Q 求人広告で掲載した賃金よりも安い賃金で採用を決めたいのですが、問題はないでしょうか?
Q 求人広告で掲載した賃金よりも安い賃金で採用を決めたいのですが、問題はないでしょうか?
雇用契約とは、双務・諾成契約で、当事者の双方の意思表示合致で成立する契約です。
求人広告などを利用して募集する行為は、法的には「労働契約申し込みの誘引」と考えられます。
そして、広告を見て、求職者が応募をする行為は、「契約の申し込み」となります。
求職者が応募をしてきた時点では、意思表示が合致しているとは言えず、雇用契約は結ばれたことにはなりません。「雇用契約」は、契約の申し込みを受けた会社が、面接をし、採用を決定し、求職者が就職の意思表示をした時点で成立します。
求人広告に掲載された賃金は、「雇用契約」を結ぶ前の労働条件であり確定したものではないので、そのとおり雇い入れる必要はないのです。
判例を見ても、「採用面接で広告の賃金額と異なる合意があれば、労働者を保護する特別の事情がないかぎり、その合意に従って賃金額が決定される」とあり、面接で合意した条件と掲載賃金が異なっていても問題がないとされています。
しかし、見込み額だといっても、掲載賃金よりも著しく下回る賃金で雇い入れることは、「信義誠実の原則」に反し、許されない可能性が高いです。
雇用契約とは、双務・諾成契約で、当事者の双方の意思表示合致で成立する契約です。
求人広告などを利用して募集する行為は、法的には「労働契約申し込みの誘引」と考えられます。
そして、広告を見て、求職者が応募をする行為は、「契約の申し込み」となります。
求職者が応募をしてきた時点では、意思表示が合致しているとは言えず、雇用契約は結ばれたことにはなりません。「雇用契約」は、契約の申し込みを受けた会社が、面接をし、採用を決定し、求職者が就職の意思表示をした時点で成立します。
求人広告に掲載された賃金は、「雇用契約」を結ぶ前の労働条件であり確定したものではないので、そのとおり雇い入れる必要はないのです。
判例を見ても、「採用面接で広告の賃金額と異なる合意があれば、労働者を保護する特別の事情がないかぎり、その合意に従って賃金額が決定される」とあり、面接で合意した条件と掲載賃金が異なっていても問題がないとされています。
しかし、見込み額だといっても、掲載賃金よりも著しく下回る賃金で雇い入れることは、「信義誠実の原則」に反し、許されない可能性が高いです。
Q 遅刻した労働者が残業した場合、残業手当の支給はどうなりますか。
Q 遅刻した労働者が残業した場合、残業手当の支給はどうなりますか。
例えば、9時始業、18時終業、途中1時間休憩の場合を考えてみましょう。1時間遅刻して、1時間残業したとすると、考えられる支給方法として、
1.1時間の時間給×1.25を支給する。
2.1時間の遅刻控除、1時間の時間給×1.25を支給。結局、0.25の割増分だけ支給する。
3.始業時間、終業時間が1時間ずれ込んだだけなので、特に支給しない。
が考えられます。
1.は法令違反ではないですが、遅刻の控除がないので、一般的ではありません。2.は割増分だけ支給しますが、労働基準法の時間外労働は週40時間、1日につき8時間を超えて労働した場合を時間外労働としています。したがって、1日8時間を超えていないので割増分を支払わなくても法令違反ではありません。とすると、3.であっても法令上問題ないとなります。
まとめると、週40時間、1日8時間を超えるかどうかが時間外労働の判別の基準となり、終業時刻を超えたかどうかは関係ないことになります。
そこで1つ疑問が起こるのですが、例えば、半日有給休暇で午前中休んで、午後から出社した場合、終業時刻を過ぎて労働したことに対して、時間外労働の対象となるかどうか。半日有給休暇を労働時間とみなせば、1日8時間を超えたとなり、残業支給と考えられます。ポイントは半日有給休暇を労働時間とみなすかどうかですが、法令が想定しているのは、実労働と思います。したがって、労働の提供のない有給休暇は、実労働ではないので、労働時間とみなすことは不可能と考えられます。
ところが、某労基署にこの件を問い合わせたところ、「出来る限り割増支給してください」と指導しているという回答で、非常におどろきました。1日有給休暇で休んで、終業後何らかの必要があって業務に就いた場合、そこからの労働はすべて割増支給となってしまいます。それに、労働者が意図的に半休を有給休暇で取得して、午後出勤、終業時刻超勤務を繰り返せば、相当な割増支給になってしまうことも起こりえます。
本ページにおいては、以上のような見解を示しましたが、半日有給休暇と終業時刻超勤務の関係については、所轄労基署に問い合わせて確認をとることが必要と思います。
例えば、9時始業、18時終業、途中1時間休憩の場合を考えてみましょう。1時間遅刻して、1時間残業したとすると、考えられる支給方法として、
1.1時間の時間給×1.25を支給する。
2.1時間の遅刻控除、1時間の時間給×1.25を支給。結局、0.25の割増分だけ支給する。
3.始業時間、終業時間が1時間ずれ込んだだけなので、特に支給しない。
が考えられます。
1.は法令違反ではないですが、遅刻の控除がないので、一般的ではありません。2.は割増分だけ支給しますが、労働基準法の時間外労働は週40時間、1日につき8時間を超えて労働した場合を時間外労働としています。したがって、1日8時間を超えていないので割増分を支払わなくても法令違反ではありません。とすると、3.であっても法令上問題ないとなります。
まとめると、週40時間、1日8時間を超えるかどうかが時間外労働の判別の基準となり、終業時刻を超えたかどうかは関係ないことになります。
そこで1つ疑問が起こるのですが、例えば、半日有給休暇で午前中休んで、午後から出社した場合、終業時刻を過ぎて労働したことに対して、時間外労働の対象となるかどうか。半日有給休暇を労働時間とみなせば、1日8時間を超えたとなり、残業支給と考えられます。ポイントは半日有給休暇を労働時間とみなすかどうかですが、法令が想定しているのは、実労働と思います。したがって、労働の提供のない有給休暇は、実労働ではないので、労働時間とみなすことは不可能と考えられます。
ところが、某労基署にこの件を問い合わせたところ、「出来る限り割増支給してください」と指導しているという回答で、非常におどろきました。1日有給休暇で休んで、終業後何らかの必要があって業務に就いた場合、そこからの労働はすべて割増支給となってしまいます。それに、労働者が意図的に半休を有給休暇で取得して、午後出勤、終業時刻超勤務を繰り返せば、相当な割増支給になってしまうことも起こりえます。
本ページにおいては、以上のような見解を示しましたが、半日有給休暇と終業時刻超勤務の関係については、所轄労基署に問い合わせて確認をとることが必要と思います。
Q 通勤手当を月額1,000円までは一律に社員に支払っています。この1,000円は割増賃金の算定
Q 通勤手当を月額1,000円までは一律に社員に支払っています。この1,000円は割増賃金の算定基礎に算入しなければなりませんか。
労働基準法第37条では、「・・・家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」とあります。
しかし、ここでいっている「通勤手当」は労働者の通勤距離または通勤に要する実際費用に応じて算定される手当と解されます。したがって、1,000円までは距離にかかわらず一律に支給する場合には、実際距離によらない1,000円は労基法第37条での通勤手当ではありません。割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。
労働基準法第37条では、「・・・家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」とあります。
しかし、ここでいっている「通勤手当」は労働者の通勤距離または通勤に要する実際費用に応じて算定される手当と解されます。したがって、1,000円までは距離にかかわらず一律に支給する場合には、実際距離によらない1,000円は労基法第37条での通勤手当ではありません。割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。
Q 従業員への貸付金の残額を退職金から全額控除できますか。
Q 従業員への貸付金の残額を退職金から全額控除できますか。
労働基準法第24条は、「賃金は、その全額を支払わなければならない」として、全額払いの原則を示しています。この賃金には退職金も含まれると解されます。したがって、退職金から控除して支払うことは原則禁止です。しかし、所得税など法令にもとづくもの、労使協定で定める項目については控除できます。したがって、まず貸付金の残額を退職金から控除する趣旨の協定を結ぶ必要があります。
ところで、控除する額には限度はないのでしょうか。労働基準法第24条は、「控除して支払うことができる」とだけしており、控除限度額は設けていません。したがって、「控除される金額が賃金額の一部である限り、控除額についての限度はない」とされています。
ところが、民事執行法第152条は、毎月の賃金や賞与については、その額の4分の3に相当する部分(その額が政令で定める額、現在21万円を超えるときは当該額)について差し押さえを禁じ、退職金については4分の3に相当する部分について差し押さえを禁じています。さらに、民法第510条は「債権が差し押さえを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」としています。この場合、債権は賃金であり、債務者は使用者、債権者は労働者なので、使用者は労働者に対し相殺することはできないとなります。
したがって、例えば、退職金が1000万円で、貸付金残高が600万とすると、
1000万円×1/4=250万円
については相殺できますが、残りの4分の3である750万円は労働者に支払わなければならないことになります。750万円支払ってから残りの貸付金350万円を回収することになります。
以上は、控除が「相殺」することにより行われる場合です。相殺は、債務者が債権者に対して債権を有する場合に、債権と債務を消滅させる意思表示です。それは、単独行為として相手方の承諾の有無に関係なく一方的な意思表示となります。
とすると、一方的な意思表示でなく、両者合意の下に契約して差し引き計算することは、上記の「相殺」に該当しないことになります。上記で述べた民法上禁止している趣旨は、債権者の意思に反する債権の消滅を禁ずるものであるのですから債権者自ら契約によって相殺することは妨げないことになります。
また、労働基準法第17条は「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」とありますが、これも、貸付金が労働することを条件とする前貸の債権に該当しない限り、第17条には抵触しません。
以上から、労使協定に「貸付金の残額を退職金から控除する」旨の項目があり、かつ、「当事者と契約」を結んで相殺すれば、支払額の4分の1を超えて控除しても差し支えないことになります。
労働基準法第24条は、「賃金は、その全額を支払わなければならない」として、全額払いの原則を示しています。この賃金には退職金も含まれると解されます。したがって、退職金から控除して支払うことは原則禁止です。しかし、所得税など法令にもとづくもの、労使協定で定める項目については控除できます。したがって、まず貸付金の残額を退職金から控除する趣旨の協定を結ぶ必要があります。
ところで、控除する額には限度はないのでしょうか。労働基準法第24条は、「控除して支払うことができる」とだけしており、控除限度額は設けていません。したがって、「控除される金額が賃金額の一部である限り、控除額についての限度はない」とされています。
ところが、民事執行法第152条は、毎月の賃金や賞与については、その額の4分の3に相当する部分(その額が政令で定める額、現在21万円を超えるときは当該額)について差し押さえを禁じ、退職金については4分の3に相当する部分について差し押さえを禁じています。さらに、民法第510条は「債権が差し押さえを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」としています。この場合、債権は賃金であり、債務者は使用者、債権者は労働者なので、使用者は労働者に対し相殺することはできないとなります。
したがって、例えば、退職金が1000万円で、貸付金残高が600万とすると、
1000万円×1/4=250万円
については相殺できますが、残りの4分の3である750万円は労働者に支払わなければならないことになります。750万円支払ってから残りの貸付金350万円を回収することになります。
以上は、控除が「相殺」することにより行われる場合です。相殺は、債務者が債権者に対して債権を有する場合に、債権と債務を消滅させる意思表示です。それは、単独行為として相手方の承諾の有無に関係なく一方的な意思表示となります。
とすると、一方的な意思表示でなく、両者合意の下に契約して差し引き計算することは、上記の「相殺」に該当しないことになります。上記で述べた民法上禁止している趣旨は、債権者の意思に反する債権の消滅を禁ずるものであるのですから債権者自ら契約によって相殺することは妨げないことになります。
また、労働基準法第17条は「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」とありますが、これも、貸付金が労働することを条件とする前貸の債権に該当しない限り、第17条には抵触しません。
以上から、労使協定に「貸付金の残額を退職金から控除する」旨の項目があり、かつ、「当事者と契約」を結んで相殺すれば、支払額の4分の1を超えて控除しても差し支えないことになります。
Q 年俸制の社員の時間外の割増賃金はどのように計算すればいいのでしょうか。
Q 年俸制の社員の時間外の割増賃金はどのように計算すればいいのでしょうか。
年俸制を導入すると時間外の割増賃金を支給しなくても良いと考える企業が多くあるようですが、管理監督者や裁量労働適用者の場合を除いて、時間外の割増賃金を支払う必要があります。
では、時間外の割増賃金はどのように計算したらいいのでしょうか。
この場合、注意すべき点は下記のようになります。
1.賞与の金額があらかじめ確定している場合
時間外の割増賃金の算定にあたって、「賞与」は除かれますが、労働基準法上での「賞与」とは支給額があらかじめ確定していないものをいい、年俸制において賞与分があらかじめ確定している場合は、これに該当しません。ですから、時間外の割増賃金は賞与部分を含めた年俸額の12分の1を基礎として計算することになります。
2.時間外の割増賃金相当部分を含めて年俸額を決定している場合
まず、時間外の割増賃金相当分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別しなければいけません。そして実際の時間外勤務に対応する時間外の割増賃金額が、定額で支給されている時間外の割増賃金相当分を上回る月があった場合は差額をその月の支給額に追加して支払わなければなりません。これは労働基準法で賃金は、毎月1回以上、一定の期日に、その全額を支払うものと決められているからです。
また、これらは時間外の割増賃金だけでなく、休日や深夜の割増賃金についても当てはまるので、年俸制を導入するときには注意が必要です。
年俸制を導入すると時間外の割増賃金を支給しなくても良いと考える企業が多くあるようですが、管理監督者や裁量労働適用者の場合を除いて、時間外の割増賃金を支払う必要があります。
では、時間外の割増賃金はどのように計算したらいいのでしょうか。
この場合、注意すべき点は下記のようになります。
1.賞与の金額があらかじめ確定している場合
時間外の割増賃金の算定にあたって、「賞与」は除かれますが、労働基準法上での「賞与」とは支給額があらかじめ確定していないものをいい、年俸制において賞与分があらかじめ確定している場合は、これに該当しません。ですから、時間外の割増賃金は賞与部分を含めた年俸額の12分の1を基礎として計算することになります。
2.時間外の割増賃金相当部分を含めて年俸額を決定している場合
まず、時間外の割増賃金相当分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別しなければいけません。そして実際の時間外勤務に対応する時間外の割増賃金額が、定額で支給されている時間外の割増賃金相当分を上回る月があった場合は差額をその月の支給額に追加して支払わなければなりません。これは労働基準法で賃金は、毎月1回以上、一定の期日に、その全額を支払うものと決められているからです。
また、これらは時間外の割増賃金だけでなく、休日や深夜の割増賃金についても当てはまるので、年俸制を導入するときには注意が必要です。