栄光の黒豹
「太陽の野郎ども」の次に目黒が出演したのが「栄光の黒豹」(69年)である。ここで目黒は早くも準主役になり、主演はこの年デビューした森田健作であった。この時期、松竹が最も力を入れていたのが森田なので、いた仕方ないのかもしれない。タイトルだけ聞くとアクションものっぽいが、そこは森田健作。青春スポーツものなのである。共演は生田悦子、尾崎奈々、奈美悦子、赤座美代子などで、ちなみに尾崎はミス十日町、奈美はミス長岡の役である。ベテラン勢では財津一郎、佐野周二、そして「おれは男だ」でも共演する笠智衆などが出演している。もう一人、注目なのは江夏夕子。後の目黒祐樹夫人である。近衛十四郎との親子共演が話題を呼んだ「いただき勘兵衛旅を行く」(73年)での共演がきっかけと言われるが、ここで早くも共演していたのであった。
兄・松方の方は仁科明子とは離婚してしまったが、目黒の方は夫婦円満そうである。もちろん実際どうかはし らないけれども。
風小僧・その2
これは東映テレビの制作ドラマ第1号で、目黒祐樹も初の主演であったのだが、前述のように13話にて降板してしまうのだった。ちなみに本作では目黒ユウキという片仮名名義だったのだが、それ以前は普通に本名であった。さて本作で目黒を助ける疾風之介を演じていたのがテレビ初出演の山城新伍であったのだが、目黒降板後の成長した風小僧役をそのまま山城が演じることになった。ややこしい話である。山城はこれで、大きな人気を得て、次作「白馬童子」へと繋がっていく。というわけで、「風小僧」といえば目黒祐樹というより山城新伍というのが一般的な認識であろう。
他の出演者だが、後に栗塚旭の用心棒もので活躍する小田部通麿、映画「伊賀の影丸」や「隠密剣士」で老忍者を演じた団徳麿や、五味龍太郎が東映時代に使っていた五味勝之介名義で出演している。ちなみに五味は団の娘と結婚している。他にも後の美樹克彦こと目方誠や後に「チャンバラトリオ」となる南方英二や伊吹太郎も顔を見せている。
さて、目黒祐樹は休業中はボストン大や南加大の演劇科などに留学、復帰するのは69年のことである。結構自分が子供の頃からよく見ていた感のある役者なので、10年近くも休んでいたとはちょっと意外な気がするのである。
十七才の逆襲・暴力をぶっ潰せ
この60年というのは、何度か書いたが第二東映が発足した年である。松方はその第二東映の「十七才の逆襲・暴力をぶっ潰せ」という作品で、実年齢通りの役で主役デビューを飾っている。松方といえば、やくざ映画か時代劇かというイメージだが、本作は青春アクション映画とでもいうのだろうか。日活っぽい感じに思える。共演は波島進、佐々木孝丸、小林重四郎、八名信夫、潮健児、梶すみ子など。この「十七才の逆襲」はシリーズ化され、この年三本が制作されている。しかし、それぞれの作品に繋がりはなく、松方もすべて別の役である。
二作目は「十七才の逆襲・向う見ずの三日間」。恋人役に小林裕子、刑事役に佐原広二(健二ではない)、清水一郎、他に山東昭子、柳永二朗、柳谷寛、河野秋武、清村耕次など。
三作目は「十七才の逆襲・俺は昨日の俺じゃない」。松方の兄にまだ悪役ではなかった今井健二(当時は俊二)、父役に宇佐美淳也、他に宮園純子、山本麟一、加藤嘉、住田知仁こと風間杜夫、大辻三郎(伺郎ではない)などが出演している。
これらはソフト化されていないようなので、現時点では目にすることはあまりないと思われる。ゆえに大物スターのデビュー作にしては知名度が低いのだろう。とまあ、デビュー時は現代劇だった松方だが、翌年には早くも時代劇路線に進んでいくのであった。
人形佐七捕物帳(松方弘樹版)
65年に松方弘樹主演でドラマ化されたが、NHKの制作なので映像は残っていないと思われる。人形のような美男なので人形佐七なのだが、当時23歳の松方が人形のような美男だったかというと、ちょっと違う気がする。71年に林与一の人形佐七があるが、こちらの方がまだイメージに合っていたのではないだろうか。話を松方版に戻すが、女房お粂役には小林千登勢だが、彼女はこの収録中に山本耕一と結婚している(その週は休んだらしい)。他には渥美清、その盟友である谷幹一、水島道太郎、真屋順子、後に殺人犯となってしまう克美しげる、そして岩井半四郎。松方は後に義理の父となる岩井とこの時、共演していたのである。まあさすがにデビューもしていない仁科明子(当時12歳)のことは知らなかったと思うが。
それから12年を経た77年、東映制作による「人形佐七捕物帳」が、再び松方の主演で放送されたが、さすがに「人形のような美男」という設定には無理があると思ったのか、今回は女房のお粂が人形焼き屋を営んでいるから、という苦しい設定に変更されている。それを変更したら人形佐七ではないだろうと思うのだが。その女房役に前作にも出演している真屋順子。真屋は当時「欽ちゃんのどこまでやるの」への出演で人気を得ていた。他には渡辺篤史、笑福亭鶴光、やはり当時注目を浴びていたピラニア軍団の志賀勝、川谷拓三などである。松方の弟・目黒祐樹もゲスト出演している。
佐七役は松方、林与一以外には、若宮敏三郎(顔がわからん)、片岡孝夫、堤大二郎などが演じているが、今ドラマ化されるとすれば、やはりジャニーズの誰かということになるのだろうか。
けんか安兵衛
とたろで本作のタイトルは<けんかアンベエ>と読む。もちろん主人公の名前は<ヤスベエ>と読むのでややこしい。ところで、中山安兵衛=堀部安兵衛であることに今まで気がつかなかった。どちらの名前も知っていたが、普通に別人だと思っていたのである。堀部安兵衛といえば四十七士、つまり本作は浅野家に仕官するまでを描いたもののようだ。
本作も「喧嘩安兵衛」のタイトルで28年に映画化されている歴史のある作品だったりするのだ。この時の主演は松方の父・近衛十四郎ではなく(28年当時はまだ12歳だ)、田村三兄弟の父・阪東妻三郎である。同じ28年には大河内傳次郎が安兵衛を演じる「血煙高田馬場」という作品があり、38年にはやはり阪妻が安兵衛を演じる「決闘高田馬場」という有名な高田馬場の決闘を描いた作品がある。
必殺シリーズ第3弾である「助け人走る」の第2話で、この阪妻の「決闘高田馬場」の映像が流れ、それを伝えたかわら版で安兵衛の似顔を見た田村高廣(役名は中山文十郎)が「どこかで見たことがある」と呟くエピソードがあった。この高田馬場の決闘は、近年では高橋英樹が安兵衛を演じたバージョンもある。
つまり本作はオールド時代劇ファンにはお馴染みの作品だったわけだが、どうせなら田村三兄弟の誰かが演じれば良かったのではと思う(おそらく、そういう案もあったと思うのだが)。
勝海舟
松方といえば、元妻の仁科明子、その実父である岩井半四郎も本作に出演している。そういえば仁科明子は「大都会シリーズ」では、渡の妹役であった。夫婦といえば村井国夫、音無美紀子も本作で共演しており、この翌年に結婚している(本作がきっかけかどうかは不明だ)。
豪華キャストが集まるのが大河の特徴でもあるが、本作もその例にもれず、宍戸錠、郷鍈治の兄弟はじめ、藤岡弘、津川雅彦、小林桂樹、加東大介、藤竜也、中丸忠雄、仲谷昇、地井武男、江守徹、女優陣では大原麗子、久我美子、丘みつ子、香山美子、大谷直子らが登場する。当時は無名に近かったと思われるが近年「踊る大捜査線」で有名になった北村総一郎、小野武彦(当時は黒木進)も顔を揃えている。本作では降板劇がもう一つあった。脚本の倉本聡がスタッフと対立し降板したのであった。渡と倉本の降板コンビが顔を揃えたのが前述の「大都会」である。松方も終了後にNHK批判を行うなど、いろいろと混乱した番組であった。
春の坂道
タイトルだけ聞いても全然内容が想像できないが、これは柳生但馬守宗矩の生涯を描いたドラマで、原作は山岡荘八の書き下ろしであった。それにしても「春の坂道」から柳生は全然結びつかない(もちろん意味はあるのだろうけれども)。主演は萬屋錦之介(当時・中村錦之助)で、当然柳生宗矩を演じている。「子連れ狼」では柳生と戦う錦之介だが、こちらでは柳生の役である。妻おりんに小林千登勢、柳生十兵衛の少年時は「笛吹童子」の岡村清太郎、青年時を原田芳雄、柳生石舟斎に芥川龍之介の長男である芥川比呂志、他の柳生一族は左門が田村亮、又十郎が清水絋治、兵庫介に村野武範、荒木又右衛門に若林豪、沢庵和尚に田村高廣。田村正和も出演しており、田村三兄弟のそろい踏みである(三人が同じ回に出たかどうかは不明だが)。他にも長門勇、山村聰、石立鉄男、倍賞美津子、司葉子、岸田今日子、石橋正次、舟木一夫、そして高橋英樹は坂崎直盛という役で登場する。注目なのは石田三成役の中村敦夫で、六回の出演で死ぬはずが人気が出たらしく十三回に伸びたという。しかし本人は当時は生活も安定しておらず、あまりのギャラの安さに早く降板したかったのだという。彼が「木枯し紋次郎」に抜擢されるのは、この翌年のことである。紋次郎で突然現れたように思われているが、こういった下地があったのである。ちなみに中村は「竜馬がゆく」にも出演していた。
本作は歴代大河の中でも唯一映像が存在しない作品といわれていたらしいが、VTRが寄贈され最終回のみNHKアーカイブスで視聴が可能だそうだ。
幼少時から現在まで大河はほとんど見たことがないし、たいして興味もないのだが、やはりその映像が残ってないのは勿体無いと思うのである。
十手無用 九丁堀事件帳
そんな中で多少、趣が違っている感じがするのが「十手無用 九丁堀事件帳」(75年)である。まあ、この番組でも高橋英樹は高橋英樹なのだが、他とちがうのは、本作が「必殺シリーズ」の亜流であるところだろう。英樹が一人でバッタバッタと斬り捨てるのではなく、他の仲間たちとともに、一人一殺的に悪を裁いていく。間違いなく「必殺」がベースになっているといえよう。英樹は普通に刀だが、桜木健一は小判で相手の首をえぐり、その妹役の栗田ひろみはそのサポート、おかま老人っぽい木田三千雄は仕込み笠、そして東映の重鎮俳優片岡千恵蔵がスイッチを押すと針が飛び出す武器(説明しづらい)を使用する。千恵蔵の子分として下之坊正道もいたが彼はたまにしか殺しには参加しなかった。
他にも英樹の友人の同心に日活時代の盟友でもある深江章喜や、児島美ゆき、丘さとみなどが出演していた。
当時は必殺の亜流と思われる番組も結構あり、この前番組であった萬屋錦之介の「長崎犯科帳」もその典型であった。で本作の後番組があの「桃太郎侍」である。英樹はまた王道へと帰っていったのである。
土忍記 風の天狗
で本作の主演はその日活任侠路線のスターであった高橋英樹である。おそらく映画での本格的時代劇は本作が初だと思われるが、テレビの世界では高橋英樹はすでに「竜馬がゆく」や「鞍馬天狗」などに出演しており時代劇スターといえる存在になっていたのである。原作は「子連れ狼」で知られる小島剛夕の「土忍記」だが<風の天狗>はやはり高橋英樹が演じた鞍馬天狗にかけたのであろう。
ストーリーは抜忍である英樹がある村を守るために、刺客や殺し屋、悪代官たちと戦うというもの。刺客役に夏八木勲と河野弘、夏八木が日活に出るのは珍しいが、当時は東映を離れてフリーだったのである。殺し屋に木島一郎、榎木兵衛、晴海勇三、九の一に北島マヤ(ガラスの仮面とは無関係である)、悪代官に久遠利三、深江章喜。この中では深江が一番の悪らしい。村人たちには和泉雅子、沖雅也、亀石征一郎、他にも青木義朗、郷鍈治、高樹蓉子、千葉裕なども顔を出すようだ。
高橋英樹主演の時代劇って王道すぎて、あまり好きではないのだが、本作は見てみたい気がする。DVDとかは出ていないようだし、スカパーとかで放送されるのを待つしかないようだ。(ここで取り上げた後にスカパーで放送された作品は結構あったりするのだ)。
谷岡ヤスジのメッタメタ ガキ道講座
前項の「喜劇いじわる大障害」と併映されたのが「谷岡ヤスジのメッタメタ ガキ道講座」(71年)である。タイトルどおり、当時少年マガジンに連載されていた人気漫画の映画化であるが、以前「ヤスジのポルノラマ やっちまえ」を取り上げたが、こちらはアニメではなく実写である。「アサー」とか「鼻血ブー」の流行語を生んだ作品だが、その実写化というだけで珍品なのは容易に想像できる。
一応主人公となる少年・オラ山ガキ夫を演じるのは松原和仁。聞いたこと無い子役だが、「レッドバロン」や「走れK-100」などに出演記録があった。その父親ダメ次に三波伸介、母親メタ子に藤江リカ、弟キン太にアタック一郎。「ハレンチ学園」のテレビ版、映画版ともに出演している小太り少年である。前述した「アサーッ!」と鳴くのはムジ鳥だが、それを演じるのはなんと宍戸錠。まあ「ハレンチ学園」全4作にも出演しているし、コメディ色も強い役者だが、仕事を選ばないスターともいえる。
他の出演者だが、錠の実弟・郷鍈治、樹木希林(当時・悠木千帆)、谷村昌彦、南利明、前田武彦、宮尾すすむ、若水ヤエ子、カルーセル麻紀など。ちなみにカルーセルは婦人警官役である。子役では後のずうとるび今村良樹や、「仮面ライダー」「帰ってきたウルトラマン」でお馴染みの川口英樹、NHK少年ドラマシリーズ「つぶやき岩の秘密」で主役を演じた佐瀬陽一らが出演している。ちなみに川口の役名は東海林ヤスジ、佐瀬の役名は谷岡サダオとなっているらしい。佐瀬は80年代はひらがなのにっかつ、つまりロマンポルノで活躍していたようだ。
そして、作者である谷岡ヤスジも出演している。「スペクトルマン」で初代女性Gメンを演じた小西まち子と結婚したのは有名な話であろう。実はこの作品の存在は知らなかったのだが、意外にも?DVDも出ているようだ。意外といえば、原作のほうも連載されていたのは1年半たらずであった。それで映画化されるのだから、スゴイ作品だったといえよう。