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チェコの歴史は作家の人生そのもの
『かべー鉄のカーテンのむこうに育ってー』
作:ピーター・シス
訳:福本友美子
BL出版(初版2010年)
この本をめくりながら、プラハを旅した時のことを思い出しました。
心に浮かぶのは、菩提樹が立ちならぶ美しい小道、
プラハ城の見える公園でさんぽした菩提樹の森。
菩提樹の白い花の甘い香りが街中にただよっていたこと・・・。
あの美しい国チェコで何があったのか?
作家ピーター・シスが生まれた国チェコの歴史を「できるだけ忠実に」描いた大型絵本です。
ピーター・シスは物心つく頃にはもう絵を描いていました。
1949年、チェコスロバキアの時代に生まれ、プラハで育った彼の人生はチェコが歩んだ過酷な歴史とともにありました。
シスは、自分の国の変遷を「心の声」と「歴史上の事実」とを並行して描いていきます。
冷戦時代の絵の下には
「家では、なんでもすきなものをかいたが、学校では、かきなさい、といわれたものをかいた。」
1968年、プラハの春。
「なんでもできそうな気がした・・・」
この絵本の中でいちばん色が多い、カラフルなページ。
しかし、ソ連軍の侵攻。
「夢をかいた・・・悪夢もかいた。夢はないしょにしておけばいい。」
1989年11月9日、ベルリンのかべ崩壊。
「時には夢がかなうこともある。」
ピーター・シスならではの細密な絵で進められるチェコの歴史。その地で生きてきた人々の思いを知ることができます。チェコのガイドブックを眺める前に読みたい1冊です。
★ピーター・シス(1949-)
絵本作家。本作でコールデコット・オーナーブック受賞。『生命の樹』(徳間書店)でボローニャ国際児童図書展ノンフィクション大賞受賞。アメリカ在住。