同性婚
婚姻って何?
最高裁は3月26日、犯罪被害者給付金の支給対象に同性カップルも含まれるとの初判断を示した。戸籍法や民法などの日本の法体系は異性婚を前提にしていることから、国民年金や健康保険、介護保険などの保険給付や介護休業など、現在は認められていない同性婚への対象見直しが求められることになるだろう。多様性を認める社会の中で、固い絆で結ばれて同居を続けている同性のパートナーに結婚と同じ権利を認めることには賛成する。しかし、私は「同性婚」という言い方には違和感を持ってしまう。
異性は結婚できるのか
それは同性婚がいいとか悪いとか言うことではない。日本語の持つ意味の問題である。広辞苑によれば婚姻は「結婚すること。一対の男女の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係。民法上は、戸籍法に従って届け出た場合に成立する」。他の辞書も同様の語釈だ。要するに子供を産むことができる異性の合意と婚姻の届け出によって成立することを「婚姻」としている。それなら異性間の「婚姻」ということはあり得ない。国民の認識も同じだろう。
同性パートナーの権利の問題
憲法24条1項には「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」とある。この「両性の合意」について、「同性婚」をめぐり様々な意見がある。「憲法を改正しなければ同性婚は法的に成立しない」という意見や、「異性婚が両性の合意のみに基づいて成立することを示しているにすぎず、同性婚を禁止しているわけではない」という意見がある。27日付毎日新聞夕刊は、この問題について千葉勝美・元最高裁判事に話を聞いている。
千葉さんは最高裁の調査官経験者。最高裁が審理する重要案件をすべて前捌きし、その判断に深く関与する、いわば最高裁判決の黒子だった。彼は同性婚に24条は支障にならないという。それは「24条の『両性』は『当事者』という言葉に置き換えられるという新しい文理解釈をした方がいい。同性婚なんて頭の隅にもない時代に使われた『両性』は『当事者』の意味に過ぎない」との見解を示した。同性婚を認めないのは、個人の尊重(憲法13条)や法の下の平等(14条)に反する差別だという解釈。
なるほど、そういう意味かと納得はする。しかし、私のこだわりは、それでは「婚姻」の意味が変わってしまうのではないかということだ。
解釈改憲なら憲法はなくてもいい
日本人は「憲法なんて理想を書いたものだから現実に即して解釈すればいい」と考えている人が多いようだ。だから平和主義を謳いあげ戦力を持たないはずなのに、世界有数の軍隊を持ち、自衛権だけでなく、集団的自衛権を持ち、敵基地攻撃能力(反撃能力)を持ち、更に他国に戦闘機まで売ってしまう軍事大国になってきた。日英伊が共同開発した戦闘機は、戦争をしてない国に限定して売ることにしたが、その国がいつ戦争を始めるかなんて分からない。戦争しない国が戦闘機を買うはずはないのだから。
本来なら、憲法の理想を追求するために現実を改めさせるのか、憲法を改正して日本のあるべき姿を変えるのかを、国民が意思表示をしてから政府の方針を決めるべきなのに、現実に合わせてどんどん違憲状態をつくってしまう。これでは日本は憲法の理想はどこへ行ってしまうのか。憲法なんて書いただけで守る必要のない反故紙になってしまうではないか。