暗闇仕留人
「助け人走る」の後を次いで始まったのが必殺シリーズ第4弾「暗闇仕留人」(74年)である。まだタイトルに必殺の文字は復帰していない。この番組は当初の予定が色々変更された末、開始された番組である。まず番組そのものだが予定されていたのは、以前ここでも取り上げた「おしどり右京捕物車」であったらしい。タイトルも「暗闇始末人」の予定が、既に「始末人」というタイトルの小説があったため変更される。キャストも大吉役を「太陽にほえろ」の山さん(露口茂)、ゴリさん(竜雷太)に依頼したが断られたらしい(坊主頭になるのが嫌だったようだ)。で、結局「仕置人」の中村主水(藤田まこと)を復活させることで落ち着いたようだ。その仕置人からは半次(秋野太作)とおきん(野川由美子)も復活、秋野と野川はここまでの4作品すべてに登場している。大吉役は近藤洋介に落ち着き、インテリの糸井貢役には石坂浩二が起用された。今回は中村りつ(白木万理)の二人の妹が、それぞれ大吉の情婦(三島ゆり子)、貢の妻(木村夏江)という設定であっため、三人は義兄弟ということになる(正確には大吉は違うのだけれども)。そのため家族関係がクローズアップされ、せん(菅井きん)とりつコンビは用がなくても毎回登場するようになる。せんりつコンビは必殺の人気要因の一つではあるが、個人的には筋に関係なく登場するのが嫌いであった。私はまだ小学生ながら必殺にはコミカルな要素を求めていなかったのである。だからこの二人はいらないと本気で思っていた。ちなみに藤田まことと菅井きんは7歳しか違わない。菅井きんはまだ40代だったのだが、ホント若い頃から老け顔だったのである。そして、この番組では西崎みどりの歌う主題歌「旅愁」が何故か大ヒットし、ヒットチャートの1位になったりした。その結果、この後のシリーズ主題歌は「荒野の果てに」や「望郷の旅」のような歌がなくなり、演歌っぽい歌が続くことになった。長くなってきたので以下事項。
助け人走る その2
前回の続きである。当時はもちろん、田村高廣が阪東妻三郎の息子であるとか田村三兄弟(実際は四兄弟)の長男で、正和と亮の兄であるとか、中谷一郎が風車の弥七の人であるとか、そんなことは意識せずに見ていた(と思う)。第2話「仇討大殺陣」の冒頭で無声映画のシーンが流れるのだが、そこで中山安兵衛を演じているのが阪東妻三郎である。個人的にはこの第2話ではまったという感じである。一回平均三人か四人を仕留めるのが普通の必殺シリーズでは珍しい大量15人が相手である。そのメンバーも千葉敏郎を筆頭に田畑猛雄、島米八、北野拓也、丸尾好広といった必殺ではお馴染みの面々である。萬屋錦之介や高橋英樹や里見浩太朗が主役のドラマなら、1分とかからずぶった斬るくらいの相手だが、この番組では文十郎と平内の二人がかりで、峠から川を渡り草原へと走り回ってヘロヘロになりながら15人を倒すのである。まあ不満を言えば平内がただぶん殴るだけというのが難点である。相手を殺す必要はないシチュエーションではあったが、すっきりしないのは事実である。ちなみにこの回の大物ゲストは志村喬で、バカ殿を演じるのは北村総一郎である。
この番組のサブタイは漢字五文字で「○○大○○」で統一されており、第1話「女郎大脱走」は女郎を脱走させる話だし、第4話「島抜大海原」は島送りになった女を自らが島送りになって助け出しに行く話しである。このようにサブタイだけでどんな話かわかるかというと、ほとんどわからないのである。まあ必殺マニアは多いのでパッと全て分かる人もいるとは思うが。ちなみに第5話のみピタリくるのが思いつかなかったのか「御生命大切」と大の字が真ん中に来ていない。一回くらいいいやという感じだったのだろうか。この回のゲストは辻斬り浪人役で津川雅彦、若い藩士役で赤い彗星のシャアこと池田秀一などが出演している。
この番組が他の「必殺」と違う点は、仕掛人にしろ仕置人にしろ公にはならない闇の稼業なのだが、「助け人」というのは表稼業としてやっているところである。殺しは「裏の仕事」として遂行され、あくまでも人助けをメインにしているところが他のシリーズとは違っている。まあ毎回メンバーの知り合いが事件に巻き込まれるというパターンよりは自然でいいと思うのである。
助け人走る
今まで必殺シリーズは研究サイトや解説ページも多いので、大ファンでありながらもあえて取り上げなかったのだが、田村高廣の訃報を聞き、これはやらねばなるまいと。何故なら、まだ小学生だった自分が初めて第1話から最終話まで真剣に見た時代劇が必殺シリーズ第3弾「助け人走る」(73年)だったからであり、その主演が田村高廣(中山文十郎)であり、やはり04年に亡くなった中谷一郎(辻平内)であった。必殺シリーズなのになんで「必殺」の文字が付かないのとかは、調べてもらえばわかるので、ここでは書かない。しかし森本太郎とスーパースターの歌う主題歌「望郷の旅」の歌詞がテレビでは「熱い明日の風が呼んでる」となっていたが、実はレコードでは「汗と涙と血がまた騒ぐ」だったのである。「血」と一文字入ってるだけなのに、かなりナーバスになっていたようだ。森本太郎といえばタイガースのギタリストであったが、沢田研二、加橋かつみ負けないくらい、いいボーカリストであると思う(ルックスでは負けていたけど)。新田洋の名で「タイガーマスク」の歌を唄っていたことを知ったのは、結構最近である。二つの歌を聞きくらべれば、同じ人が歌っているとすぐわかるのだが、全然気がつかなかった。
必殺では音楽は結構、重要な役割を果たしていると思うが、この「望郷の旅」を使った殺しのテーマにのって、平内が脳天に煙管を突き刺したり、文十郎が普通に刀で斬るだけでなく、骨を砕いたり、短い刀を投げつけたり、鉄の棒で撲殺したりとか、いろんなバリエーションを見せる。メンバーは当初、この二人に加えて元締の山村聡(清兵衛)と、つなぎ役の秋野太作(利吉・当時は津坂匡章)の四人だけであったが、5話から野川由美子(お吉)と住吉正博(為吉)が加わり、20話より当時の自分にも「仮面ライダーV3」や「キイハンター」でお馴染みだった宮内洋(龍)が加わるという大所帯となっていく。宮内は空手というよりプロレス技(脳天逆落とし)で相手を仕留める。しかし24話で為吉が奉行所に捕まり拷問の末殉職する。ちなみに必殺シリーズ初の殉職者であった。この番組は実は連続性があり、25話以降も奉行所に目を付けられ続け、番組の雰囲気も暗くなるのであった。長くなるので次回に続く。
裸の町
前項と同じタイトルの番組があるのだが、それが「裸の町」(68年)である。町と街という字の違いがあり、全然別の番組である。フリーのルポライターが見知らぬ外人に、ある男の捜索を依頼され、異常な事件に巻き込まれる(テレビドラマデータベースより)、というストーリーらしいが、私はオープニングのみ見たことがある。白黒反転映像に効果音のような音楽が続くいかにもサスペンスっぽい感じである。主演は宍戸錠だが日活ではなく東映の作品である。他の出演者は仲谷昇、弓恵子、楠侑子などである。ちなみに原作は五木寛之である。
他に書くこともないので、映画の「裸の町」について触れておく。こちらは真船豊の原作で37年、57年にそれぞれ映画化されているくらいだから、名作といわれる作品なのだろう。57年のほうは、出演者が池部良、淡島千景、森繁久弥、杉村春子、志村喬、淡路恵子、山本学、左卜全など中々豪華な面々である。まあ、あまり見たいとは思わないけれども。
87分署シリーズ・裸の街
エド・マクベインの87分署シリーズを日本を舞台にドラマ化したのが「87分署シリーズ・裸の街」(80年)である。古谷一行(友成刑事)を主役に、レギュラーメンバーは田中邦衛(竜間)、村野武範(近藤)、石橋正次(春山)、岡本富士太(栗本)、阿藤快(牛島)、蟇目良(香取)といった面々である。「飛び出せ青春」では先生と生徒だった村野と石橋コンビ、「Gメン75」「大空港」に続きまたも刑事役の岡本、当時はバリバリの悪役だったのが突然刑事役に抜擢された阿藤(当時は海)、ハーフの二枚目だが名前は蟇目(ひきめ)といった顔ぶれだけはよく覚えているのだが、内容はほとんど記憶にない。町田義人の歌う主題歌だけは覚えているのだが(サビの部分だけだが)。ところでこのメンバーほぼ同世代では、と思って調べてみると当時48歳の田中邦衛を除いては、古谷と村野が37歳、阿藤と岡本が34歳、石橋と蟇目が32歳とみんな30代であった。バランスのよくないメンバー構成である。蟇目を除いては、まだみんな活躍中である(あまり見かけない人もいるが)。
エド・マクベインの原作は読んだことはないが、やはり真っ先に思い浮かぶのは「キングの身代金」=黒沢映画「天国と地獄」である。このドラマでも前後編で放映され、映画で三船敏郎が演じた役を三国連太郎が演じている。脚本も池田一朗(隆慶一郎)だし、面白そうな気がするがなにぶん見ていないので、何ともいえないけれども。この作品は視聴率も振るわず、全体的には不評だったようだ。原作ファンにはイメージが違うとか、他の刑事ドラマと変わらんとかソッポを向かれたのかもしれない。
東京メグレ警視シリーズ
海外の小説を日本のドラマにアレンジした作品というのは結構あると思われるが、ジョルジュ・シムノンのメグレ警視シリーズを日本を舞台にアレンジしたのが「東京メグレ警視シリーズ」(78年)である。主演は愛川欽也で「目暮警視」を演じる。目暮という苗字が存在するかどうか不明だが(日暮ならあるが)、わかりやすい当て字である。他の出演者は佐藤友美、市原悦子、竜崎勝、小阪一也、名高達郎そして中村敦夫などである。自分の記憶では中村敦夫は信夫(しのぶ)という名で、目暮より偉い人だったか同格だったかという役だったと思う。なにしろ本放送をチラッと見た程度なので、ほとんど記憶にないのである。原作について語られているサイトは結構あるが、この番組について語られている記事は見当たらなかった。第1話はゲストが山村聡、岡田英次、高橋悦史、前川清など豪華で視聴率もまあまあだったようだが、以後の放送でこの第1話を超えることはなかったようだ。ようするに下がる一方だったということだ。
ところでシムノンの原作だが、1929年~1972年という40年以上にわたって書かれた人気シリーズである。とはいっても推理小 説マニアでもなかった私は一冊も読んだことがない。日本での人気や知名度はどの程度のものなのだろうか。
殺られてたまるか
もう一つ梅宮辰夫、三田佳子コンビによる第二東映の作品から「殺られてたまるか」(60年)を、ピックアップして見る。以前同じようなタイトルのものがあったなあと思ったら梅若正二主演の「殺られるのは御免だ」であった。まあ周りの人間が死んでいくが本人は次々と危機を回避して生き延びるといったところは共通している感じである。とは言ってもこの「殺られてたまるか」は見たことはないのだけれども。
この作品で特筆すべきは梅宮(38年生)と千秋実(17年生)が兄弟役というところである。20歳離れている兄弟もいるにはいるが、どうみても兄弟には見えんだろうと思う。千秋実といえば黒沢組の一人ということもあり東宝のイメージが強いのだが、この頃は東映の作品にも結構出ているのである。ちなみに千秋実は私と同郷であることが判明した。中学生の頃は私の出身地の隣町に住んでいたらしい。
他の出演者は久保菜穂子、花沢徳衛、曽根晴美、安藤三男、山本麟一、そして前項、前々項にも登場する加藤嘉などである。
第三次世界大戦 四十一時間の恐怖
梅宮辰夫、三田佳子コンビによる第二東映作品の中で一際目を引くのが、「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」(60年)である。一度見てみたいなあと思っていたらつい二年前CSで放映されていたことが判明した。一応、自分のDVDを調べてみるとちゃんと録画してあった。ようするに録画だけして見ていなかったのである。早速見てみると、まず前項の作品と同じ60年ながら白黒作品である。長い間所在が不明だったという話もある。
内容は簡単に言えば、米国と今は亡きソ連による核戦争が勃発、日本も米軍基地があるということで、ソ連の核攻撃を受けることになる。基地を狙うと予告しながら核ミサイルは都心にも被弾、全人類28億(当時)のうち20億が死滅し、第三次世界大戦は終結するという救いようのない映画である。これだけ大きな題材ながら、80分弱という短い作品で特撮部分も最低限に抑えてある。ミサイルが発射される場面と国会議事堂が吹っ飛ぶなど、各都市が爆発する場面くらいであり、専ら市井の人々を中心に話は進むのである。
出演者は梅宮、三田の他、加藤嘉、二階堂有希子、亀石征一郎、織本順吉な どで、明確に死んだのは天使のような看護婦を演じる三田くらいなのだが、ほぼみんな死んだと思ってよさそうだ。
特撮スタッフでは、矢島信男や田口勝彦などこの後も特撮界で活躍する人の名前も見える。知っている人はあまりいないと思うが、かなり真面目に作られた作品ではある。どこから「四十一時間」なのかわかる人はいるであろうか。
海底の挑戦者
今回もたまたまCSで見た映画「海底の挑戦者」(60年)を取り上げてみる。これは制作がこの60年のみ存在した第二東映(61年はニュー東映と改称)である。主演は梅宮辰夫と三田佳子で、第二東映にはこのコンビの作品が何本かある。梅宮もこの頃はまだまだ細身の二枚目だ。冒頭、海上で梅宮の妹が麻薬組織にビキニ姿のまま拉致される。妹を演じるのは二階堂有希子、峰不二子の初代声優として有名だが、この頃は映画出演が多かった。劇中では二度も拉致される役である。梅宮に協力する友人に今や代表的悪役の一人である今井健二。当時はまだ今井俊二名義で、以前書いたとおり正義役も多かった。この作品でも実は麻薬捜査官というオチがある。麻薬組織のボスは加藤嘉で、その一の部下が映画版月光仮面の大村文武で、この頃はもう悪役の道に入っていたようだ。さて、この加藤と大村コンビだが10年以上をへた「必殺仕掛人」の17話「花の吉原地獄の手形」で柔術梶木流の使い手という強敵コンビで登場している。
古い映画の割にはカラー状態も悪くなく、海が舞台ということもあり三田佳子も水着姿を披露している(あまり見えないけれども)。 さて、二階堂有希子の夫は柳生博なのだが、実は柳生もこの作品に出ているのである(おそらく映画初出演)。かなりチョイ役なのでどこに出ているのか良くわからなかった。この映画の共演?が縁で結婚したかどうかは不明である。ただテレビや映画では他に共演作は見当たらない。ちなみに柳生博は現在、俳優兼「日本野鳥の会」会長だそうである。