「一本好書」第九期 1時間18分頃から。
黄依依「小雨さん、あなたはきっとあたしの気持ちをわかってくれると思う。あなたが天国からあたしたちを助けてくれることを祈ってます。知ってますか、あたしはこの人のために全世界を捨てて来た、首都北京からこんな山奥の僻地へやってきたのよ。あたしは本当に彼を愛している。彼の髪、彼の髭、彼の体毛も全てを愛しているの。」
院長「何を言っているんだ。君はそんなふざけたことを言うのは彼女に対し失礼だと思わないのか。」
黄依依「じゃあ聞くけど、あなたは私に失礼だとは思わなかったの?彼女はもうこの世を去った、あなたはどうして彼女をゆっくり休ませ葬ってあげないの?これがあなたの彼女への尊重だというの?」
院長「私は……いつか来るその日を待っている。」
黄依依「何の日よ?誕生日、命日、記念日、国慶(節)、建軍(記念日)!?」
院長「どれも違う。」
黄依依「まさか暗号を解読する日だとでも?」
院長「そうだ、暗号を解読する日を待っている。」
黄依依「そうなら、もし暗号を解読したらあなたはあたしを愛せる、そういうことね?」
院長「またそれを言いだすのか。」
黄依依「あたしの条件を飲んでくれたら、あたしは暗号を解読できるわ。もし解読できなかったらその時は諦める。たったひとつの条件よ。」
院長「何だ。」
黄依依「結婚して。結婚してよ。」
仕事のため、国家の利益ためであっても、私が再度拒絶するだけの論理は成立しない。我々はいつでも使命のために命を犠牲にできる人間だ、もしこのような女性を娶っても将来(彼女が)不幸になるのは言うまでもないし、元から犠牲と呼ぶものでもない。
だが、私は(受け入れることが)できなかった。それは、あの日受け取った報せ、総部首長の密報が私に告げたからだ。私の妻の小雨は、彼女は死んでいなかった。彼女の死は組織が手配した偽情報。彼女がさらに極秘の身分で生死をかけるような諜報活動を行うためだった。当然ごくわずかの首長にしかこの事は知らされなかった。一人でも多くの人が知っているとそれだけ小雨の身の安全が脅かされることになるからだ。
今私が黄依依の要求に応えれば、それは結婚について二人を騙すことになり、二人もの心を傷つけることになる。したがって、実情に合った最も合理的な選択はこうだ。
院長「それはできない。
おいで、ここで毛主席に君が最も嫌う宣誓をしなさい。私が今から言う事は、君は永遠に口にしてはならない。」
黄依依「わかったわ。誓います。」
院長「…私の妻、小雨は今もまだ世界のどこかで生きている。彼女はまだ任務執行中なんだ。」
黄依依「…………なぜ私を探しに来たの!…なぜ!!」
[第三幕]
皆さん私の『暗算』の物語を聞いていただきありがとうございます。私の妻が生きていた事、私も後でわかったのですが、私は守秘義務に違反していた。黄依依にこの事を話した事で、彼女はとても苦しみ、私に出会った事を後悔した。だが最も適した暗号解読の頂点に立つ人材であるという事実を証明した。
私はまたソ連へ行ってきた。もちろん私の妻を探しに行ったのではないしこの時は私の恩師も皆いなくなっていた。ただ私は光復暗号の発明者である欺金欺の経歴情報と一枚の写真を持って帰って来た。写真に写るその人は、眼光は暗く冷たく、口には半分になった煙草をくわえた初老の女性だった。
黄依依はこの写真を長い間じっと見つめ、欺金欺と暗闇の世界(暗号学)での交流へと進み入った。彼女は欺金欺の機巧と野蛮さ、奇怪さ、面白味と知恵を見るに至った。それらの奇異で偽りに満ち、ギラギラ輝いては幻のように変化する世界を見た。それは毒蛇と吸血コウモリで満たされた暗闇の洞窟だ。
彼女は急に動き出した。光復暗号を解読する数学模型を提出し、何十人かが昼夜三班に分かれて一か月計算し続けた。だが予期していた結果にはならなかった。皆がっかりした。これは明らかに黄依依の推測から出た問題で、当然論理上言える事だが、演算の途中で何か問題があったかもしれないし、また光復暗号自体に問題があるのかもしれない。
一般人はすぐに自分の過ちを認めるだろう、だが天才はやはり天才だ、黄依依は巨大な(批難の)圧力の中でも自らの死地を事務室の中と決めたかのように、二万以上の工程を演算し大胆な推測を出した。光復暗号の誤差率の高さによって正常値を仮定した。彼女はこれは台湾が自分で暗号を改修する能力もなく使用しているからだろうと考えていた。
攻め落とし捉え束ねた暗号の数学の鎖の最後の日には(※暗号を人に喩えている。敵を捕らえいよいよその正体を明かすその時、という意味)、黄依依は飲まず食わず眠らずで、目は充血し、髪は乱れ、憔悴は頂点に達していた。我々はみな彼女の仕事がどうなるのか見守っていたが誰も彼女に話しかけようとはしなかった。彼女の思考を乱してしまうのを恐れたからだ。巨大な勝利が目の前にやって来たが、何の前触れもなかった。あの時ただ覚えているのは、私の視界は涙でぼやけていた。皆が私に駆け寄ってきて抱き合い、感涙にむせんでいたのを見た。
黄依依の光復暗号の解読の功績は極めて大きく、とても一言では言い表せない。だが当時言われたのは、蒋介石が大陸に光を取り戻せと南京を攻めて延命を図ったが、彼らは最後まで軽挙妄動(全面戦争)に到らなかった、それは我々が彼らの光復暗号を破ったからだ。彼らを一夜にしてまるはだかにし、彼らの派遣したスパイを一網打尽にし、彼らを盲目にさせたのだ。
総部から表彰が直ぐに発表された。黄依依はトップの功績となり、最も傲慢な鳳凰はやはり皆の注目の的となった。
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