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チャウ・シンチー(周星馳)監督の「美人魚」に続く最新作。

「新喜劇之王」(2019年 監督/周星馳 主演/鄂靖文)
91分

※日本語版はまだありません。

――女優をめざす如夢はバイトをしながら映画やドラマの群衆役や顔の映らない身代わり役を演じている。映画マニアの母は応援してくれているが父はいつまでも叶わぬ夢を追っている娘に怒りながらも、彼女に冷たく当たるスタッフに怒鳴り込みに行ったりと心配している。
新年に放送する白雪姫のドラマのオーディションに行くことにした如夢は友人の小米の勧めで特殊メイクをしていくことに。西洋モデルのような顔立ちになっていけば採用されるはずだ…そうして必要以上に鼻を高くアゴをとがらせた顔で行くと即刻採用され、女優が殴る蹴るの暴力を加えられるシーンの身代わりとして出されただけだった。

この白雪姫のドラマは、魔法の林檎を食べたせいで体が男になってしまったという設定で、往年の人気俳優・馬可が男になった白雪姫を演じるのだった。だが彼はプライドが高く威張り散らし監督の指示に文句をつけ自分の演技を押し通そうとする――

[ここからネタバレ-----
監督はわがままな馬可を懲らしめてやろうと休憩中の彼にドッキリを仕掛けた。以前馬可が散々にこき下ろし殴りつけた端役の女優が自殺したと告げる。そして赤い服を着た如夢が幽霊のように彼に近づく…馬可は驚きすぎて腰を抜かし失禁した。その姿その表情をカメラにおさめた監督はしたり顔だが、ドッキリだったと知った馬可は心底憤慨し監督につかみかかる。役を降りると怒るが、だが監督は辞めればいいと逆ギレ。お前のせいで撮影がちっとも進まない、他の人をあたるからさっさと辞めろと降板を突きつけた。馬可は往年のようなスターではなく、辞めれば他の仕事はなかった…馬可は監督に詫びるが監督が前言を撤回することはなかった。
如夢は小さい頃馬可の出ている映画を見て俳優に憧れたのだ、あのスターがとぼとぼと去っていくその姿を複雑な気持ちで見送る。

よく一緒に群衆役として同じ現場で演じて来た仲間が俳優を辞めるという。彼は俳優は趣味でやっていただけで実は大企業の息子だった。親の仕事を手伝うことになり渡米することになったというのだ。彼から告白された如夢だが既に恋人がいるからと断った。
小米は女優志望でもなんでもなかったが道端でスカウトされて有名な陳監督の映画に出ることになった。それを偶然知った如夢は陳監督にどんな役でもいいから自分も出してほしいと売り込むが、鏡を見てから言え、お前なんか永遠に女優にはなれないと突きつけられ追い出された。
その後まもなく如夢は恋人が二股をかけていた事を知らされた。女優にもなれない、恋人との結婚もただの夢だった…。

その後端役などで細々と食いつないでいた馬可だが、彼が白雪姫の監督に撮られたドッキリの動画がネットで拡散し、皆が彼の無様な姿に大笑いした。馬可はひどく傷つくが、却って顔と名が知られることになり彼の姿を見つけた人々は大喜びで一緒に写真を撮ってくれとせがんでくる。次第に悪い気がしなくなってきた。そして間もなく彼は人気タレントとしてテレビを賑わすようになった。

女優の道を諦めウエイトレスとして働いていた如夢。彼女の家に馬可が訪ねて来た。自分がまた人気者になれたそのきっかけを作ってくれたのは君だと感謝する。そして今度の周監督の新作映画のキャスト候補のリストに如夢が載っていると知らせる。だが如夢はもう女優はやめて堅実に生きることにしたのだと答えた。馬可は、諦めなければいつかまた成功する、それを君が教えてくれたのに、とても残念だと言って帰っていった。
もう一度…そう言いだした途端、父母は直ぐに飛行機で行きなさいと如夢を後押しするのだった。

オーディションには様々な特技を持つ人々が集まっていて、如夢はとてもアピールできそうにない。演技審査で如夢は詐欺師役を演じてみせた。それは彼女を騙していた恋人をそっくりそのまま真似たのだった。だがその真に迫った演技が監督の心をつかみ、彼女は採用された…。
そして一年後、如夢は見事最優秀女優賞を獲得した。
彼女のいる現場には熱心なファンが駆け付けるように。そのうちの一人の女が駆け寄って来た。「ずっとファンなんです、実は私も女優を目指していて…」女はそう言うが如夢はあなたが女優になんて永遠になれっこないと言い放つ。女はがっかりするが、如夢は続けて言う、「そう言われてあなたがすべき事は何?諦めて故郷に帰る事じゃない、努力し続ける事よ。」(終)
-----ここまで]

すばらしい作品でしたー!さっすがチャウ・シンチー監督の映画は安心感があるなぁ!爆  笑
いつものパターンと言われてしまえばそれまでだけど、彼の作品らしいこのノリ、ベタであろうとがっちり笑いを掴んですぐに次へ次へ進んで行くこのテンポの良さ、だらけないようコンパクトにまとめた物語、もうコメディ好きにはたまらない完成度の高さ。
シンチー自身は出演してなくて、いかにも彼が演りそうなキャラクターである馬可をワン・バオチャン(王宝強)が演じる。でもワン・バオチャンの姿を通してシンチーが演るお芝居が目に見えるようだ…!(それだけお決まりなキャラクターってことだけど!)

この作品は1999年の映画「喜劇王」(原題「喜劇之王」)の第二弾なんだけど、要するに売れない俳優が努力と奇跡で成功を収める物語。今作は主人公が女性。なので「喜劇之女王」な気もするし、もっと言うと主人公の如夢は決してコメディ女優ではなくむしろリアルに寄せたシリアスな演技をするという設定なんだけどな。
もちろんこの作品自体は喜劇で、しかもちゃんと「努力すれば夢は叶う」というわかりやすいテーマがあって最後は感動できるような物語になっている。シンチー監督の映画で毎度顔をしかめさせられてた暴力シーンはすごく注意深く排除されているし、女性が主人公とあってお得意の下ネタもなく、これなら子供から大人まで安心して見られる。強くおすすめしたい作品!グッド!

如夢を演じるウァー・ジンウェン(鄂靖文)はコメディ中心に演じて来た女優さんらしくてそのすっとぼけた表情は役柄にぴったりだし憎めない可愛さ。如夢のくじけないいつでも前向きな姿勢には笑いつつも励まされる。如夢と対比する存在である馬可を演じるワン・バオチャンは、うん彼はどんな仕事でもするんだね、そういう意味ですごいねーと思ってしまう。もうホント大真面目にやってくれるから笑える、コメディってそういうもんだよねぇ。彼が喜劇の王!ウインク
キャストで他に印象に残ったというと、如夢の恋人チャーリー、なんでこの人だけ芝居が素人くさいの?この人タレントか何か?結構重要な役なのになんでこんな人をキャスティングしたんだろう??笑えもしないんだけど???



1999年作品。チャウ・シンチー監督・主演。
「一本好書」第九期 1時間32分頃から。

総部首長が701にやってきて自ら彼女に花をかけ表彰した。
司会「総部首長、英雄・陸家炳へ一等の功奨章と証書の授与をお願いします。
総部首長「おめでとう。
阿炳「ありがとうございます。
司会「総部首長、英雄・黄依依へ一等の功奨章と証書の授与をお願いします。
総部首長「黄さん、おめでとう。君は実に得難い人材だ。私は当時君と二つの約束を交わしたことを覚えているよ。もし光復暗号を解読したら君はここを去っていい、そして一人連れて行ってもいいと。
黄依依「首長、今になって約束を果たしたくないと思うんですか。
総部首長「ハハハ。君は得難い人材だ、私は当然君に去ってほしくはないよ。
黄依依「いいえ、あたしは行くわ。
総部首長「どうだ、やっぱり一人連れていくのか。
黄依依「やめておくわ、(人は)連れて行かないわ。
総部首長「しかし我々が先に約束したのだから、私も食言できないな。君が連れて行きたいなら 連れて行きなさい。
黄依依「重要な人は連れていけないんでしょ。その人は奥さんがいる人だし。
総部首長「……。ハハハ、どうであれ我々が元々約束していた通りにしよう。もしその人が君と行きたいというなら君は連れて行けばいい。もしその人が望まないならそれは私とも関係のないことだから。
黄依依「首長、私のために泣いてください。
これが命運を決定づけた対話、これが命運を決定づけた一瞥だった。総部首長はすぐに敏感に察知した、私が妻の小雨の秘密を漏らしてしまったことを。私はまた黄依依を傷つけてしまった、彼女は小雨の秘密を知ってしまったために二度とこの山から出られなくなったのだ。ここから黄依依と私は同じ道を辿る。仕事の時を除いては二度と個人的な交流はできず、黄依依は院内の一人の幹事の元に嫁いだ。
そして私は…再び妻・小雨の骨灰を受け取った。今度は本当だった。だが私は厳格に秘密を守り続けなければならなかった。彼女はもう死んだことになっていたので、また死んだなんてことにはできないから。
さあ、そろそろ時間だ。
麦家はまだまだ多くの701の物語を描いています。風を聞き、風を見、風を捕らえる事、すべてが『暗算』というこの本の中に描かれてます。そこには多くの秘密、私がここでお話できなかったことがあります、皆さんは本でご覧になってください。我々のこの秘密の世界を理解しに行ってみてください。世間の財産、栄誉、名声、地位、それらの全ては我々には関わりのないことです。しかし皆さんの理解が、我々を温かい気持ちにさせる、それが嬉しいのです。
ありがとう、皆さんありがとう。 [終幕]

* * * * *

調べる限りでは原作では前半の阿炳の物語もこの黄依依の物語もオチが違って意外な結末となっていて、作品としてはそちらが主題っぽい。
でもこの脚本もよくまとまっていてうまい話だなと思う。

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「一本好書」第九期 1時間18分頃から。

黄依依「小雨さん、あなたはきっとあたしの気持ちをわかってくれると思う。あなたが天国からあたしたちを助けてくれることを祈ってます。知ってますか、あたしはこの人のために全世界を捨てて来た、首都北京からこんな山奥の僻地へやってきたのよ。あたしは本当に彼を愛している。彼の髪、彼の髭、彼の体毛も全てを愛しているの。
院長「何を言っているんだ。君はそんなふざけたことを言うのは彼女に対し失礼だと思わないのか。
黄依依「じゃあ聞くけど、あなたは私に失礼だとは思わなかったの?彼女はもうこの世を去った、あなたはどうして彼女をゆっくり休ませ葬ってあげないの?これがあなたの彼女への尊重だというの?
院長「私は……いつか来るその日を待っている。
黄依依「何の日よ?誕生日、命日、記念日、国慶(節)、建軍(記念日)!?
院長「どれも違う。
黄依依「まさか暗号を解読する日だとでも?
院長「そうだ、暗号を解読する日を待っている。
黄依依「そうなら、もし暗号を解読したらあなたはあたしを愛せる、そういうことね?
院長「またそれを言いだすのか。
黄依依「あたしの条件を飲んでくれたら、あたしは暗号を解読できるわ。もし解読できなかったらその時は諦める。たったひとつの条件よ。
院長「何だ。
黄依依「結婚して。結婚してよ。
仕事のため、国家の利益ためであっても、私が再度拒絶するだけの論理は成立しない。我々はいつでも使命のために命を犠牲にできる人間だ、もしこのような女性を娶っても将来(彼女が)不幸になるのは言うまでもないし、元から犠牲と呼ぶものでもない。
だが、私は(受け入れることが)できなかった。それは、あの日受け取った報せ、総部首長の密報が私に告げたからだ。私の妻の小雨は、彼女は死んでいなかった。彼女の死は組織が手配した偽情報。彼女がさらに極秘の身分で生死をかけるような諜報活動を行うためだった。当然ごくわずかの首長にしかこの事は知らされなかった。一人でも多くの人が知っているとそれだけ小雨の身の安全が脅かされることになるからだ。
今私が黄依依の要求に応えれば、それは結婚について二人を騙すことになり、二人もの心を傷つけることになる。したがって、実情に合った最も合理的な選択はこうだ。
院長「それはできない。
おいで、ここで毛主席に君が最も嫌う宣誓をしなさい。私が今から言う事は、君は永遠に口にしてはならない。

黄依依「わかったわ。誓います。
院長「…私の妻、小雨は今もまだ世界のどこかで生きている。彼女はまだ任務執行中なんだ。
黄依依「…………なぜ私を探しに来たの!…なぜ!!

[第三幕]
皆さん私の『暗算』の物語を聞いていただきありがとうございます。私の妻が生きていた事、私も後でわかったのですが、私は守秘義務に違反していた。黄依依にこの事を話した事で、彼女はとても苦しみ、私に出会った事を後悔した。だが最も適した暗号解読の頂点に立つ人材であるという事実を証明した。
私はまたソ連へ行ってきた。もちろん私の妻を探しに行ったのではないしこの時は私の恩師も皆いなくなっていた。ただ私は光復暗号の発明者である欺金欺の経歴情報と一枚の写真を持って帰って来た。写真に写るその人は、眼光は暗く冷たく、口には半分になった煙草をくわえた初老の女性だった。
黄依依はこの写真を長い間じっと見つめ、欺金欺と暗闇の世界(暗号学)での交流へと進み入った。彼女は欺金欺の機巧と野蛮さ、奇怪さ、面白味と知恵を見るに至った。それらの奇異で偽りに満ち、ギラギラ輝いては幻のように変化する世界を見た。それは毒蛇と吸血コウモリで満たされた暗闇の洞窟だ。
彼女は急に動き出した。光復暗号を解読する数学模型を提出し、何十人かが昼夜三班に分かれて一か月計算し続けた。だが予期していた結果にはならなかった。皆がっかりした。これは明らかに黄依依の推測から出た問題で、当然論理上言える事だが、演算の途中で何か問題があったかもしれないし、また光復暗号自体に問題があるのかもしれない。
一般人はすぐに自分の過ちを認めるだろう、だが天才はやはり天才だ、黄依依は巨大な(批難の)圧力の中でも自らの死地を事務室の中と決めたかのように、二万以上の工程を演算し大胆な推測を出した。光復暗号の誤差率の高さによって正常値を仮定した。彼女はこれは台湾が自分で暗号を改修する能力もなく使用しているからだろうと考えていた。
攻め落とし捉え束ねた暗号の数学の鎖の最後の日には(※暗号を人に喩えている。敵を捕らえいよいよその正体を明かすその時、という意味)、黄依依は飲まず食わず眠らずで、目は充血し、髪は乱れ、憔悴は頂点に達していた。我々はみな彼女の仕事がどうなるのか見守っていたが誰も彼女に話しかけようとはしなかった。彼女の思考を乱してしまうのを恐れたからだ。巨大な勝利が目の前にやって来たが、何の前触れもなかった。あの時ただ覚えているのは、私の視界は涙でぼやけていた。皆が私に駆け寄ってきて抱き合い、感涙にむせんでいたのを見た。
黄依依の光復暗号の解読の功績は極めて大きく、とても一言では言い表せない。だが当時言われたのは、蒋介石が大陸に光を取り戻せと南京を攻めて延命を図ったが、彼らは最後まで軽挙妄動(全面戦争)に到らなかった、それは我々が彼らの光復暗号を破ったからだ。彼らを一夜にしてまるはだかにし、彼らの派遣したスパイを一網打尽にし、彼らを盲目にさせたのだ。
総部から表彰が直ぐに発表された。黄依依はトップの功績となり、最も傲慢な鳳凰はやはり皆の注目の的となった。


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「一本好書」第九期 1時間8分頃から。

そうだ、私はなぜ愛せないのか。(観客に対して)君たちも疑問に思うだろうか。
…いや、違った。
わかるだろうか、暗号解読は二人で手を携えて迷宮を抜け出すようなものではない。迷宮であればどこでも一歩踏み出せば前方に進める道はあるからだ。だが暗号は一切が隠されたひとつの暗い穴だ。たった一人で宇宙空間を彷徨うような孤独と寂しさで形作られた…。
彼女が仕事をしているのかそれとも何もせず月日が過ぎているのか、確かめる方法など元々ない。凡人と天才の区別は難しい。私は皆の黄依依への批判から彼女を守ることに力を尽くした。もちろん、私が彼女に思い入れて(好きだから彼女を庇護して)いるという噂も立った。もし愛情を利用することで解読の手助けになるというのなら、当然私は人の義に反していようが構わずそうするだろう。だがある日の午後、私は総部首長から北京から伝えられた秘密の報せを受け取った。愛情を利用するという道は徹底して塞がれた。
私は決めた、黄依依とよくよく話し合うための時間を作ろうと決めた。

思いがけずも、あの晩私が家に戻って来た時ドアノブに一つの布袋が引っ掛けられているのが見えた。
布袋の中には酒瓶、手紙、本、トランプ、紙テープが入っていた。手紙にはこのように書かれていた。「この中の四つの秘密のメッセージを順番に解いて。制限時間は半時間」と。言うまでもなく、これは黄依依のいたずらに決まっている。
私は中の物を机の上に並べ、彼女の暗号を解き始めた。まず最初に酒瓶、これはただの空っぽの酒瓶だ。そして紙テープを手に取って見た。紙テープの上には英語、中国語、ロシア語各種文字が入り乱れているものが書かれちんぷんかんぷんだ。私は紙テープについてしばらく考え、古代ローマの暗号のように考えられると思った。そして酒瓶、これは実際は(暗号として使用する際には)暗号筒だが、紙テープをこのようにして酒瓶に巻いていく。螺旋のような形で巻き付けていくと天書が出現しはっきり読める文字となる。
"美酒和一様香醇(美酒と私は同じくらい芳醇)"
"光密和一様重要(光復暗号とあなたは同じくらい重要)"
次にこの本を見た。オストロフスキーの著作『鋼鉄はいかに鍛えられたか』だ。本の中に数字で埋め尽くされた紙がはさまれていた。電文に似ている。私は電文(の数字)のページを本から書き起こして最後に本の中から文字の組み合わせを見つけ出した。それはこんな文だった。
"冬妮婭保爾、就像保爾愛革命(冬妮婭(トーニャ?)は保爾(ポール?)を愛している、保爾が革命を愛するように)"
これは黄依依が私に四つの暗号のお題を出しているのが単なる恋愛ごっこのためではなく、彼女が新たな突破口を試しているのだという事を告げていた。

私がそう考えたその時、黄依依はやってきた。
院長「どうぞ(入りなさい)。
黄依依「暗号はみんな解けた?
院長「君のこの遊びは純粋に精神力と時間を浪費するよ。
黄依依「あなたって実用主義が過ぎるわね。あたしたち暗号解読家はちょっとでも遊んではいけなくて?暗号の世界でしか自分の存在意義を証明できないっていうのに。
この四つの秘密のメッセージは、別々の時代の暗号の代表的なもの。酒瓶は原始暗号、手紙は移位暗号、本は代替暗号、それからトランプは数字暗号。これらはみんな初級の暗号。だけど中級暗号にしても高級暗号にしてもみんなこれらを基礎としてその上に複雑に組み合わされてる。

院長「これらの組み合わせによってすぐにはじき出せないくらい難しくなった時、それが数学暗号となる。
黄依依「欺金欺が使っているのは数学暗号だと確定してる。あたしたちがまずできるのは、古い原始暗号は(原理的に使えないので)ほっといて、その後実現的な使い道があるのは数字に数字を加える、数字に移位を加える、数字に代替を加える、それから数字に移位を加えさらに代替を加える。
今あなたが直感で言ってみて、欺金欺はどれを選んだか。

院長「数字に数字を加える。(※黄依依の期待する答ではなかったようだ。)
もし二度目の機会をくれるのなら私は(別の答を)選ぼう。
黄依依「二度目はないわ。
院長「なら君はどう思う。
黄依依「本当の事を言うと、あたしはわからない。だから頭が痛いのよ。いつものあたしは直感が良いのだけど、今回は本当に何もひらめかない。あなたは欺金欺が流れ者だと言ったわね。
院長「さっきも言ったが、もし二度目の機会をくれたら
黄依依「二度目はないわよ。二度目の機会なんて何の意味もない。今私が本当に会いたいと思うのは安徳羅の生徒じゃなく安徳羅本人よ。そしたら私は彼の第一の直感を排除してのんびりできるのに。
あなたが言わなくても私にはわかってるわ、あなたが二度目に何を選ぶか。あなたはきっと言うの、欺金欺は常識を破ってくる、今ある選択肢を超えるような、古代の原始暗号技術を加えて来るような、って。

院長「欺金欺のする事にボトムラインはない、彼女は完全に常識を打ち破りあの手この手を使っているだろう。
黄依依「彼女がこういう風にしたかどうかはわからないけど、あたしはこうしてみたの。あなたの持つ四つの秘密のメッセージを重ね起こしてみて。中に重要なことが書いてある。ヒントをあげるわ、四。数字の四。
(※四番目の文字を並べてみた)
院長「"我很愛你(私はあなたを愛している)"
黄依依「自分で言ったわね。
いいわ、こんなたくさんの仕事をしてくれてありがとう。ちょっと別の話をしましょ。あなたはまだ答えを返してくれてないわ。あなたはなぜ私を愛せないの?

院長「…見なさい、彼女(妻)があそこにいる。私の心の中に。
黄依依「でも彼女はもうこの世を去ったでしょう、彼女はもう行ってしまったのよ。


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「一本好書」第九期 57分頃から。

黄依依「この斯金斯は率直に言って流れ者、はみ出し者。彼女は完全に暗号界の恥よ!私は今よくわかったわ、(暗号を)台湾に売らなければならなかったのが。きっと彼女の奇行が分かったせいで彼女の人格自体に疑問が出て来たのよ。もし暗号を作る人の人格を問うのなら彼女の暗号を用いる人なんていないわ!
院長「君は一体何を発見したんだ?
黄依依「あなたもきっと、二つの戦争の間にドイツ軍が(かつて)使用を始めた機械暗号に暗号機エニグマを加えたのを知っているでしょう。暗号界の一里塚よ。この斯金斯、彼女が自分の発明だと言うこれは実際は完全に盗作よ!この人は全く何のボトムラインもない!(※恥と考える最低ラインが無い、恥知らずの意味。)」
もし暗号を発明する人の心に恥がなければ、暗号を解読する人も同様に恥をなくす、そうしてやっと相手の思考が得られるのだ。これが世界で最も陰暗で最も難しい職業(=暗号解読)なのだ。
私は黄依依が斯金斯の恥知らずな盗作行為をはっきり知った後、勝利するため追撃しこれを解読したいという気持ちを固めるだろうと思っていたのだが、彼女が何度も癇癪を繰り返すようになるとは思わなかった。
この日は樹林へ行ってリスにクッキーをやり、明くる日は警備所へ行って人と将棋を指すため木工所へ立ち寄ったが、(暗号解読の)事務室の扉は固く閉ざされていた。これは確実に様子がおかしいので私は宿舎へ彼女を探しにいった、彼女と何か雑談でもしようと。

黄依依「どうぞ(入って)。
一歩入って私は呆気にとられた。彼女は何をしてたと思う?彼女はトランプで自分の運命を占っていたのだ。
黄依依「今あたしの愛情運を見てたのよ、いらっしゃい、座って。
あたし聞いたんだけど、あなたの奥様ってもう亡くなったって、ホント?

院長「君には関係ない事だろう。
黄依依「そうねぇ、どんな愛もみんなひとつの暗号なのよ。一枚引いて。
フフッこれはあたしの化身。わかった?あなたの愛情の暗号(キーワード)はあたし。奥さんの事を話してよ。

院長「私と彼女は苦しい戦争の歳月の中で知り合った。革命の心を胸に私達は一緒にやってきた。新しい中国が成立した後、私たちは一緒にソ連へ行った。
黄依依「あなたの話はお上が言うのみたいでちっともロマンがないわ。
院長「我々の革命的浪漫主義だ。国家の為なら、我々はどんな犠牲をも厭わない。
黄依依「知ってる?数学所で初めてあなたに会った時、あたしはあなたにすっかりひきつけられたの。あなたのまとう特別なオーラ、ミステリアスで、クールで、あなたのそういう所に本当にもう自分ではどうにもならないほどにのめり込んでしまってるの、わかってる?
私は恋愛方面については本当に何の経験もないことを認めざるを得ない。妻も組織が紹介してくれたのだ。
黄依依の美しさ、才能と情熱は、人の心を動かさずにはいられないものだ。だがこの時は、光復一号を解読することが国家の安全と危機に関わることで、戦士が生きるか死ぬかという時に私が愛などに陥るわけにはいかなかった。私はしばらく彼女に関わらないようにした。
まもなく彼女の解読室の中から毎日トントン叩く音がするようになった。(うるさくて)建物内の人は皆仕事ができなくなった。私が彼女の門を敲きに行くしかなかった。

院長「黄依依、開けろ!黄依依!
黄依依「あたしの事は放っておけばいいんでしょ、何を言うのよ。
どうする、どうしろって?
解読には彼女が必要だ。そして彼女に必要なのは集中することだ。彼女が私への感情のために心を乱しているとわかっていた。この国家の安全危機が掛かる解読のためのインスピレーションは元来ただよう糸くずのようにもろくて弱く細いものだ、それが愛なんてものにからめとられてしまうとは。彼女の頭からこのことを消さなければならない。

黄依依「あなたがあたしを愛してくれないのは分かったわ。だからあたしはあなたを忘れられる方法を考えたのだけどまだ見つからないの。あなたと光復一号のせいで疲れちゃった。
暗号解読には天が与えた運気も必要よ。でもこんな一人の男の愛も得られないようなあたしに天が手を差し伸べてくれるはずもないわ。あなたは本当にあたしが暗号を解けることを望んでいるの?

院長「私はもちろん君が解読を完成させることを望んでいるよ。
黄依依「じゃああたしたちは相思相愛ね。あたしがこんなにもあなたを愛していると今神様も分かったでしょう。あなたがあたしを愛さないから、神様もあたしを愛さないんだわ。あたしがこの数日何をしてきたか知ってる?あたしは今までいくつもの失敗や絶望を経験してきた。あたしは毎日自分で色んな種類色んな形の模型を作って試してる。
院長「君が毎日事務室内でトントン叩いていたのは模型を作っていたのか。
黄依依「ええ、でも全て失敗だったわ。今まだ少しも進展はないの。
私を手伝って。あなたがあたしを愛してくれることが一番の手助けなの、あたしは真剣よ。

院長「君はどうして毎日毎日愛の事ばかり考えてるんだ、愛がそんなに重要か?
黄依依「愛より重要なことって何があると言うの?
院長「今私に言った事だ、暗号解読が最も重要だ。これも愛だ、大きな愛だ。国家のための、人民のための愛だ。
黄依依「ハッあなたはもちろん国家を愛し人民を愛せる、なのにどうしてその他の愛は受け入れられないの?!
院長「その他の愛は大きな愛(博愛)に属しているものだろう。もう一度言う、今暗号解読を除いては私の心にその他の愛はない。
黄依依「…あなたは、なぜ私を愛せないの?


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