お宝映画・番組私的見聞録 -195ページ目

忍術大阪城

大体の人は知っているかと思うが、美空ひばりには二人の弟がいた。一人は小野透で、もう一人が香山武彦である。今回は香山武彦について取り上げてみたい。とはいっても、小野透同様、香山武彦も名前を知っている程度で、顔もよく知らなかったりするのである。
ちなみに香山のデビュー当時の芸名は花房錦一という。時代劇っぽい名前だが、そのイメージどおり、ほとんどが時代劇への出演である。錦一というのは中村(萬屋)錦之助の本名(小川錦一)あたりから来ているのではないだろうか。当然、姉ひばりの映画への助演が多いが、単独で出演している作品もけっこうある。
つい先日、CSで放映されたのが「忍術大阪城」(61年)である。これは、簡単にいえば真田十勇士が活躍する物語で、「忍術真田城」の後編にあたる。主演は里見浩太朗(猿飛佐助)と山城新伍(霧隠才蔵)で、他の十勇士たちはマイナーな俳優達が並んでいる。里井茂(三好晴海入道)、香住佐久良夫(三好伊三入道)、波多野博(由利鎌之助)、唐沢民賢(筧十蔵)、嵐歌之介(海野六郎)、大里健太郎(根津甚八)、富久井一朗(穴山小助)、光美知子(望月六郎=雪絵)といった面々。唐沢民賢や波多野博は時代劇の脇役として長く活躍しているが、香住佐久良夫なんてのは初耳の名前である。多分、香住・佐久良夫だと思うのだが。ところで根津甚八って真田十勇士の名前だったことを今さらながら知った。
他にも真田幸村に板東好太郎、その息子大助が花房錦一である。円山栄子、三原有美子、林彰太郎、中村竜三郎、敵忍者を鈴木金哉、霧島八千代、市川百々之助などが演じている。
花房錦一としては、ポスターに名前がのる程度の役を得てはいるが、それほど大きく目立つ存在ではないといった感じであろうか。香山武彦に改名するのは63年のことである。

波止場野郎

前項で名前が出たついでに小野透について調べてみた。自分は美空ひばりにあまり興味がなかったこともあり、その実弟・小野透についても名前を知っている程度なのである。
小野透は57年に16歳で歌手デビューし、翌年には東映に入社、主にひばりの映画に顔を出していた。幼い頃からスイング・ビーバーズの小野満にジャズを学んでおり、芸名はそこからきているのだろう。ちなみに美空ひばりと小野満は婚約していたことがある(まもなく破棄)。
60年、第二東映(ニュー東映)が設立されたことにより、小野透の主演映画も何本か制作されている。その中から「波止場野郎」(60年)をピックアップしてみたい。
本作はアクション映画で、だいたい秘密捜査官とか探偵とかが主役になるケースが多いが、小野はまだ10代であり、見た目も不良っぽい感じなこともあってか、警察とつきあいのある若者といったような設定だ。「七人の刑事」堀雄二がここでも刑事の役である。神田隆も刑事だが、実は悪のボスという設定。そして前項の「悪魔の手毬唄」でも共演していた北原しげみ。おそらく小野とは一番多く共演した女優ではないだろうか。他には久保菜穂子、永田靖、曽根晴美、植村謙二郎、山本麟一、ユセフ・トルコ、後に議員となる山東昭子、「事件記者」の清村耕次などが出演している。
61年になっても、「銀座野郎」とか「台風息子」シリーズなど、小野透の主演作は作られており、通算で10本以上もの主演作があったのは意外に感じる。しかしニュー東映の解散により、主演作がなくなってしまい、62年にはさっさと引退してしまうのである。一度主役になってしまい、ランクダウンするのがイヤだったのだろうか。
その後のお騒がせっぷりは前項でも触れたとおりだが、身近に田岡組長らがいて、ヤクザの道に流れていったのは自然のことだったのかもしれない。かとう哲也として芸能界に復帰しているが、作曲家としても活動しており、こちらは小野透名義で行っていたようだ。
しかし、83年に42歳の若さで急逝している。

悪魔の手毬唄(61年版)

今回は横溝正史の中でも、メジャーな部類の作品である「悪魔の手毬唄」の61年東映版を取り上げてみたい。これは高倉健が金田一耕助を演じた作品としても知られている。これも原作と違いスポーツカーを乗り回すいかした青年探偵(当時31歳)である。東映では先代を片岡千恵蔵が演じていたが、その設定を踏襲して美人助手・白木静子(北原しげみ)もいる。
本作で違うのは金田一だけでなく、その内容も大きく原作と違っている。登場人物の名前が微妙に違うし、原作では若い娘たちが次々に殺されていくのだが、本作では最初の犠牲者こそ「プレイガール」八代万智子だが、次に殺されるのは「月光仮面」こと大村文武だったりするのだ。脚本は「月影兵庫」や「花山大吉」や「用心棒」シリーズなどの東映時代劇を書きまくっていた結束信二だが、原作を読まずに書いたという。
磯川警部役には、当時の東映で刑事役と言えばこの人という感じだった神田隆、ヒロイン的な役割を演じるのは太地喜和子(当時・志村妙子)で、他には永田靖、中村是好、山本麟一、そして村のとっぽい感じの青年を演じるのが小野透である。まあ、美空ひばりの弟といったほうがわかりやすいかもしれない。
小野透としては、本作の翌年に通算六年ほどで芸能界を引退したが、賭博、暴行、拳銃不法所持などで三度逮捕されている。69年にかとう哲也として芸能界に復帰するが、またしても暴行などで逮捕され、山口組の舎弟頭であったことが明らかになり、そこから美空ひばりと田岡組長との繋がりが問題視されるようになる。ちなみに田岡組長はひばりプロダクション副社長という、今では考えられないような関係であった。
話がそれたが、まあ原作ファンなら怒りを抱いてしまいそうな作品といえよう。まあオリジナルと思えば普通に見れるかも。この後、75年の「本陣殺人事件」まで横溝作品は映画化されなくなるのであった。

吸血蛾

横溝正史原作で、割合マイナーな作品を映画化したものに「吸血蛾」(56年)がある。これも30年以上前に原作は読んだはずだが、当然内容まで覚えていない。さっと調べると横溝作品にはよくある美女が連続して殺害されるお話である。
こちらもヒロインは前項と同じ久慈あさみである。ヒロインといっても彼女は殺人犯でもあるという役柄。ファッションデザイナーである彼女の専属モデルが殺されていくのだが、最初の犠牲となるモデルを演じているのが塩沢登代路、つまり塩沢ときである。生き残るモデルの一人が安西郷子で、本作が東宝初出演作となる(新東宝から移籍)。安西は後に三橋達也と結婚する。
前々項の「鉄の爪」には"ゴリラ男”が登場するが、こちらには"狼男”が登場する。これは狼つきという奇病で、狼のように変貌して暴れるというものである。その狼男を演じるのが「水戸黄門」でお馴染みの東野英治郎だ。元恋人であった久慈の復縁を迫るが逆に久慈に殺されてしまう。弱い狼男である。彼女のマネージャーは、その事実を知り脅迫し、彼女に殺人を犯させたり、自らも狼男に変装して殺人を犯す。それを演じるのが何と有島一郎。凶悪な殺人犯の有島というのは想像できない。
で、我らが金田一耕助に扮するのは池部良。ダンディでスマートな金田一が容易に想像できる。原作ではお馴染みの等々力警部に「次郎長三国志」の小堀明男で、安西郷子の恋人である新聞記者に千秋実。千秋と安西のカップルというのもちょっと不釣合いな気がする(失礼)。
他にも53年度ミスユニバース第3位で当時話題になった伊東絹子が特別出演扱いで顔を見せている。伊東は当初、女優になる気はありませんと言っていたようだが、結局4本ほどの映画に出演している。
監督にはホラーものの第一人者である中川信夫、脚色として黒澤映画で有名な小国英雄、助監督に後に「ウルトラシリーズ」で活躍する野長瀬三摩地の名がある。
内容はともかく、有島一郎の殺人鬼、東野英治郎の狼男、塩沢ときの美人モデルなど、後のことを考えると意外なキャスティングが面白い作品ではないだろうか。

毒蛇島奇談 女王蜂

せっかくなので、岡譲司が金田一耕助を演じた「毒蛇島奇談 女王蜂」(52年)について触れておきたいと思う。横溝正史の原作は中学生くらいの頃に読んだはずだが、内容は全然覚えていない。78年の角川映画版は見ていないし、テレビ「横溝正史シリーズ」でやった時も見たような見ないような。何故かヒロインの名前(大道寺琴絵)は記憶に残っているのだが。原作の月琴島が本作ではタイトルにもあるとおり毒蛇島になっている。
明らかなB級作品だが、岡の他にも久慈あさみ、菅原謙次(当時は謙二)、船越英二、森雅之など結構豪華なメンバーが出演している。久慈あさみは50年に新東宝からデビューし、この直後東宝と契約するので珍しい大映での出演作である。菅原謙次はこの前年デビューの大映期待の新スター。船越英二は主演作もあったが当時はまだパッとしない存在で、本作でも殺される役である。しかし次に出演した「安宅家の人々」で好演し次第に注目されるようになっていく。森雅之は黒澤映画「羅生門」や「白痴」などに出演した後で、俗に言う文芸大作的な作品への出演が多い役者であった。ゆえに本作に出演しているのが意外にすら感じる。もう40才を過ぎていたが船越とともに学生時代も自分で演じているので、学ラン姿で登場したりする。この中では格上なこともあり犯人役でもある。他にも見明凡太郎、植村謙二郎、昭和初期のスターだった星光などが出演している。
ところで岡譲司(当時は譲二)だが、ラスト近くいかにも妖しげなおっさんが変装をとくと、実は金田一でさっそうと事件の謎を暴く。それってほとんど当時、片岡千恵蔵が東映でやっていた多羅尾伴内あるいは明智小五郎のスタイルである。当時の探偵は変装名人でダンディでなければならなかったのである。

鉄の爪

次はどうしようかと思っていたところ、リクエストがあったので、前々項の「蜘蛛男」こと岡譲司の話題に戻る。取り上げる作品は「鉄の爪」(51年)である。
岡譲司は29年に美濃部進の名で日活太秦よりデビューし、31年に松竹蒲田に移り芸名を岡譲二とする。その後、日活多摩川や東宝を経て、戦後まもない47年からは大映に所属し、54年から岡譲司となっている。
「鉄の爪」と言えば、プロレスに興味のない自分でもフリッツ・フォン・エリックを思い出すが、もちろん何の関係もないし、タイトルからは内容が想像できない。簡単に言えば、狼男ならぬゴリラ男に変身する男の話だと思ってくれればよい。戦時中に南方のジャングルでゴリラに噛まれた後遺症から、興奮するとゴリラのような顔に変貌してしまうのである。んなアホな。
先にも触れたが、岡は本作の前年(50年)には「氷柱の美女」で明智小五郎を、翌52年には「女王蜂」で金田一耕助をそれぞれ主演として演じていたりする役者だ。態度が尊大だったとも言われているが、二枚目役だけでなく、こういった変な役も好んでやっていたようようである。ちなみに本作の原案である中溝勝三というのは岡の本名である。つまり岡本人が考えた設定ということだ。キングコング+狼男といったところであろうか。このあたりの時代は「水戸黄門漫遊記・怪力類人猿」とか「同・人喰い狒々」(56年)みたいな猿系の怪物が登場する作品が意外にあったりする。
実際に本作を見ていないのだが(録画はしたのだが見ていないまま)、現在のような特撮や特殊メイクの技術がないので、今見たら思わず苦笑してしまう程度なのではないだろうか。
他の出演者は喜多川千鶴、日高澄子、二本柳寛、小柴幹治、斎藤達雄など。監督の安達伸生は「透明人間現わる」(49年)なども撮っている人である。

わんぱく探偵団

久々にアニメである。自分の世代が最初に触れた江戸川乱歩といえば、おそらくアニメ「わんぱく探偵団」(68年)ではないだろうか。その後に現在も発売されているポプラ社の「少年探偵団シリーズ」を読むといったコースである。
アニメの方は当然子供向けにアレンジされていたので、乱歩特有のエログロな部分などは一切なかったと思う。主題歌もお馴染みだった「少年探偵団の歌」の歌詞を変えたものであった。声の出演は明智小五郎に江角英明、小林少年に菅野直行、紅一点のオトコに萩原宣子、その弟チビちんに「オバケのQ太郎」の堀洵子、クリーニング屋のステやんに「タイガーマスク」の富山敬、デブとんに白井武雄、メガネのまめタンは1、2話のみ竹尾智晴(中尾隆聖)で3話以降は「鉄腕アトム」の清水マリ、中村警部に大木民夫、そして二十面相が若山弦蔵であった。
当時は「巨人の星」の花形のように子どものくせに車を運転したりする場面をよく見かけたものだが、本作でもステやんがサンバーバンのような車を運転していたが、当時は16歳で軽自動車の免許がとれたので運転させているのだ制作サイドは言っていた。探偵団の面々には「まめタン」とか「ステやん」とかのテロップが出ていたが、デブとんに関してはただの「でぶ」と出ていたことがあった。
声優陣に目を向けると明智役の江角英明は日活映画に長く出ていた人で、ロマンポルノになってからも出演を続けていた。テレビにも専ら悪役としてよく出演しており、個人的には「必殺仕掛人」で演じた分銅使いの用心棒の役が印象に残っている。アニメでは「ルパン三世」(旧シリーズ)の2話に登場するパイカル役が有名であろう。小林役の菅野直行は子役出身で、よくドラマのゲストなどに登場していた。現在も菅野菜保之として活動しているようだ。オトコ役の萩原宣子も子役出身で、その後水原麻紀と改名して女優として活躍。本作の2年後には中村梅之助主演の「遠山の金さん」にレギュラー出演していた。時代劇、現代劇問わず80年代くらいまではよく見かけた気がする。菅野も水原も他にアニメはほとんどやっていないようである。水原のデビュー作(と思われる)である「ドブネズミ色の街」(63年)というドラマには菅野も出演していた。菅野もこれがデビュー作の可能性かもしれない。
本作はつい数年前にCSで放送されたりしたし、DVDも出ているようなので割合、簡単に見ることができると思う。

それにしても現代では「わんぱく」という言葉を聞くことがほとんどない。昔は「わんぱく砦」だの「ワンパク番外地」だのガキを表す代名詞だったものである。

蜘蛛男

江戸川乱歩の流れで、次に目についたのは「蜘蛛男」(58年)である。本作は新映画社(とういう名前の会社)が、配給のプレミア映画社と提携した第一回作品だそうである。ともに初耳だが、第二回作品は何か(あったのか)は不明である。DVDは出ていないようだが、ビデオは大映のほうから、昔出ていたようだ。これも未見だし、原作も読んだことはないが、テレビドラマ「江戸川乱歩シリーズ明智小五郎」の第1話がこの話だったので大筋はわかる。ようするに若い女をさらっては殺す男の話である。
主演、つまり明智小五郎役は藤田進。明智といえば、どうしてもダンディとかスマートなイメージがあるので、武骨な感じの藤田には合わない気がする。さほど若くないし(当時46歳)。蜘蛛男こと畔柳博士に岡譲司。名前は知っているが70年に亡くなっていることもあり、個人的にほとんど馴染みはない。岡は本作では悪役だが、過去には逆に明智を演じたこともあれば、金田一耕助を演じたこともある。彼の息子は真山譲次といい、「人造人間キカイダー」でサブロー(ハカイダー)を演じていた。譲次という芸名は父親からとったものだったようだ。
浪越警部には松下猛夫、人気女優の役に宮城千賀子、他に舟橋元、八島恵子、そして天津敏が悪人ではなく刑事の役で出ていたりする。

江戸川乱歩の陰獣

さて「盲獣」ときたら当然のように「陰獣」である。ただし、映画のタイトルは「江戸川乱歩の陰獣」(77年)である。これは、そう昔のことでもないので(といっても30年過ぎているが)、公開当時けっこう話題になっていたのは覚えている。中学生だか高校生だった自分は、つられて文庫本を買った記憶はあるのだが、内容はまったく覚えていないので、途中で挫折したのかもしれない。盲獣があんな感じなので、陰獣も当然倒錯したエログロな世界をイメージしてしまうのだが、本格的推理物としての傑作という評判のようだ。
映画のほうも結局見たわけではないので、誰が出てたかも忘れていた。主役の作家にあおい輝彦、そして香山美子、若山富三郎、仲谷昇、野際陽子、中山仁、倍賞美津子、加賀まりこ、川津祐介、田口久美、尾藤イサオ、そして大友柳太朗という中々豪華なメンバーである。時代劇以外での大友柳太朗なんぞ見たことがない。しかも殺される役だし。
香山美子といえば、やはり「銭形平次」のイメージだが、本作では大友柳太朗の妻、妖しい夫人を演じている。仲谷昇と野際陽子の「キイハンター」コンビも夫婦役である。あおい輝彦と尾藤イサオといえば、やはり「あしたのジョー」を思い出してしまう。
当時ヒットしたかどうかは忘れたが、決して評判は悪くないようである。しかし本作は意外なことにDVDは発売されていない。と思ったら今月の末に発売されるという情報を見つけた。そのうちレンタルもされるだろうから、簡単に見れるようになるだろう。いいタイミングで宣伝してしまったようだ。

盲獣

前項で「一寸法師VS盲獣」の話題が出たので、「盲獣」(69年)を取り上げてみたい。
まあ簡単に言えば、盲目の男が若い女を誘拐して、巨大なアトリエに監禁する話なのだが、出演者は三人だけである。盲目の男に扮するのは船越英二。若い人には栄一郎の父親といったほうがわかりやすいだろうか。その母親に千石規子で、老けたメイクをしているが、実はこのとき船越46歳、千石47歳と1つしか違わないのである。そして監禁される女が緑魔子、一番奇麗だった頃ではないだろうか。今や石橋蓮司のかみさんである。ちなみに、本作は大映の作品だが、千石は東宝、緑は東映の女優であった。
女を誘拐して監禁というシチュエーションは、米英合作映画である「コレクター」(65年)を思い出すが、こちらは気持ち悪くはない。しかし「盲獣」は江戸川乱歩だし、予想通り気味の悪い作品なのである。
男(彫刻家)の巨大な女体のオブジェが並ぶ空間で、延々と倒錯した愛の姿が繰り広げられる。最初のほうこそ緑魔子の姿態に目を奪われるかもしれないが、やがてお互いを傷つけ始め、最終的には手足を切断などという流れになる。
原作は読んだことがないが、次々に女を誘拐しては、バラバラに解体するシーンの連続で、乱歩自身が気持ち悪くなってカットした部分もあるという。それを考えるとこの映画はまだましだといえるだろう。