あさひのブログ -7ページ目
「一本好書」第九期 50分頃から。

最後には総部首長が直接出向いて、彼女の二つの条件に応えた。光復一号を解読すれば(局を)離れていい、そしてそこから一人を連れていけると。一人を連れていく?ちょっと変わった要求だ。ただ光復暗号を解読さえできれば、一人と言わずひと山持って行こうがなんだと言うんだ。
次の日の朝早くに私は黄依依を連れて出発した。私が探してきた人であるから、ある意味私の(手柄の、成果の)一部である。彼女が将来成功すれば、それは私の手柄の一部になる。失敗も…失敗も私の一部になるのだ。
701での最初の夕食時、黄依依は女特務に見えるような格好で襟の無いセーターを着ていたが、(それでも)皆の目を釘付けにさせていた。

仕事の初日に、彼女に助手を選ばせた。彼女は仕事の資料も見ることなく、事務室の集合写真をじっと見て、そしてその中の一人に目をつけた。それは精神分裂病になってしまった昔の仲間だった。
助手「ここに在籍する人は誰でも(助手に)選んでください。
黄依依「これ、この人は特別ね。
助手「…この人はどうしても無理です。
黄依依「気が狂ってしまったんでしょう?
院長「彼はかつて最も傑出した暗号解析家だった。君の目の付け所はやはり凄いな。
黄依依「おそらく彼はただものではなく、そしてあと一歩のところまで行った、ちょうどあの解読の巨匠・納什(ナッシュ?)も暗号によって気を狂わされてしまったように。
助手「実際我々はみんな狂ってますよ。光復一号はこの世界でまれにみる最高クラスの暗号で、(少なくとも)十年は全く解析する術はないでしょう。だから我々の受けたこの任務は元々完成させる術はないんです。
院長「暗号の一部も解読させてもいないのに、任務を完成させる(事を論ずる)のは不可能だ。
助手「でも問題は我々が今までどの高級暗号の一部も解読してこれなかった事です。光復一号の保密期間は30年。10年以内に解読できたらそれだけで非常に凄いことなのに、その上我々は今戦を目前とし二年内に解読できないとなれば、解読に何の意義もなくなるでしょう。
黄依依「どんな暗号も、ただの数学の問題に過ぎないでしょ。
院長「君は斯金斯の"世紀の難"を知っているか?
黄依依「斯金斯?彼はあなたの先生である安徳羅(アンドラ?アンドリュー?)の昔の同級生じゃなかったかしら。当時安徳羅はアメリカのいくつかの暗号を解読してアメリカ人を驚かせたわ。直ぐに斯金斯を探し出して安徳羅のアキレス腱を挫かせたのよね。だからもしあなた達が斯金斯を破りたいっていうのなら、あなたが先生から学んだものは全く役には立たないわよ。
助手「光復一号が、その"世紀の難"なんです。
黄依依「何て!?
助手「アメリカ人はあれを台湾に売ったんだ。
黄依依「…あり得ないわ。あなた達は"世紀の難"を解読するっていうの、二年内に?それは斯金斯と安徳羅のトップクラスと競うってことじゃない。
院長「私が解読するんじゃない、君がだ。
黄依依「なんでもっと早く言わないの!
助手「言ってたらあなたここに来ました?
黄依依「……あんたは悪魔ね。
院長「君は(救いの)天使だ。
黄依依「ハッ…あたしが天使…あたしはちょっと問題のある天使よ。あなたは私の(生活、人生)をめちゃくちゃにしたわ。

解読に携わる者は皆悪魔だ。暗号解読は読心術よりもさらに常軌を逸するものだからだ。理解しなければならないのは死人の鼓動。黄依依に私が感じた感覚は、最高のセンス、最高の理解力、数学的にも非凡の能力。このような人は天性の暗号学のスターだ。
彼女はすぐに斯金斯を理解するために問題のリストを書き出していった。例えば彼女(斯金斯)の最も尊敬する数学家、彼女の生活習慣、家庭背景、婚姻状況等々を。
だが彼女は本当に問題のある天使だった。世の中をなめたような態度、出勤時間を守らない、会議に参加したがらない、人と交流したがらない、報告書を見ず、敵の情勢に無関心。そして口を開けば遮るものがないように文句ばかり言う。
黄依依「(観客に向かって)あなたたち、あたしは若く見えるでしょう?
観客「若い!
黄依依「ホントに?
観客「本当に!
黄依依「なんで私がこんなに若々しいか知りたい?教えない。これはあたしの秘密なの。
(院長に向かって)でもあなたには教えてもいいわ。

院長「教えなくていい。
黄依依「でもあたしはあなたに言いたいのよ、でないと窒息しちゃう。
それはね、心に愛があるから。女は愛のパワーが必要なの。もし愛がなければ、女はすぐに老けてしまう。愛があればそうはならないの。

院長「愛が君にはそんなに重要なのかね。なら君は君の解くべき暗号をよく愛するべきだな。君には既に軍令状が下りている。覚えておけ、ここには男も女もない、もし解読できなければ君はここで老いて死ぬことになるんだ。
私が長く待つまでもなく、黄依依は実力を発揮しはじめた。


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「一本好書」第九期 43分頃から。

院長「パソコンでプリントアウトしてくれ。私が求めている人材が備えていて欲しいのは超越した数学方面の才能、若さ、政治上の信頼性、ロシア語が解る事、最も良いのは単身者だ。
王書記「わかった、何人くらい必要だ。
院長「この条件に合う者を一人でも多く、だが必ず百人に一人というような特別な人間をだ。
解読という仕事はこの世で最も残酷で最も馬鹿げた職業だ。暗号は、解けないから暗号と呼ぶのであって、解けないのが当たり前であって解けたらおかしいじゃないか。だがこの職業は暗号を解けと言う。これはまさに大きなパラドックスだ。
宙に漂う糸くずのようのような手掛かりを解読員は捉まえなければならない。絶対的に沈着な心を持つ性質で、乱れても驚かず、驚いても変わらず、毎日毎日、毎夜毎夜、そうしてやっとさなぎが蝶になるかもしれないのだ。
私は王書記が推薦した12人に会い、うち6人をテストし、またそのうちの3人に再度テストをした。だが実の所、私はそれらの人材の誰一人ピンと来る者はいなかった。
そんなある日、彼女が私の部屋に現れたのだ。
彼女は特別(変わっていて)、口紅を塗り、洋風の雰囲気を漂わせ数学家としてはあまり見ないような活発とした生命力と一種のワイルドささえあった。一度目のテストをした人の中では彼女が(解くのに)かかった時間は最短だった。だが彼女は二度目のテストに参加しなかった。それは王書記が彼女は(求められる人材として)不適格だと判断したからだ。
黄依依「あなた達が探してる人には何をさせるつもりなの。
院長「数学家にしかできない事、そして人々のためにしなければならない事だ。
黄依依「あたしすごく興味があるの、ねえ何なの?
院長「君が(適する人材と)認められれば知ることになるだろう。そうでなければ君は永遠に知ることはできない。
黄依依「でももしあたしが行ってそこで何をするのか何もわからないのなら、あたしが(その仕事を)受けたいか受けたくないかどうやって決めるのよ。
院長「なら君はやめておくんだな。君の二人の同僚は事実上すでにテストを通過した。
黄依依「あの二人の事はよくわかってるわ。注意深く確実、でも創造力はない。もしあなたが彼らを連れて行って開天闢地(全く初めての出来事)を担わせるっていうのなら、あなたの人選は間違ってるわね。
彼女の同僚に対する評価は遠慮というものがなく、だが私に深い印象を残した。彼女には天使のような一面と、悪魔のような一面がある。どうしようか。
そこで、私はまた王書記を探しに行った。
院長「王書記、黄依依はなぜ不適格なんだ。
王書記「だめだよ、彼女には問題がある、絶対的に合わない。
君にも隠しておくことはない。ここへ来てまだ浅いのに、男女関係がとてもだらしないんだ。もう二度も離婚してる。彼女はアメリカから戻って来た、愛国性については問題ない。だが資産階級の物が多すぎる(=身なりが派手だ)。郷に入れば郷に従え。君は中国に戻ってきたら西洋の歌など歌えないだろう?だが彼女は違う。美しい花がその枝を伸ばすように、手を差し出された男はその魂を守り通せない。家族が(彼女が夫を誘惑すると)告発状を持って駆け込んできたくらいだ。だが周総理が彼女を指名し呼び戻し再度させた業務の能力はやはり確実に素晴らしかった。そうでなければここにおいてはいないよ(=さっさと辞めさせるよ)。
このような人間は確実にリーダーの頭痛の種となる。だが却って私は強い興味が沸いた。暗号に携わる人間は皆知っているのだが、暗号は反科学的で反人間的で、暗号の研究と解読には知恵と知識、技術、経験、センスが必要だ。さらに一種の暗躍する心、ひねくれて頑固な心が必要なのだ。
兵法は偽りを厭わず。暗号は兵器で言えば暗器。言ってみれば、欺き騙し、身を隠し、陰謀を巡らせるアイテムだ。このずる賢く陰険な心が充満している邪悪な世界の中においては、言う事を聞かない傲慢な人、ちょっとしたワルやワイルドな人は、もしかすると生き残っていくのは容易いかもしれない。
私は黄依依の資料を見た、彼女の師匠はアメリカの有名な数学家の諾伊曼(ノイマン?)だった。新しい中国が成立した後、国家人事部、外交部、教育部、中科院など六部院の連合を公示した(?)。海外にいる愛国人(中国人)が新しい中国を作っていくために戻って来ることを歓迎する、この公示は周総理の署名にて発せられた。そこには21人の名が挙げられ、その中に黄依依の名があった。
彼女の師の諾伊曼の名前は私の目の前を明るくしてくれた。なぜなら私のソ連時代の恩師がこう言っていたからだ、諾伊曼は東洋と西洋の大脳(考え方)を同時に操るこの世界でもっとも偉大な暗号解読家だと。
私の運気はとても良いようだ。そこで、私はまた黄依依に話しに行った。

院長「どうぞ(座ってくれ)。いくつか質問するからしっかり答えてくれ。
黄依依「わかったわ、なんでも聞いて。
院長「君は専門家だ、私が出したテストの意味もわかっただろう、暗号解析に関わることだと。今までにこのような仕事に携わったことはあるか?
黄依依「あるわ。
院長「これからこのような仕事をしてもらっていいか。
黄依依「イヤよ。
院長「なぜだ。
黄依依「あれは人間のする事かしら。
院長「じゃあ君は(わかっていて)なぜ私の所へ来た。
黄依依「あなたが面白そうだから。あなたってどこかミステリアスで、お堅そうで。
院長「(この仕事をすることに)同意するのか?
黄依依「ノー。あたしは自由でロマンを愛するの。あたしは紀律ってのが一番嫌いなの。あたしは何にも束縛されず生きたいの。
院長「暗号解析はまさに君のような人が必要だ。私の基準では君は唯一の適任者だ。
黄依依「あなた達があたしを必要としてると言ってもあたしがあなた達を必要としてるって意味にはならないわ。あたしは行かないわよ。
院長「では私は君に一言言わねばならない。私の(所属する団体の)代表は私自身ではない。君は今後まもなく国家の安全に関わる事業に従事することになるだろう。

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「一本好書」第九期 舞台劇『暗算』後半(看風者)の全台詞解読です。
なんとなくの意訳なので大きな誤りがあるかもしれません。専門用語と人名の適当な日本語訳が分からないので漢字のままにしています。原文は番組字幕を参照してください。

※この脚本は麦家の「暗算」第二章を元にしていますが、多少の脚色・改変が含まれるため原作のあらすじと同じとは限りません。
※映画「サイレント・ウォー」の原作は「暗算」第一章です。したがって当脚本とは全く別の物語です。

(あらすじ)
1950~60年代、軍の諜報活動を行う国家安全部門701は一般人の知ることのない人里離れた山奥に作られた。生活に不便が無いよう各種施設が整えられひとつの村のようになっており、勤務者は秘密保守のため一生この地で暮らすのだ。この村のさらに奥に無線を盗聴する偵听局、敵の暗号文を解読する破訳局、工作活動を行う行動局などの部署が設置されている。これらの部署に勤務する者はそれぞれ"風を聞く者"、"風を見る者"、"風を捕える者"と呼ばれた。


「一本好書」第九期 38分頃から。
[第二幕]
ありがとうございます。"風を聞く者"阿炳の物語をお話しました。
ただこれは特殊部門701の仕事の一部分。敵の発する(無線の)周波数をすべて捉えても敵軍の動きを全て掌握したことにはならない。なぜならこれらの信号は全て精密に設計された暗号だから。これらの電文がもし直接聞いてわかるようならこの世界に秘密にしておけることなどない、そうでしょう?
一人の馬鹿が隠した物は一万人の賢い人でも探し出せないと俗に言うが、一人のとてつもなく賢い人間が設計した暗号は理論上は永遠に見破られることはないということだ。
だが701、ここでは長期にわたってその境地に追われている人々がいた。彼らの使命は、暗号解読。次に、ある"風を見る者"の物語をお話します。
この物語は実は、私にも非常に関係深いのです。
私は1960年に帰国した。私は烈士(国のために殉職した人)の子供で、帰国する前は私はモスクワ大学数学科暗号学センターへ送り出され半ば出家するようにして暗号解読を学んでいた。留学生と言うが実際は私には秘密の身分(任務)があった。それは当時ソ連(ソビエト連邦)が暗号解読して得たアメリカの軍事情報を収集すること。組織は私のために妻の小雨を中国大使館の事務秘書官として配置してくれた。当然彼女は私の秘密の身分を知らないため、私と連絡を取る同志(仲間)はコードネームで呼んだ、"飛行機"ってね。
(ある日)突然すぐ帰国するようにという通知を受け取った。だが不幸なことに、私の妻小雨は、帰国するその前日に交通事故に遭った。彼女が乗っていた車はダンプカーにぶつかって山道へ押し出され、崖から墜落し炎上した。遺体は見分けがつかないほどだった。私が故国へ連れて帰ってこれたのは彼女の骨壺だけだった。
帰国後、外交部が小雨のために追悼会を開いてくれた。すぐに我々の部門の首長(リーダー)が追悼会に現れてそこで私は初めて知った、私の妻も元々秘密の作戦を行う一人(=スパイ)だった、私よりもずっと機密性の高い任務を負う同志だったと。
1960年は中国の最も困難な時代だった。以前から蒋介石が日々"要光復大陸(大陸に光を取り戻せ)"と吼えていたが口だけだった。だがこの年、台湾はアメリカから17億アメリカドルの武器装備を一度に購入し、何度も軍事演習を行い、内地(大陸)に次々と特務(スパイ)を送り込み、さらに突然通信の暗号を変更した。
台湾が以前使っていた暗号は紫金号と呼ばれる、アメリカの専門家が設計したものだ。保密期限(敵に解読されて使えなくなるまでの見込みの期間)は20年で、当時まだ10年も経っていなかった。10年、我々はそのほんの一部分しか解読しておらず、すべてをつかむにはまだまだ程遠いというのに、彼らはさらに変える必要があったのだ。
この解読は非常に困難に見える。しかし今相手が突然新しい暗号に変えてきた、これは、本当に戦争するつもりだという事を意味していた。この新しい暗号を解読することは国家の最高機密となった。この事は新しい中国(共産党の中華人民共和国)の安全問題に緊迫した影を落としたのだ。
解読の任務は701に下された。帰国して間もない私は701の副院長に任命され、解読の直接の指揮を執ることとなった。
新しく変えられた暗号は、台湾では光復一号と呼ばれていた。設計者の斯金斯(スーチンス?)はソ連からアメリカへ亡命してきた天才数学者…私の恩師の元同僚だ。彼女はアメリカ軍のために"世紀の難"と呼ばれる世界トップクラスの数学暗号を設計した。アメリカの暗号学会も非常に高く評価したが、アメリカ軍は最終的に採用しなかった。それはやはり彼女がソ連人だったからだ。結果、アメリカはこの暗号を台湾に売ったのだ。
このような暗号を目の前にして、当時国内にある解読の専門家らはたちまち忙しくなった。我々は普通の仕事だと皆経験を重んじる、それは扱う物事にすべて共同性と共通性があるからだ。だが世界にある暗号はこれら(経験)が必ずと言っていいほど通用しない。張三は何重にも深く掘り下げ難しく考える、李四は必ず誰にもわからないようなこっそりとした観点から考える、その(やり方、アプローチの方法の)違いが大きければ大きいほど(解読は)成功するのだ。暗号解読は男女の恋愛のようでもある。ただ沢山喋れば相手の心をつかめるとは言えない、重要なのは感覚、相性、インスピレーション。一人の天才数学者が作った迷宮を解き明かすには、別の天才数学者が偶然に生み出すようなひらめきをもって成すしかない。
残念なことに、私は天才数学者ではない。なのでこの任務に就いて私が最初に思い到ったのは、中国科学院数学所へ行って(天才を)発掘することだった。

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「白夜追凶」の脚本家グー・シャオバイ(顧小白)が脚本を手掛け、同プロデューサー・ウーバイ(五百)が監督を務めた昔のミステリドラマ。

「心理罪」(2015年 監督/五百 主演/陳若軒、王瀧正)
全24話

※日本語版はありません。
※2017年公開の同名映画とは別物です。

天才的なプロファイリングセンスを持つ若者が連続殺人事件に挑む。原作は雷米の小説「心理罪」シリーズ。今作はこのシリーズの「第七個読者(七人目の読者)」「画像」という作品を元にしているらしい。

――緑藤市で連続殺人事件が発生。被害者は女性ばかりでその体から大量の血が抜き取られており、どうも犯人が抜き取った血をその場で飲み干しているようだ。この奇怪な"吸血鬼事件"、犯人の目的は何なのか…。刑事・邰偉は、四年前に同市で起こった連続強姦事件で高校生ながら見事に犯人像を言い当て事件解決に多大なる貢献をしてくれた天才プロファイラーの方木に再度協力を仰ぐことに。彼は緑藤大学法学部へ進学し犯罪心理学教授・喬允平の研究室に所属している。邰偉は緑藤大へ行き方木に事件への協力を要請するが、しかし彼はもう殺人事件には関わりたくないと頑なに拒否する。実は彼は三年前に起こったある事件によって深く傷つき心を閉ざしてしまっていたのだ――

1話30分と短くやきもきさせるけど、最初の事件はたったの1話、次の事件も4話で終了し、三つ目の事件が「第七個読者」、そして後半は「画像」と大まかに四つの事件で構成されている。最初の二つの事件は主人公の凄さを紹介するいわゆる"つかみ"部分で、端折り過ぎててミステリとしてはあんまり面白くないのだけど、後半二つはさすが原作がしっかりしているからか物語に深みがあって面白い。
ただ、学生が主人公の推理ものでシリーズ化すると逃れられない宿命というのか、主人公の周りで人が死にすぎ!呪われた学園!ほぼホラー!ゲロー 人の心の奥底に潜む悪意や秘密、トラウマをテーマにしているゆえに事件も猟奇的な殺人事件が多くて、学校内で次々と死人が出る、それでも学生たちは普通に通学して楽しく部活に励んでるって…尋常じゃないよ!?滝汗
まぁそんなツッコミは置いておいて、若者が主人公ゆえのフレッシュな恋愛物語もからませててミステリといっても比較的とっつきやすい。主人公の方木とヒロインの陳希が見た目にもひと昔前の韓流ドラマみたいで、しかも美しすぎる純愛なので40代50代の奥様方はキュンキュンするんじゃなかろうか。
でも本筋はミステリなのでそんな綺麗事では終わらせてくれなくてヤクザとかが絡んできたり主人公が追い詰められるハラハラはもちろん、痛々しい、血みどろホラーなシーンもがっつりございまして、まーぁターゲットが幅広いなー。

キャスティングはなんか昭和のドラマみたいなこってり感があってまさに昭和世代は好きそう。お芝居も若干古くささというか使い古された感があるけど基礎的な所がしっかりしてて、変な大根役者がいないのは良い所。
あとドラマの内容に直接は関係ないのだけどエンディング曲の「会飛的野馬」がスゴイ。一度聴いたら忘れられないインパクト。中国ドラマのテーマ曲はプロに発注してちゃんとドラマの内容にからめた歌詞の曲を作るものだけど、これは日本のドラマ同様、既存の曲をドラマ制作側が採用したみたい。過去のトラウマで心を閉ざしている方木が勇気を振り絞ってその殻を打ち破るという所をシンクロさせたかったんだろうな。最終回でこのテーマ曲が流れるクライマックスシーンは実に美しい…!

TVドラマでも映画でもないお芝居のスタイル「舞台劇」。

「一本好書」(2018年 総監督/関正文 司会/陳暁楠)
全12回


「好」は日本語の「好き」ではなく「良い」の意味。
中国の名著と世界の名著を舞台劇を交えて紹介する教養系番組。ドーナツ型ステージの円形劇場にちゃんとお客さんを入れて上演した舞台劇を撮影編集したものを見ながら、番組ナビゲーターが有識者を招いて作品の解説やみどころなどを語り合い、また著者や主演俳優へのインタビューなどもついてるという面白い構成の90分番組。そのうち演劇部分は大体三幕くらいで構成されててトータル60分程度。

「月亮和六便士(月と六ペンス)」(原著/サマセット・モーム 主演/趙立新、黄維徳)
画家ゴーギャンをモデルにしたと言われる作品。この舞台劇では作家の"私"が出会った偏屈な画家と彼をとりまく人々との交流の中で、理解(共感)できるものできないものの温度差に焦点を当てている。天才の周りにはなぜか風変わりな人が集まってきて、常人には彼らの心の内がまったく理解できないよ!と観客(読者)を誘導するような脚本になってるのがとても興味深いところだった。
天才画家を演じる黄維徳も個性的で迫力のあるお芝居だったけど、狂言回し役である"私"を演じる趙立新がやっぱり凄すぎる。彼がいるから各場面の主役が引き立つ!


「万暦十五年」(原著/黄仁宇 主演/王勁松)
歴史学者の著書。明代の皇帝や朝臣の生涯を追い当時の政治社会を紐解いていく。この舞台劇ではタイトルにもなっている万暦帝をクローズアップし、晩年の万暦帝が自身の人生を回顧するという構成。
晩年の万暦帝を演じる王勁松はちっとも皇帝っぽい威厳とかないんだけどね、実際のところ皇帝も人の子、ドラマに出てくるような特別感はなかったのかもしれないなと思わせる。


「三体」(原著/劉慈欣 主演/趙立新)
現代中国のベストセラーSF作品。三部作のうちこの舞台劇では第二部を描いているようだ。けど、ちょっと難しすぎてよくわからなかったよ…。娯楽SFではなく本格SFで哲学的、倫理学的、社会学的要素が入って来てるので、ただでさえ言葉の壁があるのにこれはツライ。地球外生命体がいるとして彼らが地球に対して友好的である保証はないし攻撃的侵略的であった場合にどう回避するのかという問題を扱ってるのか?
お芝居と言っても大学の講義みたいな説明が大部分を占めてて、やっぱりSFを舞台劇にするのは無茶だろうと思う…。


「人類簡史(サピエンス全史)」(原著/ユヴァル・ノア・ハラリ 出演/王自健)
これも歴史学者の著書だけど、人類の進化の歴史を描いていて生物学っぽくもある。
この回はお芝居ではなく、噺家である王自健がジョークも交えてわかりやすく内容を解説する。


「霍乱時的愛情(コレラの時代の愛)」(原著/ガルシア・マルケス 主演/王洛勇)
ノーベル賞受賞作家ガルシア・マルケスの代表作。おそらく当時の社会を鋭く描写してるとかそういう点が評価される作品なんだろうけど、この舞台劇ではありがちな恋愛物語にしか見えなかった。原作ではビョーキなくらいの恋煩いに陥る主人公だけどそこが非常にマイルドに描かれてて、ごく普通な話。
主人公アリーサが運命の女性(だと思っている)フェルミーナに出会ったころから現在までを回想するという構成で、現在の老いたアリーサを演じる王洛勇さんのほぼ独白、一人芝居ぽくなっている。彼の思い出話で若者アリーサや若者フィルミーナも舞台に登場するんだけど、別に彼らが出てこなくても成立するなってほど、その語り口は生き生きとして物語に引き付けられる魅力があった。


「查令十字街84号(チャリング・クロス街84番地)」(原著/ヘレーン・ハンフ 主演/潘虹、龍靖茹)
本を愛するアメリカ人ライター・ヘレーンとロンドンの古書店員らが20年にも渡って手紙のやり取りをしたものをまとめた書簡集。この舞台劇では老いたヘレーンが書店へ初めて手紙を出した頃を回想する形で始まる。
舞台中央に語り部となる老人ヘレーンが座っており当時を思い返す…と、上手(舞台右側)に若者時代のヘレーンが手紙を書いている自室、そして下手(舞台左側)にチャリング・クロス街84番地にある古書店マーカス社が出現する。手紙のやり取りは客席を挟んでちょうど対面するような形で会話を交わすことで表現され、その舞台ならではの演出が素晴らしい。ストーリーは無いに等しいのに、個性ある四人の書店員らとの会話(=手紙のやりとり)が心温まる。
この作品では老人ヘレーンは本当に場を繋ぐ程度しか出てこない、なのに演じる潘虹さんが圧倒的存在感、吸引力。


「未来簡史(ホモ・デウス)」(原著/ユヴァル・ノア・ハラリ 出演/王自健)
「サピエンス全史」の続編にあたる。人は何のために生きるのか…こちらは現在から未来へ向かって人類の行く先を予測する内容。やはり王自健が非常にわかりやすい語り口で展開。林修か、はたまた池上彰かっていう。


「無人生還(そして誰もいなくなった)」(原著/アガサ・クリスティ 主演/李建義)
ミステリの女王クリスティの代表作。孤島の邸宅に集められた10人が一人また一人と殺されて行くサスペンスミステリ。よく知られているようにこの物語は最後は誰もいなくなってしまうので、語り部、狂言回し役もおらず普通の舞台劇になっている。でも主演筆頭が李建義となっててキャストでネタバレるじゃん!!って思ったら、なんとお芝居は最後まで行かず6人が殺された時点で終了。続きは本を読んで確かめてね、だって。
円形舞台の使い方が巧くて正面がリビング、左右が彼らの個室、手前が屋敷の外という風に用いられてて観客はいつでも好きな所を見られる、怪しい所はないか観察できるっていうのはミステリ劇として面白い演出。


「暗算」(原著/麦家 主演/趙立新)
現代中国の作家・麦家の代表作。戦時中の中国の軍諜報部を舞台とした短編連作っぽい、たぶん。
この舞台劇では二つの物語…全盲の障碍者として蔑まれてきた男が軍諜報部にスカウトされその驚異的な聴力で成功を収める物語と、暗号解読のため軍に雇われた女性数学者の恋とその悲しい結末が描かれる。
最初の物語は狂言回し役の趙立新のほぼ独白でお芝居というかもはや朗読?でも次の物語では彼は主役として物語に登場する。もう一人の主役を演じる田沅もまた繊細な表情を魅せる女優さんで、この二人のお芝居はなんだか格が違う!短くても濃厚というのか、すごく心にグサッと突き刺さる。


「塵埃落定」(原著/阿来 主演/喩恩泰)
これが一番よくわからなかった…。チベットの作家・阿来の処女長編作だとか。チベットのある部族に生まれた次男坊の目線で、部族間・家族間の争いや、中国との商売、駆け引きなどを描いている?舞台劇でも物語の途中までしか描かれていないので、結局のところこの作品で何を伝えたかったのか全くわからなかったよ…。


「麦田里的守望者(ライ麦畑でつかまえて)」(原著/J・D・サリンジャー 主演/牛駿峰、張宥浩)
青春小説の金字塔と言われるサリンジャーの代表作。世の大人たちに嫌悪感を抱きグレて家出する青臭い若者の数日間。この舞台劇では物語からさらに数年後の主人公が当時の様子を回顧する形式で描く。
正直原作が嫌いで全く期待してなかったけど、文字で見るとのお芝居で観るのは全然違うかもと思わせる。作品のイメージが変わった。(まあ全員黒髪のアジア人が演じてるって時点で原作とは大幅に異なるわけだけど。)狂言回しである現在のホールデンを演じる牛駿峰が素晴らしい。びりびり響いてくるような感情のぶつけざま。その眼力。舞台人だなーって思う。



この番組は昨年末に配信されたのだけど、シーズン1と銘打っているのでまた今年の冬にでも第二弾が配信されるのかもしれない。