SUPPORT SOURCING -44ページ目

Q 住宅手当を廃止したいのですが、不利益変更になりますか。

Q 住宅手当を廃止したいのですが、不利益変更になりますか。


 住宅手当のような生活保障をカバーする属人的手当は、年功主義賃金の下では矛盾なく存在したのですが、能力主義・業績主義賃金の下では矛盾が指摘されます。つまり、賃金体系を能力・業績主義に変更したのに、属人的手当があるために賃金総額で能力の低い人のほうが高い人を上回る場合があるということです。したがって、賃金体系見直しに際しては廃止、縮小が検討されます。ただし、賃金体系に一部生活保障部分を残すという考えもあるので、賃金制度全体の改定方針を決める必要があります。

 この場合、一般的にとる方法は、住宅手当の廃止、縮小に応じた金額分を基本給またはその他の手当に吸収させる方法です。この方法なら既得権は守られ、以後入社する人について住宅手当は支給されないということになります。制度改定以後に入社する人は、制度改定以前入社の人と比べると不利になるかもしれませんが、住宅手当がないことを承知で入社するのですから何ら法的な問題は生じません。

 しかし、住宅手当の廃止、縮小に応じた金額分を実際に減額するとなると、不利益変更の問題は発生します。特に生活保障的な支給に関しては既得権が強いので、どうしても減額が必要なら、支給対象者に個別に同意をとるくらいの準備が必要です。こうした減額は、賃金体系の変更に際して生じることが多いので、その変更によって新たに従業員に発生するメリットを説明、従業員の疑問や質問に十分に聞くなど理解を得る努力をしなければなりません。また、少なくとも2年~3年の移行期間を設けて、従業員の生活に与える影響を軽減する措置が必要です。

 住宅手当に限らず、他の手当なども同様で、こうした不利益変更への対処方法は共通しています。十分な説明をしたにもかかわらず、どうしても全員の同意は得られないこともありますが、その場合は大半の同意が得られたかどうか客観的に判断して変更を実施します。

Q 遅刻の多い社員に減給処分をしたいのですが、どの程度までできますか。

Q 遅刻の多い社員に減給処分をしたいのですが、どの程度までできますか。


 労働基準法第91条は「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定しています。

  「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」とは、1回の制裁事案に対して減給額が平均賃金の1日分の半額以内でなければならないことを意味します。この減給額を何回にもわたって減給できるという意味ではありません。

 また、「総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とは、1賃金支払期に発生した数事案に対する減給総額が当該賃金支払期における賃金の10分の1以内でなければならないことを意味します。つまり、減給総額が多額にわたる場合でも1賃金支払期における減給は10分の1以内にとどめなければなりません。これを超える場合は、その部分の減給は、次期の賃金支払期に延ばさなければならないと考えられます(厚生労働省労基局編著「労働基準法コンメンタール下」)。

 例えば、平均賃金が8,000円とすると、1回の減給額は4,000円が限度です。10回減給に該当すると、10回×4,000円で40,000円まで減給できます。月給が20万とすると、20,000円が減給の限度なので、これを超える部分は翌月分から控除となります。

 減給の対象となる事犯は、遅刻であろうと、交通事故であろうと1回と評価されます。これは、労働の結果発生した賃金債権を減額するものであることから、その額が多額になると労働者の生活を脅かすおそれがあるためです。事犯について処分に差をつけるとしたら、出勤停止、懲戒解雇などの処分を行うほうが妥当となります。

Q 遅刻の多い社員に何らかのペナルティを与えたいのですが、注意すべき点はありますか。

Q 遅刻の多い社員に何らかのペナルティを与えたいのですが、注意すべき点はありますか。


 ペナルティを与えることの目的は、「遅刻をしないように」と注意を促すためと思います。したがって、ペナルティがなくてもこのようなことがなくなれば目的は達成できたことになると思います。本来は口頭などの注意でなくしたいものです。
 遅刻が多い場合、それを容認してしまう企業風土に問題がある場合があります。「遅刻しても叱られない、何も言われない、上司も遅刻する・・・」など。遅刻は組織の運営にとってあってはならないことです。遅刻したら必ず書面で理由を書かせ上司に届け出るといった慣習が必要です。まずはこうした慣習から始めてはどうでしょうか。  次にペナルティを与える場合ですが、考えられるのは減給です。ただし、労働基準法で「減給制裁の制限」を設けているのでこれに抵触しないようにしなければなりません。30分単位、15分単位で遅刻時間分だけ減給しているケースはよく見かけます。
 「精皆勤手当」のカットもあります。「遅刻3回で○○円減給」というようなやり方です。しかし、賃金制度上「精皆勤手当」は廃止することが望まれていますので、あまりいいやり方と思われません。また、遅刻3回で○○円減給とすると、2回までは会社が遅刻を認めているようなニュアンスもあるので望ましくありません。
 賞与における勤怠の反映は妥当性があると思われます。半期を集計して「遅刻の多い者は賞与カット」とすれば、月例給与と異なり賞与なのでそのペナルティの大きさも会社の判断するところとなります。賞与の本来の支給趣旨からしても勤怠を反映させることは問題ないと思います。
 ペナルティと同時に「遅刻できない企業風土」を作り上げることが重要です。

Q 10分の遅刻をした場合、賃金から30分の勤怠控除をしてもかまいませんか。

Q 10分の遅刻をした場合、賃金から30分の勤怠控除をしてもかまいませんか。


 この場合、10分間は確実に労働の提供がなかったのですから、「ノーワーク・ノーペイの原則」にしたがって、10分間は控除できます。問題は残りの20分間の控除です。

 賃金には「全額払いの原則」が労働基準法で定められており、これに反することは違法となります。しかし、この原則には例外があり、法令の別段の定めがあれば、一部を控除できます。源泉所得税や社会保険料は代表的な控除項目です。

 法令の別段の定めには、労働基準法第91条の「減給の制裁」も該当します。その内容は「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定されています。つまり、20分間の控除をこの「減給の制裁」として取り扱うことによって、違法とはならないことになります。したがって、ご質問の勤怠控除は可能となります。

 慣行として、実施している企業は多くあると思われますが、計算方法や趣旨をしっかりと就業規則に規定することが必要です。また、賞与でまとめて控除することも妥当な方法と思います。その場合は賞与額の10分の1を限度として減給総額が認められますので、月給の場合のそれより高くなります。

Q 給料日前に緊急にお金がいるようになってしまいました。給料の前払いはできるのでしょうか。

Q 給料日前に緊急にお金がいるようになってしまいました。給料の前払いはできるのでしょうか。

 給料は一般的には1ヶ月に1度しか支給日はなく、それ以外の日に受け取ることはできません。しかし、万が一の緊急事態に対応するために「非常時払い」という制度があります。
これは給料の支給日前であっても緊急の事情があれば、社員は会社に対して給料の支払いを請求できるという制度です。
 
 しかし、緊急の事情といっても何でもかんでも請求できるわけではありません。社員の収入によって生活を維持している人が次のような事項に該当したときに請求が可能となります。
 1.出産
 2.疾病
 3.災害
 4.結婚
 5.死亡
 6.やむをえない事由による1週間以上の帰郷

 また、社員の収入によって生活を維持している人とは扶養している家族だけでなく、同居人であっても対象になります。逆に家族であっても、その社員とは別に独立して生活をしている人は対象外となるので注意してください。