6.登校
「ふう」と一つため息をつきました。
まみは,カンニングペーパーを書き上げると,三枚ともふでばこの中に入れておきました。
「これを明日こっそり渡せばいいんだわ」
まみは,一学期に習ったところを復習し,大切なところをまとめて紙にぎっしり書きました。
三回もていねいに書いたので,まみの頭の中には一学期のまとめがしっかり入っています。
きっと明日のテストもしっかりできることでしょう。
よく朝,テドゥウはまみについて登校しました。
とてもよく晴れた日で,秋の朝にしては少し冷たい風もふいていてとてもすがすがしい朝です。
でも,まみの心はどんよりとくもっています。
さわやかな山鳥のさえずりも,まみにはただうるさいだけでした。
まみは校門でゆかりを待ちました。
ゆかりは,気のきつい女の子ですが,一年生の時はまみをよくかばってくれたりめんどうを見てくれたりしていました。
今でも時々かばってくれますが,性格が大ざっぱで言葉があらいのでまみはついていけない時があるのです。
しばらくして,ゆかりが登校してきました。
今日はバスに乗ったらしく,いつもと反対のほうからすがたが見えました。
低学年のほとんどがバス通学なので一年生や二年生にまじって歩いています。
低学年に好かれる性格なのでしょう。小さい子と楽しそうに話をしながら歩いてきます。
7.小さな風
ゆかりのほうが先にまみを見つけました。
「まみー。おはよう」
まみが振り向くと,笑顔のゆかりがかけよって来ました。
「おはよう。ゆかりちゃん。これ」
と言ってまみはゆかりにカンニングペーパーを三枚渡しました。
「ありがとう。まみ。恩にきるわ。・・・ぜったいだれにもしゃべらないことよ。私たちのひみつよ」
と,言いながら三枚の小さな紙を確かめるように一枚一枚ていねいに見ています。
そして,まみとかたをならべて歩きながら,さらに小さな声で
「まみって天才じゃない。よく書けているわね。これだけ書いてあれば,テストなんかばっちりね。まみのカンニングペーパーも同じなの?」
「ううん。わたしのはないの」
「どうして」
「だって三枚も書いているうちに全部おぼえたから・・・」
「また,いい子ぶって。でも,さすがね。まみは頭がいいから」
ゆかりは笑いながらさっさと教室へと走って行きました。
そして,教室にいるみつとなつみを自分の席に呼びました。
ゆかりの席は一番うしろです。みつもなつみもゆかりの横と前です。
もう,クラスの半分の子どもは登校していて,教室のあちこちでおしゃべりをしたり運動場に遊びに行ったりしています。
ゆかりはみつなつみに小さな紙切れを渡しながら・・・もちろんまみの作ったカンニングペーパーです。
「ね。これ。まみが書いてくれたわよ」
「うわぁ。すごい」
「これがあれば,ばっちりね。さあ,遊びにいこ」
と,そのとき,まどからさぁっと小さな風がふいてきて紙が飛ばされそうになりました。
8.朝勉強
「あっ,とぶ」
三人は紙をしっかり持って,
「ね,これ,今からおぼえましょうか」
「ぎっしり書いてあるね。どこに何が書いてあるのか今のうちにしっかりおぼえましょうよ」
三人は,もくもくと勉強をし始めました。カンニングペーパーを見ながら,おたがいに問題を出し合ったり答えあったりしています。そのうちチャイムが鳴りました。三人はそれぞれふでばこの中にカンニングペーパーを入れました。
この時を待っていたテドゥウは神通力を使って三枚とも白紙にしてしまいました。
二時間目,社会のテストが始まりました。ゆかりたちはこっそりカンニングペーパーを取り出しました。
「あれ」
ゆかりは小さな声をあげました。三人はとまどいながらも何も書いてない紙切れをあなのあくほど見つめたりうらがえしたりふでばこの中をさがしたりと,少なからずあわてています。そのうちあきらめたのか,紙をしまって問題をときはじめました。三人とも朝の休み時間にした勉強のおかげかすらすら問題をといていきます。
休み時間です。
「ゆかちゃん。この紙見て・・・」
みつがまっ白なカンニングペーパーをゆかりに差し出すと・・・
「あれ・・・」
9.続く不思議な事
「あれ。えっ? ・・・書いてある」
「あっ。まみからもらったカンニングペーパー。わたしのは真っ白よ」
「私のも真っ白よ」
と、ゆかりとなつみが紙を出すと,そこにはまみの字でいっぱい問題と答えが書いてあります。
「えーーっ!」
「あのね。なっちの紙。テストのとき真っ白だったのよ」
「わたしのも。なに。これぇ・・・」
3人とも,テストのときは真っ白だったカンニングペーパーを見ながら「不思議ね。どうなったのかしら」
と首をかしげました。
「ね。まみちゃんが知ってるかもよ」
3人は,まみのところへ行きました。
「ねえ。まみ。この紙。何の紙」
とつぜん紙の事を聞かれたまみはどう応えてよいかわかりません。
3人から紙が白紙になった事を聞かされても全くわかりません。
3人から怒られるのかと心配しています。
おびえているまみを見てゆかりが,
「まみ。まみのおかげで私たち朝勉強ができたから」
「そうよ」
「ただ。白紙になったのが気になったの。で。まみが知ってるかなと思っただけ」
そう言うと,3人はまたゆかりの席に戻りました。
10.神様?
「神様だ!!」
しばらくして。突然,なつみが言いました。
「きっと神さまが消したのよ。私たちにずるい事をさせないために」
「神様?まさか」
「そうかしら」
「きっとそうよ」
「そう言えば,私,朝勉強をしていたからカンニングしなくてもできたの」
「えっ。みつも?実は 私も いつもより良かった気がするの」
「そ。私も。私もまみのカンニングペーパーで朝勉強したから,いつもよりできてたの」
「まみちゃんのおかげね」
「まみちゃんにお礼を言わなきゃ」
3人はまた,まみのところへ行きました。今度はニコニコしながら・・・
姿を消して一部始終を見ていたテドゥウは,安心したようにうなづいて川原へと飛んで行きました。
「カンニング」おしまい

