こんにちは。久しぶりの投稿になります。
20年ぶりの審査経験を今、積み始めています。
徐々に徐々にまた経験値を増やしていきたいな、と考えています。
さて今回のテーマも1回では書ききれないので数回に分けてお届けします。
それなりに前からISOマネジメントシステムの世界にかかわりをお持ちだった方は、なんとなくご記憶の方もおられるのではないかと思いますが、ISO審査の世界も日進月歩しているはず(???)です。
まだ私が論じるには経験値が足りないので、時期尚早ではあるのですが、このような問題意識を持っている、ということを皆さんと現段階で共有しておくのも悪くないかな、と思って今回したためました。
テーマは「審査のやり方」です。
昔、それこそ私が初めてISO審査の世界に足を踏み入れた20年前は、特に品質/QMS審査においては、マニュアル(品質マニュアル)が何よりも大事。
審査員は事前に組織から提出されるマニュアルをじっくり予習して、そのマニュアルがISO規格に対して適合しているかどうかの確認を行ったうえで、問題なければ現地での審査でその実施状況の確認。問題があるようであれば、現地に行った際には、その部分の指摘から始まる、問う感じの審査で、規格要求事項の端から端まで(番号の上から下までと言った方が適切かもしれませんが)対応できているかどうかを確認するのが審査でした。
故に、逐条型審査、と言われたわけです。
規格の4.1から順々に確認していく、というイメージを持っていただければだいたいおわかりいただけるのではないかと思います。
もちろん誰を相手に、どの部署に対して審査を行うかによって、対象となる条項番号は特定、限定されたわけですが、いずれにせよ、審査員は、規格要求事項をそのままチェックリストとして用いて、それらの適合性を確認する審査をすれば及第点、という状況でした。
ですが、それでは毎回毎回の審査で同じようなことの確認ばかりで、初回はそのような審査であっても2回目以降であれば審査を受ける側からすればまたそれか、という感じになることは否めません。審査を受ける価値は何なのか、という議論も当然のように沸き起こります。
そのため、ある時期付加価値審査という言葉が大はやりしました。
審査を行うことによって組織にいかに付加価値を与えることができるか、という議論です。
しかし、そうは言ってもご承知の通り、ISOの第三者審査では、アドバイス、コンサルティングに当たる行為は禁じられています。
付加価値を意識しすぎると、どうしてもアドバイス的な発言が出てきてしまいます。下手をするとそればかりになってしまうかもしれない、というリスクも。
そうなるとISOマネジメントシステムの第三者審査における本義である適合性の確認、ということが疎かになってしまいます。
その弊害も取り沙汰されるようになり、付加価値審査という言葉の流行はだんだん過去のものになっていきました。
そして出てきたものがプロセスアプローチ型審査です。
プロセスアプローチ、ここで説明せずともだいたい多くの方はおわかりいただいていると思いますが、経営管理における基本概念の一つで。
2000年版のISO9001が出てきたときからこの言葉が使われるようになりましたが、ISOが考えだした新しい経営管理手法、というわけではありません。もともとあった経営管理の基本概念ですが、適切な言葉がなかったこともありISOが持ち出した、と私は捉えています。
そしてプロセスアプローチ型審査とはなにか、というと規格要求事項を順番に捉えて審査を進めるのではなく、組織の業務フローに合わせて審査を進めていきましょう、というものがざっくりとしたその説明です。
当然といえば当然のアプローチです。
規格に組織経営を合わせるのではなく、組織経営の流れの中で、規格をうまく活用して欲しい、というのがISO側の願いですから、審査のやり方もそれに即していなければ本末転倒です。
昔の逐条型審査では、その感覚が薄くなってしまいますし、ミスリードすることにもなってしまいます。
逐条型審査は百害あって一利なし、という感じに認識が広まったのも当然といえば当然でしょう。
さあ、そのような過去の歴史を踏まえたうえで、現在のあるべき審査を考えていかなければなりません。
故にあくまでこの先審査の世界をより深く考えていくうえでの現状の起点、ということでご理解いただきたいわけですが、現時点での私の認識は、
プロセスアプローチ型審査は万能ではない。
逐条型審査も大いに価値がある。
という意識を持つに至っています。
審査を受けてくださっている組織は、ISO認証を取ってかなりの年数が経っている、という組織が増えています。
私が審査現場で接する組織も長く認証を継続してくださっている組織が殆どと言っても過言ではありません。
そのような組織に毎回の審査で逐条型審査をやってしまっては、それこそ金返せ!ということになりかねない、その点は間違いありません。
しかし、プロセスアプローチ型審査とはいったい何なのか。
そのリスクとリターンの関係をしっかり踏まえておかないと、審査が単なる業務の流れの確認に留まってしまうことを強く感じ始めています。
もう一歩踏み込むと懸念を感じています。
QMSはあくまで継続的改善を目指し、その上で組織の品質レベルそして更には経営レベルの向上に資するものであってほしいわけです。
それが、限られた審査時間の中で、毎回毎回審査員が前回から変わって新しい審査員が訪れるとしたら。
さすがにベテラン審査員であっても、その組織の経営状態、そして審査テーマ(品質や環境等)に関する管理状態を即座に掴むことは困難です。
何が言いたいか、と言えば、プロセスアプローチ型審査という名の下、審査レベルの向上を狙ったはずなのに、実は組織に提供できる審査に伴う価値提供レベルが下がってしまっている懸念を感じ始めている、ということなのです。
仕事の流れはISOの審査を受けようとする組織、企業であれば基本的には確立しています。改善の余地は多少はあるかもしれませんが、大きな問題がそこにあれば、そもそもお客様との関係維持ができなくなってしまいますから、審査を受けるどうのこうの以前の事業継続への赤信号が灯ってしまいます。
なかなかこのあたりになってくると紙面上でお伝えすることが難しくなってくるのですが、実は私自身が責任者の立場で審査を受ける状態が10年続いたわけですが、そこで感じた審査の価値、そして限界とどうしてもつながってきてしまうのです。
その時感じていたことは、とにかくもっと突っ込んで欲しい、という感覚でした.
時間に制約がありますし、何よりも専門性という点では自ら事業をしている立場と外部の立場というのは相当に開きがあります。その点を差し引いて考えても、もう少し突っ込みようがあるのではないか、とずっと思っていました。
そして今は、審査を受ける立場ではなく、する立場になって見えてくる世界があります。
あえて言うなら、守りの審査と攻め審査の違いとでも言えばよいでしょうか。
審査おいてはこれを守らならければならない、という国際基準があります。
それを踏まえた、ハズレのない審査、ということになるのでしょうか。
組織側のニーズが、審査登録証(認証証)が貰えればそれでOKという場合も正直あります。
そのような組織にとってはお手軽な審査でスムースに終わってくれたほうがよい、というケースも残念ながらあります。
その観点からすれば、今わたしが経験している審査は十分なレベルにあると言えるでしょう。
しかし、なのです。
長くなってきましたので、次回に続けます。