カンニング前編 | 不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・

不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・

ときどき童話をUPするので、読みに来てね。
よろしくぅー

カンニング 前編


1.山あいの小さな町


とある家の2階で,ひとりの女の子が机に向って熱心に鉛筆を動かしています。

名前はゆかり。小学校6年生のとても活発な女の子です。
ここは,都会から2時間程はなれた静かないなかの町です。
山ばかりで,田んぼや畑はほとんどありません。

大きなお寺の門前町で,お土産屋さんと旅館が多い町です。
9月の終わりごろですが,山の中だけに都会よりずっと涼しい日が続いています。
蝉の声もあまり聞こえません。

それでも,ゆかりは窓越しに晴れた青空を見上げながら「暑い。暑い」と言いながら鉛筆を急がしそうに動かしています。

「ああ,むずかしい。なにこれ。覚えられない。やっぱりまみがたよりだわ。明日,ちゃんと作ってきてくれるかなぁ」

もうすぐ前期の期末テストです。ゆかりは,必死に勉強しています。

「ああ,まみー。おねがいよぉーー」

ゆかりは,のびをしながら,窓の外の青空に向かって欠伸とも叫びともつかない声をあげました。


2.まみの家


小学6年生の女の子が,せん風機にあたりながら熱心に何かを書いています。
きっと勉強をしているのでしょう。


不思議な生き物「テドゥウ」の話・・・≪【童話】≫・・・-カンニング1j

名前はまみ。ゆかりと同じクラス。
ゆかりと正反対のとてもおとなしい女の子です。
そして,クラスで1番2番を競うほどの かしこい頭の持ち主でもあります。

その横にすがたを消した「テドゥウ」がいます。
何をしているのでしょう。

まみはそんなことには何も気づかず,もくもくと鉛筆を走らせています。
それも,とても小さい紙に・・・。
よおく見ると問題と答えが小さな字でぎっしりと書かれています。
一枚だけではありません。
同じような紙が後二枚あります。
なんと,書かれていることは全部同じです。
まみは三枚書き上げると,大きく背伸びをしてしんせんな空気をいっぱいすいました。

まどのすぐ近くの山の木でせみがやかましくないています。
屋根と山の間から青い空と白い雲がのぞいて見えています。
きっとゆかりも見ている入道雲の一部でしょう。

「ああ,やっと終わった」

まみは,ぎっしり書き込まれた小さな紙を一枚一枚
ていねいに見ながら,
昨日の放課後のことを思い出しました。


3.前の日のこと


授業が終わり,帰りのあいさつも終わり,放課後になりました。
学校の横を流れる川のせせらぎが,うっそうとした木々の間にこだましてすずしげな音を立てています。
せみも負けじとジージー鳴いています。
教室には数人残っているだけです。
みんなさっさと帰ったり部活動をするため体育館や運動場に走っていったりしています。

まみが,ランドセルをせおってろうかで上ばきにはきかえているときでした。
部活動のバレーボールをするため体そうふくに着がえたゆかりが声をかけてきました。

「まみ,ちょっと来て」

ろうかのすみにあと二人女の子がいます。

「ね,まみ。まみは頭いいでしょ。なぜなのか知っているのよ」
「私たち見たのよ。まみがカンニングしているところを」
「一週間前のテストの時,手の中に何かかくしていたでしょ」

ゆかりたちがまみをとりかこんでひそひそ話しかけてきました。

「えぇっ。なんのこと」

まみは,あとの二人がにがてでした。
とくにいじめられるということもないのですが,あまり話をしない仲なのです。
一年生や二年生のころはいっしょに遊んでいたのですが,いつのころからかまみの友だちはゆかりだけになってしまっていました。
一年生のころは男の子とも仲よくしていたのですが,今ではその男の子からも声をかけられなくなっていました。
それにひきかえ,活発でかわいいゆかりはだれとでも仲よくしています。

「まみ,友だちでしょ」
「だまっててあげるから,私たちの分も作ってよ」
「ね,仲良くしましょ。明日も社会のテストのカンニングペーパーを作るのでしょ」

「そのとき同じ物をあと三枚作ってね」


4.無理な約束


「みつ と なっち と 私の分。3人分。3枚お願いね」

少しきつい口調でゆかりはまみに言いました。
3人とは,ゆかりとみつとなつみ。

ちょうどそのとき横の川でテドゥウが水あびをしていました。
テドゥウは子どもが悲しい目や苦しい目にあったり困ったりしたとき,そのつらい気持ちを感じることができるのです。
水あびしていたテドゥウは,まみのつらい苦しみを感じ取りました。
そして,すぐさま姿を消して,ろうかのすみに立って話を聞くことにしました。

「作ってくれたら,この間のカンニングの事 黙っててあげる」

ちょっとおてんばななつみが言いました。

「ちがうの。あれは,カンニングじゃないの。白いばんそうこうなの」

まみは,か細い声で答えました。

「あぁれ。うそばっかり。じゃどうしてじっと見ていたの?」

優しいけれど少しわがままなみつが言いました。

「ばんそうこうがはがれそうなので,時々おさえていたの」

と,まみは,さらに小さな声でやっと言いました。

「うそ。うそばっかり。カンニングしていたでしょ」
「そうよ。カンニングしていたでしょ。私たち何も先生につげぐちするとは言っていないのよ」
「明日の社会のテストの問題を予想して,その答えを書いてくれればいいのよ」

「ね。書いてね」


5.まみの勉強法


「書いてちょうだい」
「お願い。きっと書いてね」

「う,うん。・・・でも・・・。ゆかり。どうしよう」

まみはゆかりを見ました。
でも,ゆかりは部活動のバレーボールをするため,

「まみ,さよなら。たのんだわよ」

と軽くかたをたたいて走って行ってしまいました。
みつとなつみからきつく頼まれ,まみは,とうとう書くことを約束してしまいました。

テドゥウはこれは何とかしなければいけない。と,思いました。
そして,まみの家までついてきたのです。
もう少し,水あびをしたかったのですが,いい子が悪いことをしようとしているのを見のがすわけにはいかなかったのです。

とぼとぼ歩いて帰るまみの後ろから姿を消したテドゥウがついていきます。
家に帰ってからも,気が重いままのまみです。
でも,とうとうカンニングペーパーを作り始めました。

まず,ノートに学習したことを全部書きうつしました。
そして,大事なところに線を引きました。
つぎに,線を引いたところを問題にして,その下に答えを書きます。
ここまでは,まみがいつもしている勉強法です。

いつもならここから全部覚えるのですが,今回は,白い小さな紙に写し始めました。

窓にはテドゥウが座っています。




後編につづく

カットはポックルさんです