「智くん。さっきの話なんだけど。」
「ん。またちゃんと気を付ける。心配かけてごめんね、翔くん。」
「っていうか、そうじゃなくて。」
「俺もさ、すんごい久しぶりに外であんなに飲んだからびっくりしたの。ずっと家で飲んでたんだけど。でもあいつらは知ってるから、俺のことちゃんとね。」
「あ、うん。そっか。うん。」
翔くんはなんとなくまだ何か言いたそうな顔をしていたけど、俺は見ないふりをした。
これ以上なにか言われても、どうしたらいいか分からない。
ふと時計を見ると、ちょうど21時を回ったところだった。
最近、収録が巻いて終わることが多い。
「リーダー、今日まっすぐ帰ります?」
「ん。ニノは?」
「私はあなたとちょっと一杯どうかなと思ってるんですけど。」
「え?いいよ、俺は。」
「いいよじゃなくて。お願いしますって言えば行ってくれんの?」
「なに、なんか話?」
「んじゃあ、そうです。話です。」
「なんだよ、それ。」
翔くんがそばで笑い声を立てる。
ニノと俺の会話を聞いていたのだ。
ニノがすかさず言う。
「翔ちゃんも話あるでしょ。行こうよ。」
「俺は・・・、行きたいのは山々なんだけどね。兄さんが、どうかな。」
「いいよね?翔ちゃんも。」
「まず、俺が行くって言ってない。」
ニノが俺をにらみつける。
翔くんはまた少し笑って、
「じゃあ、俺はお先に帰ります。次は明後日かな?」
「え。」
つい、声が出てしまう。
翔くんが反応して俺を見る。
「え?」
「あ、いや。本当に来ないんだ。」
「え?行っていいの?ってか、智くん行くの?」
「あ、いや・・・。」
「ほら、行くのよ。だから。翔ちゃんも行こ。」
もう仕方ない。
無意識に翔くんといられる時間を楽しみにしてしまった俺のせいなのだろう。
ニノは嬉しそうに、スマホでなにか調べている。
翔くんも横からそれをのぞき込んで、軽く眉間にシワを寄せている。
自然と、ワクワクしてくる自分に気づくけれど、誰にも知られたくなくて、ふと周りを見回す。
相葉ちゃんは荷物をまとめて、誰かと電話で話していたし、松潤は鏡を見ながら帽子をかぶっている。
ふたりとも、多分予定があるのだ。
「ということで、なんか飲んで帰ることになっちゃったから、先あがって?」
後ろで待っていたマネージャーに言う。
「了解です。明後日は朝迎えに行きます。」
「うん。よろしく。お疲れ様。」
「お疲れ様です。飲み過ぎないでくださいね。」
「ふふ。大丈夫だよ。」
「必要なら、呼んでくれてもいいですからね。」
「いい、いい。自分でタクシーでもなんでも呼ぶからさ。」
「一応ですよ。酔い過ぎて心配だとかなったら。翔さんにも言っておきます。」
「なんで翔くんに言うのよ。」
「一応ですよ。じゃあお疲れ様です。」
「あい。」
待っていてくれたマネージャーには申し訳ない。
早く分かっていたら、収録再開前に帰ってもらえたのに。
宣言通り、翔くんに一言声を掛けてから、マネージャーは出ていく。
「おけ。じゃあ、タクシーにしちゃいますか。」
「任せて。」
「リーダー、なんか顔赤くない?」
「え、そう?」
「息止めてた?」
「なんでだよ。」
「んはは、分かんないけど。大丈夫?」
「平気。」
「タクシー、5分後に前の通りに着きます。」
「じゃ、行きますか。」
ニノの声を合図に、5人そろってドアに向かう。
相葉ちゃんがドアを開けて、そのままドアを抑えてくれている。
それぞれがお礼をいいながら、松潤、翔くん、ニノ、俺がドアを出て、相葉ちゃんが続く。
エレベーターまでの道のりは誰も話さない。
でも、気まずさはない。
それがいつもなんとなく不思議だし嬉しい。
(つづく)