プロシリーズ、今回は「剣と風と子守唄」(75年)である。ここでも主演は三船敏郎自ら務める。
ここでの役名は砦十三郎。いつもの旅の素浪人ではなく御庭番支配という役職を持つ。それも第1話だけの話で、将軍の面前で「徳川の威信、既に地に落ちて信ずるに足らず、今にして不要成」と啖呵をきって一人出て行ってしまう。もちろん、幕府も黙っているわけはなく、十三郎抹殺の為に追手を差し向ける。それが中村敦夫(あかねの左源太)なのである。左源太も十三郎の配下だった男だが、容赦なく彼を狙う。
十三郎には小雪という娘がおり、当時人気のあった子役・斎藤こず恵が演じる。当時本放送は大体見ていたはずだが、大きな勘違いをしていた。十三郎が普通に娘を連れて逃亡の旅をする、言わば「子連れ狼」形式のスタイルだと思っていたのだが、娘を連れ歩くのは追手の左源太だったようだ。まあ、人質的な意味があるのだろうが、左源太も悪人ではないので、子供を邪険に扱ったりはしない。この二人に間にコメディリーフ的な存在として赤塚真人(ひぐれの丈吉)が加わって、小雪の世話をやくのである。
レギュラーは以上の四人だが、ゲストに目を向けてみると第1話の伊吹吾郎に始まり、岡田裕介、伊藤雄之助、佐野周二、藤原釜足、岸田森、沖雅也、沢村貞子、沢村いき雄、加藤武そして緑魔子と石橋蓮司の夫婦コンビが同じ回に登場。「荒野の素浪人」の相方であった大出俊も短銃造りに燃える男として登場する。24話に出てくる斎藤ゆかりはこず恵の実妹だそうである。また、三船とは「七人の侍」仲間である稲葉義男、宮口精二そして最終話には志村喬も登場するのだ。テレビでの三船・志村共演はあまりなかったと思う。
中村敦夫によれば、本作はドラマとしては失敗だったと語っている。演じる左源太は公の義務と私的感情とで板挟みになり、十三郎を殺すのは自分だと言いながら、結局は彼を助けてしまうのである。まあ特撮とかアニメなんかでもよく見られる設定である。TVシリーズの場合、途中から見た人でもすぐに理解できるものが歓迎されるので、本作のように左源太の複雑な心境をいちいち説明していたのでは飽きられてしまうのだ、と語っている。
また、中村は撮影エピソードについても語っている。みんな気おくれしてしまうのか、三船の周りには人が集まらなかったという。寒い中での撮影で三船と中村の二人だけで火にあたっていたことも多かったらしい。お互いに一言も喋らないこともあったが、それでも平気だったという。三船が特に関心を示したのはビジネス関係の話題だったようだ。当時はミュンヘンに日本料理屋を出店することに没頭しており、中村は三船から「外人が好みそうなデザインはそれだと思うかね」と聞かれたこともあったという。そこには経営者としての顔が出ており、事業のために俳優業をしているのではないかと中村は感じたそうだ。
ところで斎藤こず恵だが、その後激太りして100キロ近くまでになってしまい、40キロ以上の過激ダイエットも経験した。現在の体重状況はわからないが、仕事は声優業をメインに活動しているようである。
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