[Flute Solo] Paganini Caprice No.24 파가니니 카프리스 24번 - Jasmine Choi 최나경
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.1, No. 2 e No.3.
Flautista Patrick Gallois
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.4, No. 5 e No.6.
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.7, No. 8 e No.9.
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.10, No. 11 e No.12.
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.16, No. 17 e No.18.
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.19, No. 20 e No.21.
Paganini, 24 Caprices for Solo Violin(Flute), Op.1, No.22, No. 23 e No.24.
音楽に多少なりとも関心のある人は、ヴァイオリンという単語を聞いただけでパガニーニを思い出すのではないでしょうか。貧しい港湾荷役夫の息子から、イタリアはおろか、ウイーン、ベルリン、そしてその名はおそらくヨーロッパ全土に知れ渡っていたでしょう。ナポレオンのために「ナポレオンソナタ」(1807)を書き、神聖ローマ帝国騎士の称号を与えられ、ワルシャワの戴冠式で演奏しました。世界中で彼ほど著名な人物から憧れられ最も名誉ある人物はいなかっただろうと言われています。
さて、今日聴く「24の奇想曲」(または24のカプリース、24 Capricci)作品1, MS 25は、イタリアのヴァイオリニストで作曲家である、そのニコロ・パガニーニ(1782~1840)が作曲したヴァイオリン独奏曲です。それをフルートで演奏しようという訳です。その前に、本家であるこのヴァイオリン作品について調べましょう。
無伴奏曲であり、ヴァイオリンの重音奏法や、視覚的にも演奏効果の高い左手ピッツィカートなど強烈な技巧が随所に盛り込まれた作品であるため、ヴァイオリン演奏家からは難曲として挙げられている。
1800年から1810年頃にかけてジェノヴァ(正確な場所は不明)で作曲され、その10年後の1820年にミラノで「作品1」としてリコルディ社から出版された。作曲の動機については不明ではあるが、ピエトロ・ロカテッリやピエール・ロードなどのフランコ・イタリア派作曲家たちからの影響がみられる。
パガニーニが好んだハーモニクスはこの曲集ではなぜか用いられず、舞曲や行進曲のリズムの使用、バロック音楽やジプシー音楽からの影響、ヴェネツィアの舟歌からの引用やギターのトレモロの模倣など、多くのヴァイオリン曲の中で特異な魅力を放っている。
ハンガリー出身の音楽家であるフランツ・リストは、パガニーニの演奏技巧のもつ音楽の可能性に触発され、ピアノ独奏用に第1・5・6・9・17・24番を編曲している(『パガニーニによる大練習曲』)。
リストと同時期に活躍したドイツの音楽家であるロベルト・シューマンもまた、第2~6・9~13・16・19番をピアノ独奏用に編曲した(『パガニーニの奇想曲による練習曲』『パガニーニの奇想曲による6つの演奏会用練習曲』)ほか、第24番を除く23曲をピアノ伴奏付きの作品として編曲している。
この24のカプリスも相当なテクニックを要求される作品ですが、2回演奏を聞いたことのあるシューベルトは以下のように語っています。
…前略 彼の悪魔的なトリックには驚かされたが、それに劣らないくらい、彼のアダージョの素晴らしさは私たちを楽しませてくれた。
更に画家のドラクロアは、パガニーニと他のすべてのヴァイオリン奏者との違いを分析し、6つのカテゴリーに分けています。画家が、人間の身体を観察しデッサンするのは基礎の基礎ですから、構造的にも動きにも詳しいのです。おまけに、ドラクロア自身がヴァイオリンに堪能でした。(以下は長いので要点をまとめます)
(1)楽器の調弦の方法
今ではパガニーニの作品を演奏する際にスコルダトゥーラ(通常とは異なる調弦法)は行わない。パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番はニ長調で演奏されるが、オリジナル楽譜は変ホ長調で書かれていた。つまりこの協奏曲を弾くときに、パガニーニは楽器を半音高くして調弦していたのだ。弦楽器では、開放弦による共鳴のお陰で、♯4つまでのシャープ系の調の方がフラット系の調よりも明るい音色生み出すうえ、演奏上もフラット系の方が難しい。パガニーニは他の作品の演奏でも時折この方法を取っている。
(2)ボウイングの方法
彼のボウイングテクニックは明らかに他とは違っていた。その中で彼が得意としたのはリコシュである。これはフランスの弓製作家フランソワ・トゥルテの改良によるところが大きい。
(3)弓を使って出す音と左手のピッツィカートを一緒に響かせる手法
パガニーニの左手によるピッツィカートもまた印象的だった。弦楽器の期限は、ハープやリュートのような形の楽器であり、弦を弾く行為は人々が早い時期からなれ親しんだものだった。このことからもピッツィカートでの演奏は基礎的なテクニックとなった。
(4)ホーモニックスの使い方、自然ハーモニックスと技巧ハーモニックス
パガニーニのもう一つの得意技は、ダブルストップ・ハーモニックス(重音奏法でのハーモニックス)である。これは手の小さなヴァイオリニストにとっては、まったくもって頭痛の種だ。パガニーニはハーモニックスを簡単にするために一般よりも細い弦を使っていたと言われるが、たとえ細い弦を使ったとしても、指をすべて正しいポイントに置かなくてはならないことに変わりはない。
(5)G線だけを使う演奏
パガニーニは、ロッシーニの<エジプトのモーゼ>の「汝の星をちりばめた王座に」に基づくG線上の変奏曲を演奏する時には、G線をE線の隣に張り、単3度高く調弦した、と言われている。彼のコンサートのプログラムや、多くの風刺画に描かれた彼の楽器には、弦が一本しかない。このことからもパガニーニが多くの作品を好んでG線だけで演奏したのが分かる。
(6)信じられないような妙技
パガニーニは、普通より平らな駒をつかっていただけでなく、彼独特の指づかいは彼が指の関節を自由に外すことができるとする噂を生み出した。左手の指の関節を自由に外すことで、難しい部分も指を自由に伸ばせた、と信じられていたのだ。彼の手の柔軟性、特に左手の柔軟性には驚きを禁じ得ない。(中略)パガニーニの主治医であったベンナティ博士が1831年に出版した彼の所見を次のように紹介している。
パガニーニの手は普通より大きいわけではない。しかし、全ての部位がとてもよく伸びたので、普通の倍の長さは届いた。例えば、彼は手のポジションを変えずに弦に置かれた左指の第1関節を曲げて、横の弦を押えることができた。つまり関節にとって自然な動きではない、真横へ直角に指の関節を曲げられたのだ。そして彼はこの動作を容易かつ、正確にスピードをもって行うことができたのだった。
このくだりを書き続けると膨大になるので、感嘆に書きます。二人の博士がこの所見についての考えを述べているのですが、「先天性のマルファン症候群」だと紹介しています。彼は、マルファン症候群を患っていたと考えるのが正しいと言っているのです。
さて、肝心のフルートの演奏ですがまずダブルストップは演奏不能ですが、それ以外は様々なテクニックを駆使して挑まねばなりません。しかし、三上氏の述べている循環呼吸など簡単に身につくものではありませんし、フラッター奏法、重音、声も合わせ使う奏法など弦楽器とはまた違った技術をもみにける必要がありますので、初心者や中級車は無理をしてこの曲を演奏するのはやめた方が良いです。
口でできることは楽器でもできますが、口でできないことは楽器でもできないか不完全なものになります。基礎をしっかりに身に着けてから挑戦してみてください。急がば回れは楽器でも同じです。
※資料 ウィキペディア、若林暢「悪魔のすむ音楽」など
Paganini, Nicolo 24 CAPRICES,OP.1 (ED.HERMAN=WUMMER)
<解説>
パガニーニのヴァイオリン独奏のための24のカプリスは、作品1として1820年に出版されました。それ以来、ヴァイオリンの世界の不滅の作品として多く演奏されてきましたが、フルートに編曲して出版したのは、北フランスのリール音楽院名誉教授だったジュール・エルマン (Choudens版) です。IMC社からもジョン・ウンマーが校訂を加えて、同じような内容の版が出ています。また、最近では、パトリック・ガロワにより、循環呼吸の解説(16分音符の息から始めるガロワ考案の方法)から始まり、フラッター奏法、重音、声も合わせ使う奏法を示唆した版がLeduc社から出版されました。この曲集を勉強される方は、先入観を持ち過ぎないようにして、ヴァイオリンのための元の楽譜も参照しながら、フルートを活かす演奏を目指すようにお勧めします。元々、ヴァイオリンを活かすように発想されているので、フレーズ感も長く、よく鳴るG線やD線など低音の魅力を前提にした部分など、違う発想をフルート演奏の中でクリアすることによって、演奏に巾を加えられるようになるのではないでしょうか。(解説/三上明子)
パガニーニ : 24のカプリース op.1 全曲 (フルート版)
(Paganini : 24 Capriccio Op.1 / Dora Seres (flute)) [輸入盤]
ドラ・シェレシュ (アーティスト), & 2 more Format: Audio CD