版画のぬくもりを感じる1冊

『きたきつねのゆめ』

作・絵 :手島圭三郎

 

うさぎを追いかけて、走っていくと、

「そこは、いままで みたことのない、

ふしぎなもりの いりぐちでした。

きがこおりついて、つきのひかりに かがやいて」

 

きたきつねの目に、どんなふうに映ったと思います?

 

シカ?ウマ? 美しいたてがみをなびかせて、森を駆けていく。

こっちの樹冠では、渡り鳥がとんでゆく。森の鳥、氷の鳥。

 

あ、おかあさん。

きたきつねのおかあさんと兄弟たちが、木の上に、、、。

 

森がこんなふうに、命あるものたちの姿にみえたら、

どんなにうれしいでしょう。

凍った森なんですよ。

きっと、白くて、透きとおってて、本当に美しいんでしょうね。

 

もしも、私がこんな凍った森の入口に立ったとき、

私は、見ることができるでしょうか。

 

駆けるシカや、飛ぶ鳥や、遠い思い出の、命のひとときが。