新世紀のビッグブラザーへ blog-日本の田植え祭


三橋貴明診断士事務所  を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから 
崩壊する世界 繁栄する日本 「国家モデル論から解き明かす」 発売中!
Yen.SPA! 4月23日号に、インタビュー記事『「日本経済悲観論」の嘘』が掲載されています。

共同キャンペーン 日本の田植え祭  
共同提案者 渡邉哲也氏ブログ
田植え祭まとめ@Wiki  
放送倫理・番組向上機構に意見を送るス


 本日のエントリーは以下の三つの続編になっています。
「中国の最悪の輸出品」 
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/25266171.html
「続 中国の最悪の輸出品」 http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/25545879.html
「Amebaブログスタートです」 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10229112413.html
 
 中国の「数字」関連の記事が貯まって来ましたので、今後のために整理しておきたいと思いました。
 まず、中国の経済成長率の現状ですが(中共政府の発表が信頼に値するかどうかの話は置いておいて)、08年第4四半期の「対前年同期比」成長率は6.8%になったと報道されています。ところが、対前期比の成長率は発表されておらず、幾つかの証券会社やリサーチ会社が「分析」した結果を発表している状況です。


中国の08年第4四半期 対前期比実質GDP成長率 推定値 (情報提供TM様 多謝)】
・モルガンスタンレー:年率換算1.5%
・スタンダードチャータード:年率換算1%
・メリルリンチ:0%
・日本経済研究センター:年率換算マイナス0.3%


 多少の幅はありますが、どの証券会社・調査会社も中国の08年第4四半期における経済成長率について、対前期比ではほぼゼロ成長と推定しているわけです。話を単純化するために、メリルリンチの0%を採用することにします。
 ということは、07年第4四半期の中国の実質GDPを100とすると、08年第3四半期が106.8、翌第四半期も同じく106.8ということになります。横書きに書くと今一分かりにくいので、箇条書きにしますと、


・07年第4四半期:100
・08年第3四半期:106.8
・08年第4四半期:106.8


 というわけです。

 御存知、中国の輸出対GDP比率はちょうど40%程度です。そして中国の09年1月の輸出は前年同月比17.5%マイナス、2月が25.7%減でした。
 09年第4四半期の輸出を対前年同期比マイナス25%と仮定すると、100x0.4x0.25=10。ちょうど07年第4四半期の一割分の外需が消滅(輸出の寄与度マイナス10%)することになります。
 中国のサービスの輸出入は大した規模ではないので、無視しています。サービスの輸出入を含めると、中国の輸出依存度は高くなるため、輸出の寄与度のマイナスはもっと膨らむはずです。
 とりあえず面倒なのでサービスを省くと、09年第1四半期における中国の実質GDPは、輸出のみで対前期比9.3%マイナスの寄与度になるわけです。
 中国の実質GDPの実数値が公表されていないので、どのくらいの金額規模なのかはさっぱり分かりませんが、韓国の08年第4四半期は輸出の寄与度がマイナス5.3%(輸出自体はマイナス9.2%)でした。中国の今四半期の輸出の寄与度(マイナス)は、前四半期の韓国を上回る規模になる(はずな)のです。
 中国は外需激減を補うため、政府支出を増やし、公共投資を拡大することで乗り切ろうとしています。そして、特に欧米のメディアを中心に、「中国は内需拡大により、今回の危機を乗り切れる」論が流行しています。
 しかし、対前期比で輸出の寄与度がマイナス9%を超える(GDPが9%以上減る)ような状況で、それを補うような政府投資が果たして本当に一気に可能なのだろうか、というのが一点。日本の前四半期でさえ、輸出の寄与度はマイナス2.6%に過ぎなかった(輸出自体の減少率は、マイナス13.9%)のです。
 もう一点は、公共投資を拡大したとしても、輸出製造業から失われた雇用を補うことは「絶対に」できない、という点です。

 日本の1992年から99年までの公共投資総額56兆円(奇しくも、中国政府がぶち上げた54兆円景気対策と、ほぼ同じ規模)により創出された雇用は、合計で117万人分でした。
 中国の人件費が日本の二十分の一水準(かなり中国の甘め)である事を考慮し、54兆円を全額公共事業にぶち込んだとしても、創出される雇用は2000万人が良いところではないでしょうか。これでも確かに凄い規模ですが、昨年下半期だけで新たに3500万人が失業したような状況では、全然足らないでしょう。しかも、別に54兆円は全額が公共事業に使われるわけでも何でもありません。


 正直、最近の欧米メディアが中国経済は「大丈夫!」「大丈夫!」と繰り返しているのは、もしも中国が「実は駄目だった」ということになると、世界にマネーを投資する場所が皆無になってしまうためのような気がしてなりません。特に、米英の金融産業にとって、マネーをつぎ込むべき場所がないというのは、これはもう破滅と同意といっても過言ではないのです。
 
 輸出、投資以外についても見てみましょう。
 最近、日経やNHKなどは相変わらず「中国は大丈夫」論で突き進んでいますが、一部の日本のメディアにかなり冷静な記事が載るようになりました。


『「中国自動車販売、米抜き世界一 統計の信ぴょう性に疑問?」 (資料提供:NO様 多謝)
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_17.html#Nikkeisangyo
-地元紙報道 申告台数と登録が乖離
 米国を抜き単月ベースで世界首位に浮上した中国の自動車販売。有望な成長市場として各社は販売にしのぎを削るが、ここにきて自動車メーカーや業界団体が公表する統計データの「信ぴょう性」を疑問視する声が改めて浮上している。実際、中国ではナンバープレートの登録を基に確立した統計が市場に存在せず、複数の販売データが混在する事態を招いている。
-3種の統計存在
「自動車統計が真実性を失った理由」--。
 3月23日付の中国紙「経済観察報」はこんな見出しで、中国の自動車販売台数が大幅に水増しされている疑いがある、と報じた。同紙が入手した公安当局の2008年の自動車登録台数と業界側の公表データを比べた結果、販売台数が実際より平均で10%以上も膨らんでいる疑惑が判明したとしている。
 中国には主に3種類の自動車統計が存在する。代表的なのは業界団体、中国汽車工業界の発表数字。この統計は「生産、販売ともにすべてメーカーの自主申告」(汽車工業協会)。このほか、調査団体の全国乗用車市場信息聯席会、メーカーの自主発表の数字がある。各統計の台数の乖離が大きいため、疑問を抱きつつも、最も権威ある汽車工業協会の数字を使うのが、報道機関などの「習わし」だ。
 メーカー側の言い分はおおむねこうだ。「販売店への卸売り台数と、ナンバープレートの登録台数では大きな差が生じる。統計の数字が異なるのは仕方がない」。日系メーカーの合弁会社などには毎月の自主発表と汽車工業協会に提出する数字が完全一致するメーカーもあるが、首をかしげたくなる例も散見する。特に中国勢の新興自動車メーカーだ。
 経済観察報が大々的に指摘したのは、広東省に本拠を置く比亜迪(BYD)。自動車事業に参入して数年で現地大手の一角に浮上したが、同紙が入手した公安当局のデータとは販売台数の数字があまりにかけ離れているという。昨年、発売した「F0」はその数ヵ月後には「月間1万台の販売を達成」とBYDは大々的にアピールしたが、実際の登録台数は累計で1000台に満たなかった
-「輸出」不透明感
 中国の自動車販売台数統計には「輸出」の数字も含まれるが、これも水増しに利用されるケースが多いとされる。奇瑞汽車(安徽省)など地場の民族系メーカーは販売増の要因を輸出が伸びているためとこぞって宣伝するが、「中国で輸出データを管理する権威ある機構はない」(経済観察報)。実際、汽車工業協会の統計で半期や年末の締めの時期になると、中国勢が突如「躍進」するケースも多く見受ける。
 一方で、市場には存在しない公安当局の統計データを入手することも実は可能という。ある企業が仲介役をしており「1車種あたり1年間のデータは約40万元。秘密を厳守することが条件」(同)。中国の自動車市場がまだ、世界基準の「透明性」には程遠い現状が浮かび上がってくる。
 景気低迷で昨秋以降、急減速した中国自動車販売だが、今年1、2月には米国を上回り、世界トップの座を手に入れた。
 だが、これはあくまで汽車工業協会の統計がベース。中国が真の自動車大国の仲間入りを果たすために、克服すべき課題は山積している。』


 中国の自動車市場の不透明さについては、以前、チャンネル桜で話した記憶があるのですが、日本の大手メディアが大々的に取り上げたのは初めてです。
 実際のナンバープレート登録台数を公安当局から入手するのに「1車種40万人民元(600万円位)、秘密を厳守することが条件」と来た日には、この瞬間に中国自動車市場について語る気が失せますねw 中国の公安から、
「秘密厳守!」
 と、言われると、さすがに誰でも怯えるでしょう。と言うか、なぜそこまで機密化する必要があるのでしょうか。りゆうがさっぱりわからないなあ(ぼう

 まあ、結局何が言いたいのかといえば、「公表したら○すぞ、こらあ!」と、公安当局が脅しつけた上で、数字を「売って」くる国の統計を当てにして、「中国経済は大丈夫!」などと言う時点で、根本から駄目なのではないか、という話です。欧米のファンド系メディアが「いや、中国経済は大丈夫!(だからみんな、投資してね)」と繰り返すのは「ビジネス」の問題なので、まだ分かるのですが、日本のメディア(特に日経)は別に追随ずる必要はないんじゃないの、と思うのです。
 冷静に「確実な」数字を分析した上で、確実な需要に向けたビジネスを展開するべきでしょう。これはどんなビジネスについても言える話ですが、中国市場を相手にする場合は、特に重要だと思います。

中国の最悪の輸出品とは何か、理解できた方は

↓このリンクをクリックを。

新世紀のビッグブラザーへ blog


 新世紀のビッグブラザーへ ホームページ はこちらです。
 
新世紀のビッグブラザーへ blog一覧 はこちらです。
 
関連blogへのリンク一覧 はこちらです。

 兄弟ブログYahoo!版へ