十手無用 九丁堀事件帳 | お宝映画・番組私的見聞録

十手無用 九丁堀事件帳

高橋英樹といえば、日活時代は任侠路線のエースだったが、テレビでは王道時代劇のエースといった感がある。「鞍馬天狗」(69年)、「旗本退屈男」(70年)といった時代劇の定番を皮切りに、「おらんだ左近事件帖」(71年)、「隼人が来る」(72年)、「ぶらり信兵衛道場破り」(73年)、「編笠十兵衛」(74年)と毎年のように時代劇で主役を演じているのだが、個人的には区別がつかないのである。どれを見ても、高橋英樹は高橋英樹で、姿かたち(あたり前だが)はもちろん性格まで全て一緒に見えてしまうのである。正確にはどれも好みのタイプの時代劇ではないこともあり、一、二回しか見ていない番組がほとんどだが、チラッとでも見た印象はあまり間違っていない気がする。
そんな中で多少、趣が違っている感じがするのが「十手無用 九丁堀事件帳」(75年)である。まあ、この番組でも高橋英樹は高橋英樹なのだが、他とちがうのは、本作が「必殺シリーズ」の亜流であるところだろう。英樹が一人でバッタバッタと斬り捨てるのではなく、他の仲間たちとともに、一人一殺的に悪を裁いていく。間違いなく「必殺」がベースになっているといえよう。英樹は普通に刀だが、桜木健一は小判で相手の首をえぐり、その妹役の栗田ひろみはそのサポート、おかま老人っぽい木田三千雄は仕込み笠、そして東映の重鎮俳優片岡千恵蔵がスイッチを押すと針が飛び出す武器(説明しづらい)を使用する。千恵蔵の子分として下之坊正道もいたが彼はたまにしか殺しには参加しなかった。
他にも英樹の友人の同心に日活時代の盟友でもある深江章喜や、児島美ゆき、丘さとみなどが出演していた。
当時は必殺の亜流と思われる番組も結構あり、この前番組であった萬屋錦之介の「長崎犯科帳」もその典型であった。で本作の後番組があの「桃太郎侍」である。英樹はまた王道へと帰っていったのである。