「ペガサス-飛馳人生-」(2019年 原題「飛馳人生」 監督/韓寒 主演/沈騰)
98分

ポスターからは何の話なのかさっぱりだけど、中身は過去の栄光を取り戻すためカーレースに挑む中年男性を描いたコメディ。
原題は疾駆する人生という意味になるけど、主人公の名が馳で彼の息子の名が飛であることにもかけてるのかなぁ。
――かつて中国No.1の名をほしいままにしていたカーラリーレーサーの張馳はある時罠に嵌められ公共の場で暴走し逮捕された。5年の拘留の後、彼は再びレース界への復帰を目指す。
というのは彼はシングルファーザーで、幼い息子の張飛は父の栄光の姿を知らない。息子にぜひ自分の活躍する姿を見てほしいというのが唯一の願いだ。
だが実は張飛は誰の子なのかわからないのだ。ある日赤ん坊が張馳の車のボンネットに放置されていた。最盛期の彼には沢山の恋人がおり心当たりがありすぎた、片っ端から聞いて回ったが結局母親は見つからなかった。そして最近DNA鑑定したところ彼自身の子でもなかったことが判明したのだった。それでも張馳は張飛を可愛がりチャーハン店を営みながら男手一つで一所懸命育てているのだ――
[ここからネタバレ-----
張馳が表舞台から姿を消した後レースに参戦したアメリカ帰りの若きレーサー・林臻東が連続優勝を続けていた。張馳がレースに復帰すると聞いた林臻東は彼に会いに行く。中国ラリーレース界を牽引してきた張馳と戦い勝つことで真のNo.1として歴史に名を刻まれることになる、そのためにもレースに出場して戦ってくれと言うのだ。必要なら金も貸してやると言うのだが見栄っ張りの張馳は大丈夫だと笑って断った。
張馳はまず同乗レーサーの孫宇強と再会。免停になっているので自動車教習所へ行って免許を再取得した。車を手に入れるため以前世話になっていた車整備工場へ行くが、張馳が逮捕されたせいでこの工場も評判を落としたため、手伝えることはないと断られる。だが昔の仲間である整備士の記星が彼らが昔使っていた車のフレーム…もう廃棄寸前だったものを持って来てくれた。だがここからレースに使える車に戻すためには莫大な資金が必要だ。張馳と孫宇強は走り回ってやっとのことで強力なスポンサーを見つけた。
そしてついに車が完成した。さっそく試乗し乗り心地を確かめる。記星の整備は完璧で、さらに張馳の腕はまったく落ちていなかった。
レースの行われるバヤンブラクへ向けて孫宇強は車を乗せたトラックを走らせていた。張馳は息子と一緒に飛行機で現地入りする。だが宇強のトラックがパンクして横転し、積まれていた車も大破してしまった。今から直すためのパーツも資金もなかった…張馳は出場辞退の申請書にサインするしかなかった。
その手を林臻東が止める。張馳はやはり5年という歳月は長く自分の時代はとっくに終わっていたのだと、これからは君たち若い人の時代だと苦笑を返す。しかし林臻東は5年という年月の意味は別にあると言って指を鳴らす。それは技術の進歩だ。彼の整備チームそして最先端のロボットが現れ、ぺしゃんこになっていた張馳の車はみるみるうちに元通りに。そしてレースの日を迎えた。
ナビゲーターの役割を果たす同乗レーサーの孫宇強が負傷しドクターストップがかかったため、張馳は単身でレースに臨む。その殆どが山中で未舗装のコースで占められているバヤンブラクラリーは非常に過酷で事故もハプニングも多く完走すら難しいことで有名だ。張馳は途中にいくつもの事故車を見かける。
だが彼はこのレースに賭けて来た…車に乗れなかった5年間ずっとこのコースを何度も何度も頭の中でシミュレートしてきたのだ。
先行していた林臻東はフィニッシュを切った。最後にはエンジンが火を噴くほどで全力の、最高の走りだった。車から降りて来た林臻東は、必ず完走するであろう張馳の姿を待つ。
そしてやはり張馳は現れた!最後の直線を、車の警告音も無視してアクセルを踏み込む。ゴールゲート直前で限界を超えた内部機関が破壊されていく、だがコンマ差で林臻東に勝った!
ゲートを越えても張馳の車は減速しない、ブレーキが破壊されてしまったのだ。さらにハンドルも利かない、車は完全に操作不能に陥った!
タイヤも吹っ飛び車は全速で崖へ、その向こうの海の上に輝く夕陽に向かって一直線に飛んで行った…。(終)
(エピローグ)
数年後、自動車は羽根が生えて空を飛べるようになり、張飛の尊敬するパパは今度はコンコルドと競争してそしてきっと勝つだろう。-----ここまで]
なんという清々しい物語。大変良うございました。
少年漫画のような、夢を叶えるための熱き戦いの物語。主人公は少年ではなく子持ちのおっさんだけれども。
序盤から中盤まではむしろやんわりとしたハートフルコメディで笑いの匙加減も丁度いいし、終盤のレースシーンは車が走っている映像の凄さは車の知識がないのでわからなかったけど車を走らせるレーサーやスタッフらの心意気がアツい!!多分主人公が勝つだろうなぁとは思いながらもギリギリまでその結末の行方に手に汗握る展開。敵が卑怯な手段を使うわけではなく、名誉のために正々堂々と戦うというプロットは日本人にもめちゃ響くはず。
ドカンとした笑いではなく小出しに小出しに挟んでくる笑いで物語に引き込まれて行くし、その笑いの間合いが絶妙なのはやっぱりコメディ俳優の実力という所だろうなぁ。シェン・トンのちょっとした、一瞬のその表情なんかに笑わされるし、一見イケメン枠かと思うイン・ジェン(尹正)はすました顔でボケもできちゃうのに驚いたし、あの「万万没想到」で濃ゆすぎるボケキャラ演ってたチャン・ベンユー(張本煜)は普通にまともなキャラもできて整備工って似合いすぎじゃんって大笑いしてしまったし、そしてライバルである林臻東を演じるのが韓流スターみたいな顔立ちのイケメン、ホアン・ジンユー(黄景瑜)。イケメン枠はこの彼一人で充分ってくらいキラキラしてるぜ!
約100分というコンパクトさもいいし、気軽に見てもらえる良質コメディ。特に日々に疲れを感じている30代後半から40代の人々に見てもらって若い頃たぎらせた熱い思いというのを今一度思い出させてもらってほしい。




