第8試合は今年で新日本を去るウィル・オスプレイの3WAYマッチであったが、正直新日本所属としては最後のドームになるであろうオスプレイの試合は、シングルにしてほしかったというのが本音である。3WAYマッチは元々アメリカで生まれたものであり、有名な所ではクリス・ベノワが世界王座に輝いたWM20などが記憶に残る所であるのだが、王者以外がフォールされてもタイトル移動と言うのが個人的には引っかかるものがあるし、また3人ともなるとイコール打ち合わせもしっかりやっているんだろうな、と言う思いが拭いきれず、そういう観点からしてもあまり好きではないのが正直な所だ。
そして、いよいよ第9試合のオカダVSダニエルソンである。YESコールを全米に巻き起こし、何度もWWE王座に輝いた正真正銘のスーパースターであるダニエルソンと、日本が誇る我らがオカダ・カズチカのシングルマッチ、まさに世界が注目の一戦である。まあ、知ってのようにすでに昨年アメリカで行われており、ダニエルソンの勝利となっているので、さすがに今回はオカダだろうというのは予測がつくのであるが、プロレスは結果が全てではないのは当然のこと。まさに最初から最後まで目を離せない試合となったのであるが、ブライアンの試合を見るのは久々なので、ここまで日本的な試合運びだとは驚いたものである。
それもそのはず、ブライアンはWWEのスーパースターになる以前に何度も日本のリングに上がっており、しかもLA道場で新日本のストロングスタイルを習得した事実があったという。そんなバックボーンがあった事は全く知らなかったので、オカダが勝つだろうなとは思いつつも、もしや?と思わせる場面が何度もあったりして、かなり緊張感のある戦いと思ったと同時に、危険技に頼らずともここまで観客の目を引き付けるブライアンの技量には感服したものである。
結局、やはりオカダの勝利ではあったものの、正直ブライアンの圧倒的な技量を見せつけられたあとの、オカダのお決まりとも言えるフィニッシャーへの流れは少々残念に思えたものだ。まあ昨今のプロレスの流れを考えればそれが王道なのかも知れないが、やはりたまには猪木のジャーマンや卍固め、馬場のジャンピングネックブリーカーのように、本当のここ一番でしか出さないような流れが欲しいものである。まあ、もちろんオカダの変形エメラルドなどは地方では出さず、ここ一番でしか出していないのかも知れないが、「ここで終わっちゃうかな」と言う予測がつく流れは少し物足りないのも確かである。
そしてメイン。最初は当然挑戦者の内藤哲也の入場であるが、ノーマスク解禁以来初、実に4年ぶりとなる東京ドームでの大・内藤コールは実に心地よかったものである。一時は一生手拍子のままなのか、と思ったほどなのだから、それまでの鬱憤を晴らすかのようなまさに大・内藤コールであった。
対する王者のSANADAは、まさかのオレンジを基調としたコスチューム。もうこれは見てくれからしてオレンジパンツ時代の武藤敬司を意識している事があからさまであり、正直青がイメージカラーとして完全に定着していた事もあって個人的にはかなり残念に思えてしまった。しかも、見てくれだけでなくファイトスタイルも武藤を意識しまくり、しかし、天才・武藤敬司を完コピ出来るはずもなく、悪く言ってしまえば劣化武藤と言った感じであり、個人的にはどうしてもいただけなかった。
ファンの新陳代謝に成功した新日本において、かつての武藤敬司を知る人はもはや少ないのかも知れないが、それでもオリジナルのSANADAを大事にしてほしかった。武藤敬司に憧れる気持ちは嫌と言うほど理解出来るとは言え、あの天才を超えられる訳がないし、オリジナルを超えられるはずもないのだから、やはりここはいつも青とSANADAだけのスタイルを貫き通してほしかったものである。
まあそれはさておき、個人的にどっちに勝ってほしいというのはなかったので、場内があまりにも内藤一色だった事には正直驚いたものである。当然、勝利の瞬間も大爆発だったので、正直SANADAが気の毒に思えたぐらいだ。試合後、EVILらが襲撃し、まさかのバッドエンドかと思いきや、さすがに今回はそうはさせず、4年越しのハポン締めで大会は幕を閉じた。なので、内藤ファンにとっては大満足の大会であったとは思うのだが、今の自分はそうでもないし、また試合自体もフィニッシャーがやはり大試合用の流れであったので、個人的にはそこまで、とはならなかったのが正直な所だ。
しかし、そう思ったのは私ぐらいのようであり、ネットの反応もほとんどの人がこの大会は大満足だったようである。それは非常に素晴らしい事であるが、個人的には4年前の1.5もそれで終わらせるべきだった。特に、1.5はその年の年間最高試合賞に輝いたほどだし、試合直後の満足感も半端ではなかったので、尚更そうすべきだった。