ハイハイ3人娘
園まりといえば、中尾ミエ、伊東ゆかりとのスパーク三人娘。個人的にはナベプロ三人娘と表現したほうがわかりやすい。ちなみに三人で「スパークショー」という番組をやっていたところから、こう呼ばれていたようだ。
そんな三人娘が主演したのが「ハイハイ3人娘」(63年)である。一番中心となるのは中尾ミエで、三人は高校生の役である。実際、中尾は17歳、伊東は16歳、園は19歳であった。相手役となるのはスリーファンキーズ、長沢純、高倉一志(後に藤健次)、そして高橋元太郎が抜けて新加入した「矢車剣之助」の主演・手塚しげお。他にも歌謡界からは田辺靖雄、水原弘など。
クレージキャッツの面々も、植木等は中尾の、谷啓は伊東の、ハナ肇は園の身内でそれぞれ登場。残りの四人はみんな教師の役である。
東宝からは高島忠夫、藤山陽子、江原達怡、若林映子などが出演し、ミュージカル調の作品となっている。
原作は官能小説で知られる川上宗薫だが、当時はまだ官能小説は書いていなかったようだ。
当初、三人娘は中尾、伊東、沢リリ子だったらしいが、沢はナベプロではなかったため、園まりに変わったという。沢リリ子はよく知らないが、「ふるさとの花」という石原裕次郎と のデュエットソングがある。
松本清張シリーズ
「支払い過ぎた縁談」…出演は三國連太郎、丘さとみ。この時、三國は浮浪者のような格好をして、深夜の街をうろつき、アベックを脅して逮捕されそうになったというエピソードがある。浮浪者の心理研究だったらしい。
「厭戦」…これも出演は三國連太郎。他に日高澄子、桜井良子など。
「地方紙を買う女」…出演は岡田茉莉子、高松英郎、戸浦六宏など。
「左の腕」…出演は島田正吾、清川新吾、そして当時人気の三人娘のひとり園まり。
「鉢植を買う女」…出演は「獣人雪男」の根岸明美、新東宝ハンサムタワーの寺島達夫。
「俺は知らない」…出演は藤田まこと、夏目俊二、益田喜頓など。夏目は60年代に「遠山の金さん捕物帳」や「紫頭巾」といったドラマで主役だった役者だ。脚本は花登筐である。
「危険な斜面」…出演は川崎敬三、富永美沙子、内田朝雄など。富永は「うちのママは世界一」の項でも触れたが、後に心中してしまった女優だ。
「張込み」…これは先の項でも挙げている。中村玉緒、下條正巳などのバージョンだ。
「万楽翡翠」…先の園まりに続いて梓みちよが登場。他に成瀬昌彦、大塚国夫など。
「顔」…出演は山崎努、内田稔、内田朝雄など。ドラマ化されることの多いエピソードである。
「通訳」…出演は佐藤慶、野川由美子、伊藤雄之助など。脚本は大島渚である。
とまあ、清張通ではない自分には初耳のタイトルも多い。30分枠なので、基本的に短編だろうか。サスペンスで30分は短いと思うのだが。
霧の旗(テレビ版)
前項で取り上げた「霧の旗」は、何度もテレビドラマ化されている。ついでなので、そちらも調べてみた。
最初は67年で全4回である。桐子役には60年代に活躍していた広瀬みさ、大塚弁護士には芦田伸介。他は何役か不明だが、草笛光子、岸田森、児玉清、デビューまもない原田芳雄など。正夫役は児玉清と予想してみる。
次は69年で全6回である。桐子役は栗原小巻、大塚には後に映画でも同役を演じる三國連太郎。他に八千草薫、山本圭、菅貫太郎、加藤嘉など。
3度目は72年で全5回である。桐子役はこれがデビュー作の植木まり子、大塚役は森雅之で亡くなる前年だ。他に岡田茉莉子、柴田侊彦など。
4度目は83年火曜サスペンスの枠である。桐子役は大竹しのぶ、大塚は二谷英明で、正夫役には何故か作曲家の松任谷正隆、ご存知ユーミンの旦那である。調べてみると特にこの頃(82~84年)は結構ドラマに出ていたようである。他に小川真由美、三ッ木清隆など。
それ以降も91年の土曜ワイド(安田成美、田村高廣、大和田獏、平田満など)、97年金曜エンタテイメント(若村真由美、仲代達矢、三浦浩一など)、03年(星野真里、古谷一行、風間トオル、三田村邦彦など)といったようにテレビ化されている。
それにしても、大塚役は芦田伸介、三國連太郎、森雅之、二谷英明、田村高廣、仲代達矢、古谷一行と何というか重厚な役者が揃っている。
清張では「張込み」や「顔」、「波の塔」などと並びテレビ化の多い作品である。
霧の旗(映画版)
その中で二度映画化されているのが「霧の旗」である。主人公・桐子の兄・正夫が殺人の罪(無実だけれども)で逮捕され、獄死してしまう。桐子は弁護を引き受けてくれなかった弁護士・大塚に復讐を企てるというようなストーリーである。
最初の映画化は65年の松竹版で、「寅さん」シリーズで知られる山田洋次が監督である。
ヒロイン桐子に倍賞千恵子、正夫に露口茂、大塚弁護士に滝沢修、他に近藤洋介、川津祐介、新珠三千代、清村耕次、金子信雄、市原悦子などが出演している。近藤洋介といえば、「暗闇仕留人」の大吉を思い出す人もいるかもしれないが、最初この役は露口茂(次に竜雷太)にオファーが出されたというのは必殺ファンには有名な話だ。坊主頭になるというので断ったという。そういえば、露口と近藤は「江戸の旋風」でも共演していた。
2度目が77年で、ヒロイン桐子を演じるのは山口百恵で、正夫が関口宏、大塚弁護士が三國連太郎、そして雑誌記者の阿部に三浦友和というわけで、ようするに百恵友和コンビの映画なのである。大映ドラマのようなキャストだが、東宝の作品である。他には小山明子、石橋蓮司、夏夕介、児島美ゆき、西村まゆ子など。西村まゆ子は第二回ホリプロスカウトキャラバンの優勝者(ちなみに第一回は榊原郁恵)なのだが、素行不良のレッテルを貼られ半年あまりで芸能界から消えて行った人である。実際どうだったのかは勿論わからないが。まあ本作はホリプロも制作に関わっているので出演することになったのだろう。とにかく西村まゆ子が見れる貴重な作品だといえる。
原作で、桐子と阿部が絡む展開があるかどうか知らないが、65年版で阿部を演じているのは近藤洋介だし、オリジナルな展開の気がする。まあ友和が獄死する兄や復讐される弁護士を演じるわけにもいかないだろうし。いずれにしろアイドル映画という雰囲気はない作品である。
ミステリーベスト21
この「ミステリーベスト21」は東映が出したドラマオープニング集のLDに収録されており、その存在は知っていた。ただし、音声素材が不明とのことでサイレントであった。ちなみに収録されていたのは佐野洋の「人脳培養事件」の映像であった。
他にどんな作品があったのか、主なものをピックアップしてみる。
第1話として放送されたのが菊村到「事件の成立」である。出演は南廣、小林裕子、南道郎など。
石原慎太郎「闇から来る」。出演は市川小太夫、川合伸旺、魚住純子など。
高木彬光「これが法律だ」。出演は天知茂、松本朝夫という新東宝の同期生コンビ。他に加藤嘉、長門勇など。
有馬頼義「現行犯」。出演は渡辺文雄、三原葉子、伊沢一郎など。本作の監督・脚本は石井輝男が担当している。
結城昌治「長い長い眠り」。出演は桑山正一、関千恵子、トニー谷、八波むと志など。
江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」。出演は倉田爽平、明智十三郎、入川保則、炎加世子、芦屋小雁など。明智十三郎が明智小五郎を演じたかどうかは不明である。
そして横溝正史「白と黒」。出演は船山裕二、須藤健、岩城力也、高倉みゆき。金田一耕助を船山裕二が演じている。
ラストを飾ったのは松本清張「濁った陽」。出演は伊豆肇、矢代京子、笠間雪雄など。
個人的に知っているのは「屋根裏の散歩者」くらいである。横溝は結構読んでいるのだが、「白と黒」は知らなかったし。
他には水上勉、黒岩重吾、笹沢佐保、梶山季之、島田一男らの作品がドラマ化されている。
白と黒
主演は小林桂樹、仲代達矢で、二人とも検事の役である。冒頭でいきなり当時人気だった淡島千景が仲代に絞殺されるが、逮捕されたのは偶然その後に強盗に入った井川比佐志で、最初はすでに死んでいたと主張するも犯行を認める。結局、仲代が犯行を自供するのだが、実は淡島は失神していただけで、やはり井川に殺されていたという話。井川はこの前年「おとし穴」という映画で主演の抜擢されており、売り出し中であった。仲代は黒沢作品「用心棒」「椿三十郎」で大役を演じ、そして「天国と地獄」で警部役を演じたのがこの63年である。
キャストは結構、豪華で千田是也、東野英治郎、小沢栄太郎という俳優座創設メンバーが顔を揃えている。俳優座は仲代、井川を含め、永井智雄、稲葉義男、現在も所属している浜田寅彦、岩崎加根子など大挙出演しており、違うのは小林、淡島の他、西村晃、乙羽信子、大空真弓くらいだろうか。
松本清張の他にも、「口コミ」「太陽族」などの言葉を生み出した評論家の大宅壮一が出演していたりする。
「赤と黒」ならスタンダールだが、「白と黒」という小説は清張ではなく、横溝正史が書いていたりする。「白と黒」というタイトルの映画は他にも昭和でいうと3年である28年に藤間林太郎主演で存在する。藤間は藤田まことの父親である。
かげろう絵図
松本清張といえば推理小説だけでなく、ノンフィクションや歴史・時代小説も書いている。というわけで、時代物である「かげろう絵図」(59年)をピックアップしてみたい。
主演は大映の誇るスター市川雷蔵、ヒロインは山本富士子だが、東宝の志村喬や、当時は日活で活躍していた河津清三郎、東映「警視庁物語」に出ていた松本克平、永田靖、他にも柳永二郎、滝沢修といった大映所属ではないベテラン勢が多く出演している。当然、黒川弥太郎、千葉敏郎、伊達三郎、南部彰三といった大映時代劇お馴染みのメンツや阿井美千子、堀北幸夫、沖時男、原聖四郎と「新・必殺仕置人」で虎の会の俳諧師を演じた顔ぶれが揃って出演していたりする。
本作は12代将軍徳川家慶(伊沢一郎)の時代で、しかし実権は先代の家斉(柳永二郎)がまだ握っていた頃が舞台となっているのだが、ネット上の解説では家慶が悉く13代将軍となっている。未見なので、本編ではどうなっていたかは知らんが、正しくは12代で、13代将軍は家定である。
ところで、本編は二時間程の作品だが、ラストはさあこれからというところで「前編・完」とエンドマークが出て終了するらしい。それから50年、後編が制作された様子はない。「第一部・完」で終了した某マンガみたいである。
当時は前後編はもとより、三部構成の映画も珍しくはなかったが、本作が「前編」であるという告知は一切されていなかったらしい。原作も上下巻に分かれている長編ではあるが、これは客の入りを見て後編を作る予定だったのか、初めから作るつもりがなかったのか真相は不明である。まあ、制作されなかったということは不入りだったのであろう。
黒い画集 ある遭難
さて、次は東宝における松本清張ものである。清張の「黒い画集」シリーズを三本映画化しており、その二作目である「黒い画集 ある遭難」(61年)をピックアップしてみたい。
まあ山岳サスペンスとでもいうのだろうか。一見、不幸な事故としか思えない遭難死が、実は巧妙に仕組まれた殺人であったというお話。主な登場人物は五人だけである。
主演、つまりは殺人者の役を演じるのは伊藤久哉(当時37歳)。東宝の特撮作品とかでよく見かける、ほぼ脇役専門というイメージのある役者で、主演作というのは本作くらいではないだろうか。そういえば東映の「警視庁物語」シリーズの第1作で、犯人を演じたのは伊藤であった。東宝の役者というイメージが強いが56年までは東映の役者である。
その伊藤久哉と今や「アタック25」の司会者というイメージが圧倒的な児玉清、そして新東宝では主に和田桂之助として活躍していた和田孝の三人が山に登り、児玉一人が遭難死する。その死に姉である香川京子が疑問を抱き、従兄弟である土屋嘉男に相談する。生還した和田はその体験を山岳雑誌に手記として発表し、それを見た土屋が伊藤と共に再び遭難現場に向かい、偶然の事故でなかったことを暴いていく。
だから、後半はほとんど伊藤と土屋の二人芝居が続く。途中で天津敏とすれ違うくらいである。用意周到だった土屋だが、予想どおり伊藤による「殺人」だった場合、自分も口封じで殺される可能性は考えなかったのだろうか。まあ、出演者は地味だが面白いことは確かだ。
ところで脚本はあの石井輝男。カルト作品ばかり撮っている印象があるが、こうした普通の脚本も書いている。
東宝の「黒い画集」シリーズは本作の他、「あるサラリーマンの証言」(60年)と「寒流」(61年)がある。「寒流」は三作目ということになるのだが「黒い画集・第二話」というタイトルがついていて、ややこしい(61年の二本目ということだろうか)。
ちなみに、伊藤久哉は70年代の半ばには引退したようである。和田孝もこの61年に引退し、経営者へ転身。児玉清は「アタックチャーンス」と元気そうだ。
張込み(テレビ版)
最初が、前項で紹介した映画の翌年である59年。判明しているキャストから類推すると、ベテラン下岡刑事が沢村国太郎、若手の柚木刑事が安井昌二、犯人石井が殿山泰司、さだ子が山岡久乃といったところだろうか。沢村国太郎は長門裕之、津川雅彦の父である。
次が63年。これも判明しているキャストからの予想だが、江原真二郎(柚木刑事)、織田政雄(下岡刑事)、佐竹明夫(石井)、高倉みゆき(さだ子)だと思われる。織田政雄は映画ではほとんど端役の人だったようだが、テレビでは大きい役もあったようだ。しかし、この翌年脳血栓で倒れて長い療養生活にの末、亡くなったようである。高倉みゆきは新東宝で大蔵貢の愛人と言われていた女優だ(実際は大蔵の一方通行だったらしいが)。
続いて66年。下條正巳(下岡刑事)、中村玉緒(さだ子)は間違いないと思うが、高津住男と土屋嘉男は、どちらでも成り立つ気がする。土屋嘉男の方が犯人役っぽい気がする。
そして、70年。これまでは原作が短編なこともあってか、単発ドラマであったが、本作は連続ドラマである。これは役柄も判明していて、加藤剛(柚木刑事)、八千草薫(さだ子)、浜田寅彦(下岡刑事)、江原真二郎(石井)となっており、新人だった山口果林も出演している。江原真二郎は63年版に続いての出演である。
78年版は「東芝日曜劇場」で放送されている。吉永小百合(さだ子)、荻島真一(柚木刑事)、佐野浅夫(下岡刑事)、須田圭一(石井)、他にも森本レオなどが出演している。須田圭一という人はよくわからないが、この時期(77、78年)のみその名が見られる。田宮二郎の「白い荒野」などにも出演していたようだ。
後は、90年代以降なので簡単に書く。91年版は田原俊彦が柚木役、他に大竹しのぶ、石橋凌。96年版は時代劇「文吾捕物絵図」(内容が張込み)として放送。出演は中村橋之助、萬屋錦之介など。02年版はビートだけしが柚木、緒形直人が下岡とキャラクターが入れ替えられている。
張込み
で、その松竹作品で前2項と同じ58年に公開されたのが「張込み」である。ベテランと若手の両刑事が殺人犯が現れるのを待って、かつての恋人の周辺を張込む姿は非常に有名である。
若手の柚木刑事に大木実、ベテラン下岡刑事に宮口精二、張込まれる女さだ子に高峰秀子、殺人犯石井に田村高廣というのが主なキャスト。イメージ的には大木と田村の配役が逆のような感じだが、本作においては犯人らしくない人が犯人のほうがいいだろう。
この四年前に「七人の侍」で久蔵を演じたのが宮口精二だが、藤原釜足や多々良純も両作に出ており、東宝の作品かと一瞬思ってしまう。若手とベテランといっても実際は大木は35歳、宮口は45歳と見た目ほどの差はなかった。
他にも下岡の妻に菅井きん、柚木の恋人に高千穂ひづる、石井の共犯者に内田良平、捜査課長に芦田伸介などが出演している。関係ないが、高千穂ひづるは「月光仮面」こと大瀬康一の後の奥さんである。
この作品も何度か映画化されているようなイメージがあるが、実はこの1回だけで、テレビの方では何度か映像化されている。
原作を読んでいる方は知っていると思うが、そちらでは張込みをするのは柚木刑事だけなのである(私は知らんかった)。それを本作でコンビにしたのだが、そのイメージが強烈だったのか、以後のテレビ版でも張込みは若手とベテランのコンビというのが踏襲されている。他の刑事ドラマなどでも、そういうシーンが多いのは本作の影響が強いのだと思う。
主演の大木実は、つい先月86歳で亡くなった。合掌。