「もし。もし嫌だったときは、すぐに忘れて欲しくて、そんでまた元通りに・・・あ、いや、ごめん。元通りはあまりにも自分勝手だな。」

 

「いいよ。俺だって大人だし、そんくらい。」

 

「はは。うん。」

 

「どんとこい。」

 

 

翔くんが深呼吸をする。

そんなに覚悟がいるようなこと、俺はなにをしでかしたのだろう。

 

 

 

「一年前のあの日。智くんは覚えてないんだけど・・・。俺らキスした。」

 

「き、きす?」

 

「智くんが『翔ちゃんちゅーしろ』って言うから。」

 

「無理やりさせたってこと?」

 

「あ、いや。まじでそれは違くて。俺もしたかったから。した。」

 

「・・・・。え。」

 

 

「酔ってる智くんの言うことだし、本気にしちゃいけないと思ったんだけど、首に腕回されて、我慢できず・・・。」

 

「・・・そこ覚えてる。首に腕。」

 

「そうなの?」

 

「ん。夢だと思ってた。」

 

「はは。いや、まあそういうことで。ごめん。」

 

 

待てよ?

「我慢できず」?

 

 

「じゃあ、俺はこれで。」

 

翔くんがゆっくり立ち上がって、背を向けようとする。

ここで帰してしまったら、もう俺らはこのまま一生この話をしないだろうと思う。

一生。

 

 

「翔くん!」

 

「はい。」

 

振り返り方の勢いがすごくてビックリしてしまう。

言葉が出てこないのはそのせいばかりではないけれど。

 

 

「やっぱ嫌だったよね?」

 

心配顔で翔くんが聞く。

そんなはずはない。

 

 

「あ、あのさ。我慢、できずって?」

 

「・・・それは・・・。」

 

「酔っててわかんなかったからじゃないよ。」

 

「へ?」

 

「翔くんだからしてほしかった。」

 

「・・・覚えてないけど?」

 

「うん。」

 

 

「・・・そっか。」

 

「うん。」

 

「俺だから?」

 

「うん。」

 

 

「そっかぁ。」

 

翔くんが顔中笑顔になる。

それからすぐ、泣き顔に変わる。

 

「え、え、翔くん?」

 

「ごめ・・・。俺なんで泣いてんだろ・・・。」

 

 

翔くんを正面から抱きしめる。

ふわっといつもの翔くんの香りが鼻をくすぐる。

少しだけお酒の香りが混ざっている。

 

こんな気持ちで抱きしめる日がくるなんて思わなかった。

ひどく感動的だ。

翔くんが泣いているからか、俺は泣かずに済んでいるけれど、胸がパンパンにいっぱいになっている。

苦しいくらい。

 

 

「智くん、 」

 

「ん?」

 

「アイス。食べる?」

 

「食べるか。」

 

「うん。」

 

 

俺の腕から解放された翔くんは、手の平で涙をひとふきすると、座り込んでスプーンを手に取る。

鼻をグスンと言わせた翔くんにティッシュを渡してから、俺も隣に座る。

さっきまでは向かい合っていた。

なんだか不思議な気持ちだ。

ピノのパッケージの開け口のテープを引っ張ると、箱をくるんと回してビニールを一気にはがす。

 

 

「一個食うでしょ?」

 

「欲しい。」

 

そう答えてから、自分のアイスのひとくち目を乗せたスプーンを俺に差し出す。

 

 

「あーん。」

 

「ふふ。」

 

「早い?」

 

「ふふふ。」

 

 

早いなんてことがあるはずがなかった。

何年待ったと思ってるんだ。

すぐに口を開けて、翔くんのアイスを受け入れる。

 

「はは。幸せすぎる。」

 

「うまい。」

 

「智くん。」

 

「はいよ。どれがいい?」

 

「ははは、どれでもいい。じゃなくて、 」

 

「ん?」

 

 

「ちゃんと言っていい?」

 

「お?」

 

「ちゃんと言いたい。」

 

「分かった。ちょ。」

 

俺は翔くんの方に体を向けて、正座をする。

翔くんも、それを見てから、ちょっと微笑んで正座をする。

 

 

大きく深呼吸を、ふたり同時にする。

 

もう、誤解じゃないって分かる。

これから翔くんから言われる言葉は、ちゃんと俺が欲しいものだ。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

 

「電話。景子?さん。」

 

「え。」

 

「出る?」

 

「うん。ごめん、ちょっと。」

 

一瞬で酔いが醒めた。

翔くんを残してリビングに行く。

途中、通話の緑の丸に触れると、もうしゃべり始めた景子の声が聞こえてくる。

 

 

「どした?」

 

『今日電話するって約束だったじゃん。』

 

「ああ、ごめん。忘れてた。」

 

『酔ってる?もう。ほんとそういうとこ。待ちくたびれたぁ。』

 

「まじごめん。でも今ちょっと人が来てて。」

 

『えー!景子のこと忘れてたくせに誰か来てんの?』

 

「明日こそ電話する。約束。」

 

『分かったよ。今度忘れたらプレゼント2個買ってもらうから。』

 

「ふふ。いいよ。そんじゃ明日ね。」

 

 

姪の景子からだった。

もうすぐ誕生日がくるから欲しいものを聞こうと思っていたのだ。

電話する約束をすっかり忘れていた。

 

 

「そんな顔あんま見たことないね。」

 

翔くんがリビングのドアのところに立っていた。

さっきの悲しそうな寂しそうな顔が、余計に曇った気がする。

なんだろう。

 

 

「どした?」

 

「すごい緩んでる。・・・ごめん。俺帰るね。」

 

「え、あ、うん。」

 

翔くんが荷物をもって、玄関に向かう。

今度は俺が寂しくなりながら、後ろをついていく。

そりゃあ、さっきはもう帰ってほしかったけど。

もう少し一緒にいられるかと思っていた。

 

 

「・・・聞いていい?」

 

翔くんが振り返る。

 

「このまま帰ったら眠れなそうだから。」

 

「ん?」

 

「恋人?」

 

「恋人?」

 

「電話の人。」

 

「電話・・・あ?違う違う。姪っ子。」

 

「姪っ子・・・え、姪っ子?」

 

ビックリした顔の翔くんの真ん丸の目が可愛いと思う。

こんな気持ちの時でも、こんなことを思えるのか。

 

 

「姪っ子の景子。中一。」

 

「あ、ああ。そうなのか。」

 

「ん。」

 

「ごめん、変なこと言った。」

 

「ん?」

 

「恋人なのかと思って。」

 

「そんなんいないし。ふふふ。」

 

「ははは。そっか、いないのか。ははは。」

 

「・・・そんな笑うとこでもない。」

 

「ははは!ごめん!ちょっとホッとしたって言うか。」

 

「・・・なんで翔くんがホッとしてんだ。」

 

 

なんだか不満が湧きだしてくる。

恋人がいないのは誰のせいだと思っているんだ。

それを、ホッとするとか、いったいなんなんだ。

 

 

「・・・やっぱアイス食べてく。いい?」

 

「はあ?」

 

「だめ?智くんも食べられそうだし。」

 

「まあ、食えるけど。」

 

「んじゃ。」

 

翔くんは荷物を玄関に置くと、リビングに戻っていく。

アイスはテーブルに出しっぱなしで、水滴が零れ落ちている。

それほど時間は経っていなくても、溶け始めているかもしれない。

 

 

「わがまま言ってごめん。」

 

翔くんが座りながら言う。

 

「別に。わがままとかじゃないし。」

 

「はは。なんか、俺今日おかしいかもって自分で思ってる。」

 

「ふふ。」

 

「智くん。」

 

また翔くんが見つめてくるから、苦しくなりそうで逃げたくなる。

でも、なんとなく、逃げちゃいけないような気がする。

 

 

「俺、これからちょっと、もしかしたら智くんが嫌がること言うかもしれない。」

 

「俺が嫌がること?」

 

「けど、俺もう言わないとダメだから。で、 」

 

「ん。」

 

 

怖いけど、覚悟しなくてはいけない。

翔くんの瞳の色がこんなに真剣なのなら。

 

また叱られるのかな。

 

それなら、また頑張るだけだ。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

「ってか、智くん、昔は変な腐ってそうな古いコーラ飲んだりしてたじゃん。もうそういうのできなくなったの?」

 

「ふふ。さすがにしねぇよ。」

 

「ははは。まあそうか。でもアイスなら1年くらいいけそうじゃん?」

 

「んー。翔くんが買ってくれたって分かってからも、なんか食えなくて。」

 

「へぇ~。なんで?誘ってくれたら一緒に食べに来たのに。」

 

「ふふ。」

 

 

部屋に着くと、翔くんがテーブルにアイスを置く。

キッチンで手を洗ってから、スプーンを2人分出してくれる。

 

「俺のピノだからスプーンいらないよ?」

 

「あれ、一緒に食べてみようよ。」

 

翔くんが、目線で冷凍庫を示す。

 

 

「は?」

 

「もともと一緒に食べようと思ってたやつじゃん。」

 

「腹くだすぞ。翔くん明日の午後仕事でしょ?」

 

「平気だよ。午後なら。」

 

「やめとけ。」

 

 

「えー、じゃあ、今度の休み前にまた来るからそのとき。」

 

「なに言ってんの?」

 

 

翔くんが、急に黙って俺を見つめる。

ぶわーっと全身の血が顔に上がってきたのではないかと思うくらい、顔が熱くなる。

優しく微笑む翔くんの瞳が、なんとなく潤んで見える。

 

 

「俺じゃない誰かと食べるやつかと思った。違って良かった。」

 

「ん?なんて?」

 

翔くんが突然聞き取れないくらい小さな声で何か言う。

聞き返すと、翔くんは我に返ったようにピクリと眉を上げる。

 

 

「いや。俺あれを2人で食べたい。」

 

「な、別に新しいの買ってくればいいじゃんか。」

 

「それは、これ。あれも。」

 

翔くんが、買ってきたばかりのアイスと冷凍庫を順番に指さす。

訳がわからなくて、顔が熱すぎて、目が回りそうになる。

酔いが戻ってきたみたいだ。

 

 

「むり。」

 

「え?」

 

「もうむりだから、かえって。」

 

「大丈夫?」

 

頭を抱えた俺に、翔くんが慌てて寄り添う。

 

 

「むり・・・。」

 

「ごめん、智くん。ちょっとわがまま言いたくなっただけだから。」

 

 

翔くんが俺にわがまま?

そんなこと、ここ数年あったっけ?

だけど、考えようと思えば思うほど目が回る。

 

 

「寝る。ごめん。」

 

「ベッドまで行くよ。つかまって?」

 

 

翔くんに支えられて、ベッドルームに移動する。

 

あの日も、こんな風に連れてきてもらったのだろうか。

 

 

「ありがと。」

 

「覚えてる?」

 

「ん?」

 

「あの日もこうやって俺がここにいたの。」

 

「・・・なんとなく思い出した部分もある。」

 

「ほんとに?」

 

 

「ん。」

 

 

翔くんが俺をベッドに座らせて、隣に一緒に座り込む。

 

「また一緒に食べられなかった。」

 

そう言った翔くんを見ると、少し悲しそうな顔でほほ笑んでいる。

 

「アイス?」

 

「まあ、それはいいんだけど。」

 

 

黙り込んで、しばらくそのままいた。

 

 

静かな部屋に、リビングからスマホの震える音が届く。

 

 

「ん、智くんのかな。持ってくるね?」

 

 

返事をする前に、翔くんは行ってしまう。

 

なんだろう。

なんだか上手くいかない。

 

もっと・・・もっとなんだろう。

分からないけど。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

タクシーを降りると、翔くんがまた俺の腕を取る。

 

「手がいい?肩がいい?」

 

「・・・て。」

 

「じゃ、はい。」

 

 

翔くんが手を差し出して、俺がそれに自分の手を預ける。

自分ながら大胆なチョイスだった。

手の平から鼓動が伝わりませんように。

 

 

「そんなにふらついてもないよ?」

 

「いいの、いいの。せっかくなんだから。」

 

「ふふ。せっかくってなに?」

 

「一年ぶりだよ?智くん、分かってる?」

 

「・・・うん。分かってるよ。」

 

 

「・・・そっか。」

 

 

 

「ただいま。」

 

「お邪魔します。」

 

暗い部屋の照明をいくつかつけていく。

翔くんは数歩後ろからついてきているのが気配で分かる。

 

 

「相変わらずきれいにしてんね。」

 

「昨日そうじしたばっかり。」

 

「そっか。」

 

「半日休みだったからね。」

 

「そうだったね。」

 

 

「お茶でも飲んでく?」

 

「アイスある?」

 

「アイス?」

 

「なんか甘いの欲しくなっちゃった。」

 

「アイスか。」

 

 

冷凍庫には、去年翔くんが買ってくれたアイスが入っている。

昨日、だいぶ育っていた霜を取り払ったばかりだ。

しばらくぼんやりと冷凍庫を見つめていたけれど、もちろんあれを出すわけにはいかない。

 

 

「去年のこと思い出したから余計にかも。コンビニ寄ってくればよかった。」

 

「買ってこようか?」

 

「それなら俺が行くよ。」

 

「じゃあ、一緒に行くか。ちょっと便所。」

 

 

 

「翔くん、便所は?」

 

「俺は大丈夫。さっきのお店で行ってきたから。」

 

「じゃ、行きますか。」

 

「智くん。あれは?」

 

翔くんが冷蔵庫を指さす。

 

「ん?」

 

「冷凍庫に2個入ってた。あれは誰かと食べる分?」

 

「え?」

 

 

「ごめん。氷欲しくて、勝手に開けちゃった。」

 

胸の中で何かがジャンプしたような振動を感じる。

 

「ああ。・・・あれはもう食わない方がいいから。」

 

「どゆこと?」

 

「古い。」

 

「古いってどのくらい?アイスって賞味期限とかあるの?」

 

「しらないけど、さすがにすごい古い。」

 

「智くんが食べるの?」

 

「いや。入れといてるだけ。」

 

「ははは!どゆこと。」

 

 

「いいから、買いにくべ。」

 

「・・・うん。」

 

 

 

さっき通り過ぎたコンビニに行くと、フルーツ系からミルク系、バーからカップまで、いろいろな種類が置いてあった。

俺の冷凍庫に入っているアイスも。

翔くんが、そのひとつを手に取って、眉間にシワを寄せている。

なんだろう。

そんなに真剣に選んでいるのだとも思えない。

 

 

それぞれ選んだアイスを、翔くんが左手にぶら下げている。

俺の酔いもだいぶ醒めて、もう手をつないではいない。

残念だけど、ここまでしっかり歩いておいて、またつないでくれとは言えない。

というか、自分からはなかなか言える事じゃない。

 

 

「智くん、俺分かっちゃったかも。」

 

「なに?」

 

「アイス。」

 

「ん?」

 

「俺が買ったやつ。」

 

「しょおくんそれ好きだよね。」

 

「ちがくて。智くんの冷凍庫の中の。」

 

「え。」

 

 

翔くんが足を止める。

数歩進んでから、俺も止まって翔くんを振り返る。

 

 

「あれ、一年前俺が買ったやつだよね?違う?」

 

「・・・ばれたか。」

 

「ははは。なんでとってあるの?」

 

「いや。なんか・・・捨てられなくて。」

 

「食わなかったの?」

 

「ん。・・・得体が知れないなと思ってたから。」

 

「買ったのが俺だって分からなかったから?」

 

「ん。」

 

「ははは!」

 

 

誤魔化せただろうか。

翔くんが、逃げ道を作ってくれたような気がする。

それについ乗ってしまったけれど、それでよかったかどうかも分からない。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

「じゃね、ニノ。気を付けて。」

 

「翔ちゃんもね。リーダーのことよろしく。」

 

「はは。うん。任せといて。しっかり送り届けるから。」

 

「じゃーねー。」

 

「じゃあね。あんまり翔ちゃんに迷惑かけんなよ?」

 

「あい。」

 

 

去っていくニノにひらひらと手を振る。

まっすぐ立てている。

翔くんには大丈夫だと何度も言ったけれど、一瞬ふらついたせいで全部まとめて一蹴された。

「はい、ダメ。もう観念してください」

だって。

 

ニノが反対方向に歩いていくのをもう少しだけ見送って、翔くんが俺の腕を取る。

 

「あっち出たら、タクシーすぐつかまるから。歩けるでしょ?」

 

「よゆう。」

 

「ははは。カルピス効いたね。送らないで済んじゃうかと心配になったよ。」

 

「ん?」

 

「だって今日はそのつもりでずっといたわけだから。」

 

「・・・・。」

 

 

大通りで翔くんが手を挙げる。

すぐにタクシーが一台、俺たちの前に止まる。

 

「先どうぞ。」

 

「あい。」

 

翔くんが行き先を告げて、タクシーがスムーズに発車する。

 

 

「智くん、あの交差点の先のところでいいよね。」

 

「うん。」

 

「運転手さん、近づいたらお知らせします。」

 

運転手さんが低い声で返事をして、翔くんも背もたれに深く寄りかかる。

 

 

「一昨日さ。」

 

翔くんがささやくように話し始める。

 

 

「俺に電話しようとしてくれたとか?」

 

「ん?」

 

「さっきニノが言ってたやつ。もしかしたら俺だったのかなって思ったんだけど。」

 

「・・・・。」

 

「あでも、松潤かもね。智くん松潤にするでしょ、電話。」

 

「たまーにね。」

 

「じゃあ、そうかもね。俺には電話とかしてくれたことないし・・・。」

 

 

確かに、松潤にはたまに電話する。

ちょっとしたことで相談したり、たまにするのだ。

でも、多分違う。

翔くんだと思う。

 

 

「しょおくん。」

 

「ん?」

 

「めんどくさくないの?」

 

「なにが?」

 

「これ。おれのこと送ったりすんのとか。」

 

「全然、全く。いつでも立候補するし。」

 

「・・・なんで?」

 

「・・・うーん。それは、一言では言えないな。」

 

「ふふ。」

 

「なに?」

 

「いや。おれはうれしいけど。なんか、あしたはおぼえてそうな気がする。」

 

「はは。うん。俺も嬉しいよ。」

 

 

タクシーから俺のマンションが見え始める。

翔くんが、すかさず運転手さんに交差点の名前と、少し先のコンビニの前に止まってくださいと頼んでいる。

できる男だな、と今日何度目かの感想を抱く。

 

カッコいいし、優しいし。

可愛いし。

 

まったく・・・。

いやだなぁ。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

「ああ、寝そうじゃん。早いな。」

 

「はは。智くん、肩いる?」

 

「だいじょぶ。おでそんなにのんだっけ?」

 

「すぐに強いのに変えるからじゃない?もっと食べたら?」

 

「そおだね。とーふ。」

 

「豆腐、はい。」

 

「ありがと。」

 

翔くんがかいがいしく差し出してくれた揚げ出し豆腐の器を受け取る。

 

「全部食べちゃっていいよ。」

 

言われなくてもそのつもりだったから、小さく頷くだけで済ませる。

 

 

「そいやぁリーダー、一昨日俺に電話してきたの覚えてんの?」

 

「え?」

 

俺よりも先に翔くんが反応する。

 

「一昨日、すんごい酔ってて。なんか、俺が出たからびっくりっていうか、別の人が出ると思ってたみたいだけど。」

 

「・・・わるい。おぼえてないな。」

 

「だろおね。誰に電話したかったんだろうね。」

 

「ん-。」

 

 

翔くんだったかもしれないと思う。

酔って、理性が働かないときに本能的に声が聴きたい相手なんて、他には思いつかない。

 

 

「ちょこっとだけ話したんだけどさ。横でごっつい声で、『もう着くから鍵出しな』とかなんとか聞こえて。んで、じゃあねぇって。」

 

「・・・・。まじで。」

 

「まじで。襲われたりしてないよね?」

 

「・・・ばーか。ともだちだよ。つりの。」

 

「いや、すんごいごっついし、なんか怒ってるみたいにも聞こえたからさ。」

 

「のみすぎだって、らいんでもおこられたから、おこってたんだろうね。けどやさしいからだいじょーぶだよ。」

 

「ふーん。ならいいけど。ってか、なにそんなに飲んでんの?危ないからまじで。」

 

「ん。それはもう、ほんとにはんせーしてるし。しょおくんにも言われて・・・。・・・ひさびさ楽しくなっちゃったってか・・・。」

 

 

2人が黙って顔を見合わせているのが分かる。

なんだか、聞かれたくないことをまた翔くんに聞かれてしまった。

少し状況説明できたようなきもするけれど。

 

「俺がいるときならってあのときも言ったんだけどね。」

 

翔くんが言う。

一年前のことをいっているのだと分かる。

 

「翔ちゃんけっこうこの人のこと送ってってるもんね。」

 

「俺はいいの。智くんが安全なら。」

 

「・・・ありがと。」

 

「酒癖が悪いって言うかなんて言うか。絡んだりはしないんだけどねぇ。」

 

「ははは。そうなの。どちらかというと大人しいけど、飲み過ぎて記憶無くなったりするからさ。そこが心配なんだよね。」

 

 

俺はもう、なんだか酔いも冷めてきて。

でも、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、顔が熱くて仕方ない。

 

 

「でも、今日は俺がいるから、好きなだけ飲めばいいよ。」

 

「記憶なくしたくないもん。」

 

「もっと食べなさい。ほれ。豆腐もっと頼むか?」

 

「えだまめ。だしまきたまごも。あとホッケ。」

 

「ははは。メニュー見たら、けっこう変わった豪華なものもあるんだけどね。」

 

「この人そういうのいらないじゃん。翔ちゃん、なんか頼む?」

 

「俺、赤貝おかわりしてもいい?」

 

「おっけ。」

 

 

ニノがスマホでオーダーを送信する。

ついでにリーダーにチェイサーも、とカルピスを頼んでくれる。

この間ニノが言っていたのを思い出す。

カルピスはチェイサーとして効果がすごいらしい。

 

酔わずに翔くんに送ってもらうのは・・・。

でも、そもそも酔わなかったら送ってもらわないのか。

どっちがいいのかも分からない。

 

頭がぐるぐるして、机に突っ伏す。

 

 

「大丈夫、智くん?」

 

「ん。」

 

 

横から聞こえてくる翔くんの声が、鼓動を速くするから良くない。

酔いが回るのも早める気がするよ・・・。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

翔くんとニノはもう別の話題で盛り上がっている。

連想ゲームのように話題が移っていくのは、この2人といればよくあることだ。

なにについてでもよく知っているなあと、感心する。

 

俺はただ、2人のそばで気持ちよく飲めばいいだけ。

 

 

「リーダー、黙って飲み続けると飲み過ぎちゃうから。」

 

「ははは。もうすごい赤いじゃん。」

 

「まじで。」

 

「まじで。でも、今日は俺がいるから別にいいよ。たくさん飲んでよ。」

 

「たくさんはやめて?記憶失われても困るから。」

 

「なんでニノが困るんだよ。」

 

「俺は翔ちゃんのために言ってんの。また全部忘れたら、翔ちゃんだってやでしょ。」

 

「ははは。まあまあ。俺は俺が送っていければ安心だからさ。」

 

「彼氏か?彼氏なのか?」

 

「はははは!」

 

 

彼氏。

俺が送っていければ安心。

 

 

飲まなきゃやってられない。

 

 

「あーあ、ほら、一気はさすがにやめようか。翔ちゃん、甘やかさないで?」

 

「はははは。ってか、ニノ智くんに話あったんじゃないの?」

 

「ないです。あれは口実。」

 

「はははは!堂々と認めた。」

 

「しってたよ。のってあげたの。まあいいかとおもって。」

 

「翔ちゃんの方が話あんじゃないの?」

 

「俺?俺はもう話したから。さっき。ね?」

 

「・・・とちゅうだったけど・・・。」

 

「え?ああ。ん-。でも、あれはもういいの。」

 

 

「ずっとそとでのんでなかったよ。」

 

「ん?」

 

「しょおちゃんと約束したから。」

 

「・・・そっか。うん。分かった。」

 

 

「ほんとにわかったの?」

 

翔くんに詰め寄る。

翔くんは避けもせずに、優しく微笑んで見せる。

 

ズルいくらいカッコいいな。

 

 

「リーダー、もうだいぶ回ってんな。ろれつが怪しくなってんじゃん。」

 

「はは。疲れてたんだね。大丈夫だよ、智くん。ホントにもう分かったよ。」

 

「なに、どうしたの?なんの話?」

 

「いいの、いいの。俺がちょっと嫉妬してただけだから。」

 

 

しっと?

嫉妬?

 

 

「ああ、分かる。そういうときあるよね。」

 

ニノが言って、翔くんが「そうなの」と言う。

ああ、そうか。

メンバーとしてってことか。

 

 

瞼が重くなる。

そんなに飲んだ気はしないけど。

 

確かに今日はちょっと疲れた。

翔くんに目撃されていたことがショックだったからかもしれない。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

「ここ、お願いします。」

 

翔くんがスマホの画面を運転手さんに見せる。

 

「承知いたしました。シートベルトお願いします。」

 

乗り込んですぐにベルトはしてある。

翔くんのベルトの音を聞いて、運転手がギアを変えて出発する。

 

 

「すんごい久々じゃない?」

 

「ん?」

 

「この3人で飲むの。」

 

「ああ・・・。そっか。そうかもね。」

 

「リーダーはそもそもなかなか来てくれないからね。」

 

「ははは。そうだよね。誘ってくれてありがとね。レアな機会に。」

 

「翔ちゃんの予定が空いているのもレアだからね。」

 

「そうなのよ。最近なんだかんだと忙しくてさ。」

 

 

俺を挟んで、翔くんとニノが話し続ける。

真ん中で、顔を動かさずに両方の声を聞いている。

別に話したくないわけじゃないけど、翔くんが近すぎて緊張する。

久しぶりの距離感だった。

 

 

「嵐会以外で智くんと飲むの、もう一年ぶりくらい?」

 

「ん?ああ、そうかもね。もうすぐ一年かな。」

 

「はは。覚えてるよねー。」

 

「細かいからね、リーダーの記憶。」

 

忘れるはずがない。

忘れられないし、忘れたくないのだ。

 

 

「嵐会でもさ、最近そんなに飲まないでしょ?」

 

「ん。」

 

「それって、意識的にしてんの?」

 

「そうだね。」

 

「へえ。・・・まあ、こんなとこでする会話でもないか。」

 

 

急に運転手さんの耳が気になったのか、翔くんは話を変える。

ニノも新しい話題に乗って、また俺を挟んだ会話が始まる。

 

深堀されても困るし、少しホッとしつつも、また後でちゃんと話題を戻して欲しいような気もした。

言い訳じゃないけど、見られた姿が久しぶりだとちゃんと分かってほしい。

翔くんとの約束を大切にしていることを、知ってほしい。

 

 

 

「「「乾杯!」」」

 

「「「うめぇ~」」」

 

3人の声がきれいに揃って、誰からともなく笑いだす。

目の前に並んだ、秩序のかけらもないつまみの品々と、とりあえずで頼んだビール。

翔くんの笑顔。

 

幸せの形を今誰かに聞かれたら、このままの景色を見てくれと言いたくなる。

酔わないように気を付けないと。

翔くんとの久しぶりの飲みに、浮かれている自分にもう気づいていた。

 

 

「この間さ、」

 

ニノが街で相葉ちゃんと遭遇した話をする。

翔くんの立てる笑い声が心地いい。

 

「リーダーにも結構会うよね。」

 

「会うね。」

 

「この人、いつも同じ帽子かぶってるじゃん。すぐ分かんの。見てないようで、こっちのこともすぐ気づくし。車でも手振ったりするもん。」

 

「へえ。ってか、どこの界隈歩いてんの?俺、会えたことないんだけど。」

 

「普通にそこらへんだよ。」

 

「どこー。じゃあなんで俺だけ会えないのー。」

 

翔くんがフラットなイントネーションで言う。

プライベートで遭遇なんてしたいか分からない。

ただでさえ、いつでも翔くんのことを考えている。

気持ちばかりが膨らんでも困る。

 

 

「智くん、これ食って。まじで旨い。」

 

「ん。」

 

言われて手を伸ばす。

「兄さん」じゃないのが久しぶりな気分だ。

ちょっと陽気になってきた翔くんの声色が明るくて、嬉しくなる。

 

「リーダー、休みの日とか最近なにしてんの?」

 

「おれ?俺は別に特別なことはしてない。たまに誘われて釣りにいくくらい。」

 

「キャンプは?」

 

「最近出来てない。行きたいんだけどね。」

 

「智くんがキャンプ行き始めてからさ、俺キャンプ用品見ると、智くんのこと思い出しちゃうの。この前も、ロケのときちょこっと寄ったホームセンターがすんごいキャンプ用品充実しててさぁ。」

 

「一時期すんごい色々買ってたでしょ?」

 

「そうだね。」

 

「ランタンとかさー、智くんの家に飾ってあるもんね。」

 

「そうなの?」

 

「うん。たくさん買ったから、かっこいいし飾ってある。」

 

「絵も描いてたよね。」

 

「ふふ。よく覚えてんね。」

 

「だって、俺たまにあの本見てから寝るもん。」

 

「なに、リーダーの個展のやつ?」

 

「そうそう。文字読むにはちょっと疲れてんなーってときにね。ベッドの横の小さい本棚に置いてるからさ。」

 

「そうなの?」

 

「智くんのこと考えてから寝る。」

 

「ふははは。確かに癒されそうだけどさ。」

 

 

俺はただびっくりしていて、ニノみたいに笑うことはできなかった。

冗談ならやめてほしいような。

深堀したいけど、したくないような。

 

・・・しようと思っても、きっと上手くできないけど。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

「飲み行くの?」

 

松潤がエレベーターの前で俺に聞く。

 

「ニノが勝手に決めたんだけどね。」

 

「ふはは。いいじゃん。今度は俺も入れてよ。」

 

「今日はなんかあんの?」

 

「んー、久々に旬が家に来いって言うから行ってくる。」

 

「そか。」

 

「ん。多分斗真も来るって言ってたけど。あいつ今舞台やってるから分かんない。」

 

「よろしく言っといて。」

 

「ふはは。喜ぶよ。」

 

「ふふ。」

 

 

エレベーターの中で翔くんが隣に立つ。

いつもの香りに酔いそうになる。

こんな気持ちを隠しながら、あと何年頑張ればいいんだろう。

エレベーターの天井を見上げる。

鏡がついていて、翔くんの頭のてっぺんが見える。

こうして隣にいるのは、誰から見ても自然ではあるけれど・・・。

 

 

「智くん、今日俺送っていけるし、好きに飲んでいいからね。」

 

翔くんが上を向いたままの俺にヒソヒソと言う。

その姿を鏡の中で見て、変に心臓が高鳴る。

慌てて顔を元に戻すけれど、翔くんの顔を見ることはできなくて、ただ「ん」と小さく返事をした。

 

 

「俺も行けるよ?」

 

「ははは。聞かれちゃった?いいよ、俺一人で。ニノは家近いんだから真っ直ぐ帰りな?」

 

「そう?いいの?」

 

「全然いいよ。」

 

「じゃ、悪いね。でも、リーダーあんまり飲みすぎないでよ?」

 

「そんなに飲まないよ。マネージャーにもさっき言われたわ。」

 

なんとなく5人で笑う。

ニノの顔は見ていたけど、翔くんの顔は相変わらず見ていなくて。

 

俺は、黙り込んでいたくなくて、前に立っている相葉ちゃんの肩に手を乗せて、甘えた声を出す。

 

「相葉ちゃんが来てくれたら良かったのに。」

 

「え?俺?ごめんごめん。今日は後輩と約束してんだよ〜。すんごい楽しみにしてくれててさぁ。」

 

「そっか。」

 

「次は行けるようにするね?」

 

 

「なんで相葉さんがいたらいいのよ。」

 

「いや、なんとなくだけど。」

 

「傷つくわー。ね?翔ちゃん。」

 

「ははは。俺は別に。なんでかなーとは思うけど?」

 

「んだから、なんとなくだよ。」

 

「俺は嬉しいよ?リーダー。」

 

 

話しながらエレベーターから降りる時も、俺は相葉ちゃんの肩に掴まったままで、ニノは横でダルそうな歩き方をしていたし、松潤はスタスタと先を歩いていた。

翔くんは、後ろにいたけれど、声では表情が分からなかった。

いつもなら、なんとなく予想はつくんだけどな。

 

 

「そんじゃね。また明後日。」

 

「バイバーイ。」

 

松潤と相葉ちゃんがそれぞれ自分の車に向かっていく。

それに応じて「おつかれ~!」と言った翔くんは、スタスタと通りに出ていく。

タクシーをつかまえようとしているのだろう。

 

ここら辺はタクシーがよく流しているから、アプリなどで呼ぶよりも早いことがある。

さっそくタクシーを止めた翔くんが、振り返る。

 

「ニノ、兄さん。」

 

「はやっ。」

 

「リーダー真ん中ね。」

 

「は?」

 

ニノが走り出す。

慌てて追いかけるけど、もし俺が真ん中じゃなかったら、きっと翔くんが真ん中になる。

それなら俺でもいいか、と思う。

 

「ありがと、翔ちゃん。リーダー真ん中乗るから。」

 

ニノがご丁寧に言ってから乗り込む。

翔くんは声を立てて笑って、「いいの?」と聞いたけれど、返事をするよりも先に、俺はニノに続いて乗り込んだ。

 

翔くんが隣に乗ってくる。

ふわりといつもの香りがする。

ああ、どうしたってこうなるんだな。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

「智くん。さっきの話なんだけど。」

 

「ん。またちゃんと気を付ける。心配かけてごめんね、翔くん。」

 

「っていうか、そうじゃなくて。」

 

「俺もさ、すんごい久しぶりに外であんなに飲んだからびっくりしたの。ずっと家で飲んでたんだけど。でもあいつらは知ってるから、俺のことちゃんとね。」

 

「あ、うん。そっか。うん。」

 

 

翔くんはなんとなくまだ何か言いたそうな顔をしていたけど、俺は見ないふりをした。

これ以上なにか言われても、どうしたらいいか分からない。

 

ふと時計を見ると、ちょうど21時を回ったところだった。

最近、収録が巻いて終わることが多い。

 

 

「リーダー、今日まっすぐ帰ります?」

 

「ん。ニノは?」

 

「私はあなたとちょっと一杯どうかなと思ってるんですけど。」

 

「え?いいよ、俺は。」

 

「いいよじゃなくて。お願いしますって言えば行ってくれんの?」

 

「なに、なんか話?」

 

「んじゃあ、そうです。話です。」

 

「なんだよ、それ。」

 

 

翔くんがそばで笑い声を立てる。

ニノと俺の会話を聞いていたのだ。

ニノがすかさず言う。

 

「翔ちゃんも話あるでしょ。行こうよ。」

 

「俺は・・・、行きたいのは山々なんだけどね。兄さんが、どうかな。」

 

「いいよね?翔ちゃんも。」

 

「まず、俺が行くって言ってない。」

 

ニノが俺をにらみつける。

翔くんはまた少し笑って、

 

「じゃあ、俺はお先に帰ります。次は明後日かな?」

 

「え。」

 

 

つい、声が出てしまう。

翔くんが反応して俺を見る。

 

 

「え?」

 

「あ、いや。本当に来ないんだ。」

 

「え?行っていいの?ってか、智くん行くの?」

 

「あ、いや・・・。」

 

「ほら、行くのよ。だから。翔ちゃんも行こ。」

 

 

もう仕方ない。

無意識に翔くんといられる時間を楽しみにしてしまった俺のせいなのだろう。

ニノは嬉しそうに、スマホでなにか調べている。

翔くんも横からそれをのぞき込んで、軽く眉間にシワを寄せている。

自然と、ワクワクしてくる自分に気づくけれど、誰にも知られたくなくて、ふと周りを見回す。

 

相葉ちゃんは荷物をまとめて、誰かと電話で話していたし、松潤は鏡を見ながら帽子をかぶっている。

ふたりとも、多分予定があるのだ。

 

 

「ということで、なんか飲んで帰ることになっちゃったから、先あがって?」

 

後ろで待っていたマネージャーに言う。

 

「了解です。明後日は朝迎えに行きます。」

 

「うん。よろしく。お疲れ様。」

 

「お疲れ様です。飲み過ぎないでくださいね。」

 

「ふふ。大丈夫だよ。」

 

「必要なら、呼んでくれてもいいですからね。」

 

「いい、いい。自分でタクシーでもなんでも呼ぶからさ。」

 

「一応ですよ。酔い過ぎて心配だとかなったら。翔さんにも言っておきます。」

 

「なんで翔くんに言うのよ。」

 

「一応ですよ。じゃあお疲れ様です。」

 

「あい。」

 

 

待っていてくれたマネージャーには申し訳ない。

早く分かっていたら、収録再開前に帰ってもらえたのに。

宣言通り、翔くんに一言声を掛けてから、マネージャーは出ていく。

 

 

「おけ。じゃあ、タクシーにしちゃいますか。」

 

「任せて。」

 

「リーダー、なんか顔赤くない?」

 

「え、そう?」

 

「息止めてた?」

 

「なんでだよ。」

 

「んはは、分かんないけど。大丈夫?」

 

「平気。」

 

 

「タクシー、5分後に前の通りに着きます。」

 

「じゃ、行きますか。」

 

 

ニノの声を合図に、5人そろってドアに向かう。

相葉ちゃんがドアを開けて、そのままドアを抑えてくれている。

それぞれがお礼をいいながら、松潤、翔くん、ニノ、俺がドアを出て、相葉ちゃんが続く。

 

エレベーターまでの道のりは誰も話さない。

でも、気まずさはない。

それがいつもなんとなく不思議だし嬉しい。

 

 

 

 

(つづく)