不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・ -7ページ目

不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・

ときどき童話をUPするので、読みに来てね。
よろしくぅー

1. 2人の紳士


「イシダタミを知っていますかな」
とつぜん後ろから声をかけられました。


ふりかえると,
とてもやせたおじいさんと,
とてもこえたおじいさんの
二人のおじいさんが立っていました。

不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-イシダタミ1


ぼくの名前はしょう太。
小学校5年生。
学校の自然教室で,海辺の村に野外活動に来ている。
今日は,引き潮の時間にあわせて海岸で磯の生物の観察をしているところだ。
晴れわたった真っ青な空とお日さまの光を受けてキラキラ光る海。
6月にしては梅雨のあい間のぜっこうのいい天気で,すずしげな浜風もふいている。


ごつごつした岩の間のしおだまりには,イソギンチャクやカメノテなどがいて,その間にカニやウニや小魚がいっぱいいる。
みんな「キャーキャー」言いながら観察している。

中には,半分海に入ってずぶぬれの者もいる。

そんな中,
ぼくと龍一はみんなからだいぶはなれた波しぶきのあまりとどかない磯に来ていた。


「イシダタミを知っていますかな」
今度はやせたおじいさんの少し高い声だ。
どうやらさっきは太っているおじいさんの声のようだ。


「えっ。道にしいてある石だたみですか」
「石の道のことですか」
さっき見つけたカニが岩かげにかくれてしまった。
ちょっと残念な気もしたが,おじいさんたちの話の方が気になっていた。

二人とも暑いのに長そでのコートを着ている。
やせているおじいさんは黒くて背の高いぼうしをかぶっている。
太っているおじいさんの方はまん丸の黒ぶちメガネをかけてしゃれたつえを持っている。
黒ぶちのメガネを上げつえでぼくの足もとの岩をさしながら,
「ちがうよ。ぼうやの足もとの小さな貝のことだよ」
「ほら,さっききみたちにふんづけられてこなごなになって,魚やカニのえじきになっている貝たちの

 こぉとぉじゃぁぁああ



2.毛むくじゃらの大男

とさけぶと,やせたおじいさんがこえているおじいさんの上に乗っかると,二人のおじいさんが一人の大きな男になりました。

天をつくような毛むくじゃらの大男です。



不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-イシダタミ2


「おお,小さな貝がいっぱいいるぞ」

ふと気づくとぼくは小さな貝になっていたのです。

「りゅういち」とさけぼうとしましたが貝になっているので声も出ません。


その時です。大男はぼくたちをふんづけました。


「うわぁ。いたい・・・」
と思ったしゅんかん気をうしなってしました。



この大男は,実はテドゥウという妖怪のような生き物なのです。

ここにすんでいるテドゥウはふたごなのです。


このふたごのテドゥウが姿を消してこの浜で休んでいると,イシダタミの悲鳴が聞こえてきたので来てみると男の子にふまれて次々と貝がらをこわされイシダタミは「み」だけになって海にほうり出されていました。

中にはつぶされて死んだ貝もありました。


これを見たテドゥウはこの子どもたちをこらしめてやろうとおじいさんに化けて出てきたのです。


そして

テドゥウたちがしょう太と龍一に貝の気持ちをわからせようと夢を見させたのです。


3.やさしい海女さん


浜風に顔をなでられて目が覚めました。


「気がついたかえ」

「しょう太大じょうぶか」

龍一と知らないおばさんが立っています。

「あの大男は,どこ」

おそるおそる辺りを見回しながら言いました。


「しょう太も見たんだ。ね,おばさん本当でしょ。しょう太,大じょうぶ。もう大男はいないよ」

ぼく龍一は,自分たちが貝になって大男にふみつぶされた話を何回もした。


しかし,おばさんは,
「きっと暑いから,くらくらして気ぜつしたんでしょ。どっちかが大男の夢を見て『大男だ』ってさけんだから同じ夢を見たんでしょ。で,その夢を見てどう思ったの」

おばさんは,この近くに住む海女さんだった。
毎日漁に来ているのでこのあたりにそんな大男を見たことがない。
それより,ぼくたちは今どんな気持ちなのか,と聞いてきた。


「どう思うって。こわいし気持ち悪かった」

とこたえると,この磯にいる生き物のことを話してくれた。


「それでね。これが夢の中に出てきたイシダタミという貝だよ」

おばさんが指さした岩に,無数の小さい貝がびっしりとついています。


「ふうん」


「この小さい貝がイシダタミなんだ」


「そうよ,よぉく見てごらん。貝に黒や白のたてよこのしまもようが入っているでしょう」


そう言うとおばさんはイシダタミをそっと岩からはがしてぼくたちの手のひらに乗せてくれた。


「近づけて見てごらんなさい。そのしまもようは石だたみに似てるでしょう」


よく見ると貝がらのもようは道にしいてある石だたみそっくりです。

「かわいいね」

「うん。でも,どうしてみんな同じところにたくさんかたまっているのかな」

「それはね・・・」



おばさんの言うには,波にさらわれないように,みち潮の時の波打ちぎわにいるそうだ。
そこで,引き潮になると人が歩いたり手をついたりする高さに群がっているという。
だから,気をつけてふまないようにしてあげてね,と。


ぼくは,おばさんの話を聞いて,この小さなイシダタミが好きになった。
この後,龍一ぼくも磯の生き物をいたわりながら観察してまわった。



「イシダタミ」 おしまい


カットはポックルさんです。

5.「やさしい心」


雪の落ちる音を聞いたおばあさんが出てきました。

「大きな音がしたね。雪が木から落ちてきたのかえ」


不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-yuki2

「うん、すっごくたくさん落ちてきて、ぼくの足の上にいっぱい乗ったけれど、だいじょうぶだったよ」
「気をつけなさいね。木の上の雪もこわいけれど、家ののきから落ちてくる雪はもっとあぶないからね。ほら、こうしてたれてきている雪をうっかりさわるとやねの雪がいっぺんに落ちてくるから気をつけなよ」
おばあさんは、そう言って大やねののき下に丸く巻きながらたれている雪を指さした。

そして、としお君の作りかけの雪だるまを見つけて、
「おや、雪だるまを作っているのかえ。二人で作ってるのかえ」


としお君はバツが悪そうに言いました。
「ううん。ぼくひとりで作ってるの。ちえは雪うさぎを作っていたけれど・・・。ぼくがわざとこわしてしまったの。」
そして、ちえちゃんの方を向いて、
「ちえ。ごめんね」
とあやまりました。

ちえは、かるく首を横にふって、
「いいよ」
と、小さく言いました。

「おやおや、仲良くしましょうね。ちえちゃん。おばあちゃんといっしょに作りましょう」
「ううん。おばあちゃんありがとう。でも、ちえ、お兄ちゃんといっしょに雪だるまを作りたいの。お兄ちゃん。いっしょに作っていい」

そう言うと二人で仲良く雪だるまを作り始めました。


おばあさんもいっしょに作り始めました。
三人で作るととてもりっぱな雪だるまになります。

最後に三人で頭を持ち上げ、炭で目と鼻と口をつけて出来上がりました。

そして、そのあと、また、三人で雪うさぎを作り始めました。
キャッキャと 2人の楽しそうな声が,雪の野原をころがって行きます。
お婆さんも満足そうに笑っています。

このようすを見ていたテドェウは三人がやさしい心をもっていることに感心するとともに、
『雪を落とさなければよかった』
と思いました。




ゆきだるま 終わり


カットは ポックルさんです。

4.やさしい風


と思ったそのときです。
さぁー、と、強く、そして、やさしい風がふきました。


としお君はその風にやさしく持ち上げられて少し横の方に運ばれ、しりもちをつくようなかっこうでねかされました。


ドッサーン。
バーン。


ものすごい音とともに雪が地面にぶつかりました。
「わぁー。足がはさまったぁ」
幸いなことに、としお君は、足の先が雪にうまっただけですみました。
「おにいちゃん。だいじょうぶ」
妹のちえちゃんがしんぱいしてかけつけました。

とびちった雪だらけの服をはらいながら、
「ああびっくりした。木の上にこんなにたくさん雪がつもっているんだね」
「ものすごい音がしたから、とてもびっくりしたわ」

「・・・ありがとう・・・・ちえ」


二人は、また、雪で遊びはじめました。

木の上にいてずっと見ていたテドェウはもっとおどろいていました。

雪が思っていたよりたくさん落ちたこと。

想像していたよりも,はるかに重かったこと。


そして、なによりもとしお君が無事だったことにおどろくとともに、ホッと胸をなでおろしていました。



ゆきだるま5「やさしい心」につづく

3.落ちてきた雪


「ごめんよう。ごめんよう」
と言ってとしお君は笑いながら走って逃げました。


これを真っ白になっている杉のてっぺんから見ていた者がいました。

テドゥウです。
テドゥウは都会から来たこの二人がこまったことにあったら助けてあげようと見ていたのでした。


でも、としお君のこのふるまいを見て
「ちえちゃんがかわいそうだ。ようし、としおをこらしめてやろう」
と思い、姿を消してとしお君のそばに行きました。


そして、としお君のせなかをおして木の下に連れて行きました。
でも、としお君はせなかをおされたとは思っていません。
走っているうちにいつの間にか大きな木の下に来てしまっていたのです。


としお君は、上を見上げました。
「大きな木だなぁ」
とつぶやいたしゅん間。


ドドォー。

と、大きな音とともに大きな雪のかたまりが落ちてきました。
いくら雪といっても、こんなに大きなかたまりだととしお君は大けがをするかもしれません。

あっ、あぶない。


ゆきだるま4「やさしい風」につづく

2.雪ウサギ


積もっている雪は、とてもふわふわしていてひざがかくれそうです。
二三歩走って転びそうになりました。

二人は夢中になって雪の上にわざと転んだり雪合戦をしたりしながら雪の深いところまで走りました。


もう、雪はこしのところまであります。なかなか歩けません。
ひとしきり雪で遊んだ二人は、あせびっしょりになったので、ひとまず家に入って着替えました。


今度は、家の近くで遊ぶことにしました。

としお君は、雪だるまを作り始めました。

ちえちゃんは、おばあさんから教わった雪うさぎを作ることにしました。
二人はおもいおもいに一生けんめい作っています。



ところが、としお君の雪だるまは雪がサラサラしているのでなかなか丸く固まってくれません。やっと下の雪玉が完成しました。


ふと、ちえちゃんの方を見ると、とてもきれいなウサギの形になっています。

としお君はまけずぎらいなので、さらにがんばって頭のぶぶんの雪玉を作り始めました。



ところが何回やっても雪玉はとちゅうでこわれてしまいます。

ちえちゃんは、雪うさぎの親子でしょうか。小さいうさぎも親うさぎの横に作っています。

ちえちゃんが作る雪うさぎをじっと見ていたとしお君は、急に頭にするために丸めていた雪玉を雪うさぎの上に転がしてしまいました。

ざざ、ぐしゃ

あぁあ。ちえちゃんの雪うさぎはあとかたもなくこわれてしまいました。




「あぁ。うさちゃんがぁ。おにいちゃんがうさちゃんをつぶしたぁ」



ゆきだるま3「落ちてきた雪」につづく

ゆきだるま1





1. ゆきぃーー




北国では,毎年冬になると雪がたくさんふり積もります。




としお君は南の方の都会育ちなので,こんなにたくさん雪が積もったのを見るのは初めてです。



昨日の夜おそく,お父さんとお母さんと妹のちえちゃんといっしょに,何回も何回も電車を乗りかえてお母さんのいなかについたのです。



今朝早く,おばあさんに起こしてもらったとしお君とちえちゃんは,窓の外に一面の雪を見ました。

おばあさんの家のうらは畑ですから,つもった雪しか見えないのです。

そこに,しんしんと音をけしながら雪がふっています。

遠くの林や山ももちろん真っ白です。



不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-ゆきだるま1



こんなけしきは始めて見ます。

としおくんはむねがわくわくするのを,もうおさえられません。

外に出たい気持ちでいっぱいになりました。



朝ごはんもほどほどにして,二人は表に飛び出しました。



「うわぁ。ゆきだぁ」

としお君は大きな声で叫びました。


「ゆきぃー」

ちえちゃんも始めて見る真っ白な世界に,思わず今まで出した事のないような大きな声で叫びました。



ゆきだるま2「雪ウサギ」につづく

カットはポックルさんです。










6.登校


「ふう」と一つため息をつきました。
まみは,カンニングペーパーを書き上げると,三枚ともふでばこの中に入れておきました。
「これを明日こっそり渡せばいいんだわ」
まみは,一学期に習ったところを復習し,大切なところをまとめて紙にぎっしり書きました。
三回もていねいに書いたので,まみの頭の中には一学期のまとめがしっかり入っています。
きっと明日のテストもしっかりできることでしょう。

よく朝,テドゥウはまみについて登校しました。
とてもよく晴れた日で,秋の朝にしては少し冷たい風もふいていてとてもすがすがしい朝です。
でも,まみの心はどんよりとくもっています。
さわやかな山鳥のさえずりも,まみにはただうるさいだけでした。

まみは校門でゆかりを待ちました。
ゆかりは,気のきつい女の子ですが,一年生の時はまみをよくかばってくれたりめんどうを見てくれたりしていました。
今でも時々かばってくれますが,性格が大ざっぱで言葉があらいのでまみはついていけない時があるのです。
しばらくして,ゆかりが登校してきました。
今日はバスに乗ったらしく,いつもと反対のほうからすがたが見えました。
低学年のほとんどがバス通学なので一年生や二年生にまじって歩いています。
低学年に好かれる性格なのでしょう。小さい子と楽しそうに話をしながら歩いてきます。


7.小さな風

ゆかりのほうが先にまみを見つけました。
「まみー。おはよう」
まみが振り向くと,笑顔のゆかりがかけよって来ました。
「おはよう。ゆかりちゃん。これ」
と言ってまみはゆかりにカンニングペーパーを三枚渡しました。

「ありがとう。まみ。恩にきるわ。・・・ぜったいだれにもしゃべらないことよ。私たちのひみつよ」
と,言いながら三枚の小さな紙を確かめるように一枚一枚ていねいに見ています。

そして,まみとかたをならべて歩きながら,さらに小さな声で
「まみって天才じゃない。よく書けているわね。これだけ書いてあれば,テストなんかばっちりね。まみのカンニングペーパーも同じなの?」
「ううん。わたしのはないの」
「どうして」
「だって三枚も書いているうちに全部おぼえたから・・・」
「また,いい子ぶって。でも,さすがね。まみは頭がいいから」

ゆかりは笑いながらさっさと教室へと走って行きました。
そして,教室にいるみつとなつみを自分の席に呼びました。

ゆかりの席は一番うしろです。みつもなつみもゆかりの横と前です。
もう,クラスの半分の子どもは登校していて,教室のあちこちでおしゃべりをしたり運動場に遊びに行ったりしています。

ゆかりはみつなつみに小さな紙切れを渡しながら・・・もちろんまみの作ったカンニングペーパーです。

「ね。これ。まみが書いてくれたわよ」
「うわぁ。すごい」
「これがあれば,ばっちりね。さあ,遊びにいこ」
と,そのとき,まどからさぁっと小さな風がふいてきて紙が飛ばされそうになりました。


8.朝勉強

「あっ,とぶ」
三人は紙をしっかり持って,
「ね,これ,今からおぼえましょうか」
「ぎっしり書いてあるね。どこに何が書いてあるのか今のうちにしっかりおぼえましょうよ」
三人は,もくもくと勉強をし始めました。カンニングペーパーを見ながら,おたがいに問題を出し合ったり答えあったりしています。そのうちチャイムが鳴りました。三人はそれぞれふでばこの中にカンニングペーパーを入れました。
この時を待っていたテドゥウは神通力を使って三枚とも白紙にしてしまいました。

二時間目,社会のテストが始まりました。ゆかりたちはこっそりカンニングペーパーを取り出しました。
「あれ」
ゆかりは小さな声をあげました。三人はとまどいながらも何も書いてない紙切れをあなのあくほど見つめたりうらがえしたりふでばこの中をさがしたりと,少なからずあわてています。そのうちあきらめたのか,紙をしまって問題をときはじめました。三人とも朝の休み時間にした勉強のおかげかすらすら問題をといていきます。
休み時間です。
「ゆかちゃん。この紙見て・・・」
みつがまっ白なカンニングペーパーをゆかりに差し出すと・・・
「あれ・・・」


9.続く不思議な事

「あれ。えっ? ・・・書いてある」

「あっ。まみからもらったカンニングペーパー。わたしのは真っ白よ」
「私のも真っ白よ」
と、ゆかりとなつみが紙を出すと,そこにはまみの字でいっぱい問題と答えが書いてあります。
「えーーっ!」
「あのね。なっちの紙。テストのとき真っ白だったのよ」
「わたしのも。なに。これぇ・・・」
3人とも,テストのときは真っ白だったカンニングペーパーを見ながら「不思議ね。どうなったのかしら」
と首をかしげました。

「ね。まみちゃんが知ってるかもよ」
3人は,まみのところへ行きました。

「ねえ。まみ。この紙。何の紙」
とつぜん紙の事を聞かれたまみはどう応えてよいかわかりません。
3人から紙が白紙になった事を聞かされても全くわかりません。
3人から怒られるのかと心配しています。


不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-カンニング2j

おびえているまみを見てゆかりが,
「まみ。まみのおかげで私たち朝勉強ができたから」
「そうよ」
「ただ。白紙になったのが気になったの。で。まみが知ってるかなと思っただけ」
そう言うと,3人はまたゆかりの席に戻りました。


10.神様?

「神様だ!!」
しばらくして。突然,なつみが言いました。
「きっと神さまが消したのよ。私たちにずるい事をさせないために」
「神様?まさか」
「そうかしら」
「きっとそうよ」
「そう言えば,私,朝勉強をしていたからカンニングしなくてもできたの」
「えっ。みつも?実は 私も いつもより良かった気がするの」
「そ。私も。私もまみのカンニングペーパーで朝勉強したから,いつもよりできてたの」

「まみちゃんのおかげね」
「まみちゃんにお礼を言わなきゃ」

3人はまた,まみのところへ行きました。今度はニコニコしながら・・・

姿を消して一部始終を見ていたテドゥウは,安心したようにうなづいて川原へと飛んで行きました。


不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-空飛ぶテドゥウ

きっと,大好きな水浴びをするのでしょう。

「カンニング」おしまい


カットはポックルさんです。

カンニング 前編


1.山あいの小さな町


とある家の2階で,ひとりの女の子が机に向って熱心に鉛筆を動かしています。

名前はゆかり。小学校6年生のとても活発な女の子です。
ここは,都会から2時間程はなれた静かないなかの町です。
山ばかりで,田んぼや畑はほとんどありません。

大きなお寺の門前町で,お土産屋さんと旅館が多い町です。
9月の終わりごろですが,山の中だけに都会よりずっと涼しい日が続いています。
蝉の声もあまり聞こえません。

それでも,ゆかりは窓越しに晴れた青空を見上げながら「暑い。暑い」と言いながら鉛筆を急がしそうに動かしています。

「ああ,むずかしい。なにこれ。覚えられない。やっぱりまみがたよりだわ。明日,ちゃんと作ってきてくれるかなぁ」

もうすぐ前期の期末テストです。ゆかりは,必死に勉強しています。

「ああ,まみー。おねがいよぉーー」

ゆかりは,のびをしながら,窓の外の青空に向かって欠伸とも叫びともつかない声をあげました。


2.まみの家


小学6年生の女の子が,せん風機にあたりながら熱心に何かを書いています。
きっと勉強をしているのでしょう。


不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-カンニング1j

名前はまみ。ゆかりと同じクラス。
ゆかりと正反対のとてもおとなしい女の子です。
そして,クラスで1番2番を競うほどの かしこい頭の持ち主でもあります。

その横にすがたを消した「テドゥウ」がいます。
何をしているのでしょう。

まみはそんなことには何も気づかず,もくもくと鉛筆を走らせています。
それも,とても小さい紙に・・・。
よおく見ると問題と答えが小さな字でぎっしりと書かれています。
一枚だけではありません。
同じような紙が後二枚あります。
なんと,書かれていることは全部同じです。
まみは三枚書き上げると,大きく背伸びをしてしんせんな空気をいっぱいすいました。

まどのすぐ近くの山の木でせみがやかましくないています。
屋根と山の間から青い空と白い雲がのぞいて見えています。
きっとゆかりも見ている入道雲の一部でしょう。

「ああ,やっと終わった」

まみは,ぎっしり書き込まれた小さな紙を一枚一枚
ていねいに見ながら,
昨日の放課後のことを思い出しました。


3.前の日のこと


授業が終わり,帰りのあいさつも終わり,放課後になりました。
学校の横を流れる川のせせらぎが,うっそうとした木々の間にこだましてすずしげな音を立てています。
せみも負けじとジージー鳴いています。
教室には数人残っているだけです。
みんなさっさと帰ったり部活動をするため体育館や運動場に走っていったりしています。

まみが,ランドセルをせおってろうかで上ばきにはきかえているときでした。
部活動のバレーボールをするため体そうふくに着がえたゆかりが声をかけてきました。

「まみ,ちょっと来て」

ろうかのすみにあと二人女の子がいます。

「ね,まみ。まみは頭いいでしょ。なぜなのか知っているのよ」
「私たち見たのよ。まみがカンニングしているところを」
「一週間前のテストの時,手の中に何かかくしていたでしょ」

ゆかりたちがまみをとりかこんでひそひそ話しかけてきました。

「えぇっ。なんのこと」

まみは,あとの二人がにがてでした。
とくにいじめられるということもないのですが,あまり話をしない仲なのです。
一年生や二年生のころはいっしょに遊んでいたのですが,いつのころからかまみの友だちはゆかりだけになってしまっていました。
一年生のころは男の子とも仲よくしていたのですが,今ではその男の子からも声をかけられなくなっていました。
それにひきかえ,活発でかわいいゆかりはだれとでも仲よくしています。

「まみ,友だちでしょ」
「だまっててあげるから,私たちの分も作ってよ」
「ね,仲良くしましょ。明日も社会のテストのカンニングペーパーを作るのでしょ」

「そのとき同じ物をあと三枚作ってね」


4.無理な約束


「みつ と なっち と 私の分。3人分。3枚お願いね」

少しきつい口調でゆかりはまみに言いました。
3人とは,ゆかりとみつとなつみ。

ちょうどそのとき横の川でテドゥウが水あびをしていました。
テドゥウは子どもが悲しい目や苦しい目にあったり困ったりしたとき,そのつらい気持ちを感じることができるのです。
水あびしていたテドゥウは,まみのつらい苦しみを感じ取りました。
そして,すぐさま姿を消して,ろうかのすみに立って話を聞くことにしました。

「作ってくれたら,この間のカンニングの事 黙っててあげる」

ちょっとおてんばななつみが言いました。

「ちがうの。あれは,カンニングじゃないの。白いばんそうこうなの」

まみは,か細い声で答えました。

「あぁれ。うそばっかり。じゃどうしてじっと見ていたの?」

優しいけれど少しわがままなみつが言いました。

「ばんそうこうがはがれそうなので,時々おさえていたの」

と,まみは,さらに小さな声でやっと言いました。

「うそ。うそばっかり。カンニングしていたでしょ」
「そうよ。カンニングしていたでしょ。私たち何も先生につげぐちするとは言っていないのよ」
「明日の社会のテストの問題を予想して,その答えを書いてくれればいいのよ」

「ね。書いてね」


5.まみの勉強法


「書いてちょうだい」
「お願い。きっと書いてね」

「う,うん。・・・でも・・・。ゆかり。どうしよう」

まみはゆかりを見ました。
でも,ゆかりは部活動のバレーボールをするため,

「まみ,さよなら。たのんだわよ」

と軽くかたをたたいて走って行ってしまいました。
みつとなつみからきつく頼まれ,まみは,とうとう書くことを約束してしまいました。

テドゥウはこれは何とかしなければいけない。と,思いました。
そして,まみの家までついてきたのです。
もう少し,水あびをしたかったのですが,いい子が悪いことをしようとしているのを見のがすわけにはいかなかったのです。

とぼとぼ歩いて帰るまみの後ろから姿を消したテドゥウがついていきます。
家に帰ってからも,気が重いままのまみです。
でも,とうとうカンニングペーパーを作り始めました。

まず,ノートに学習したことを全部書きうつしました。
そして,大事なところに線を引きました。
つぎに,線を引いたところを問題にして,その下に答えを書きます。
ここまでは,まみがいつもしている勉強法です。

いつもならここから全部覚えるのですが,今回は,白い小さな紙に写し始めました。

窓にはテドゥウが座っています。




後編につづく

カットはポックルさんです




ちいちの神様


1.雨の中の男の子


雨がふって

暑い暑い夏が終わろうとしています。

「こういう雨を人間は『しゅうりん』って言うんだな。」
しゅうりん(秋霖)とは,ススキ梅雨(づゆ)とも言って秋に降る長雨の事です。


山の中の小さな滝の中から外をながめながめてテドゥウはひとりつぶやきました。


あのうだるような暑さから解放されたように,山の木々は葉をいっぱいに広げて気持ちよさそうに雨にうたれています。


雨がふると森は静かになります。

ただ雨足の音だけが森中にひびいています。


テドゥウはじっと雨が葉っぱや岩にあたる音を聞いていました。

そこへ「はぁはぁ、はぁはぁ」といきをきらせて

男の子が登ってきました。


水色とこん色のまざったレインコートには、どろや落ち葉などがついています。

五年生くらいでしょうか足取りはしっかりしています。


テドゥウは何事かと思い、その男の子についていくことにしました。
もちろんすがたを消して。



2.サイコロ岩に立って


男の子は,はぁはぁ息をきらせながらも どんどん登っていきます。

とうとう「さいころ広場」までやってきました。

雨でサイコロ岩はすべりそうなくらいぬれています。


男の子はそこに立って,

「ちいちの神様,ちいちを助けて下さい」

と大声でさけびはじめました。

何度も何度もさけんでいます。

テドゥウは,男の子が岩から落ちないかとはらはらして見ていました。

雨はどんどんはげしくなってきます。

風も少しきつくなってきました。

「あっ,あぶない。」
男の子が足をすべらせ,よろけて手をつきました。

テドゥウはつい声を出してしまいました。

でも,テドゥウの声は川のせせらぎのような声でしたし,

雨も風もきつくなっていたので男の子には聞こえなかったようです。


ふらつきながらも男の子は,またサイコロ岩の上に立ち

「ちいちの神様、ちいちを助けて下さい」

と大声でさけびつづけました。

何度も何度もさけんでいます。

てどぅうのブログ-ちいちの神様1

どうしてこんなあぶないことをするのでしょう。

「ちいち」ってだれなのでしょう。

テドゥウは神通力をもって男の子を見てみました。


3.神通力で

テドゥウが神通力をもって男の子を見てみると・・・。


ちいちというのは,この男の子で生まれれたときから体が弱く

ついこの間からかぜをこじらせて肺炎というおそろしい病気になってしまったのでした。


すると,男の子の通う学校の友だちから,

「雨の日にサイコロ岩で妹の神さまにたのめば妹の病気はなおるよ」

と冗談を言われたのでした。
何とひどい冗談を言う友だちなんだ。

テドゥウははらがたちました。

そこで,

「ようし,こらしめてやる」
テドゥウ
はすぐに男の子の友だちの家に行きました。

男の子の友だちの家には,四・五人集まっていました。

「おい,たかしはほんとうにサイコロ岩に行ったと思うかい」
「あいつ,くそまじめで人をうたがうことを知らないから,きっと行ってるよ」
「この雨の中を・・・ごくろうさんだね」
「行ってないかもしれないよ」
「いや,たかしはきっと行ってるって」


テドゥウは神通力でまどをあけ,雨と風をこの子どもたちの顔にぶつけてやろうと、


テドゥウこの子どもたちはグルなんだな。と思いました。
「ようし,みんなこらしめてやる」
窓をバタンと開けました。


4.そよ風に吹かれて


ところが,

まどから入ってきたのは・・・

なんと

すがすがしいそよ風でした。


テドゥウが窓を開けた瞬間の事でした。

一人の男の子の目に「悪い事をしたな」という反省の色が見えたのです。


テドゥウは,ハッと気づき そよ風に変えたのでした。


男の子たちはしばらく風に吹かれていました。

そして,

なんとすがすがしい晴れ晴れとした気持ちになったのです。


てどぅうのブログ-ちいちの神様2


「おい,たかしが本当に行っていたらかわいそうだね」
と,

一人の男の子がぽつんと言いました。

その声は,本当に心にひびく声でした。

「うん,たかしだったら行ってそうだね」
「見に行こうか」
「うん,ようすを見に行こう。しんぱいになってきた」
「ぼくも,悪いこと言ってしまった」
「みんなで様子を見に行こう」
行こう。行こう。と,

男の子たちはかさを手にしたり,レインコートをきたりして,山に向かいだしました。

外はあいかわらず大雨できつい風が吹いています。


テドゥウもついて行くことにしました。


5.ごめん。いっしょに遊ぼう


男の子たちが サイコロ岩に近づくと,

「ちいちの神さまぁ

というたかしの声が聞こえてきました。


「たかしー」
「たかしー」
みんなは,さけびながら

さいころ広場にたどりつきました。


「あれ,

ゆうくんたち。

さあぼう

きよっちゃん

しんちゃんも

みんな,どうしてここに来たの?」


「たかし。ごめん」
「たかしの妹。ちいちゃんの病気がなおるというのはじょう

だん」
「ごめん。ちょっとみんなでからかってしまったんだ」
「ええっ。うそだったの。ぼく,ちいちがなおるとおもって

一生けんめいおねがいしていたのに」
「ごめん。そうなんだ。さあ,いっしょに帰ろう」
ちょっとなきだしそうなたかしくんと,

ばつがわるそうな男の子たちは一緒に山をおりて行きました。


しばらくすると,

男の子たちの声が聞こえてきました。

次第に大きくなる話の中に「一緒に遊ぼう」という声も聞こえてきます。


テドゥウは,男の子たちの様子を見とどけると,ほっとした顔をして山に帰って行きました。


「ちいちの神さま」おしまい


カットはポックルさんです。

大きな三日月様




しんちゃんはお星様が大好きです。


ある日

おじいさん夕焼けを見ながら帰っている時でした。

海にしずんだお日さまの

赤い影がお空の雲に映って真っ赤です。


アキアカネのむれが土手の上にいっぱい飛んでいます。


その向こうに(よい)の明星(みょうじょう)がとても明るく光っています。

その上には、黄色くてほそぅいほそぅい三日月

光っています。

てどぅうのブログ-三日月0
しんちゃんは、

きれいな三日月を見ながら

おじいさんと手をつないで歩いていました。

だんだん暗くなるお空には、少しずつお星様がふえてきています。


てどぅうのブログ-三日月1

しんちゃんは、

宵の明星を見て

「いちばん星 みぃつけたぁ」

と、歌いながら歩いていました。


しばらくするとお月さまの近くに赤い星が見えてきました。

しんちゃんは、おじいさんに

「あの星は何という星」

と聞きました。

するとおじいさんは、

「ああ、あれは、赤いから火星かな」

とおじいさんがこたえた時でした。


お月さまのあたりからサァーっと

ひとすじの流れ星が流れました。


てどぅうのブログ-三日月2


「わぁー流れ星だぁ」


「きれいだねぇ」

「ねっ。おじいさん。流れ星はどうしてできるの」



「さぁ。どうして流れるのかなぁ。しんちゃん。調べてごらん

「やだ。めんどうだもん」


この会話を聞いていた者がいました。

二人の頭のずっと上で姿を消して飛んでいるテドゥウです。



テドゥウとは、リスに似ていますが、手が長く羽が生えていて人間の子どもを守る不思議な生き物です。



テドゥウは神通力(じんつうりき)を使ってしんちゃんのこれからを見てみました。

何日たっても流れ星のことを調(しら)べようとしません。

それどころか、新しいものや不思議(ふしぎ)に思った子はすぐ近くの人に聞きます

とても良いことなのですが、自分で調べようとしないのです。


そこで、テドゥウは、夕焼(ゆうや)けの終わった真っ暗(まっくら)空のお月さまを少し大きくしました。

西にしずみかけるお月さまは、もともと大きく見えるのですが、

大きくなったお月さまを見て、しんちゃんは、どうして大きく見えるのだろうと、また不思議に思いました。


そして、また、おじいさんに、

「ね。あの月大きくなったね。どうして」

と聞きました。



おじいさんは、

「どうしてかわからないなぁ。

しんちゃん。

調べて教えてくれないか」

と言いました。

実は、おじいさんは知っていたのですが、だれかが耳もとで

「教えちゃダメ。自分で調べさせましょう」

という声が聞こえたのです。


おじいさんも、何でも聞いてくるしんちゃんに

いつもこたえていたのですが、

そろそろ本などで自分から調べてほしいと思っていたところでした。


しんちゃんは、

「えぇ !   いやだな」

と思ったのですが、

おじいさんに「教えてほしい」と言われて、

いつも教えてもらっているおじいさんに教えることができる。

と思うと、自分で調べようという気になったのでした。


はるか空の上のテドゥウが神通力で見てみると

何日か後のしんちゃんが、

図書館で星の本を見て、いろいろ調べていました。


テドゥウは、何度かうなづくと、安心したように山に帰っていきました。


てどぅうのブログ-三日月3


おじいさんが,ふと振り返ると,リスのような生き物がおじいさんに手を振って山へと飛び去っていくのが見えたような気がしました。

そのあとには,無数のお星様がいっぱいまたたいています。

しんちゃんとおじいさんは,手をつなぎながらお家に帰っていました。


おしまい


カットはポックルさんです。