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「貨幣と所得の本質が解る『経常収支』と『金融収支』」(前半)三橋貴明 AJER2023.4.10
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令和五年度予算 防衛費の増額はできた ということは・・・?[三橋TV第689回]三橋貴明・高家望愛
経済主体を抽象化し、分類すると、
1.民間(家計、企業など)
2.政府
3.外国(日本では「海外」と呼びます)
の三つになります。
三つの経済主体は、フロー面では「黒字」「赤字」、ストック面では「資産」「負債」のやり取りをしておりまして、
「誰かが黒字になるためには、誰かが赤字にならなければならない」
「誰かが純資産を増やす(もしくは純負債を減らす)ためには、誰かが純負債を増やす(もしくは純資産を減らす)必要がある」
という原則が成立しています。まあ、コインの表の反対側は裏だよ、と言っているに過ぎませんが。
三つの経済主体が同時に黒字になったり、純資産を増やす(もしくは純負債を減らす)ことは、不可能なのです。
つまりは、
「民間が黒字(純資産増)になるためには、政府、海外、もしくは双方に赤字(純負債増)になってもらわなければならない」
が成立します。式で書くと、
◆ 民間の黒字=政府の赤字+海外の赤字(※日本の経常収支の黒字)
です。
本来は、民間を家計と企業に分けなければなりません。理由は、資本主義経済において、企業は借り入れ(赤字、純負債増)を増やし、投資をすることで成長を牽引するべき存在だからです。
もっとも、97年のデフレ化以降、企業は負債を増やすどころか、返済してきました(不良債権問題や、貸し渋り・貸しはがしの影響が大きい)。企業までもが毎年、黒字=純負債減の状況が続いている。
【日本の各経済主体の資金過不足(億円)】
http://mtdata.jp/data_84.html#kabusoku
民間(特に企業)が借り入れを増やさず、投資をしないデフレ下では、政府や外国に赤字を増やしてもらわねければならない。
逆に言えば、政府が赤字を増やせば、民間の黒字は増える。
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『コロナ禍の「10万円定額給付金」で露呈…日本の主流派経済学者たちが犯した「致命的な勘違い」
(前略)これも、いずれ、国内の民間貯蓄がなくなり、国債を海外投資家に購入してもらわなければならない事態が来ることを懸念しているのでしょう。
しかし、国債の発行が増えたせいで民間貯蓄が減るなどということは、起き得ないのです。
貨幣とは、負債の一種です。そして、民間銀行が貨幣を企業に貸し出すと、預金が生まれます。つまり、企業が銀行から借り入れることで、預金(貯蓄)が増えているわけです。
そして、政府が中央銀行から借入れを行い、支出を行うと、支出先の民間企業の預金が増えます。
すなわち、政府の赤字財政支出により、民間貯蓄は減るのではなく、その反対に増えているのです。
赤字財政支出が民間貯蓄を増やすというのは、実は、当たり前のことです。
たとえば、2020年のコロナ禍の中、政府は、国民1人に対して10万円の定額給付金を配ったことがありました。
その際、定額給付金に反対する論者たちは、「給付金を配っても、貯蓄されるだけで消費には回らない」と言って批判していました。
しかし、定額給付金が貯蓄に回るということは、まさに、政府支出によって貯蓄が増えていると認めているのではないでしょうか。(後略)』
まさに、2020年の特別定額給付金は、政府が国債を発行し、財政赤字を増やすと、国民の黒字が増える(純資産が増加する)ことを証明しました。
麻生太郎財務大臣(当時)は、特別定額給付金について、
「その分だけ(個人の)貯金が増えた」
と発言し、消費喚起の効果が限定的だったと「批判」していますが、自分で言っているじゃないですか。政府の国債発行と給付により、民間の貯金が増えた。
つまりは、政府の財政赤字を「減らす」政策、あるいはPB黒字化目標は、民間の黒字(純資産)を減らすという意味を持つわけです。
それにも関わらず、日本政府は未だにPB目標を撤回せず、少なくない国民が「政府の財政赤字は減らすべき」と思っていることでしょう(もちろん「減らすべき時期」はあるわけですが、今は違います)。
理由は、簡単。
「誰かが黒字になるためには、誰かが赤字にならなければならない」
という、現実が理解できないというか、「考えたこともない」ためです。
別に、難しい話ではないでしょ? とりあえず「政府が黒字になると、自分が赤字になる」という誰にも否定できない事実から説明し、理解してもらって下さい。
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