黒い画集 ある遭難 | お宝映画・番組私的見聞録

黒い画集 ある遭難

さて、次は東宝における松本清張ものである。清張の「黒い画集」シリーズを三本映画化しており、その二作目である「黒い画集 ある遭難」(61年)をピックアップしてみたい。
まあ山岳サスペンスとでもいうのだろうか。一見、不幸な事故としか思えない遭難死が、実は巧妙に仕組まれた殺人であったというお話。主な登場人物は五人だけである。
主演、つまりは殺人者の役を演じるのは伊藤久哉(当時37歳)。東宝の特撮作品とかでよく見かける、ほぼ脇役専門というイメージのある役者で、主演作というのは本作くらいではないだろうか。そういえば東映の「警視庁物語」シリーズの第1作で、犯人を演じたのは伊藤であった。東宝の役者というイメージが強いが56年までは東映の役者である。
その伊藤久哉と今や「アタック25」の司会者というイメージが圧倒的な児玉清、そして新東宝では主に和田桂之助として活躍していた和田孝の三人が山に登り、児玉一人が遭難死する。その死に姉である香川京子が疑問を抱き、従兄弟である土屋嘉男に相談する。生還した和田はその体験を山岳雑誌に手記として発表し、それを見た土屋が伊藤と共に再び遭難現場に向かい、偶然の事故でなかったことを暴いていく。
だから、後半はほとんど伊藤と土屋の二人芝居が続く。途中で天津敏とすれ違うくらいである。用意周到だった土屋だが、予想どおり伊藤による「殺人」だった場合、自分も口封じで殺される可能性は考えなかったのだろうか。まあ、出演者は地味だが面白いことは確かだ。

ところで脚本はあの石井輝男。カルト作品ばかり撮っている印象があるが、こうした普通の脚本も書いている。
東宝の「黒い画集」シリーズは本作の他、「あるサラリーマンの証言」(60年)と「寒流」(61年)がある。「寒流」は三作目ということになるのだが「黒い画集・第二話」というタイトルがついていて、ややこしい(61年の二本目ということだろうか)。
ちなみに、伊藤久哉は70年代の半ばには引退したようである。和田孝もこの61年に引退し、経営者へ転身。児玉清は「アタックチャーンス」と元気そうだ。