翔べ!必殺うらごろし その2
もう少しだけ「翔べ!必殺うらごろし」(78年)である。
22話でおばさん(市原悦子)は記憶を取り戻す。生き別れの幼い息子がいて、記憶を失う要因にもなっていた。最終23話でその息子がそば屋夫婦(平井昌一、松木路子)に拾われて育てられていたことを知る。その夫婦が悪人(浜田晃、千葉敏郎、唐沢民賢)に狙われていることを知り、単独で立ち向かうが、元々腕が立つわけでもないので斬られてしまう。「先生ーっ!」と叫んで、放り投げた匕首は先生(中村敦夫)のいたはるか遠くの祠の扉に突き刺さる。その匕首を手に取った先生はおばさんが斬られる姿を霊視する。そういう現象の起こるドラマなのだ。先に駆けつけた正十(火野正平)の背中でおばさんは息を引き取る。
先生は太陽を信仰しており、そのエネルギーで殺しを行うので基本的に昼間に行動する。まず源蔵(唐沢民賢)を屋根伝いに追跡し、そのまま上からいつもの旗竿で串刺しに。そして反対方向に歩いて行った三隅(千葉敏郎)を走って追跡。いつの間にか先回りしており、高く生えた竹の先端で待機し、三隅が下を通りかかった時に竹をしならせながら飛び込み串刺しにする。続いて残る利兵衛(浜田晃)の元へ走って駆けつけ旗竿で動きを取れなくすると、おばさんの形見の匕首でとどめをさした。浜田晃は第1話でも先生に殺されている。
というように、先生一人で三人を片付けたのだが、若(和田アキ子)は何をしていたかと言うと物語には全然からまず、終始具合悪そうに横になっているだけだった。実は和田は実際に体調不良だったとのことで、このような展開になったらしい。終盤に出番が少なかったのもそのためである。中村がケガをしたり市原も体調を崩したりしたらしく、オカルトを扱っていたこととも関係があるのかもしれない。
殺しの場面に用いられるBGMは主題歌である和田アキ子「愛して」のアレンジだが、作曲は音楽担当の比呂公一ではなく浜田省吾(作詞も)によるものである。この曲が流れると先生が旗竿も持って走る姿が目に浮かんですまう。
中村敦夫は本作についても著書「俳優人生振り返る日々」の中で語っている。時間が余った時などは、レギュラー四人で麻雀をやることがあったという。市原悦子は俳優座の大先輩でもあり女優としては信頼を寄せていたが、麻雀に関してはとにかく下手過ぎるのだという。それでいて負けず嫌いだから、彼女が勝つまで帰してもらえないそうだ。中村たちが勝たせようとしても勝てないので、険悪な雰囲気のまま明け方になってしまったという。ようやく彼女が勝ったと思ったら大粒の涙を滝のように流し、中村は唖然としたそうだ。和田アキ子もイメージ通り負けず嫌いだが、玄人はだしの火野正平には勝てない。勝つまでやめようとしない和田に火野が珍しく怒り出したという。中村が間に入って「あと一回にしよう」ということにしたが、結局和田は勝てず麻雀台をひっくり返し、パイを火野にぶつけ始めたという。
中村と火野は京都の撮影所で長く仕事をしていたのでよく知っていた仲だったというが、共演作は思いつかない。「木枯し紋次郎」にまだ本名の二瓶康一だった頃の火野がゲスト出演していたのは覚えているけれども、まあ他にも探せばあると思う。
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