江戸特捜指令
「隠し目付参上」の後番組となるのが「江戸特捜指令」(76~77年)である。タイトルは変わったが、活躍するのは前作同様に隠し目付であり、つまり本作はシリーズ第2弾なわけである。登場人物は代わったが、本筋ではやることは一緒である。制作も引き続き三船プロ、毎日放送である。
今回のリーダーは中村敦夫(幻々舎一斎)である。普段は芝居の脚本家であり「先生」と呼ばれている。演じた中村はこの直前まで「必殺仕業人」に出演していた。この枠(TBS系土曜22時)には因縁のある必殺シリーズである。ちなみに「必殺うらごろし」(78年)でも中村は「先生」を演じている。
他のメンバーだが、前作の最終話で死んだ竜雷太(松五郎)がしれっと復活。もちろん別人の役である。普段は大工で立ち回りでは素手で戦う。まあ空手使いという感じだろうか。原田大二郎(辰)は放送時間上での前番組である「Gメン75」での殉職から9カ月。まだそのイメージもあり「Gメン」と「太陽」の共演と思った人もいるかも。普段は遊び人で、花札を手裏剣のように使うというのは「狼無頼控」で田村亮がやっていたのと同じ。立ち回りでは普通に刀を使う。
五十嵐淳子(小雪)は芸者兼医者という設定。まずそんな人はいないだろうが。本作の放送中(77年2月)に中村雅俊と結婚しており、既に妊娠5カ月だったらしいので、身ごもりながらの撮影だったということになる(7月に出産)。秋野暢子(お町)は前作から引き続きの登場。普段は飛脚という設定も一緒だが、前作とは別人である。前項でも書いたが、竜と秋野は三船プロ所属ということもあり、使いやすいということもあったのだろう。
山城新伍(夢介)は枠的には半年ぶりの復活。普段は時計職人で、本作も登場するからくり人形の担当でもある。立ち回りでは基本的に槍を使うが、太刀を使うこともある。
ラストの立ち回り装束は、前作同様色分けされており、順に黒、茶、青、紫、赤、緑となっており、竜と秋野は前作と色が同じである。他のレギュラーは元ゴールデンハーフのエバ(おえん)がいる程度。米国人とのハーフという設定らしいが、実際はスペイン人とのハーフである。
前作との違いといえば、中村演じる一斎の作った台本に従った芝居で悪事の証拠を掴むという点。時にはエキストラを雇い、建物を改造したりして悪党を騙すという大掛かりなものである。本作での皆勤賞は中村だけのようだが、他のメンバーも欠席は3回~4回で、ローテーションでかぶらないように休んでいる。二名欠席は11話と19話だけのようだ。
気になるゲストだが、15話の引田天功(初代)とその弟子である朝風まり。初代は79年の大晦日に45歳の若さで急逝。二代目を名乗ったのが朝風まりであり、別名プリンセス・テンコーである。番組当時は17歳だったようだ。19話のゲスト鮎川いずみの役名が加代という。偶然なのだろうが79年から「必殺仕事人」シリーズで、長くにわたり「何でも屋の加代」を演じることになる。意外に思ったのが彼女は92年には引退していたという点。もっと長くやっていたようなイメージがあった。
隠し目付シリーズは本作で終了し、4作続いた毎日放送制作時代劇も終了となり、77年4月からは「横溝正史シリーズ」が始まったのである。